February 13, 2012

荷物を運ぶ時だけ背中を押す

相変わらず、電動アシスト自転車の販売が好調です。


電動アシスト自転車の出荷台数は、すでに2008年に原付バイクの年間台数を抜き、2010年には外国製を除くオートバイ全体の出荷台数をも上回りました。2011年の電動アシスト自転車の売り上げは、更に前年を大きく上回る売り上げを記録しています。

特に3月以降は、前年比で数十%増から2倍近くと大きく売り上げを伸ばしており、震災が電動アシスト自転車の市場にも大きく影響を及ぼしたことがわかります。本来は寒さで販売が衰える12月でさえ前年比1.5倍近く売れたと言います。

電動アシスト自転車には、私も何度か試乗したことがあります。坂道でもペダルが軽く、なるほど売れるのもよくわかります。ただ、買い物などに使うママチャリ代わりに、坂の多い場所などで使う分にはいいでしょうが、スポーツバイクに乗るような趣味のサイクリストには、あまり興味のない分野でしょう。

最近はスタイリッシュなものも出てきたようですが、普通のロードバイクなどのほうが、よっぽどスピードは出ます。日本では法律でアシスト比率などが細かく決められており、時速24キロになるとアシスト力はゼロになります。それ以上の速度では、車体が重いぶん、不利なだけです。

多少伸びたとは言え、バッテリー容量からアシストが働く航続距離も限られてしまいます。近場の買い物くらいならともかく、サイクリストが普通に一日に走るような走行距離の、おそらく半分もバッテリーは持たないでしょう。バッテリーが切れたら、ただの重くて遅い自転車になってしまいます。

ちなみに、下の動画、なんと8千ワットものモーターを乗せた電動アシスト自転車(リカンベント)をつくった人がいます。加速力抜群で、時速70キロ以上のスピードが出るそうです。ペダルもこいでいますが、もはや電動アシストと言うより、電動のオートバイという感じです。



当然ながら、日本ではこんな出力の高い電動アシスト自転車は認められていません。自転車のフレームに搭載できるバッテリーの容量は限られるでしょうから、仮にスピードが出たとしても、航続距離的には、スポーツバイクに乗るサイクリストの実用にはならないでしょう。

この手作りアシスト自転車はともかくとしても、電動アシスト自転車は、スピード的にも航続距離的にも、ツーリングやスポーツとして乗るような用途には不向です。ただ、それ以外でなら、ときにアシストが欲しいなと思う場面があるかも知れません。

例えば、帰り道で疲れている時、強い向かい風に悩まされ、ペダルをこぐ気力も萎えそうになって、誰かが背中を押してくれないかなと思うこともあるでしょう。重い荷物を運ぶ時、重いトレイラーを牽引して走行し、坂道を登ったりするときも、そう思うかも知れません。

Ridekick, www.ridekick.comRidekick, www.ridekick.com

そんな時、文字通り後ろから押してくれるのが、“Ridekick”です。このトレイラーにはモーターとバッテリーが搭載されており、これを後輪のハブに連結することで、荷物が運べるだけでなく、駆動力が発生してぺダリングをアシストしてくれる動力にもなるという製品です。

時速30キロ程度までアシストしてくれ、航続距離は13キロから20キロ程度だと言います。買い物に出かけ、何か重いものを買ってトレイラーに載せて牽引して帰るような際には威力を発揮しそうです。手元のコントローラーで操作出来るようになっています。

最初にインストールする際には、コントローラーの取り付けなどで多少時間がかかりますが、その後のトレイラーの着脱は簡単、かつ短い時間で可能です。ふだんは牽引せず、必要な時だけ連結して出かけ、必要に応じてアシストモーターを駆動させるといった使い方が可能です。



トレイラーの容量は42リットルほどあります。バッテリー等も載っているので、空でも重量は34キロほどありますが、車輪が空転しないためにも、ある程度の重さは必要でしょう。ダイヤル錠でフタはロック出来るようになっています。フル充電には4〜6時間かかります。

