February 04, 2012

自転車で置き換えるメリット

先日、道を歩いていた時のことです。


ふと見ると、前方に大手宅配業者のトラックが停まっています。その停まっている場所は、なんと歩道の上です。車道は片側2車線あり、他に駐停車している車両はなく、駐車は禁止ですが充分停車するスペースはあります。さほど交通量が多いわけでもないのに、何故か車体を完全に歩道上に乗り上げて停めています。

そこへ、向こうからご婦人がママチャリで歩道を走行して来ました。歩道上のトラックと建物の間を通り抜けようとした時、こちらから向こうに歩いていた子供が、同じように建物との間を通ろうと、車道寄りから急にコースを変えたのです。婦人からすれば、全くの死角から子供が飛び出す形です。

文章にすると長いですが、ほんの一瞬の出来事です。少し距離があったため、私は両方見えていましたが、声をかける間もありませんでした。でも幸いなことに、寸でのところでお互いに避けることが出来、無事でした。事故にならなくて良かったですが、見ていた私もヒヤリとしました。

イメージ写真。Photo by Mytho88,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.もし事故が起きていれば、女性は責任を免れなかったでしょう。しかし、歩道に死角を作り事故を誘発したのは、堂々と歩道上に駐車していたトラックであるのは、誰も異論のないところです。単なる駐車禁止よりもタチの悪い道交法違反と言って差し支えないと思います。

ちょうど縁石が低くなっていて、歩道に乗り上げやすい場所でした。歩道に完全に乗り上げても、まだ人が通れるだけの余地もあります。しかし、荷降ろしをするなら、どう考えても車道に停めるべきでしょう。車道はガラ空きなのに、わざわざ歩道に停める理由がわかりません。

たまたま付近に他の駐車車両が全く無く、一台停めることでクルマの流れを阻害したくないと考えたのか、歩行者よりも他のクルマの邪魔にならないよう、他のドライバーに対して配慮したのかも知れません。あるいは、何の気なしに、ちょうど停めやすいスペースがあったから停めたということでしょうか。

歩道に乗り上げて停まっているトラックなど、ままある光景です。普通ならそのまま通り過ぎるだけですが、危うく事故になりかねなかったシーンを目撃したことで、傍若無人な停め方に、その大手宅配業者に対する印象が、すこぶる悪くなったのは否めません。

トラックの全てが悪いなどと言うつもりはありません。宅配業者に限らず、トラックによる物流、配送は私たちの生活を支えています。近年、テレビやネットの通販で商品を購入したり、ネットオークションやネットスーパーなどのサービスで、配送業者のお世話になる場面が多くなっているのも間違いないと思います。

街中だけでなく、住宅街にも配送業者のトラックが走り回っています。おそらく多くのドライバーは善良で、住民や歩行者に対しても注意深く配慮するよう、会社からも指導されているに違いありません。しかし、時々傍若無人だったり、非常識だったり、不愉快なトラックを見かけることもあるのではないでしょうか。

例えば、急いでいるのか住宅街をスピードを出して走っていたり、歩行者のスレスレを追い抜くなど、その乱暴な運転に危険を感じることがあります。時間調整なのか休憩なのか、公園の脇に停車し、長時間アイドリングしたままなので、公園で遊んでいる子供が、延々と排気ガスを吸わされていたりします。

配送中だからとは言え、交差点付近などに無造作に駐車し、渋滞の原因や交通事故を誘発する死角を作っていることも少なくないでしょう。もちろん気を使っている宅配業者も多いとは思いますが、そのほかにもトラックが気になるケースがあるのではないでしょうか。

交差点で自転車を左折巻き込みする事故を起こすのも、構造上、死角が出来やすいトラックが多くなっています。歩いていても、交差点を強引に曲がってくるトラックに肝を冷やしたりすることもあるのではないでしょうか。トラックにいい印象がない人も多いかも知れません。

悪いのは業者ではなく、そのトラックのドライバーです。たまたま悪いドライバーだったのでしょう。しかし、トラックの車体には宅配業者だったり、流通業者だったり、メーカーだったりのロゴが大きく入っています。その会社や商品、ブランドなどのイメージまで悪くなってしまう場合もあるかも知れません。

