January 05, 2013

従来通りでは何も生まれない

2013年は、どんな年になるでしょうか。


やはり景気の動向が気になりますが、経済の再生を掲げる新政権がスタートしたことで、強力に金融緩和を進めるという予想から為替相場は円安に動いています。年明けの株式市場は大幅に値上りし、日経平均株価は、一時1万700円台を回復しました。

まだまだ予断は許さないものの、欧州の金融危機による信用不安は和らいで、市場が落ち着いてきた感があります。アメリカでは、いわゆる財政の崖が回避され、ニューヨーク株式市場の今年最初の取り引きでは、ダウ平均株価が昨年末に比べ300ドル以上も値上がりしました。

円安アメリカ経済の回復の足取りも決して軽いとは言えませんが、住宅市場の改善など、明るい兆しが見えつつあります。財政の崖を巡る協議の決着後も大統領と議会の対立は残り、抜本的な財政再建策が先送りされるなど、波乱要因はありますが、米国経済の先行きが期待されるところです。

さて、そのアメリカには、よく言われることですが、起業精神が旺盛で、ベンチャー企業への投資が活発であるなど、スモールビジネスが育つ環境があります。このことによって、次々と新しいものが生まれ、イノベーションを促し、経済が活性化されます。アメリカ経済の底力の源泉の一つとして挙げられると思います。

アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックといった企業も、そんなベンチャーの中から育ってきました。そして今も次々と新しいベンチャーが生まれています。ITやネット関連に限らず、中にはニッチな分野、マニアックな分野に展開しようと考えるベンチャーも少なくありません。

自転車の分野で新しい商品を世の中に送り出そうとしているクリスさんたちも、そんなベンチャーの一つです。彼らのビジネスは“BTPS!”、何の略かと思えば、“Bike Tire Pressure System ”の頭文字、つまり、自転車のタイヤの空気圧を計るシステムです。

と言っても、よくある自転車用のタイヤゲージ、タイヤの空気圧を計る測定器を売ろうと言うのではありません。あらかじめタイヤの中に装着してき、ワイヤレスの無線通信によって、タイヤの空気圧をリアルタイムにモニター出来るという装置です。

BTPS!, ibtps.ch

普通、自転車のタイヤの空気圧は、ポンプについている圧力計か、専用のタイヤゲージによって計ります。サイクリストなら、タイヤに空気を入れる際の目安として、もしくは適正な空気圧が保たれているか、空気を補充する必要があるか見るため、空気圧を計ると思います。

この“BTPS”を使えば、キャップをとって、バルブをゆるめ、いちいち測定する必要がありません。必要な時に、手元のスマートフォンや一部のサイクルコンピュータ、スマートウォッチなどの端末ですぐに空気圧を確認できます。あらかじめ、圧力が不足したら知らせるように設定することも出来ます。

今まで、タイヤゲージで計るのが当たり前で、とくに不便とは思っていませんでしたが、なるほど、これがあれば便利です。うっかり空気圧を計るのを忘れたり、空気圧が少ないまま走行してしまっても、圧力不足を警告してくれます。今までにない画期的なシステムと言えるのではないでしょうか。

BTPS!, ibtps.ch

走行前に計ればいいことですが、これならば走行中に、何らかのアクシデントによって空気圧が下がり始めても通知してくれます。素早く異常に気づけば、パンクする前に処置することも可能でしょう。急な下り坂でのパンクなど、事故につながりかねない事態を未然に防ぐことが出来るかも知れません。

日本で、きちんとタイヤの空気圧を管理して乗っている人の割合は多くないと思います。あまり空気圧にシビアでないママチャリに乗る人が圧倒的に多いですし、実際に明らかにタイヤの空気圧が不足した自転車を見ることも少なくありません。正確に計ったことがない人も多いのではないでしょうか。

そんな人たちから見れば、意味のある装置には見えないと思います。でも、自転車のタイヤの空気圧は大切です。適正な圧力に足りていないと、乗り心地だけでなくパフォーマンスも落ちます。いわゆるスネークバイトによるパンクなど、適正な空気圧なら起こらない、余計なトラブルに見舞われるリスクも増します。

BTPS!, ibtps.ch

また、時間の経過とともに空気圧は減っていきます。バルブがきちんと閉まっていても、どうしてもタイヤチューブの表面から微量の空気が抜けるのを防ぎきれないからです。温度などによっても変わりますし、空気圧を計ることで、調整する必要があるかわかるわけです。

