October 25, 2011

便利になるぶん危険は増える

イヤフォンをしての自転車走行が取り締まられています。


自転車に乗る際、イヤフォン(ヘッドフォン)をして音楽などを聴きながら走行するのは、危険な行為として禁止されています。最近、ノーブレーキ・ピストや信号無視などが問題として目立っていますが、このイヤフォン走行も取り締まりの対象となっています。

一斉取り締まり視覚だけでは捉えられない側方や後方、あるいは死角からの音の情報は安全上、実はきわめて重要であり、イヤフォンによって聞こえないと、大きな危険にさらされることになります。車両に乗る以上、周囲に注意を払うのは当然のことですが、自転車を車両と言うより、歩く延長くらいの感覚なのが問題です。

初代のウォークマンが発売されたのが1979年と言いますから、ものごころついた頃には何らかの携帯音楽プレーヤーがあった世代も多くなっています。外出時や移動時に音楽を聴く、あるいは音楽を持ち歩くのが日常的なこととなっている人も多いに違いありません。

iPodが発売され、それまでのウォークマンに代わる携帯音楽プレーヤーの代名詞のようになって以降、街中でイヤフォンをする人が一段と増えました。フラッシュメモリなどの内蔵記憶メディアとなったことで、重さや曲数、電池の持続時間など、より便利になったことも大きな要因でしょう。

自転車も車ウォークマンの時代には、機器も今より大きく、CDやMDなどのメディアを交換するスタイルでした。それが、ネット配信の普及で音楽の流通が変わり、いつでもどこでも入手出来るようになりました。大容量の内蔵メディアで大量の曲を持ち出せるようになるなど、音楽を聴くスタイルも変わりました。

CDの前はカセットテープでしたし、カセット式のウォークマンが発売される前は、大きなラジカセを持って出かける人もいたことを思えば、まさに隔世の感があります。音楽を記録する方法がアナログで、音楽を買うのはLPレコードという時代でした。

その当時はオーディオに凝ったり、LPレコードをコレクションしていた人も多いと思いますが、いまや音楽をレコードで聴くなんて、ごく一部のマニアだけのものになってしまいました。街の電器屋などへ行っても、レコードプレーヤーが売られているのを見ることはありません。

ところで、そんな懐かしのLPレコードを持っているのに、再生するフレーヤーが入手出来なくなったから..というわけでもないでしょうが、なんと自転車を使ってレコードプレーヤーを作ってしまった人がいます。Merel Sloother さん、 Liat Azulay さん、そして Pieter Frank de Jong さんの3人です。

Feats Per Minute, www.featsperminute.com

自転車のタイヤをプレーヤーのターンテーブルに見立て、走行しながらレコードを再生してしまおうというものです。レコード盤は垂直方向に回転します。確かに回転するという点では共通しますが、おそらくLPレコードが全盛だった頃にも無かった発想ではないでしょうか。

プレーヤーの音を増幅するためのアンプ部分に9V、乾電池6本分ほどの電気は使っていますが、ターンテーブルを回転させるのは、もちろんペダルです。つまり、人力式のレコードプレーヤーということになります。ホーンもついていますし、蓄音機と言ったほうが近いかもしれません。

Feats Per Minute, www.featsperminute.comFeats Per Minute, www.featsperminute.com

その名も“Feats Per Minute”です。何かの名前からとったようですが、音楽のテンポを表す一分間の拍数という単位、BPM(Beats Per Minute)ともかけているのでしょう。ペダルをこいで音楽のテンポを一定にさせるのは、まさに妙技、なかなか出来ない芸当、離れ業というわけです。

リムの「振れとり」を綿密にやる必要がありそうですが、それでも針を接触させ、かつ音とびさせないようにするのは、至難の業だったようです。また当然ながら、レコード盤が交換できなければなりませんから、ステーやフォークの部分は片側だけで支える形に改造しなければならず、いろいろと苦労があったようです。



路面の凹凸の振動も伝わるでしょうし、針でレコードの溝をたどるのは、なかなか大変そうです。3人のオランダ人アーティストの作品、この“Feats Per Minute”は、まだ未完ということなので、実用性について多少の疑問が残るのは仕方のないところでしょう。

後ろだけでも良さそうなものですが、なぜか、わざわざ前後輪にプレーヤーを取り付けています。写真では確認出来ませんが、固定ギヤにしておけば、乗ってタイヤを前後に回転させることで、2つのターンテーブルを使った、DJのスクラッチのような演奏も可能なのかも知れません(笑)。

Feats Per Minute, www.featsperminute.comFeats Per Minute, www.featsperminute.com

ちなみに、おそらく20インチくらいのタイヤだと思いますので、プレーヤーとしての回転数が標準的な33と1/3回転だとすると、外径から計算しておよそ時速1キロでないと、テンポが合わないことになります。45回転で時速1.35キロ、78回転でも時速2.34キロと、相当遅いスピードでないと合いません。

仮に700Cのタイヤに装着したとしても、この1.3倍程度で、たいして速度は変わりません。これで音楽を再生しながら走行する場合、歩く速度より遅くなくてはならないことになります。これなら音楽を聴きながら走行しても、イヤフォンでないばかりか、速度的にも限りなく安全なのは間違いないでしょう(笑)。




それにしても、面白いことを考える人がいるものです。もし、世の中の音楽がアナログのままで、デジタルにならなかったとしたら、自転車に乗りながら音楽を聴くためには、こんな自転車が必要になっていたかも知れません。皆ゆっくり、一定の速度で走行していたかも知れないと想像をすると笑えます。

