April 02, 2013

よりよい社会へ新たな取組み

新年度がスタートしました。


街には新社会人と思われるスーツ姿も目立ちます。緊張の中に不安と期待の入り混じった面持ちといったところでしょうか。新入学で新しい生活を始めた学生も含め、今月から通勤・通学に自転車という人もあることでしょう。今回は最近の自転車関連のニュースを拾ってみたいと思います。


悪質自転車、講習逃れは罰金 道交法改正案を閣議決定

政府は29日、悪質な違反を繰り返した自転車運転者に安全講習を義務付ける制度の導入などを柱とした道交法改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。講習は3年程度の間に酒酔いや信号無視といった違反で2回以上摘発された運転者が対象。各都道府県の公安委員会による受講命令に従わないと5万円以下の罰金が科される。

講習では高額の賠償金を請求されたケースを紹介し、自転車事故遺族の手記も朗読させる。14歳未満の少年は、刑法の規定で刑事責任を問われないため対象外となる。

現在は双方向通行できる路側帯について、自転車が通る場合は道路の左側に限定するとの規定も盛り込まれた。

また、てんかんや統合失調症など車の運転に支障を及ぼす可能性のある病気の患者の免許に関し、取得や更新の際に病状を虚偽申告した場合、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」とする罰則を新設。医師が患者の情報を公安委員会に任意で通報する制度も盛り込んだ。

無免許運転の罰則を引き上げ「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」としたほか、車の提供者には「3年、50万円」、依頼・要求による同乗者には「2年、30万円」の罰則を新設する。(2013.3.29 日経新聞)


東京駅周辺 放置自転車対策で駐輪場悪質な違反者に講習を義務付ける法案の提出が決まりました。自転車の違反者にいきなり赤キップに相当する罰金、刑事罰ではなく、講習を受けさせ、拒否して初めて罰金ということのようです。クルマでいう青キップのような役割を果たす罰則を新設することで、懸案の解消を果たそうということなのでしょう。

確かに、自転車の場合、青キップにあたる罰則がなかったせいで、いきなり刑事罰というのは、クルマと比べて著しく公平さを欠くとの指摘があり、検挙が控えられてきたという経緯があります。講習受講という罰則を設けて積極適用し、取締りの実効性を上げようという意図なのでしょう。

ただ、本来は罰金刑などが定められている違反、悪質な違反に対する罰則です。それを、言ってみれば安全講習を受講すれば免除というのでは、むしろ罰則を緩めることになると見ることもできます。運用の仕方によっては、違反の抑止効果を下げてしまう可能性が危惧されます。

それに、クルマと違って自転車には免許証がありません。身元を確認できる書類を携行する義務もないわけで、身元の確認が困難です。無理ではないにせよ、確認に手間がかかるでしょう。当然ながら、実務上のことは考えていると思いますが、そのあたりにも問題があるような気がします。

また、「現在は双方向通行できる路側帯について、自転車が通る場合は道路の左側に限定する」形に改正されます。走行を許された歩道を両方向に走行できるのと同じで、路側帯を通る限り、歩道のない道路でも両方向走行が可能でした。これでは歩道のない道路で、現実的に逆走を認めるかのような状態になってしまいます。

この状態は問題だったわけで、妥当な改正と言えるでしょう。ちなみに、いわゆる歩道がある道路での車道の逆走は、これまでも違反です。車道の左側部分の白線と、歩道のない道路の白線は、同じに見えますが意味が違います。詳しいこと、この改正の意味がイマイチ理解出来ない方は、過去の記事を参考にしてください。
→ すでにある部分を上手に使う


通勤自転車に駐輪場、企業の義務に 都が条例

全国初、7月施行へ

自転車の放置対策や安全利用を促す条例が28日の東京都議会で民主、自民、公明などの賛成多数で可決、成立した。自転車通勤を認めている事業者に、従業員が駐輪場を確保しているかの確認を義務付けることが柱で、全国初。7月1日から施行する。

