April 16, 2012

自転車の走り方を見せる装置

空に長く飛行機雲がのびていることがあります。


青く晴れ渡った空に、白い飛行機雲というイメージがありますが、飛行機雲は特定の季節に現われるわけではありません。あくまでも雲なので、大気に水蒸気が多い状態の時に現われやく、この時期にも少なくありません。飛行機雲がなかなか消えない時は、天気が下り坂だと言います。天候の予測にも使えるわけです。

Photo by André Karwath aka,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

ところで、毎年恒例で行われている世界最大の玩具の見本市、ニューヨーク・トイフェア2012に、まるで自転車で飛行機雲を描くかのような玩具が登場しました。自転車の後輪に取り付ける尾っぽのような器具の先にチョークを付けたシンプルなオモチャ、“Chalktrail”です。

今どき、携帯用ゲーム機などのハイテク玩具が増えている中、きわめてわかりやすいアナログなオモチャです。小さい時から室内でテレビケームをさせるより、外で元気に遊ばせたいと考える親たちには好評のようです。お絵かきに夢中になるくらいの小さな子供には、ちょうどいいオモチャでしょう。

Chalktrail, chalktrail.comChalktrail, chalktrail.com

自転車で走った軌跡が、チョークによって描かれます。走ると飛行機が飛行機雲を描くかのように、線がのびていきます。小さな子供にとっては道路に落書きするだけでも楽しいでしょうが、自転車で道路に大きな落書きが出来るおもちゃというのは、魅力的なものに映るに違いありません。

Chalktrail, chalktrail.com

どんなサイズの自転車にも取り付けることが出来、着脱も簡単です。幼い子供にとっては、自分の通った軌跡を目で見るというのも新鮮な体験でしょう。ただ自転車に乗るだけでなく、自転車の走らせ方、挙動にも興味が向かうようになるかも知れません。



道路にいろいろな絵を描いて遊ぶほかにも、地面に線をひいて、ドッジボールや野球をやる時などにも使えそうです。自転車で初めての場所へ遊びに行っても、帰り道の表示となって迷わずにすみます。友達の行方をたどったり、合流するために使うようなことも考えられます。

Chalktrail, chalktrail.com

なかなか夢のあるオモチャです。単純なアイディアではありますが、自転車やスケートボードに、その軌跡をつけるという発想は面白いと思います。この“Chalktrail”とは別で、全く関係ないのですが、同じような発想を、大人用の自転車に使うことを思いついた人もいます。

それが、“Contrail”です。こちらは、チョークを溶かした液体で軌跡を描きます。環境に優しい色素から作られる、洗える着色料を使っているので、道路に長く残ることはありません。雨でも降ればすぐに消えてしまいます。機材自体は子供用の自転車にも取り付け可能ですが、こちらは玩具ではなく、大人が対象です。

Contrail, bikecontrail.com

“Contrail”は、公衆の場でのアートプロジェクトと位置づけられています。大勢の人によって、道路に大きな絵をえがくようなパフォーマンスが可能です。バイクライドなどのイベントの際、参加者を誘導するガイドとして用いることもできます。

大人数でのサイクリング、ライドイベントなどでは、参加者が通り過ぎた後にも、存在感を残すことが出来ます。参加者同士の一体感を強調したり、イベントへ参加を誘う演出にもなるでしょう。楽しさを印象付けることで、自転車に乗る人が増えることを望んでいると開発者は話しています。

Contrail, bikecontrail.comContrail, bikecontrail.com

この“Contrail”、実は4年ほど前にも一度取り上げたことがあります。その時は、自転車のアクセサリーや関連部品など、自転車にパワーを与えるパーツのアイディアコンペの参加作品の一つとしてでした。その時もやはり同じ“Contrail”(飛行機雲)でした。飛行機雲から発想を得たのは間違いないでしょう。

そのアイディアを具体化し、サイクリングイベントなどでの使用を提案しているというわけです。当時の応募者、Pepin Gelardi さんは、この“Contrail”の共同開発者となっています。アイディアコンペの時点では、チョークの粉をタイヤにつける方式でしたが、液体タイプに進化したようです。

面白い発想です。ただ“Chalktrail”のような子供の玩具としてならともかく、個人の趣味として使うために購入する大人が大勢いるとは思えません。そこでこの“Contrail”、イベント用に、非営利団体などに提供して使ってもらうようなスタイルを想定しているようです。

アメリカには、非営利の組織やNPOなど、持続可能な都市というコンセプトを掲げ、シェア・ザ・ロード、人やクルマと自転車との道路の共有を訴え、イベントやデモなどのアピールを行っている団体があります。そうした組織と共同で、この“Contrail”を生かしたいと考えています。



また、自転車通学する生徒の自転車にこの“Contrail”を取り付け、通学の経路を明らかにし、安全を検証したり、生徒たちの動態を調査するようなプロジェクトにも生かす予定です。プロトタイプは完成しているので、ある程度の量産を図り、個々の単価を下げて生産に移行できるよう、出資を募っている段階のようです。

