September 16, 2012

検討する必要性すらないのか

自治体による自転車レーンへの対応が分かれています。


全国の7割超の自治体では、自転車レーンについて検討する考えのないことが明らかになりました。


自転車道7割検討せず

国土交通省は30日、自転車専用走行帯の整備計画策定に前向きなのは229市区町村で、調査対象の27%にとどまるとのアンケート結果を発表した。73%は道路や歩道にスペースを確保できないなどとして「検討を考えていない」とした。

同省は、市街地や通学路で自転車と歩行者の接触事故を減らすため走行帯の整備を促進する方針。スペースの制約などを理由に消極的な自治体が多いことに「車道の路肩を色分けするといった工夫をすれば道路を拡張する必要はない。自治体の理解を得られるよう対応したい」としている。

国交省によると、調査対象は一定規模の人口密集地区がある849市区町村。うち走行帯の整備計画が「策定済み」なのは4%、「検討中、準備中」が9%、「検討する予定」が14%だった。

一方、検討を考えていない620市区町村では、20%が「道路空間の制約」を理由に挙げ、「公共交通中心のまちづくりを考えている」(17%)、「必要性が低い」(16%)と続いた。

自転車専用の走行帯の整備は、ポールで歩道と分離したり、車道の路肩を色分けしたりする方法がある。国交省は、整備手法や計画策定の手順をガイドラインにまとめて近く公表し、社会資本整備総合交付金で財政支援する方針だ。(2012年8月30日 共同)


自転車事情は地方自治体ごとに違うでしょうし、地形や天候、人口や交通量など環境にもさまざまな違いがあると思います。対応が違ってくるのは当然です。でも全体の7割が検討すら考えていないというのは、いささか多い気がしないでもありません。

今後とも計画を検討することを考えていない理由

国土交通省の発表した調査結果によれば、検討を考えていない理由は大きく3つに分かれるようです。考えていない自治体のうち、約3分の1が道路空間や地形、財政などの制約があることを挙げており、もう3分の1が、必要性を感じない、もしくは今後必要性に応じて検討するなどとしています。

残る3分の1は、公共交通中心の街づくり、幹線道路や歩道整備を中心に考えるとの理由を挙げています。それらの事業が優先なので検討の余地はないということなのでしょう。しかし、この理由を挙げた自治体の中には、自転車レーンに対して無理解や誤解しているところがあるような気がします。

車道の自転車レーンについては、国民の間にも、車道走行が怖いという声が多数を占めています。40年以上歩道走行で来たわけですから無理もありません。しかし、海外では高齢者だろうと子供だろうと、当たり前のように車道走行しています。最初から車道走行なので、何の迷いも疑問もありません。

海外では、自転車に乗るというのは車両に運転するということであり、車道を走るということなのですから当然です。その点に疑問をはさむ余地はありません。日本人だって、生まれた時から車道走行が当たり前ならば、何の疑いも無く車道走行しているはずです。

日本だけ車道走行が危険と感じる人が多い背景には誤解もあります。実は、車道走行の欧米の国と歩道走行の日本を比較すると、日本のほうが圧倒的に事故件数や死者数が多いのです。自転車事故のほとんどは交差点で起きており、ドライバーからは見えにくい歩道から飛び出す形が事故につながっています。

自転車専用レーンこれに対し、自転車が初めから車道を走行していれば、ドライバーから見えているわけですから、事故になりにくいという構図です。このことは統計などからも裏付けられています。つまり、危険な気がするけれど、実は車道走行のほうが安全ということになります。

もちろん現状では他の問題もありますが、このあたりの理解が進まないので、市民は車道走行したがらず、自治体も車道の自転車レーンの整備については検討すら考える必要がない、他の事業を優先するということになるのでしょう。市民の理解が進めば、それを反映する形で自治体の考え方も変わってくるだろうと思います。

交差点でない部分、普通の直線部分では、イメージに反してほとんど事故が起きていないわけですが、日本では危ないと感じる人が少なくありません。それは、クルマのドライバーの中に、自転車は歩道を走るべきだ、邪魔だと、車道を走行する自転車に対して嫌がらせをする人までいることにも一因があると思います。

軽車両なども走行する車道を、クルマ専用のように思っている人も少なくありません。40年以上も自転車が歩道走行を促されてきた結果、クルマが優先のような錯覚に陥っている人も多いのでしょう。欧米諸国のように車道を共有し、交通弱者を優先するという意識が根付いていません。

