イヤフォンをしての自転車走行が取り締まられています。
自転車に乗る際、イヤフォン(ヘッドフォン)をして音楽などを聴きながら走行するのは、危険な行為として禁止されています。最近、ノーブレーキ・ピストや信号無視などが問題として目立っていますが、このイヤフォン走行も取り締まりの対象となっています。
視覚だけでは捉えられない側方や後方、あるいは死角からの音の情報は安全上、実はきわめて重要であり、イヤフォンによって聞こえないと、大きな危険にさらされることになります。車両に乗る以上、周囲に注意を払うのは当然のことですが、自転車を車両と言うより、歩く延長くらいの感覚なのが問題です。
初代のウォークマンが発売されたのが1979年と言いますから、ものごころついた頃には何らかの携帯音楽プレーヤーがあった世代も多くなっています。外出時や移動時に音楽を聴く、あるいは音楽を持ち歩くのが日常的なこととなっている人も多いに違いありません。
iPodが発売され、それまでのウォークマンに代わる携帯音楽プレーヤーの代名詞のようになって以降、街中でイヤフォンをする人が一段と増えました。フラッシュメモリなどの内蔵記憶メディアとなったことで、重さや曲数、電池の持続時間など、より便利になったことも大きな要因でしょう。
ウォークマンの時代には、機器も今より大きく、CDやMDなどのメディアを交換するスタイルでした。それが、ネット配信の普及で音楽の流通が変わり、いつでもどこでも入手出来るようになりました。大容量の内蔵メディアで大量の曲を持ち出せるようになるなど、音楽を聴くスタイルも変わりました。
CDの前はカセットテープでしたし、カセット式のウォークマンが発売される前は、大きなラジカセを持って出かける人もいたことを思えば、まさに隔世の感があります。音楽を記録する方法がアナログで、音楽を買うのはLPレコードという時代でした。
その当時はオーディオに凝ったり、LPレコードをコレクションしていた人も多いと思いますが、いまや音楽をレコードで聴くなんて、ごく一部のマニアだけのものになってしまいました。街の電器屋などへ行っても、レコードプレーヤーが売られているのを見ることはありません。
ところで、そんな懐かしのLPレコードを持っているのに、再生するフレーヤーが入手出来なくなったから..というわけでもないでしょうが、なんと自転車を使ってレコードプレーヤーを作ってしまった人がいます。Merel Sloother さん、 Liat Azulay さん、そして Pieter Frank de Jong さんの3人です。
自転車のタイヤをプレーヤーのターンテーブルに見立て、走行しながらレコードを再生してしまおうというものです。レコード盤は垂直方向に回転します。確かに回転するという点では共通しますが、おそらくLPレコードが全盛だった頃にも無かった発想ではないでしょうか。
プレーヤーの音を増幅するためのアンプ部分に9V、乾電池6本分ほどの電気は使っていますが、ターンテーブルを回転させるのは、もちろんペダルです。つまり、人力式のレコードプレーヤーということになります。ホーンもついていますし、蓄音機と言ったほうが近いかもしれません。
その名も“
Feats Per Minute ”です。何かの名前からとったようですが、音楽のテンポを表す一分間の拍数という単位、BPM(Beats Per Minute)ともかけているのでしょう。ペダルをこいで音楽のテンポを一定にさせるのは、まさに妙技、なかなか出来ない芸当、離れ業というわけです。
リムの「振れとり」を綿密にやる必要がありそうですが、それでも針を接触させ、かつ音とびさせないようにするのは、至難の業だったようです。また当然ながら、レコード盤が交換できなければなりませんから、ステーやフォークの部分は片側だけで支える形に改造しなければならず、いろいろと苦労があったようです。
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路面の凹凸の振動も伝わるでしょうし、針でレコードの溝をたどるのは、なかなか大変そうです。3人のオランダ人アーティストの作品、この“Feats Per Minute”は、まだ未完ということなので、実用性について多少の疑問が残るのは仕方のないところでしょう。
後ろだけでも良さそうなものですが、なぜか、わざわざ前後輪にプレーヤーを取り付けています。写真では確認出来ませんが、固定ギヤにしておけば、乗ってタイヤを前後に回転させることで、2つのターンテーブルを使った、DJのスクラッチのような演奏も可能なのかも知れません(笑)。
ちなみに、おそらく20インチくらいのタイヤだと思いますので、プレーヤーとしての回転数が標準的な33と1/3回転だとすると、外径から計算しておよそ時速1キロでないと、テンポが合わないことになります。45回転で時速1.35キロ、78回転でも時速2.34キロと、相当遅いスピードでないと合いません。
仮に700Cのタイヤに装着したとしても、この1.3倍程度で、たいして速度は変わりません。これで音楽を再生しながら走行する場合、歩く速度より遅くなくてはならないことになります。これなら音楽を聴きながら走行しても、イヤフォンでないばかりか、速度的にも限りなく安全なのは間違いないでしょう(笑)。
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それにしても、面白いことを考える人がいるものです。もし、世の中の音楽がアナログのままで、デジタルにならなかったとしたら、自転車に乗りながら音楽を聴くためには、こんな自転車が必要になっていたかも知れません。皆ゆっくり、一定の速度で走行していたかも知れないと想像をすると笑えます。
しかし幸か不幸か、現実には音楽はデジタルになり、半導体技術が進歩して、インターネットやモバイルコンピューティングも普及しました。世は情報社会となり、イヤフォン走行だけでなく、自転車に乗っている時間を利用してメールを打ったり、ウェブを確認したりしている人までいます。
世の中が飛躍的に便利になり、音楽が手軽に持ち運んで楽しめるようになっただけでなく、たくさんの情報やコンテンツが氾濫して、生活が忙しく、時間が足りなくなっている部分もありそうです。その中で自転車に乗っている時間は「空き時間」、「手持ち無沙汰な時間」と感じる人が増えているのかも知れません。
しかし、実際にはそれが事故の原因となっており、たかがイヤフォン走行と侮るべきではありません。取り締まりが強化されているからというより、被害者にも加害者にもならないため、厳に慎むべきです。進化して便利になった機器を使えば使うほど、路上での危険は増す面があることに注意すべきです。
九州電力も相当腐っていますね。こういう部分が組織のモラルを崩壊させ、事故の伏線にもなりかねない、一番の問題ではないでしょうか。
この間TVで見た歩きながらの携帯、スマホと似たような感じがしますね。別のところへ気がいってると危ないのに---。正直言うと10年くらい前は携帯ラジオを聞きながら自転車に乗ってましたが(当時はママチャリ)、五感で季節を感じることが分かるととてもながら運転する気がなくなりました。単なる移動手段としてだけじゃもったいないのに、自転車は。