September 02, 2013

市民との関係をつなげる手段

今年の夏は全国的に暑くなりました。


連日の猛暑で、プールやビアガーデンなどが例年に増して大盛況だったようです。そのほかにも、この暑さのせいで例年以上に利用が増えた施設の一つに「図書館」があります。あまりの暑さに、冷房の効いた図書館に逃げ込んだ人は、全国的に多かったようです。

クールシェアクールシェアと言うそうですが、それぞれの家で昼間から冷房を使うより、冷房の効いた施設に出かけたほうが、省エネになります。家計にも優しいと考えた人が多かったのでしょう。冷房していると言っても、用のない役所に出かけても仕方ありませんが、図書館なら涼しい中で、とりあえず本を読むことが出来ます。

ただ、ふだん図書館に馴染みがなく、図書館の存在を思い出さなかった、図書館に行こうという考えが思い浮かばなかったという人も多いに違いありません。地域によっては、立派な図書館なのに、あまり来場者がいない、閑散としているところもあるのではないでしょうか。

図書館は、運営する地方自治体にとって、わざわざ宣伝したり、お客を呼び込むような施設ではありません。しかし、せっかくの施設が宝の持ち腐れになるより、少しでも多くの市民に利用してもらいたいと思うのが人情でしょう。あまりに利用率が低ければ、税金の無駄遣いなどと言われかねません。

アメリカ・コロラド州はデンバーにある、“Denver Public Library”デンバー公共図書館は、自転車を使って図書館サービスをこちらから届けようと考えました。“DPL Connect”というプログラムです。これは、この同図書館の“out-of-the box”アイデアコンテストから生まれました。

DPL Connect, denverlibrary.org

このコンテストで優勝した、二人の図書館員のアイディアです。デンバー公共図書館は、地域の中核を担う巨大な図書館です。利用が低迷していたり、不人気なわけではなく、むしろ積極的に新しいことに取り組む意欲的な図書館です。この図書館の出張サービスによって、もっと市民と図書館をつなげたいと考えたのです。

図書館にいて待っているだけでなく、こちらから出かけていこうというコンセプトです。近隣の公園やショッピングモール、カフェやコミュニティイベントの会場、スケートパークからコンサート会場、ファーマーズマーケットまで、あらゆる場所へ出かけて行きます。

DPL Connect, denverlibrary.org

図書館以外の場所に出かけていくことで、今まで図書館に来たことのない市民、図書館と縁遠かった市民と接触する機会が得られます。その場で図書を閲覧してもらうだけでなく、図書館の存在を知ってもらったり、あるいは思い出してもらったりする機会になります。

3輪の自転車、トライクで運べる量は限られています。出かけていく場所に応じて、ニーズのありそうな本、興味をひきそうな本を選びます。自転車修理やサイクリングコースの本だったり、都市農業や料理の本だったりします。自転車に乗っているのは司書なので、そこにない本は、探す手伝いをしてくれます。

DPL Connect, denverlibrary.org

いかにもアナログな感じですが、このトライクには“WiFi”でネット接続を提供する“HOTSPOT”も搭載されており、タブレット端末などで電子書籍を閲覧したりダウンロードすることも出来ます。その場にある本は限られますが、必要に応じて図書館の蔵書を借りる手配などもしてくれます。

その場で新しく貸し出しカードを作って登録する市民もいて、確実に図書館の利用者を増やしています。トライクに載せた本を屋外で貸すモバイル図書館というだけでなく、自転車をこいできた図書館司書と市民が交流することで、図書館と市民をつなごうとしているわけです。

Denver Public Library, Photo by KM Newnham,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.おそらく、デンバー公共図書館くらいの大きな図書館であれば、やろうと思えばバスかトラックを改造した移動図書館車を導入することも可能でしょう。でも、自転車なら初期費用もランニングコストも圧倒的に安くなります。どんな場所でも入って行きやすいですし、スペースもとりません。

市民は、自転車で本を運んできて広げているお兄さん、というスタイルに親しみやすさを感じるかも知れません。小さな移動図書館ですが、そのぶん敷居も低く、話しかけやすいということもあるに違いありません。話してみると本に詳しく、いろいろ相談に乗ってくれます。

デンバー公共図書館にしてみれば、図書を屋外に持ち出すというより、市民と図書館をつなぐことが重要です。自転車で出かけた司書と市民が交流することに意義があるとするならば、自転車のほうが好都合、うってつけということもあるのでしょう。

涼しくて快適日本の図書館では、市民サービスの充実と称してベストセラー小説ばかり多数購入して貸し出すなど、著作権を侵害するだけで、税金を使った無料の貸本屋ではないかとの批判があります。蔵書も少なく、単に学生の自習室というだけで、図書館自体不要ではないかという声もあります。

インターネットで情報を収集すれば、今時わざわざ図書館に行って調べる必要はないと考える人もあるでしょう。しかし、インターネットでは得られない情報、深く掘り下げた知識や知恵は本でしか得られない場合もあります。グーグルが全ての書物をネット上に収蔵し終えたならともかく、まだまだ本は必要とされています。

クールシェア必要ならアマゾンで検索すれば、大抵の本は見つかるでしょう。しかし、探していない本、存在を知らない本を偶然見かけて手に取ることはできません。ネット書店は便利ですが、リアルの本屋や図書館には、また違った良さがあるのも確かです。

図書館にあまり必要性を感じず、涼みにくらいしか行かない人が増えているのかも知れません。しかし、図書館は市民の文化的な生活を営む権利を保証し、学ぶ意欲を持つ市民が無償で多くの書物にアクセスできる貴重な場所であり、地域の教育や文化の向上に貢献する重要な施設です。

猛暑で人が集まる場所になっているのは、必ずしも図書館の責任ではなく、市民の意識の問題もあるでしょう。ただ、デンバーのように自転車で出張しろと言うつもりはありませんが、日本の図書館も、もっと市民に、本来の意味での利用を促すことを考えてもいいのかも知れません。





日本でも竜巻が発生しやすくなってきたのでしょうか。いつ、どこで起きるかわからないのが厄介ですね。

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この記事へのコメント
「ディスプレイ」より「紙」の方が、脳は情報をちゃんと理解できるそうだ。
http://irorio.jp/canal/20130724/70326/
「総目次」、、、まるで漢方薬局の棚を見てるようだ。とても苦くて呑み込めない。「良薬は口に苦し」とはまさにこのことだ。そこで、オブラートに包みこむように紙に印刷してみた。ちゃんと理解できるだろうか。
http://www4.plala.or.jp/k-k/somokuji.html
Posted by sharetheroad at September 03, 2013 01:57
sharetheroadさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
電子書籍が普及しつつありますが、そのメリットを認識しつつも、やっぱり紙の本がいいと言う人も少なくないようです。
その背景には、脳の性質が影響しているのかも知れませんね。
Posted by cycleroad at September 05, 2013 23:46
 
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