条例は都や自転車の利用者、販売店などの責務を明記。罰則は設けていない。就業規則で自転車利用を禁じていない事業者には、通勤で利用する従業員用の駐輪スペースの確保も義務付けた。

販売業者に対しては、ブレーキがないなど道交法に違反する競技用自転車(ピストバイク)の販売を禁止。販売中止勧告に従わない場合は、販売業者名を公表する。(後略 2013/3/29 日経新聞)


ジテツウ始めませんか東京都はこれまで、警察庁や国土交通省が方針を転換した後も、自転車に歩道走行させようとする整備を続ける意思を示したり、東京都だけナンバープレートを導入しようとしたり、自転車行政に関しては、ことごとく首をかしげざるを得ない姿勢を示してきました。

放置自転車の問題があるのは理解します。しかし、「就業規則で自転車利用を禁じていない事業者には、通勤で利用する従業員用の駐輪スペースの確保も義務付ける」ということは、就業規則で自転車通勤を禁止しろと言っているようなものです。

都心で、従業員用の駐輪スペースの確保が難しい企業も多いと思います。スペースを確保するより、就業規則を改定するほうが簡単で、手っ取り早いのは間違いないでしょう。迷惑駐輪を誘発しないように、雇用主が責任をもって駐輪スペースを確保せよというのは正論でしょうが、いきなり義務付けるのも酷でしょう。

このままでは、自転車通勤を禁止する企業が増える可能性が否定できません。同じような大都市でも、例えばニューヨークでは、従業員が通勤しやすいように駐輪スペースを確保した企業には、税制上の特典を与えるなど、積極的に自転車通勤を促進するため、それを助ける方向で政策を行っています。

同じ駐輪スペースの設置を促すにも、正反対のやり方です。東京都はなるべく自転車を使わせないようにしたいとの意図が透けて見えます。ロンドンやリオデジャネイロも、オリンピック開催に向けて自転車の活用を打ち出しています。世界の常識から外れ、世界の趨勢と逆行していることに疑問を感じないのでしょうか。


天神に自転車押し歩き区間、全国初の条例施行

自転車押し歩き区間自転車による事故防止に向け、福岡市の繁華街・天神で、自転車の押し歩きを求める市条例が1日、施行された。悪質な運転マナーが問題となる中、利用者に押し歩きの努力義務を課した条例は全国で初めて。

市の自転車の安全利用に関する条例で、同市中央区・天神交差点〜渡辺通4丁目交差点の西側歩道(渡辺通り)400メートルを押し歩きの推進区間に指定。通勤者の多い午前8時〜午後7時(土、日曜日と祝日は午前10時から)は、区間内での乗車が規制される。市が委託した指導員らが巡回し、降車を求める。罰則規定はない。

市によると、市内の自転車事故は昨年、3112件起き、うち歩行者を巻き込む事故は58件あった。歩行者との事故はここ数年、50件台で推移している。渡辺通りは駅やバスターミナルが集まり、人通りが多く、マナーの悪い自転車の取り締まりを求める声が上がっていた。(2013年4月1日 読売新聞)


押し歩き推進区間福岡では、自転車の押し歩き条例が施行されています。こうした条例が制定されるくらいですから、対策が必要な状況があったのでしょう。基本的に歩行者が優先されるべき歩道で、ルールを無視して走行する自転車利用者は許されないと思います。福岡市の取り組みは理解できます。

ただ、そもそも歩道を「自転車通行可」にしておいて、押し歩きを求めるというのもチグハグな対応に見えます。自転車が走行して危ないと言うのなら、問題となる区間の自転車通行可の指定を取り消し、自転車は車道走行という原則に立ち戻った上で、歩道は押して歩く場合に限り通行を認めるとすべきな気がします。

自転車押し歩き通行を許可しておいて、通行しないことを求めるというのも変な話です。そもそも歩道は自転車の通行は禁止であり、押して歩くならば歩行者とみなされるので、通行が可能になります。通行可の指定を取り消して、その旨を周知し、ついでに降りれば通れることを付け加えればいいと思います。そのほうがスッキリします。