残念ながら現状では、自転車の車道走行に対する理解や配慮が足りないドライバーも少なくありません。スレスレを追い越されたり、突然左折されたり、危ない思いをすることもあるでしょう。こうした状況を改善するためにも、車道上に自転車レーンを設置するのが有効だと思います。

自転車レーンを設置することで、自転車の通行部分だということが一目瞭然となりますし、お互い通行区分を守って走行すれば、クルマとの距離もとれるでしょう。自転車レーンによって、車道でのクルマと自転車の共存の意識も定着していくことが期待でき、自転車利用者も車道走行しやすくなるはずです。

車道走行によって、歩行者と自転車の事故だけでなく、実は自転車とクルマの事故も減るという事実は、まだ日本では知られていません。公共交通中心の街づくり、幹線道路や歩道等の整備を中心にするからとの理由を挙げている自治体は、このあたりの認識が浸透すれば変わってくるところもありそうです。

策定状況

次の3分の1は、道路空間や財政上の制約を理由に挙げる自治体です。新たに自転車レーンを設置する余地がないと思っている自治体が少なくないのでしょう。記事にあるように、特に改造をせずとも、路肩部分に色を塗るなどするだけで設置が可能な道路は、実際には相当の割合に上るという調査もあるのに不思議です。

実は、自転車レーンを整備しようにも、整備の根拠となる法律や、国の基準がないことが大きく影響していたようです。積極的に設置を考えている自治体は、独自の考えや形式によって進めざるを得ませんでした。この部分が大きく変わる可能性が出てきています。


自転車レーン:国交省が法令で規定検討…歩行者と分離促進

自転車の安全走行の「切り札」の一つとされながら、法的な位置付けがあいまいで設置が進まなかった「自転車レーン」について、国土交通省が法的位置付けを明確化する方向で検討を始めることが分かった。道路の基準を定めた政令の「道路構造令」に、「自転車専用通行帯(自転車レーン)」の規定を盛り込む。実現すれば、自転車の歩道通行からの転換を促進させ、車と自転車、歩行者の分離が進むことが期待される。

自転車レーン、国交省が法令で規定検討自転車走行路は(1)縁石などで車道や歩道と完全に区切った「自転車道」(2)車道左端を線で区切ってカラー舗装するなどした「自転車レーン」(3)幅の広い歩道に設置する「自転車歩行者道(自歩道)」−−の3種類がある。自歩道は歩行者との事故の懸念が残り、自転車道は縁石などの工事が必要となるのに対し、自転車レーンは車や歩行者と分離できる上、安価で整備できる。

だが、道路構造令には自転車道と自歩道しか規定がない。自転車レーンは道路交通法上の「車両通行帯(車線)」の一種とされ、幅が1メートル以上あれば設置できるが、法律上の位置付けはあいまいとされる。このため、事故が起きた場合に設置根拠が問題になるとの懸念から、自治体は自転車レーンの整備に消極的で、10年3月末時点で総延長は全国で約200キロにとどまる。

自転車政策に詳しい屋井(やい)鉄雄・東京工業大大学院教授は「自転車を歩道通行させてきた従来の固定観念を崩す契機にしてほしい」と話している。(毎日新聞 2012年08月31日)


自治体の本音として、事故が起きた場合に設置根拠が問題になるとの懸念から、自治体は自転車レーンの整備に消極的だったということがあるようです。しかし、今まで法的にあいまいで、自治体ごとにバラバラだった自転車レーンの整備に、新たな裏づけが与えられる可能性が出てきたわけです。

道路構造令の改正で法的根拠が整い、自歩道では交差点での事故をかえって誘発することや、歩行者との事故の懸念が残ることに加え、自転車レーンは安価に整備できるとなれば、自転車レーンの整備が進む可能性が出てきそうです。走りやすくなって安全性も高まることから、市民の支持も広がっていくでしょう。

これまで、私も全国で統一した基準を整えるべきだと書いてきましたが、ようやくその方向に動く可能性が出て来たわけです。各地で体裁が違うのではユーザーも戸惑います。場所によっては、狭い幅に対面通行だったりなど、問題のあるレーンもあり、安全面でも懸念があります。

道路構造令で定義され、整備が促されるとともに、標準化が進めば世間一般での認知度も上がっていくでしょう。自転車レーンの普及に弾みがつき、その利便性や快適さが理解されるようになって、さらに整備が要望されるような循環になれば、歩道と同じような当たり前の設備となっていくかも知れません。