違反自転車取り締まりしかし幸か不幸か、現実には音楽はデジタルになり、半導体技術が進歩して、インターネットやモバイルコンピューティングも普及しました。世は情報社会となり、イヤフォン走行だけでなく、自転車に乗っている時間を利用してメールを打ったり、ウェブを確認したりしている人までいます。

世の中が飛躍的に便利になり、音楽が手軽に持ち運んで楽しめるようになっただけでなく、たくさんの情報やコンテンツが氾濫して、生活が忙しく、時間が足りなくなっている部分もありそうです。その中で自転車に乗っている時間は「空き時間」、「手持ち無沙汰な時間」と感じる人が増えているのかも知れません。

しかし、実際にはそれが事故の原因となっており、たかがイヤフォン走行と侮るべきではありません。取り締まりが強化されているからというより、被害者にも加害者にもならないため、厳に慎むべきです。進化して便利になった機器を使えば使うほど、路上での危険は増す面があることに注意すべきです。





九州電力も相当腐っていますね。こういう部分が組織のモラルを崩壊させ、事故の伏線にもなりかねない、一番の問題ではないでしょうか。

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この記事へのコメント
この間TVで見た歩きながらの携帯、スマホと似たような感じがしますね。別のところへ気がいってると危ないのに---。正直言うと10年くらい前は携帯ラジオを聞きながら自転車に乗ってましたが(当時はママチャリ)、五感で季節を感じることが分かるととてもながら運転する気がなくなりました。単なる移動手段としてだけじゃもったいないのに、自転車は。
Posted by kuraji at October 26, 2011 22:51
kurajiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、歩きながらだけでなく、自転車に乗りながらの携帯やスマホも問題になっていますが、イヤフォン走行も同じように危険があります。
おっしゃるとおりだと思います。自転車に乗っている時間を楽しむならば、こうした問題も起きないでしょう。ただ残念ながら、単なる移動手段としてしか見てない人も多いということでしょうね。
Posted by cycleroad at October 27, 2011 23:29
日頃、ランニングを楽しんでいます。
最近までは音楽を聴きながら、走っていましたが、後ろから追い越していく自転車にびっくりしたことから、危険を判断して、音楽を聴くのをやめています。

先日、安全な公園内のランニングコースで久しぶりに音楽を聴いたところ、周りの音が聞こえない・聞こえにくいことにびっくりしました。

どのくらいのボリュームで聴いているかにもよりますが、ランニングよりもはるかにスピードの出る自転車では危険度はもっと増すと思います。

かくいう私も昔ウォークマン(カセットタイプ)を聴きながら自転車を乗っていました。カセットテープを慎重に選んでそれをずっと自転車に乗っている間、繰り返し聴いていたのを思い出します。
Posted by マルコ at October 28, 2011 12:47
マルコさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
最近はイヤフォンをしながら、ランニングをしている人も見ます。ランニングでは禁止されているわけではありませんが、危険が高まるのは同じなのでしょうね。
イヤフォンをしたまま走ったり、自転車に乗ったりなんて、とても出来ないという人もいるようです。そのへんは、個人差が大きいということなのでしょうか。
物理的に聞こえないということもあると思いますが、音楽に気をとられて周囲への注意が散漫になるということも大きいのではないかと思います。
確かに、昔はせいぜい代えのメディアを用意するいくしかなく、曲数的には限られていましたね。それを思えば、今は便利になったものです。
ただ、その進歩が逆に仇とならないといいなと思います。
Posted by cycleroad at October 28, 2011 23:51
たしかに自転車や歩行の際のイヤホンヘッドホン移動は危険であり、私も検挙には賛成です。
ですが、それは、窓を閉めきってのカーオーディオ自動車にも言えるのではないでしょうか。
遮音性について、なんらの差はありません。
危険性においては、自転車や歩行者のそれより、自動車のカーオーディオ使用は、数百倍は危険なのですから。
他者への危険性、遮音性という観点で考えれば、自転車やバイクのヘッドホンイヤホン使用を摘発、検挙するのであれば、他者に対して自転車とは比較にならないほど危険な自動車による、窓を閉めきってのカーオーディオ使用は、その何十倍も厳しく取り締まられなければならないものでしょう。

公正、公平に考えれば、イヤホンヘッドホン自転車を取り締まるのであれば、
遮音性においてまったく差がなく、遥かに交通強者である自動車の窓閉めカーオーディオ使用は許されてはならないはずです。
日本国内において、自動車により、年間5000人近い人命が奪われています。

交通事故遺族団体等は、その辺りについても議員等に要請を続けるべきですし、私も要請していくものです。
Posted by 佐藤 at October 30, 2011 07:00
佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
オーディオで周囲の音が聞こえない状態のクルマの危険性についても同じことが言えるでしょうね。
ただ、自転車と比べると、走行空間がしっかり整備され、確保されているなど、状況的には有利で、恵まれている面はあるのかも知れません。
クルマの事故原因との関連については、よく知らないので、数百倍がどうかはわかりませんが、もちろん危険があることについては間違いないと思います。
自転車を取り締まるならクルマも取り締まれと言うつもりはありませんが、外からわかるほどの音量のクルマなど、もっと取り締まっていいと思います。外部にスピーカーを向けているクルマもありますし..。
ただ、外から音量がわからない場合、イヤフォンと違い、違法状態が現場で認知しにくいという面があり、実効性のある取締りが難しいのはあるかも知れませんね。
Posted by cycleroad at October 30, 2011 23:21
 
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