以前取り上げましたが、普通の自転車を電動アシスト自転車に改造するキットも一般に売られています。それら、自転車本体に取り付けるものとは違い、一部のケーブル等を別とすれば、必要な時だけ電動アシストモーターを着脱できることになります。なかなかユニークなアイディアです。

高台に住んでいても、これがあれば自転車で買い物に行く時にラクでしょう。必要の無い時にまでモーターやバッテリーなど重いパーツを持ち運ばなくて済むのも助かります。ほとんどどんな自転車にでも使えるので、新たに自転車ごと買い換える必要もありません。



重い荷物を運ぶ時だけトレイラーを使い、アシストは荷物を運ぶときだけでいいとするならば、トレイラーとアシストモーター、駆動輪、そしてバッテリーをまとめて一緒にするというのは、たしかに合理的な考え方です。実用的にも面白いコンセプトと言えるのではないでしょうか。

本体価格が699ドルと比較的手軽ですが、日常的にトレイラーで荷物を運ぶことがある人でないと、個人で買おうという人は多くないかも知れません。個人的には、店側で用意しても面白いのではないかと思います。スーパーとか、ホームセンターなどの店が貸し出し用に用意しておくのです。

重いものを買った人、荷物が多くなってしまってアシストが欲しい人、脚力が弱い高齢者にも親切なサービスになるかも知れません。クルマでなく、普通の自転車で買い物に来る人にもたくさん買ってもらったり、自転車では持って帰れないので買うのを躊躇するような品物の販促にもなりそうです。

Ridekick, www.ridekick.comRidekick, www.ridekick.com

この製品、アメリカの法律では、スクーターなどとして扱われること無く、自転車として乗れるとあります。ただ、日本に輸入した場合、後付タイプの電動アシスト自転車と見なされるかは微妙です。おそらく、電動アシストではなく、モペットのような電動自転車として扱われると思われます。

坂道を上る場合は一定のスピード以上、つまりペダルをこいでいないと、モーターの加熱を防ぐための防護として電源が切れるように設計されているようです。しかし、普通の平地で乗る限り、下の動画でもわかるように、ペダルをこがなくても乗れてしまいます。日本の法令上の電動アシスト自転車にはならなさそうです。

日本では、トレイラー自体もあまり普及していません。道が狭いなどいろいろ理由はあるでしょうが、歩道走行が一般的になっていることも挙げられるでしょう。この“Ridekick”も含め、トレイラーを牽引している場合は、日本でも歩道走行は認められていません。



自転車が歩道走行するという特殊な状態ため、多様な自転車や、自転車の幅広い活用が進まない一例でもあると思います。電動アシスト自転車と、見た目はそっくりな電動自転車、すなわちペダルをこがなくても進む自転車が普及しないのも、日本の歩道走行という事情が影響しているのは間違いないでしょう。

フレーム的には別ですが、電動自転車は電動の原付バイクと同じようなものですから、自転車として扱って歩道上でスピードを出されたら、危なくてしょうがないというのはあるでしょう。しかし、中国や東南アジアなどでは、電動自転車も売れており、日常のアシとして大いに使われています。

さすがに時速70キロも出るようなものは論外ですが、出力を抑えて同じくらいのスピードにすれば、電動自転車も電動アシスト自転車も、ペダルをこいでいるか以外に違いはありません。車道走行する場合なら、混在していても、特に問題になることはないでしょう。



日本では、ペダルをこがない電動自転車というと原付バイク扱いですから、違和感がある人も多いと思います。でも、実際に中国や東南アジアに行ってみると、普通に混在して走っています。ある程度まで出力を絞れば、電動自転車も、原付ではなく、普通の自転車として扱う考え方もあるのではないでしょうか。

もちろん、それには自転車の車道走行が大前提となります。現状でも電動アシスト自転車は、歩道上での歩行者の脅威となりえます。近年、歩道上での自転車と歩行者の事故が増えたのは、脚力の弱い人でも簡単にスピードが出せる電動アシスト自転車の急速な普及と全くの無縁ではないでしょう。

現在でも、スーパーの撤退などにより、クルマの運転が出来ない高齢者が、いわゆる買い物難民となるといった現象がおきています。ペダルをこがない電動自転車が普通の自転車として扱われれば、脚力が弱い高齢者の助けとなるに違いありません。

(こんな使い方も!)