自転車専用レーン

もう3分の1は、必要性が低い、感じない、今後必要性に応じて検討する、未定、といった消極派です。もちろん、自転車の利用度によっては、実際に必要性が低いところもあるでしょう。それはそれでいいと思うのですが、もしかしたら認識が十分でない部分があるかも知れません。


脱車社会 ドイツの取り組み 高齢化も見据え交通網

地球温暖化を促す二酸化炭素(CO2)の排出削減や、自動車が運転できなくなるお年寄りが増えることを背景に、車がなくても暮らせる街づくりが課題となっている。いち早く「脱車社会」に動いたドイツの取り組みを調べた。

ドイツ東部ドレスデン市の教師ヨハネス・モイゼルさん(58)は自動車を持ったことがない。移動は専ら自転車だ。自宅は市中心から約五キロの住宅街。職場には三十分ほどかけて自転車で通う。

「街は走りやすいし、路面電車や列車にも自転車を載せられる。遠出も不便を感じない」とモイゼルさん。重い荷物があるときは、市の公共交通会社が提携するカーシェアリングで車が使える。「車のない暮らしは普通にできる」と言う。

自動車大国ドイツ。かつて街は車であふれたが、排ガスや騒音による都市公害が激しくなった一九七〇年代から「脱車社会」への議論がスタート。急速に進んだ社会の高齢化に対応するためにも「脱車」は急務だった。

基本は自動車優先をやめ、徒歩や自転車に公共交通機関を組み合わせた交通網をつくること。街中心への一般車の乗り入れを禁じ、バスや路面電車を主に。公共交通機関への乗り換えがしやすいよう歩道や自転車道を整備し、規則も歩行者や自転車優先に変えた。

中でもドイツ西部ミュンスター市は、いち早く自転車を活用した。中心市街地を囲んで自転車専用の環状道を整備。電車・バスとの連結点となる中央駅の正面には三千台収容の駐輪場を設けた。自動車が通る道にも自転車レーンを明示し、信号も自転車を先に通す仕組みだ。

車社会では自動車が増えるにしたがってバスや電車は衰退する。だが、あえて自動車を不便にして徒歩や自転車を活用し、公共交通機関の利用者を確保するのがみそだ。同市の移動手段調査では、八二年に全体の29・2%だった自転車の利用率は二〇〇七年に37・6%に上昇。この間、電車・バスの利用率も6・6%から10・4%に増えた。

同市交通局で自転車行政を担当するシュテファン・ベーメさん(61)は「人が移動するには自転車やバスの方がスペースを取らず、コストも低い。環境やエネルギー面でも意義は大きい」と話す。

南部フライブルク市では、既に四百六十キロの自転車道を設置。一五年までに時速三十キロ程度で走れる高速レーンを三路線整備し、ラッシュ時の移動時間を車の半分にする。

ベルリン市も自動車の車線や駐車場を自転車用に転用するなどして、自転車による移動率を二五年までに現在の15%から20%にする計画だ。市交通局では「交通手段としては車より自転車を軸とした方が市の財政負担は軽くなる」と言う。

市内交通だけでない。西部ルール地方ではデュイスブルク−ハム間約八十五キロを結ぶ「自転車高速道」の計画も浮上している。(2012年8月27日 東京新聞)


自転車レーンの整備は、市民の安全や事故防止に有効なだけではありません。この記事にあるように、高齢化社会への対応として、よく言われるような買い物難民をつくらない対策としても効果的な場合があります。コンパクトシティ化にも符合しますし、これからの街づくりにおいて重要な位置を占める可能性があります。

少なくとも欧米の都市では、自転車の有効性が広く認められ、一般的な考えとなりつつあります。このブログでも、これまで多くの例を取り上げてきましたが、各方面から注目されているのは間違いありません。それらの事例をみれば、必要性を感じないとは言っていられなくなるのではないでしょうか。

自転車通行帯高齢化でクルマが運転できなくなることへの対応ばかりではありません。市民が自転車を使うようになることで、肥満が減ったり、生活習慣病の人の割合が改善されるなど、市民の健康増進に大きく寄与することが広く知られるようになってきています。

このことは、市民の医療費の減少に直結します。自治体の健康保険財政にも大きなメリットをもたらすわけで、むしろこのことが世界の多くの都市において、自治体の自転車環境の整備に対する大きなモチベーションとなっている面が見られます。

一人ひとりにおける健康効果は小さなものであっても、全体としてみれば大きな成果につながります。健康な人、元気に買い物に出かける人が増えることで、地域の活性化や、商業の振興にもプラスに作用するかも知れません。寝たきりを減らし、福祉関係の予算の負担も減る可能性があります。

