July 12, 2012

自転車の役割が拡大していく

これからの都市交通は、どのようになっていくのでしょう。


人口動態からライフスタイルまで、さまざまな観点があって一概には言えないと思いますが、都市の道路交通において、自転車の役割は大きくなっていくことが予想されます。このブログでもいろいろ取り上げていますが、世界の都市で自転車が見直されている昨今の状況を見ても、そう言えそうです。

環境への負荷、エネルギー、交通事故、渋滞、公害など、クルマのもたらす負の部分に対する問題意識が拡大しています。少なくとも先進国では、人間よりクルマが優先されることへの抵抗感は大きくなっています。クルマ優先から、クルマを抑制する方向へ転換しつつある都市も少なくありません。

もちろん、都市交通や物流におけるクルマの必要性がなくなるわけではありません。しかし、都市部に向かってクルマが集まれば、構造的に渋滞するのは避けられません。都市の中心部への乗用車の乗り入れは抑制し、中心部は他の手段でと考えるのは自然です。

渋滞が慢性化する世界の都市の中には、都心部への乗用車の流入を規制したり、駐車料金を高くするなどして、クルマの交通量を絞ろうと考えるところもあります。自転車レーンの整備を進め、その利便性を向上させて利用を促すと共に、クルマでの都心部のアクセスを結果的に減らそうとするところもあります。

日本では、まだまだクルマ優先の考え方が幅を利かせているので、ピンと来ないかも知れません。自転車はと言えば、そのルール違反やマナーの悪さのほうが注目されています。安全面や事故がクローズアップされ、放置自転車の撤去に力が入れられるなど、むしろ自転車を排除するような方向も見られます。

日本の場合、自転車の大部分をママチャリが占め、自転車を歩道走行させてきたという特殊な状況も要因でしょう。大多数の国民に自転車の本当のポテンシャルが理解されておらず、最寄り駅までのゲタ代わり、あるいは子供の乗り物といったイメージも背景にあります。

それに比べて海外では、いわゆる自転車先進都市だけでなく、パリやロンドン、ニューヨークといった大都市でも自転車シェアシステムが導入されるなど市民の利用が拡大し、自転車の交通手段としての活用が進んでいます。自転車レーンなど、自転車に乗りやすい環境整備も推進されています。

Audi e-bike Wörthersee, www.audi-mediaservices.comAudi e-bike Wörthersee, www.audi-mediaservices.com

そんな状況、世界的に自転車を積極的に活用しようという考え方になってきているのは、クルマのメーカーも意識しているようです。どんな場所でもクルマを売り込むのではなく、場所や役割により自転車などと棲み分けることを考え始めているように見えます。

Audi(アウディ)は、この5月に電動アシスト自転車のコンセプトモデルとして“Audi e-bike Worthersee”を発表しました。最大出力2.3kWのモーターに、容量530Whのリチウムイオン電池を搭載し、カーボン素材のフレームにより、重量は21kgに抑えられています。

モーターだけで走行するモードでは時速50km、電動アシストを使用するモードでは時速80kmを出すことが出来ます。純粋に脚力だけ、自転車モードで走行することも可能です。面白いのは、車輪を自動で制御することで、誰でも簡単にウィーリー走行が出来るモードまで用意されています。



搭載されたサイクルコンピュータと手元のスマートフォンと連動させ、走行データをチェックするなど、ネットワークを利用したモバイル機能も備えています。ヨーロッパの電圧、230Vならば2時間半でフル充電することが可能だと言います。

まだコンセプトモデルの段階で、このまま市販されるわけではありませんが、なかなか意欲的なモデルだと思います。日本の規制だと電動アシスト自転車にならず、電動バイクとして登録されることになりますが、クルマ以外の選択肢としてのニーズが見込める分野と言えるでしょう。

今後、アウディが、自社の製品として電動アシストバイクをラインナップするかはわかりませんが、その可能性は充分意識しているのでしょう。こんな製品を出したら、主力のクルマが食われてしまいそうな気もしますが、必ずしもそう見ていないものと思われます。

Audi e-bike Wörthersee, www.audi-mediaservices.comAudi e-bike Wörthersee, www.audi-mediaservices.com

すなわち、人々のニーズとして、クルマ一辺倒でなく、時と場所に応じた手段を選択するようになっていくとするならぱ、クルマ以外の選択肢についても傍観するのでなく、積極的に取り込もうという姿勢です。電動アシスト自転車も含め、アウディのブランドで展開する可能性があります。

依然としてクルマの需要は存在するという自信もあるのでしょうが、世の中の変化にも積極的に対応しようという姿勢です。クルマの売り上げを自ら減らしてしまうと考えるより、人々の考え方、選択が変わっていくとするならば、それに積極的に応えようという考え方なのでしょう。

