October 10, 2011

買い物するだけでも役に立つ

自転車を買い換える際のポイントはいろいろあります。


どんな面を重視して購入するモデルを決めるかは、人によってそれぞれです。用途や走る場所、乗り方などによっても違ってくるでしょう。ブランドを決めている人もいるでしょうし、機能やデザイン、重さ、価格、使われているパーツなど、選定のポイントはいろいろあると思います。

フレームの素材というのも一つの要素です。フレームは一般的なアルミでいいとか、チタンやカーボンなど新しい素材にしてみようとか、やはりクロモリにこだわるとか、好みや経歴などによっても違ってきますが、乗り心地を左右しますし、自転車選びの大きな要素であることは間違いありません。

アルミなどの素材は、乗り心地が硬く、地面からの振動を伝えやすいという傾向があります。それが長い距離を走っていると疲れにつながります。このことから、より振動吸収性の高いカーボンにしようとか、やはりクロモリがいいといった選択をする人もいます。

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もし、今乗っている自転車のフレームが硬く、長距離での疲れや痺れなどからフレーム素材を変えようと思っているなら、『竹』という選択もあるかも知れません。フレームが竹製の自転車です。これまでも何度か竹製の自転車の話題を取り上げてきましたが、竹製の自転車が意外に優れているという話は少なくありません。。

普通の自転車店で販売されるような一般的な素材ではありません。私も展示会で見たことはありますが、乗ったことはありません。おそらく竹の自転車の存在を知らない人も多いと思いますが、一部に根強い支持者が存在する、マニアックなフレーム素材の一つです。

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マイナーですが、実は自転車のフレームに理想的な素材なのだと言います。振動吸収性が高く、長く乗っていても疲れにくいのが特徴です。フレーム素材として素晴らしい性能を発揮し、プロの競技者でも、トライアスロンなどの選手だと、竹製の自転車にして記録が縮まるケースもあるそうです。

耐久性に難がありそうな気もしますが、そんなことはなく、10年保証をつけるビルダーもあります。問題となるのは、どうしても加工が手作業になってしまう点です。そのため大量生産することが出来ず、価格的な面も含めて、普及へのネックとなっています。

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そこで選択肢となるのが、“Zambikes”です。竹製のフレームをリーズナブルな価格で販売しています。名前にもあるように、実はこの“Zambikes”、アフリカのザンビアで自転車を製造しています。しかし、人件費が安いからザンビアで生産しているわけではありません。

ザンビアはアフリカ南部の内陸部に位置し、世界の中でも最貧国の部類に入る貧しい国です。“Zambikes”は、この国の人々を貧困から救おうとするソーシャルビジネスなのです。ザンビアで生産された自転車を、アメリカなどで売ることで、ザンビア人の雇用を創出しています。

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自転車製造は、工業とは言っても発展途上国でも参入しやすい産業ですが、さすがにその製品を先進国で売るのは容易なことではありません。当然先進国資本の製品と競合しますし、技術力や販売力などではかなうはずがありません。結果、価格で競争するしかなくなり、事業としては厳しくなります。

しかし、竹製の自転車なら労働集約的なぶん強みとなります。競合する製品も少ないので、適正な利潤を確保できる可能性があるわけです。もちろん、竹製の自転車に乗ろうという人も多くはないわけですが、ザンビアでの現状の生産力にも見合っています。


日本では、竹製の自転車と聞いてピンと来る人は少ないと思いますが、アメリカでは生産を手がけているビルダーも何社かあり、少ないながらも、一定の支持があるようです。日本だと、竹で手作りの自転車なんてキワモノと思われがちですが、上述のように素材として素晴らしく、大きな可能性を秘めているのです。

この自転車を買うことは、社会貢献、途上国支援にもなります。他の人とは違った個性的な自転車が欲しいという人にも魅力的な選択肢になるかも知れません。もちろんフレーム以外のパーツは、シマノ製など、普通の自転車と同じであり、粗悪なものではありません。

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発展途上国の中でも特に開発が遅れている国の一つであるザンビアでは、失業率が実に50%から80%に達すると言います。一日2ドル程度稼げれば食べていけるそうですが、目ぼしい産業がないのでその口がなく、社会のインフラも貧弱、識字率も低く、まさに貧困に喘ぐ状態です。

竹の自転車を先進国に輸出するのは、“Zambikes”の一部に過ぎません。現地向けには、竹ではなく普通の自転車を作っています。これは現地では貴重な交通手段となります。多くの国民はクルマなんて持っていませんし、公共交通も整っていないザンビアでは、自転車が死活的に重要な役割を果たしています。