マッチポンプではありませんが、わざわざ通行可にしておいて押して歩けという、わかりにくい対応をする必要があったのでしょうか。押し歩き条例は全国初と言いますが、他の自治体は普通に対処しているだけで、福岡市だけ、やり方を間違ってしまったように見えるのは私だけでしょうか。

推進区間を限定して押し歩きを求めるより、車道走行の原則、歩道通行可とする歩道の指定、歩行者優先の徹底という全国共通の道交法があるわけですから、それに準じたほうがいいでしょう。道交法の徹底を進めることで、この場所だけでなく、他の場所でのルールの遵守にもつながっていくのではないでしょうか。


自転車欠陥、1億5千万円賠償命令…輸入会社に

自転車部品の欠陥で走行中に転倒して重傷を負ったとして、茨城県つくば市の元会社経営・中島寛さん(63)夫妻が、自転車を輸入した「サイクルヨーロッパジャパン」(東京)に製造物責任法に基づく損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(白井幸夫裁判長)は25日、欠陥を認めて同社に約1億5000万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

中島さんは2008年8月、出勤中に突然、自転車の前輪が外れたため転倒、頸椎けいつい損傷の重傷を負った。首から下がマヒし、今は自宅で介護を受けている。

判決は、前輪を支えるサスペンション内の金属製バネが腐食して折れたのが事故原因だったと認定。バネが破断した際に脱輪を防ぐ措置が講じられていない欠陥があったなどと指摘した。(2013年3月25日20時41分 読売新聞)



輸入元が控訴=自転車転倒事故訴訟

イタリアブランド「ビアンキ」の自転車で走行中に前輪部分が外れて転倒し、手足がまひする障害が残った茨城県つくば市の無職中島寛さん(63)らが輸入元のサイクルヨーロッパジャパン(東京)に損害賠償を求めた訴訟で、同社は29日、計約1億8900万円の支払いを命じた一審東京地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。(2013/03/29 時事通信)


この裁判結果は大きく報道されました。提訴されたのは2010年のことで、その当時のニュース記事などがあまり残っていなかったのか、ニュースが報じられたあと、過去にこの件を取り上げた当ブログの記事へのアクセスが跳ね上がりました。それだけ注目した、関心を持った人も多かったのでしょう。

まことにお気の毒な事故であり、サイクリストにとっては他人事ではありません。被告側が控訴していますので、最終的な結果はわかりませんが、有名ブランドの自転車に構造上の欠陥があったのか、自損事故に販売元の責任が認められるのかどうかなど、注目を集めるのもわかります。

粗悪な格安自転車に製造上の問題があり、その結果事故が起きてニュースになる例は、これまでにもありました。粗悪な自転車だけでなく、名の通ったブランドであっても、構造的な問題がある可能性が否定できないこと、OEMも多いこと、自転車の突然の破壊で深刻な事故が起こるケースがあることには注意すべきでしょう。


電線に自転車! 7階ベランダからカバーごと飛ぶ

電線に自転車!首都圏に強風が吹き荒れた十三日午前、東京都台東区で、カバーとともに強風にあおられた自転車が空を飛び、電線に引っかかる珍事件が起きた。

現場は、浅草と上野を結ぶ「かっぱ橋本通り」の松が谷二丁目交差点近く。午前十時すぎ、住民から通報を受けた下谷署が東京電力に連絡、正午すぎに自転車は無事撤去された。停電やけが人などの被害はなかった。

署によると、自転車の所有者は歩道裏手のマンションの住民。一階に自転車置き場があるが、盗難に遭ったことがあり、七階の自宅ベランダに止めておいたという。

現場前の自転車店長貝瀬大智さん(36)は、SF映画「E.T.」さながらの光景にあぜんとしつつも、「総重量十キロほどのロードサイクルで軽量なうえ、カバーがかかっていたため、強風にあおられ空を舞ったのでは」と冷静に分析。「大惨事にならなくてよかった」と胸をなで下ろしていた。