BMW i PedelecBMW i Pedelec

BMWも電動アシスト自転車のコンセプトモデル、“BMW i Pedelec”を発表しています。この電動アシスト自転車を、開発中の電気自動車“BMW i3”の荷室に搭載し、必要に応じてクルマと自転車を使い分けるようなスタイルを想定しているわけです。

荷室に搭載している間に充電し、駐車して荷台から下ろして走行出来ます。こちらは、出力250Wのモーターと容量300Wh以上のリチウムイオン電池を搭載し、25〜40kmの電動アシスト走行が可能となっています。都市部での交通手段としてなら充分に役立つでしょう。

BMW i Pedelec
BMW i Pedelec

都市の中心部への流入が制限される都市ならば、その範囲の外に駐車し、自転車に乗り換えて中心部へ向かうことができます。規制が無くても、いちいち駐車場を探したり、駐車場の空き待ちをすることを考えれば、一ヶ所に駐車して自転車で移動したほうが機動的という場合もあります。

こちらは、クルマに自転車をプラスして、より広範なケースをカバーしようという考え方です。もちろん自転車しか必要の無い人には売れませんが、どのみち、そうした人にクルマを売ることは出来ないわけで、クルマと自転車という組み合わせが無意味なわけではありません。

つながるバイクつながるバイク

日本のトヨタも、昨年の東京モーターショーで、ヤマハとの共同開発を進めている次世代モビリティ「つながるバイク」を出展しています。コンセプトモデルの電動スクーターと電動アシスト自転車に、スマートフォンなどを活用したシステムです。

充電スタンドの位置や空き状況、充電完了時の通知などをスマートフォンで確認できます。もちろん都市での自転車シェアシステムにも対応します。場合によっては、パークアンドライドで、クルマから乗り継いだり、連携するようなことも考えられるでしょう。

つながるバイクこのほかにも、クルマのメーカーで自転車を意識していると思われる例は、いろいろあるようです。世界的に展開するクルマのメーカーは、特に先進国における今後の都市の道路交通について、必ずしもクルマばかりが拡大するとは思っておらず、新しい展開が必要と考えているのかも知れません。

クルマのメーカーに比べれば、自転車メーカーは圧倒的に小さいところが多く、影響力も限られています。その意味でも、今後の道路交通について、クルマメーカーの提案やコンセプトが世の中のトレンドに影響を与えることは充分考えられます。

自転車メーカーだけではなく、クルマメーカーが新しい自転車の使い方を提案することで、市場も活性化するでしょう。必ずしも電動アシスト自転車に乗りたい人ばかりではないと思いますが、市民の選択肢が増え、可能性が広がるという点でも、クルマメーカーが自転車を意識することは悪いことではないと思います。

いずれにせよ市民がどのような都市や生活スタイルを望み、あるいはその中での移動を望むのか、そしてそれに行政がどう応えていくかが、今後の都市の道路交通の方向性を決めていくのだろうと思います。クルマのメーカーが意識しているところを見ると、やはり自転車の役割が拡大していくことになりそうです。





九州は大変な雨になっているようです。今年は激しい気象現象が続きますね。

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この記事へのコメント
車メーカーが自転車を作ると言うのは日本の
感覚からすれば?ですが欧州の車メーカー、例
えばプジョー、ルノー、ベンツ、等は元々自転
車メーカーだったわけですから原点回帰とも取
れますよね。
 デジタルカメラなんかもカメラ製造会社以外に
色んな業種が参入してきていますし、電気自動車
の分野では必要部品数が少ないとの理由で自動車
産業独占とは言えない状況になってきています。
 私としては人力、電気、ガソリンのHVなんてあ
ると面白いと思いますが。渋滞中はエンジン切って
ペダルで動かすとかどうでしょうかね?健康や環境
にもプラスになると思いますけど。
Posted by yoko at July 14, 2012 10:07
yokoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに原点回帰と言えるメーカーもありますが、例えばパナソニックが、今さら電球のソケットの製造販売に戻るわけにはいかないのと一緒で、原点に帰ろうとするわけではないでしょう。
もともと自転車は、部品を集めれば誰でも製造できますし、クルマの製造技術から生かせるものは、いくらでもあるでしょうから、電動アシストなどを組み合わせて商品化する余地は充分あるのだろうと思います。
以前取り上げましたが、人力とハイブリッドのクルマというのも実際に存在しています。ただ、今のところポピュラーなカテゴリーとは到底言えない状態なのは確かですね。
Posted by cycleroad at July 14, 2012 23:51
 
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