職を得て働こうにも通勤手段がありません。例えば歩いて片道4時間以上かかるのでは、就業は困難です。必ずしも舗装された状態のいい道路ばかりではありませんが、それが自転車によって、1時間程度になるとすれば、通勤の可能性が出てきます。自転車はまさに生死をも左右しかねない道具なのです。

やはり片道数時間かけてでは学校にも通えません。教育も無料ではないので、それだけが要素ではありませんが、それでも自転車があれば、少なくとも物理的には通学の可能性が出てきます。子どもたちや、その親にとって、教育の機会を与えてくれる可能性のある、将来への夢につながる道具でもあるのです。



医療体制の悪さも、日本人の想像を絶するものがあります。看護師が歩いて出向いて手当てするなどしていますが、距離が遠いので、それが出来る人数は、一日3人程度が限界だと言います。もし、自転車があれば、それが10人にもなるでしょう。この効率の向上は、現地の医療体制にとっては画期的なことです。

“Zambikes”では、自転車とその牽引するカートで構成された“Zambulance”も作っています。“Zambikes”は、言うまでも無くザンビアとバイク(自転車)を合わせた造語ですが、“Zambulance”は、ザンビアと救急車(ambulance)を合わせた造語です。

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つまり、救急搬送用の自転車です。日本で自転車の救急車なんて言ったら笑い話ですが、ザンビアでは大真面目です。日本のようにクルマの救急車による搬送体制が整っていませんし、タクシーの料金を払えるわけがない多くのザンピア人にとって、病院へ病人を連れて行くための重要な手段なのです。

それまでは牛が牽く荷車か、荷車を人が手で押していくしかありませんでした。遠い道のりを牛の歩む速さでは、救急とは言えません。スピード面でも格段の進歩であり、画期的なことです。事実上、病人や怪我人を素早く病院に運べる、ほとんど唯一の可能性が自転車なのです。

事実、2009年に供給された750台の自転車救急トレイラーによって、2010年には5万人の命が救われた計算になります。自転車はまさに生命線であり、それを提供することは、単にザンビアで雇用をもたらす産業という以上に、社会的にも非常に大きな意味があることなのです。

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“Zamcart”というのも作っています。こちらはネーミング的な趣向はありませんが、その重要度は勝るとも劣りません。 “Zambulance”と同じように、自転車で牽引するトレイラーですが、家畜以外に荷物を運ぶ手段を持たないザンビアの多くの人々にとっては、大きな意味を持ちます。

当然、水道はありませんから、飲み水や生活用水の運搬にも大きな威力を発揮します。水汲みは、女性や子どもの仕事となっていますが、水瓶を頭の上に載せて、歩いて運ぶしかなく、水場まで何時間もかかるような場合もあります。それだけで他のことが出来なくなります。

水汲みに何時間もかかっていたのが短縮され、また体力的にも軽減されれば、他の作業をして所得が増やせるかも知れません。子どもなら、学校に通える可能性が出てきます。水以外にも、これによって、初めて農作物を出荷する可能性が開けるかも知れません。やはり死活的に重要な意味を持つ道具になりうるのです。

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自転車の生産は、単に現地に仕事をもたらすだけではないわけです。雇用だけなら、他の工場でもいいですが、自転車を生産していることに意味があります。まさに、ただ自転車を組み立てているだけではなく、人々の命を救い、生活を向上させ、未来への可能性を開く事業と言えるでしょう。

“Zambikes”は、アフリカの支援をする非営利組織などと連携した社会的企業、ソーシャルビジネスです。2人のザンビア人と2人のアメリカ人が立ち上げた、まだ若い会社で、2007年に初めて300台が現地で販売されました。現在40名ほどのザンビア人たちが働いています。

ザンビアで最も優良な自転車とカスタマーサービスを提供すべく努めています。さらに、従業員は単に職を得ただけでなく、職業訓練を通して技術を習得し、将来は新たな工場を増やしていく過程に携わることになります。もちろん、“Zambikes”の利益は、そのための再投資に使われます。

Zambikes, www.new.zambikes.org工場を増やし、人々の生活を助ける自転車の供給を増やし、活動をザンビア全体に広げて行こうというわけです。同時に雇用を増やし、周辺産業も育てることで、貧困からの脱却の手助けを拡大していくことにもなります。ザンビアだけでなく、他のアフリカ諸国にも展開し、貢献していく日も遠くないかも知れません。

