August 20, 2012

オリンピック後にも残るもの

ロンドンオリンピックが終わって1週間が経ちました。


テレビでは、いまだに連日オリンピックの総集編や選手を向かえた番組が放映され、銀座ではメダリストによるパレードが行われるなど、まだ興奮の余韻が長く続いています。市場最多のメダル数という日本人選手の活躍に、東京へのオリンピックの招致にも、いくぶんプラスに働いているようです。

過去にも何度か取り上げましたが、今回のオリンピックに向けては、都市部の渋滞や観客による交通混雑への対策の一環として自転車の活用のための整備が推進されました。少し前のものになりますが、そのことに対する評価についての記事が、スポーツ紙に載っていました。


レンタル自転車「金」級評価

五輪も終盤に入り、ロンドン滞在中の観光客は競技観戦と並行して市内観光のラストスパートに入った。その「足」として人気なのが公共のレンタル自転車。五輪期間の渋滞緩和策の1つとしてボリス・ジョンソン市長が導入したことから、通称「ボリスバイク」と呼ばれる。市内約400カ所にある無人ステーションで24時間貸し出し、返却が可能で「最短時間で名所を回れる」と評価は上々。五輪レーンや警備問題など、批判の声が噴出している今大会の運営面で、唯一? の高評価を得ているようだ。

ロンドン自転車革命ロンドンの観光名所で、必ず見かける「ボリスバイク」。毎日自転車通勤を続けるサイクリストとして知られる名物市長の肝いりで2年前に導入され、青い自転車は今ではロンドン名物の1つにもなっている。クレジットカードで身分証明すれば誰でも手軽に利用できるため、多くの五輪観光客が名所巡りの「足」として愛用。テムズ川沿いなどでは自転車がすべて貸し出されてしまい、在庫が1台もないステーションもあるほどだ。

実際に地下鉄2駅分を利用してみた。日本のママチャリに比べ車体がかなり重く感じるが、走りだせば問題なし。美しい町並みを眺めながら、快適に移動できた。ステーションは地下鉄駅周辺を中心に300メートル間隔で約400カ所あるため、返却する場所にも困らない。料金は1日の契約料が1ポンド(約125円)で、30分以内に返却すれば使用料は無料だ。

ロンドン自転車革命観戦の合間に、友人2人で市内の公園巡りをしたという日本人女性(29)は「地下鉄やバスより全然移動が楽。安上がりだし、時間も短縮できる」と笑顔で話す。カメラを首に下げた米国人男性(33)も「1時間でバッキンガム宮殿やビッグベンなどを一気に回ってきた」。五輪観戦と観光を効率的にこなす秘密兵器として使いこなしていた。

この「ボリスバイク」は、五輪に向けた渋滞対策の一環として1億4000万ポンド(約175億円)かけ導入されたもの。地元メディアによると、計画当初は「そんなことに大金をかけるな」などの批判も多かったが、登場後の1カ月で市民の長期契約者が7万人を超えるなど大反響を呼んだという。

渋滞対策のはずが渋滞の元凶となってしまった「五輪レーン」、スポンサー用に用意した座席が大量に空席となるなど、運営面でのさまざまな“失策”が浮き彫りになった今大会だが、これは数少ない成功例か。20年開催を目指す東京も、こればかりは参考にしてよさそうだ。(2012年8月9日 日刊スポーツ)


これまで何度か取り上げたように、ロンドンに導入された都市型の自転車シェアシステム、通称ボリスバイクを高く評判する声は少なくありません。先にパリなどで導入されたのと同じシェアリングシステムですが、オリンピックに向けて整備を進めた市長の英断は評価されていいでしょう。

単なる渋滞対策としてだけではなく、ロンドンでの移動における自転車の利便性が見直されたのも高い評価につながっていると思います。渋滞を避けるため、仕方なく自転車通勤を始めた多くのロンドン市民が、その健康効果を実感したということもあったに違いありません。

実はアメリカに劣らぬ肥満大国とされるイギリスでは、市民のダイエットにもつながり、長い目でみれば、医療費の軽減などにもつながっていくだろうと言われています。もちろん環境面でも評価されますし、ロンドンのイメージアップにもつながったはずです。

Cycle Superhighways, www.tfl.gov.ukCycle Superhighways, www.tfl.gov.uk

この記事には書かれていませんが、単に自転車シェアリングシステムの導入だけでなく、自転車レーンや駐輪施設の整備、郊外と都心を結ぶ自転車ハイウェイの整備など、自転車走行環境の整備も大胆かつ大幅に進めたことも寄与しており、そのことも大いに評価されていいでしょう。

自転車を貸し出しても、その走行環境が劣悪であれば、充分な威力は発揮できなかったはずです。ボリス・ジョンソン市長は、オリンピックを別にしても自転車に対する理解があり、自らも自転車通勤するなど、自転車の活用推進を積極的に取り組んできた人として有名なのです。

もともと自転車好きで、その効用をよく知っていた市長が、自転車環境整備を進めるのは自然です。でも、オリンピック開催という偶然が重なったことで、市長がかねがね構想していたロンドンの「自転車都市」化を一挙に推進できたのは幸運だったとも言えるでしょう。