逆に言うと、会社にとってはリスクということになります。ロゴが入っていても、運行しているのは別会社や委託先の運送業者である場合も多いと思いますか、その会社や商品、ブランドなどの看板を背負っているトラックドライバーの軽率な行為は、その会社のイメージダウンにつながりかねないリスクと言えるでしょう。

今どきは、いろいろな商品がエコとか環境に優しいといったイメージを打ち出しています。温暖化ガス削減に取り組んでいますなどとアピールしているところもあります。そんな商品を運んでいるのが、排ガスを撒き散らすトラックというのは、そもそもイメージダウンというものもあるでしょう。

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企業にとって、そうしたリスクを回避する選択肢がアメリカ・オレゴン州、ポートランドにはあります。ここを本拠地として営業する“B-Line”は、自転車による配送会社です。トラックの代わりに荷台付きの電動アシストの3輪車、トライクを使ってデリバリーを行っている運送会社なのです。



クライアントは、ポートランドのはずれにある“B-Line”の倉庫まで従来通りトラックなどで荷物を運びこみます。ここから“B-Line”は、ポートランド市内に自転車で配送します。つまり担当するのは、物流の最後の区間、受取人に直接届ける部分だけです。デリバリーだけでなく、ピックアップ、集荷も引き受けています。

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自転車による配達なので小回りがききます。クルマは進入禁止の商店街などに入っていける場合も少なくありません。細い道や通行規制の多い街中などでは、大いに機動力を発揮します。そして何より、排気ガスを出さず、停まっていてもトラックより邪魔になりません。



渋滞にも強く、長い距離を運ぶわけてはないので、配達するスピード的にも遜色ありません。電動アシスト付きなので300キロ近い積載能力があります。市街地の駐車しにくい場所でも活躍します。アメリカでも有数の自転車にフレンドリーな都市、ポートランドならではの企業と言えるでしょう。

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“B-Line”は、トラックの購入費がかかりません。燃料費も不要、税金や諸経費などの維持費もトラックと比べて大幅に安いので、運賃を安く出来ます。場合によっては、トラックの運送業者に委託するより、3割から5割も節約できるケースがあると言います。

自転車が歩行者と事故を起こさないとは言いませんが、トラックよりスピードやパワーも小さいぶん、事故も起きにくく、起きても事故は小さいでしょう。道に停まっていても、トラックに比べれば、相対的に通行の邪魔になりにくいのも間違いありません。

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エコとか、環境負荷が低いといった商品のイメージを壊すこともなく、それどころか“B-Line”を使うことで、温暖化ガスの削減に貢献しているとアピールすることだって出来ます。トラックによる配送より、自転車で人力で届けるほうが、消費者の印象が良くなるであろうことは容易に想像がつきます。

“B-Line”のトライクのカーゴ部分に広告を出すことも出来ます。いずれにしても、トラックと比べて、消費者に悪いイメージをもたれにくいのは明らかです。荷物がトライクでも運べるものであり、しかも運賃が安くなるのであれば、使わない手はありません。

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“B-Line”は、自転車を使うことで、輸送における環境負荷を減らすと共に、都市の渋滞や危険を減らし、街を住みやすくしたいと考えています。地元の企業の業務をサポートすると同時に、ブルーカラーでもホワイトカラーでもない職、いわゆる「グリーンカラー」の雇用を生み出しています。

日本でも、一部の宅配業者が自転車を配送に使っています。しかし、自前で自転車による配送を組織出来るのは一部の大手に限られます。“B-Line”は、それが出来ない業者が共同で使うことが出来ます。荷物の量の少ないところでも、他のクライアントとシェアすれば、自転車による配送が実現できるわけです。

B-Line, b-linepdx.comなかなかユニークなビジネスモデルだと思います。この方法ならば、一つの業者では配達する荷物の量が限られるため、単独で自転車配送を導入すると割高になってしまう住宅街でも、多くの業者が相乗りする形で、自転車による配送を実現できる可能性があります。

企業や配送業者は、自転車を使うことで環境への貢献をアピールし、イメージアップにつなげることが出来ます。同時に、トラックによる配送で印象を悪くしたり、市民に反感をもたれるリスクを軽減出来るわけです。一方、市民は、トラックよりもトライクが走り回るほうが、より危険が少なくなります。

トラックから自転車になるぶん、排気ガス等も減り、街の環境が向上することになります。双方にとってメリットがあるわけです。トラックを全て排除しろなどと言うつもりはありませんが、自転車に出来る部分は、自転車でもいいでしょう。このスタイル、日本でも導入を検討してみる余地があるのではないでしょうか。