実際に空気圧を定期的に計測している人は一部だと思います。その意味で、マニアックな分野で展開するベンチャーではあります。しかし、タイヤの空気圧を適正に維持しておけば、パンクなどの、より面倒なトラブルに見舞われなくて済むわけで、本当は誰にでもメリットのある話です。

空気圧を監視し、パンクを未然に防いでくれるシステム、空気の注入の時期を教えてくれるシステムとして価値が認められれば、一部のサイクリストだけでなく一般にも売れるようになるかも知れません。どんな自転車にも搭載されるようになれば、その市場は大きく広がる可能性があります。

BTPS!, ibtps.ch

ふつう、自転車にスマホを使うと言えば、ナビケーションとか、走行情報やログの管理、速度やケイデンス、ハートレートのモニターなどが思い浮かびます。既にいろいろな製品があって競争も激しいわけですが、扱うデータは、だいたい似たようなものになります。

それら、既存の製品とは目の付け所が違う、タイヤの空気圧というデータを対象にしたところがアイディアです。これまで開発されていない、新たなビジネスの余地があったわけです。自転車の世界でも、まだまだイノベーションの種が埋もれているというこのなのかも知れません。

この“BTPS”、現在、“Kickstarter”で資金を集めようとしています。なかなか面白いアイディアだと思いますが、このシステム自体を有効と認める人が限られ、ニッチであるだけに、果たして資金集めに成功するか、実際に製品化されるかが注目されるところです。

BTPS!, ibtps.ch



アメリカでは起業スピリッツが旺盛で、多種多様なベンチャーが生まれています。ところが、日本では全くと言っていいほど状況が違います。アメリカで優秀な学生は、学生のまま起業を目指すのに対し、日本の学生は、ごく限られた大企業の新卒採用枠に殺到し、厳しいシューカツに明け暮れています。

アメリカと日本では、何度でも再挑戦出来る社会の仕組みやベンチャーへの投資環境など、さまざまな部分が違いますので、一概に日本の学生を責めるわけにはいきません。しかし、この違いが日本でアップルやグーグルが生まれない要因とも言えるでしょう。

デジタルゲージタイヤゲージ

今年の景気の動向も気になるところですが、目先のことだけを見ていては事を誤ります。大型の予算を組んで従来の土建型の公共事業を増やすことが、果たして雇用を生み出し、持続的な経済成長を促すかについては疑問を感じます。災害対策も必要だとは思いますが、財政再建が遠のくことにも懸念が残ります。

日本の経済を支えてきた家電などの分野の不振が目立つのに、新しい産業が育って来ないことが問題と感じる人も多いと思います。これまでも景気対策として公共工事の大盤振る舞いが散々行われてきましたが、「失われた年月」を重ねるだけでした。旧態依然とした政策を繰り返すだけで経済成長が見込めるでしょうか。

それよりも、従来の産業の既得権を守ろうとする構造や団体、あるいは参入障壁を崩し、役人の権力の源泉たる膨大な許認可権の山にメスを入れ、天下り先だけが潤うような行政システムを止め、ベンチャーへの投資を促す税制にするなど、イノベーションを促していくような改革こそが必要なのではないでしょうか。





マグロが1億5千万円ですか。景気のいい話ではありますが..。

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この記事へのコメント
今年も楽しみにしております。宜しくお願いします!いやはやそれにしてもこのシステムはいいですねぇ〜 欲しいなあ 毎日自転車漕いでいると気が付かないです、何となくオモいなあ…そこではじめて空気圧を測るので空気圧が下がったらどのくらい走りに影響するのか すぐわかる、自動車にも使えますよね、空気圧と燃費の関連性がすぐわかる、素晴らしい!
Posted by タニグチ at January 07, 2013 18:56
タニグチさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今年もよろしくお願いします。
リアルタイムにタイヤの空気圧を把握するようなシステムを、自転車に搭載するという発想が斬新です。しかも無線で手元で確認できるところがいいですね。
クルマのタイヤ用には、これとは別に似たような装置が既にあるようです。おそらく、それをヒントに自転車に応用したのではないかと思います。

Posted by cycleroad at January 07, 2013 23:28
 
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