オリンピックの渋滞対策として考えても、新都市交通の建設や道路の拡幅などに比べれば、はるかに安あがりなのに、大きな効果が期待できる手段ということが証明された形です。もちろん、オリンピック後も市民や観光客に利便性を提供し、その健康にも貢献するでしょう。

次のオリンピックは、ブラジルのリオデジャネイロです。2016年に向けた記事も出ていました。


>リオデジャネイロオリンピック2016:環境インパクトゼロが目標

リオデジャネイロオリンピック2016ブラジルは大事業を行い、初めてオリンピックをエネルギーの観点で自給自足できるようにしようとしている。そしてさらに、公園や自転車レーンとともに、環境に関する市民教育のプロジェクトも立ち上がる。

荒廃した地区にはサステイナブルな巨大公園。自転車レーンのネットワークと新しい自転車シェアリングのシステム。しかし何よりも、大西洋のただなかにそびえ立つ野心的な塔。それは魅惑的な人工の滝を備えていて、太陽光発電と水力発電を一緒に用いてリオデジャネイロとオリンピックシティにクリーンエネルギーを供給する。

これらは、ブラジルが行っている努力のいくつかの例だ。歴史上初めての環境インパクトゼロのオリンピックを開催しようとしており、2014年のサッカーW杯のためにも同時に準備を進めている。(中略)

交通に関しては、今年のうちに現行の自転車レーンを2倍にすることから出発して、総延長300kmに到達させることを目標としている。同時に、自転車駐輪のためのスペースがつくられ、公共スペースの近くにチェーンをかけて自転車を停めることを禁止する規定をなくす。

自転車シェアリングのシステムはすでに存在するが、盗難が非常に多く、システムを管理する会社の能力不足により、昨年に中断されている。数カ月すれば、管理を改善して自転車ステーションを18から60に拡張し、1日に平均で5,000回使用している70,000人の登録ユーザーのために、自転車を600台に増やすだろう。

リオデジャネイロオリンピック2016もちろん、状況は薔薇色ではなく、この国は、すでに普及している自動車文化と戦わねばならない。これは、多かれ少なかれイタリアと同様に自動車のために政策が行われてきたことを反映しており、国家からの気前のよいインセンティヴが自動車の購入を支援している。

この国では自転車の交通事故が多く、まだまだ少ない自転車レーンはしばしば自動車を駐車するために使われる。しかし、少しずつ前進している。リオデジャネイロは、都市の中心の一区域を交通教育のために用いており、イパネマ海岸通りの近くの交通教室は、道路システムと交差点の状況を再現して、新世代に歩行者と自転車との共存と彼らを尊重することを教えている。

ブラジルにとってはすばらしい挑戦だ。何年もの間、エコロジストたちの関心の的となってきたのは、アマゾンのジャングルについての政治的選択の議論であったり、著しい経済成長の結果による汚染レヴェルの上昇だったのだから。(2012年8月15日 WIRED NEWS )


リオでは、オリンピックに向けたインフラ整備の一環として自転車レーンや自転車シェアリングシステムの整備が計画されているようです。クルマ文化と対決し、経済の振興策と対立する部分があったとしても、自転車環境を改善していかなければならないと意識されているようです。

ロンドンオリンピックへ向けての交通対策として、自転車活用が大いに評価すべき成功をおさめたことは、日本では、あまり注目されていません。しかし、自転車の活用という流れは、ロンドン以降にも、しっかりと受け継がれていると言えるでしょう。

リオデジャネイロオリンピック2016ブラジルでは、ロンドンを参考にする以前から、自転車シェアリングシステムが導入され、少ないながらも自転車レーンが整備されるなど、自転車の活用という考え方は広く理解されています。交通手段の一つとして自転車が活用出来る環境整備は当然必要であり、それが不足しているという認識があります。

自転車の活用は、パリやニューヨークといった大都市をはじめ世界各地で広がりつつあります。このブログでもいろいろ取り上げていますが、そうした世界的な流れの中で、オリンピックという機会を捉え、自転車の活用環境の整備を加速させるのは自然な考え方と言えます。

ロンドンでの評価によって、今後オリンピックを開催する都市での自転車環境は、当然必要なインフラの一部と認識されていく可能性があります。もちろん先進国と新興国では都市のインフラ状況が違うでしょうし、都市によっても環境はさまざまなので、一概には言えません。

ただ、もし2020年のオリンピック開催都市として東京が選ばれたならば、当然積極的に取り入れるべきではないでしょうか。渋滞対策だけでなく、現在問題となっている歩道での歩行者との事故やルール無視の無秩序状態、放置自転車などの解決にもつながります。

世界中から大勢のお客が集まります。都内の混雑緩和のためだけでなく、歩道を自転車が平気で走り回り、歩行者が危なくてしょうがないという、先進国と思えない野蛮な状態は改善すべきです。こんな状態を放置して、世界に恥をさらすのは避けたいところです。

オリンピックの招致は今ひとつ盛り上がっておらず、東京招致への支持率は低くなっています。オリンピックは楽しみだが、別に東京でなくてもいいという人が多いのでしょう。ただ、さまざまな効果への期待に加え、都市の自転車環境の大幅な改善も見込めるなら、オリンピックも悪くないかも知れません。





東京で開催されても、平日の昼間に見るわけにもいかないし..、というのはあるかも知れませんね。

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