これまで、国連などを通じ、先進国が途上国に金銭や食料を援助する様々な途上国支援が行われてきました。しかし、必ずしも貧困から脱出に効果的とは言えませんでした。なぜなら、援助される側も援助されることに慣れてしまい、援助を待って何もせず、何も変わらないという状況があったのです。

それに比べ、現地の人に自立を促す途上国支援ということになります。利益を株主が得るのではなくコミュニティに還元する社会的な事業、ソーシャルビジネスの手法としても注目されます。竹の自転車によって、先進国の市場で先進国企業と競争し、利益をあげていこうという挑戦、アイディアも評価に値するでしょう。

自転車を買い換える際の検討ポイントに、途上国支援や社会貢献まで入れろと言うのではありません。しかし、もし竹製のフレームを視野に入れていたり、何か他とは違う独創的な自転車が欲しいと考えているのであれば、“Zambikes”を選択肢に入れてもいいでしょう。

他にも、海外の企業やNPOなどの中には、自転車の現地生産を通じてアフリカ各国の支援をしているところがあります。そうした活動を購買を通して支援する仕組みも増えています。同じ買い物が、購買先の選択によっては支援になります。何を買うかだけでなく、どこから買うかも検討すべき時代なのかも知れません。





この3連休は天気もよかったので、かなり走行距離が伸びました。けっこう日焼けもしましたが、陽気もよく、絶好の自転車日和でしたね。

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この記事へのコメント
こんばんは。

bamboo bike project、良いかもしれない。

竹は非常によく撓う。長距離を走るフレームに最も適している素材の1つだろう。

国内に多数存在する処分される放置自転車を再生して、それを必要としている国へ送ってあげると言う事は行わないのだろうか、日本は。
Posted by passerby Ω at October 12, 2011 00:41
passerby Ωさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
行われていますよ。日本でも、自治体やNPOなどが、よく途上国へ放置自転車を再生して送っています。
放置自転車の処分と一石二鳥ということで、以前から各地でたびたび行われていて、私も何度か記事に書いています。
ただ、善意を否定するわけではないのですが、放置自転車の処分とばかりに、状態の悪いものが送られたりして、問題となることもあるようです。
日本仕様のママチャリなので、現地の道路事情によっては使い勝手が悪く、結果として活かせないようなケースもあると言います。
過去には、自治体の首長が恩着せがましく、こちらではゴミだけど、そちらでは有難いだろうなどと、良識を疑うような発言をして物議をかもしたこともあります。
捨てるよりは、と途上国に送るのもわかりますが、途上国の人々の自立を助ける、“Zambikes”のような支援とは、かなり趣が違うものなのは間違いないようです。
Posted by cycleroad at October 12, 2011 22:13
いつも目から鱗のような情報をありがとうございます。

「サイクルロード」さんは僕の「お気に入りブログ」のトップに位置します。

竹でできた自転車とは驚きです。
同時に拍手・拍手。

竹は成長が早く、いろんな物に利用出来ますね。
しかし、竹林は手入れをする若者がいないため放置状態です。

連休はサイクリング日よりでしたが、靄のような埃のような空で、喘息ぎみであまり楽しめませんでした。

サイクリストの花粉対策を特集していただけたらと思います。
Posted by 二浪独河 at October 13, 2011 11:32
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
最近の自転車のフレームは、カーボンだチタンだと、先進的な素材が使われていますから、竹と聞くと、ずいぶんギャップを感じますが、意外な性能を発揮するようです。
日本でも昔はいろいろなものに使われていた竹ですが、今では多くのものがプラスチックなどの工業材料に置き換わってしまい、身の回りにも少なくなってしまいました。
竹の使い道が少なくなり、おっしゃるように竹林が拡大してしまうなど、困っている地域もあるようですね。
花粉ですか。来春は例年より大幅に飛散量が少なくなると予測されているようです。花粉症の方には朗報ですね。
機会があれば、花粉の話題にも触れてみたいと思います。
お気に入りいただき、光栄です。
Posted by cycleroad at October 13, 2011 23:37
ZambikesJapanです。

素晴らしい記事をありがとうございます。

ザンバイクス バンブーバイクですが、日本でも2012年の1月より発売できるようになりました。

また本物を見ていただけましたら幸いです。

http://www.facebook.com/ZambikesJapan

Posted by Zambikes Japan at December 08, 2011 22:39
Zambikes Japanさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いよいよ日本上陸ですか。おめでとうございます。
来年発売が始まったら、私もぜひ実際に実物を見てみたいと思います。
日本でも、多くの人が、Zambikesのことを知るようになるといいですね。
Posted by cycleroad at December 09, 2011 23:39
 
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