なるほど、調査に使うというのは有効でしょう。調査員がカウントする交通量調査では、調査員がいるポイントでの交通量しか計測できません。しかし、この“Contrail”ならば全体像を掴むのに、より効果的です。何よりビジュアルで確認できます。

交通量調査では把握しきれないような細かい視点、例えば道路のどの部分を通行する人が多いか、といったようなことも、ひと目でわかります。線が消えてしまうので、長い期間というわけにはいきませんが、ある程度の時間的経過や、時間帯、曜日などの要素による変動を観察することも出来るでしょう。

イベントでのアピールの手段、自転車通学の通学路の調査のほかにも、例えば、多くの自転車利用者に同時に使ってもらい、通学路で行うような調査を、街全体にわたって調べることも考えられます。その結果を、自転車レーンの設置の検討材料に使うようなことも考えられるでしょう。

Contrail, bikecontrail.com

ニーズの高い場所が一目瞭然となるだけでなく、ラインのブレを見ることで、安全に対する脅威なども明らかになるかも知れません。例えば、違法駐車のクルマを避けるラインが多いとか、曲がり角で外側に膨らむ人が多いといったデータも収集出来そうです。

ライトやサイクルコンピュータのような、個人が使う道具としては、あまり実用的なアクセサリーとは言えません。しかし、商品としてではなく、参加者に供与して、イベントやアピール、調査などで使うことを想定するならば、なかなかユニークなアイテムと言えるのではないでしょうか。

日本のように、自転車が車道か歩道かでもめているようでは話になりませんが、海外では、ニューヨークなどの大都市でも、自転車との道路のシェアや、自転車レーンなど走行空間の充実を訴える動きが拡大しています。そんな街では、この「飛行機雲」が役に立つでしょう。

ただ、都市によっては違法な落書きとして咎められるケースも考えられます。アスファルトに描かれても一時的で、雨が降らなくても数日で消えてしまうので、そんなに問題にはならないと思いますが、大人数で利用する際は、事前に自治体や当局に対し確認をとる必要があると思います。

Contrail, bikecontrail.com

設計では、あまり連続して長い距離はペイント出来ません。詰め替えなどが面倒なので、日常的に使うのに適しているとは言えず、消えてしまうので継続した効果も見込めません。ただ、もし多くの人が意識的に、あえて継続して使うならば、違った効果を見込める可能性があります。

街全体で、より多くのサイクリストがより長い期間使うならば、クルマのドライバーに対するアピールになるでしょう。“Contrail”の線が多い場所に違法駐車するのは遠慮しようとか、線を踏まないように、少し路肩との距離を空けて停車しようなどと思うかも知れません。

“Contrail”の虹色の線が帯状に濃く残る場所は、事実上の自転車レーンとして認識され、暗黙の了解、コンセンサスが形成されるかも知れません。さすがに、そこまでは無理だとしても、みんなで自転車のプレゼンスをアピールことは出来るのではないでしょうか。

積雪時などを除けば、自転車に走行軌跡が残らないなんて当たり前のことで、普通はあまり考えることもありません。それを、あえて軌跡が残るようにするというのは、なかなか興味深い試みです。「自転車の飛行機雲」で軌跡が可視化されることで、社会の認識が変わっていくかも知れません。





再稼働には反対だと一度は言い切った枝野経産相がブレていますね。こんなにあせって再稼動すれば、必ずや禍根を残すと思います。

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この記事へのコメント
日本の道路は、自転車という弱者に対して道路構造が十分に配慮されているとは決していえない箇所が多々あります。
行政も、こういった試みなどでも、自転車利用者にとって安全快適に走行できる、本来の道路を実現してほしいものです。
ただ、基本的に市民らが声をあげないと行政は動きませんので、市民らがまず率先してアクションを起こしていくことが求められるでしょう。
ですが、本当は、道路行政というものは、歩行者自転車自動車等、すべて道路利用者が安全に往来できる道路を率先して整備しなければならないのです、ということも私は訴えていきたい。
特に歩行者や自転車といった弱者が優先して保護されるような道路が本来の姿だということも。
Posted by 佐藤 at May 05, 2012 18:09
佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、道路がクルマ優先に出来ており、いろいろと問題が多いのはその通りだと思います。
その問題点について、市民がアピールする手段としても使えそうです。
市民がみずからアクションを起こすと言っても、デモやハンストと言うのもなかなか参加者が集まらなかったりします。
その点、“Contrail”を使ったサイクリングを通して主張するようなイベントだったら、参加しやすく面白いかもしれません。
ただ、本当は市民がアピールしなくても、多くの市民が感じていることですし、行政はそれに応えていかなければならないでしょうね。
Posted by cycleroad at May 06, 2012 23:28
 
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