警察から保管状況を聞かれた所有者は「今度はちゃんとベランダに固定し、事故のないよう気を付けます」と平謝りだったという。(2013年3月14日 東京新聞)


少し前の記事ですが、これも話題になりました。マンションのベランダなどで自転車を保管している人も、まさか飛んでいくことがあるとは考えていないでしょう。ただ、カバーをかける人もあると思いますし、軽量な自転車を購入する人も増えていると思います。

あまり聞かないニュースなので、滅多に起きないとは思います。でも、電線に引っかかったから大きくクローズアップされましたが、ベランダ以外も含め、自転車が飛ばされるような事態は、ニュースにまではならないだけで、けっこう起きているのかも知れません。

近年、昔はあまり聞かれなかった竜巻とか爆弾低気圧などの強風災害が多くなっているようです。テレビの中継で強風により道端の自転車がなぎ倒されている光景もお馴染みです。意外と忘れがちだと思いますが、台風も含め、強風の予想される時には、屋外やベランダの自転車の固定を気にしておく必要がありそうです。


ペダル全力、発電成功 西条・周布小に自転車型装置

自転車型発電装置災害時、僕らの力で電気を起こすぞ―。愛媛県西条市周布の周布小学校はこのほど、地元の高校に依頼して自転車をこいで発電する装置を設置した。児童は「学校に避難してきた人たちのため、頑張って電気を作りたい」と張り切っている。

周布小は災害時、地元住民らの一時避難場所と避難収容施設に指定されているが、停電が心配。水害時に屋外にある配電盤が使えなくなることも気掛かりだった。

このため自家発電に取り組むことにし、電気を起こす力として運動場を元気(げんき)に走り回る児童に着目。昨年9月、近くの東予高校に自転車を使った発電機の製作を依頼した。電気システム科3年村上凌一君ら3人が課題研究の中で製作した。

できあがった装置は自転車5台を連結。それぞれペダルをこぐと回転した後輪が発電機を回す仕組み。発生した電気は中央のインバーターに集められ、コンセントに家電製品をつなげば動かせる。水害を避けるため校舎3階の広場に設置した。(2013年03月30日 愛媛新聞)


よくイベントなどで、節電の啓発などに自転車型の人力発電装置が使われることがあります。見て分かりやすいスタイルですが、発電効率は高くなく、実用的ではありません。しかし、災害時となれば話は別です。停電し、非常用電源の燃料もなくなれば、人力くらいしか頼るものはありません。

新年度は手回しの充電器も、長く回し続けられるものではありません。ラジオを短時間使うくらいならともかく、携帯電話の充電ですら難儀すると言います。やはり、人力で発電するとなると、足の筋肉を使うのが一番です。地味なニュースですが、これが災害時に貴重な発電手段となる可能性があります。

災害での避難時に、電気が止まって一番困るのは、情報の途絶もそうですが、トイレだと言います。ポンプが動かなければ水を流すことも出来なくなります。衛生状態が悪化し、トイレに行きたくなくて水分を控え、それが体調悪化の原因になることも多いそうです。

災害のために、必要な物資を備蓄しておくことも大切ですが、発電を人力に頼らざるを得なくなった時、自転車で発電できる装置は重宝する可能性があります。自転車は、道路が断絶した状況での交通手段としても役立った実績があります。ふだんから、避難場所となる学校に何を備えておくかという視点は大事だと思います。

◇ ◇ ◇

新年度に向けて、自転車行政でも新たな取り組みが始まっているようです。街では新しく通勤や通学の手段として自転車に乗り始める人も増える時期でしょう。最初は緊張がありますが、慣れてくるに従い、油断するケースも増えてきます。くれぐれも交通安全には注意したいところです。


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国民栄誉賞、長嶋さんは遅すぎたくらいですね。なんでわざわざ4月1日に発表したのかも不思議ですが。

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