必要性を感じないのは、単に自転車を移動手段としてしか見ていないから、自転車の社会的な効用に対する知識がないからだけかも知れません。こうした効果を知り、将来的な自治体の財政にまで寄与すると知れば、自転車レーンを充実させていこうと考える自治体が増えても不思議ではありません。


自転車レーンの検討すら考えていない7割の自治体の考えていない理由はいろいろです。もちろん自転車レーンより、重要だと考える課題がたくさんあるでしょう。しかし、どの理由を挙げる自治体も、まだまだ誤解や理解の不足があるように思えてなりません。

ロンドンやパリ、ニューヨークをはじめ、世界中の多くの都市が自転車政策に真剣に取り組み始めています。国も道路構造令の改正を検討するなど、少しずつ変わり始めています。3割の自治体のように積極的にとは言いませんが、これからの時代、検討すらしない手はないような気がします。





反日デモが拡大しているようです。あまり深刻な事態にならないうちに沈静化してほしいところですが..。

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この記事へのコメント
自動車から自転車にモーダルシフトすれば
大幅に社会保障費が削減できるということを
もっともっとアピールするのはどうでしょうか?
少子高齢化やデフレの影響で多くの自治体が税
収の減収、医療介護に係る費用の増大に悩まされ
ていますがモーダルシフトすることによってこれ
らが全て解決することを理解すれば考え方も変わる
と思います。
自動車を所有しなければこれだけお金が浮いてく
るというCMをLAで見たことがあります。勿論、私は
自動車を完全に否定しているわけではなく近距離での
使用を控えることを提案しているわけですが、、。
多くの自動車が定員1名で使用されている現状を考え
れば如何にそれが無駄であるか分かると思いますが。
Posted by yoko at September 17, 2012 23:36
yokoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
単に徒歩より速いというだけでななく、自転車には広範な効用が期待できることが、日本ではあまり知られていないのは確かでしょうね。
単純に全て解決するとは言えないと思いますが、高齢化社会の課題から、医療・介護に至るまで、大きく寄与する可能性があることに、世界で注目が集まっています。
東京は道が狭いところも多いので、自転車レーンの設置余地が乏しいと考えているのかも知れませんが、おっしゃるように、だからこそ、移動する人、一人当たりの占有面積で考えるという発想も必要だろうと思いますね。
Posted by cycleroad at September 17, 2012 23:57
ご存知かもしれませんがご紹介まで
日本は歩行者に優しくない車中心の道路作りをやめられる日は来るんでしょうかね
ttp://www.newsweekjapan.jp/joyce/2012/09/post-59.php

以前にはロンドンの自転車事情を紹介する記事もありました
http://www.newsweekjapan.jp/joyce/2010/11/post-33.php
Posted by Lemond at September 19, 2012 00:59
Lemondさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
これは知りませんでした。どちらも興味深い記事ですね。
いったんクルマ中心の環境に慣れてしまうと、わからなくなってしまうものがあるということでしょう。
そろそろ経済や効率ばかりを優先するのではなく、命を優先するようにしなければならないと多くの人が思い始めているのではないかとは思うのですけどね。
情報をお寄せいただき、ありがとうございました。
Posted by cycleroad at September 19, 2012 23:33
いつも中身の濃い、興味深い記事をありがとうございます。
いつもながら自治体のトップ、ならびに担当セクションの方々がいかに「市民目線」が欠如しているかを如実に物語る数字ですね。
彼らはおそらく理解できないのでしょう。
また理解しようとしても既にその矛先は全然別の方向に向いているという事です。

でも時代は絶えず変化しています。
そういう彼らはいつの日にか・・・
恐竜のごとく突然の大きな環境の変化について行けず絶滅して行くのかも知れませんし、またそうなる事を願わずにはいられません。
Posted by 群馬の自転車屋さん at September 21, 2012 12:36
群馬の自転車屋さんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今に始まったことではありませんが、市民目線どころか完全に「お上」の目線ということなのでしょうね。
市民の愚かな考えより、お役人様の言うことを聞いておけばいいくらいの意識があるのでしょう。
また、それが市民の安全や利便性なんかより、公共事業における利権や天下り先の確保などを含めた、役所の論理が優先されるであろうことは容易に推測されます。
恐竜ならいいですが、よく例えられるように寄生虫とするならば、寄生虫が死滅するときは宿主が死亡する時にならないことを願うのみです。
Posted by cycleroad at September 22, 2012 23:47
 
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