野田総理は消費税10%は仕方が無いみたいな雰囲気を作ろうとしてますが、お金が無いというより使いすぎですよね。まず税収の倍も使うような予算を見直さない限り、5%くらい上げても焼け石に水でしょう。

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この記事へのコメント
歩道に駐車する宅配さんには理解ができません。
が、車道を走る自転車からすれば有り難いことです・・・。

先日、自転車で車道を走っていて、横を追い越していった大型トラックに吹き飛ばされそうになりました。
その後の風で今度は車道に吸い込まれそうになって死ぬ思いをしました。

やっぱり、優先順位は「人」「自転車」「車」の順であるべきだと思います。

「車」優先で道路を造ってきた我が国ニッポンが大きく変わらなければいけませんね。

Posted by 二浪独河 at February 06, 2012 12:02
空気嫁といわれかねないかも知れませんが、今回の事例の場合、トラックドライバーの立場に全面的に賛同します。

車道を駐停車で1車線ふさげば、必ずといっていいほど渋滞が発生しますし、路側帯を走行する(車道ではない)自転車にとって、迂回を余儀なくされますが、歩道に乗り上げて駐車しても、渋滞になることはまずありえません。

とにかく歩行者優遇がすでに行き過ぎていて、深刻な利便性の低下や非効率をもたらし、ひいては我が国の国際競争力の低下を招いているように思います。
Posted by ほのおちゃん at February 06, 2012 22:05
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
左折巻き込みもそうですが、歩行者や自転車に対する注意の足りないトラックも見ますね。
その運転が事故につながり、重大な結果に結びつくという想像力の欠如した若くて未熟なドライバーも存在するのは間違いありません。
弱者保護の原則徹底はもちろんですが、それをシステム的にも担保するような道路や、法令、取締りといったものも考えていく必要があると思いますね。
Posted by cycleroad at February 06, 2012 23:21
ほのおちゃんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
この場合、自転車の歩道走行も問題なわけですが、だからと言って、歩道に駐車するのを認めるわけにもいかないでしょう。
もちろん、デリバリーのためとは言え、駐車違反の車道に駐車してクルマを離れるのも違反であり、渋滞をひきおこす可能性があります。
歩道部分に駐車できるくらい幅があって、法令を別にすれば、そこに停めるのが一番いいということであれば、歩道を削って駐車帯、あるいは荷捌き場所をつくり、自転車は車道走行を徹底するなど、まず道路の構造を見直す必要があるということになるかも知れませんね。
Posted by cycleroad at February 06, 2012 23:38
こんにちわ。
私の地域では、乗用車の歩道駐車は、半ば常識ですね。民家の前の歩道に停まっているのをよく見かけます。パトカーがとおりかかっても、何も言いませんし。
歩道と言えば、混雑時は、歩道を通行する軽自動車も結構います。信号待ちをバイパスして、左折していくのをよく見かけます。むしろ、宅配サービスのバンの方が、ルールを守っています。
これらは、広い歩道に歩行者がほぼいないから成り立っているわけで、通行量に見合った幅での整備か必要と思います。
少し前のスレッドになりますが、歩道上の駐輪スペースの入り口は、(モデルでは)歩道側にあるのですね。車道走行を原則とするなら、車道側に入り口を作ってもらえたいものです。
Posted by ひでさん at February 07, 2012 17:27
今回の記事興味深く読みました。私も仕事で軽バンを使用していて仕事道具の搬出・搬入などで路上で行うことがあります。極端に道が狭い・交差点に近いなど不都合が生じる場合は多少離れた場所でも安全と思える場所での停車を心がけています。最近では初めて行く場所であってもグーグルマップ・ストリートビューなどを使い事前調査して作業の安全を高めるよう心がけています。宅配業者であれば担当エリアの状況は把握しているはずなので安全意識の問題と言えるでしょう。コストとの兼ね合いで安全性が犠牲になるのは許されるものでは有りませんし企業のモラルも問われるのではないでしょうか。住宅地内での車の速度は一様に高く感じられます 制限速度内で走行していると車間を詰められ煽られることが多い 自転車のルール違反が多く取り上げられていますが自動車・自転車・歩行者全て含めてルール・モラルの再考をすべきではないかと思います。
Posted by kuma406 at February 07, 2012 17:41
ひでさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、ありふれた光景かも知れませんね。ただトラックとなると、死角も大きくなり、事故の誘因になりかねないのが問題だと思います。