バッテリーの能力的な限界から、航続距離は限られますが、電動自転車という選択肢が出来ることで、助かるのは高齢者に限らないと思います。この“Ridekick”のような商品も日本で売れるようになり、自転車の部品として気軽に活用されるようになるでしょう。

電動自転車も含め、電動アシスト自転車、電動トレイラーなど、広い意味で自転車の活用シーンを広げる形態、あるいは周辺機器と言えます。自転車の車道走行が徹底されることが前提ですが、電動アシストの規制緩和をすることも、これからの高齢化社会を考えると必要なのかも知れません。





海外の安全評価を流用したストレステストなんて、意味があるとは思えないんですけどね..。

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この記事へのコメント
トレーラー兼アシスト装置Ridekick良いですね!これが合法になれば是非導入したいと思いました。日本の自転車にまつわる環境はガラパゴス化してしまいいろいろと不都合が出てきていますね。
10年くらい前にオークションやネットショップで2万円前後で電気スケーター?が得られていて時折歩道を走行しているのを見かけました ショップのサイトを見ると坂道楽々とか免許不要などのキャッチフレーズで販売していたようです(サイトの隅に小さく公道走行不可と出ていた)いつの間にか見なくなったので警察が摘発・指導したのか安物バッテリーが駄目になって捨てられたのかわかりませんがとんでもない無法状態でした。
自転車車道走行移行を成功させるにはアシストシステムは重要だと思います。
日本も車道通行移行を機にアシストシステムの多様化ができれば良いですね!ただロードバイクで坂道を登っている時にアシストつき自転車に後につかれるのは辛い・・・
Posted by kuma406 at February 15, 2012 01:16
アシスト自転車はもう老人だけの需要ではなく、通勤、通学または首都圏では営業活動など幅広くなりました。ジャイアントもアシスト自転車をリリースしてますし、パナは回生充電式を改良してきたりと、今後ますます多用化するんでしょうね。あとハットリもホロ(?)付きアシスト自転車を販売するそうです。50万しますが…
Posted by 小径者 at February 15, 2012 01:56
kuma406さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
たしかに、日本独自とも言える歩道走行に徹したママチャリが大多数を占める点で、自転車市場もガラパゴスと言えるでしょう。ただ日本でも、意外とニーズはあるかも知れませんね。
あまり記憶にありませんが、そんな商品がありましたか。最初は興味本位で流通しても、結局、使い物にならなかったり、あまり使い道がなかったりで、消えていく商品は多いのでしょう。
車道走行するようになれば、カーゴバイクなどの多様な自転車を使うことが可能となり、移動だけでなく輸送が出来たりなど、今よりはるかに自転車が活用されるようになると思います。アシストの活躍の場も大きく広がるに違いありません。
ありますね、気づかずにギヤを落としてゆっくり登っていると、抜かれたりすることが..(笑)。
Posted by cycleroad at February 15, 2012 23:11
小径者さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、一部のスポーツバイクなどは別として、実用向けの自転車では、アシストを載せない手はないという感じかも知れません。
メーカーも単価が上がるわけですから、当然アシストのモデルをラインナップに加えるでしょう。
そんな自転車があるのですか。もしご存知なら、URLを教えてください。
Posted by cycleroad at February 15, 2012 23:22
電動アシストは目から鱗です・・・。

2年ほど前に北京へ旅行した時に、自動車道の右側には広い自転車道があって、なんと電動自転車が多く走っていたのでビックリしました。

日本に比べて規制が緩やかなんでしょうか?
Posted by 二浪独河 at February 17, 2012 09:04
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
電動アシストも知らないうちに、どんどん進化していますね。
北京だけではなく、上海やもっと内陸部の都市、比較的小さな地方都市でもたくさん走っています。
最近強化されたとも聞きますが、日本とは規制が違い、比較的簡単に乗れるのは確かのようです。
Posted by cycleroad at February 17, 2012 23:50
 
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