歩道走行する軽自動車ですか。私も全く見たことが無いわけではありませんが、よく見ますか。地域によっても、いろいろと状況は違うのでしょう。
通行する歩行者がいないのに広い歩道とか、現実に即していない道路整備という点に問題があるのは、その通りでしょうね。
Posted by cycleroad at February 07, 2012 23:43
kuma406さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、あらかじめ決まっているのであれば、ストリートビューを使って事前に調査するという方法もありますね。
もちろん、歩行者に配慮して搬出・搬入されている方も多いのは承知しています。現状の道路構造、整備状況からして仕方が無い部分もありますし、細かな違反をも咎めたり、全てのドライバーが悪いなどと言うつもりはありません。
確かに宅配業者は、担当地域があって、地域の事情には詳しいでしょうから、いつもの習慣で歩道上に停車していたのかも知れませんね。
住宅地でのクルマの速度は、歩いていると確かに速く感じます。おっしゃるように、ルールやモラルがなし崩しになっており、見直す必要があるのかも知れません。
Posted by cycleroad at February 07, 2012 23:55
 2月7日読売新聞の記事、これでも本当に安全?自転車向け「ナビマーク」に、わが社関連団体の車体の一部が映っていました。車体の一部ですが、子どもの玩具にもなっている車ですし、マークが消されていなかったし、少しトラックに詳しい人なら何の車か一目瞭然です。私はその車の運転手を20年以上続けています。運転手と作業する人は別な団体な場合が多いです。作業する人が歩道に上がれと命じれば、その指示に従わないと解雇されます。昨日の仕事でも車を全部歩道に乗り上げたのが数回、車後部だけを乗り上げたのが何十回と有りました。
 私も歩道に乗り上げるのが良いとは思っていません。大規模ビル建設する時に、納品する駐車場の確保必要ですね。その点ではcircleroad様と意見は同じです。
 現状では運転手一人だけの判断で歩道作業は止められないのは、分かって下さい。やむを得ず歩道に乗る時は細心の注意を払っています。
Posted by 匿名希望 at February 08, 2012 05:26
匿名希望さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
たしかに、ドライバーは荷主や納品先に指示されて逆らえない場合も当然あるでしょうね。
その場合は指示した人の責任であり、ドライバーの立場が弱いものだということも、よくわかります。
私も、当然ながら全てのトラックのドライバーが悪いなどとは思っていませんし、周囲に配慮しながら作業したり走行しているトラックもたくさん見ます。
杓子定規に、ちょっとの違反でも許せないなどと批難するつもりも、毛頭ありません。
ただ、私が目にしたケースは、普通の宅配業者でしたし、配達先はマンションのようでした。会社も歩道への駐車を指示しているとは考えにくいと思います。
たまたま、悲惨な事故につながりかねないと思わせる光景を目撃したに過ぎませんが、モラルの低いドライバーも存在していることは否定できないと思います。
今回は、むしろ後半の自転車運送を紹介するために、比較として例をあげたのですが、前半部分ばかりにコメントが集中してしまいました(笑)。
決してトラックのドライバーを槍玉にあげるような意図はなく、善良なドライバーも大勢いることは充分承知しています。
一部の不心得者によって非難されるのは、自転車乗りもそうですが、トラックのドライバーも同じと言えるかも知れません。
いずれにせよ、稚拙な文章のせいで、結果として匿名希望さんのようなコメントをさせることになって申し訳ありません。
Posted by cycleroad at February 08, 2012 23:30
うちの近所のクロネコヤマトは電動アシスト自転車でリアカーを引っ張って配達してますよ。
Posted by yasu at February 17, 2012 12:43
yasuさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
最初は都心部だけでしたが、最近は広がっているようですね。
ただ、ヤマトは自社のトラックの置き換えというだけで、この“B-Line”とは意図するものが全く違うでしょう。
Posted by cycleroad at February 17, 2012 23:56
ここで働きてぇなぁ。。。
Posted by fusaos at July 29, 2013 11:24
fusaosさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
自転車好きには、いい仕事ですよね。
Posted by cycleroad at July 30, 2013 23:01
 
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