October 20, 2013

自転車盗を減らしていく技術

自転車の盗難を防ぐ方法はいろいろあります。


前回は、海外の自転車盗難事情と、日本との違いについて取り上げました。日本での自転車盗の認知件数は、例えば東京都だけでも年間5万3千件を上回っています(平成24年)。都内だけで、1日に145台も盗まれていることになります。警察に届けないケースも含めれば、さらに多いでしょう。

警視庁によれば、そのうち、6割近くが無施錠の状態で盗まれており、警察が鍵かけを訴えるのも頷けます。おそらく、格安の自転車なので盗まれないとタカをくくっていたり、また買えばいいと考える人もあるのでしょう。盗難に遭う確率と、鍵をかける手間との比較で、かけない選択をしているのかも知れません。

鍵をかけると言っても、日本では、固定物につなげず、馬蹄錠やシリンダー錠でしか施錠していない人がほとんどです。しかし、海外の街の多くでは考えられません。固定物につなげて厳重に施錠するのが当たり前ですが、それでも盗まれているのが実態です。

海外では、なんとか自転車盗を防ぎたいと考えるサイクリストのニーズが高く、自転車盗の防止対策も進んでいます。これまでにも多くのアイディアを取り上げてきましたが、最近の新たな盗難防止の取り組みを、いくつか取り上げてみたいと思います。

BitLock, www.kickstarter.comBitLock, www.kickstarter.com

オーソドックスな考え方として、ロックを壊されにくくするという方法があります。U字ロックは、ワイヤー錠などと比べて切断しにくいため、比較的防犯効果は高いとされています。プロが使うような大型の専用工具ならば切断も可能だと思いますが、それを想定した対策は困難です。

むしろ問題とするならば、U字ロックの弱点、鍵穴の部分です。以前、防犯効果抜群と信頼性が高かった有名メーカーのU字錠を簡単に開錠する方法が、YouTUBEに公開されて大騒ぎになったことがあります。素人でも、ボールペン1本で、あっという間に開けられるというものでした。

もちろん、その後改善されましたが、いかに頑丈な素材であっても、鍵を開けられたり、鍵の部分が壊されたら意味がないことが意識されました。この、“BitLock”は、その弱点となりうる鍵穴をなくしてしまうというアイディアです。確かに、鍵穴がなければピッキングなども出来ません。



このU字錠は、スマホのアプリからブルートゥースの電波によって開錠、施錠します。だから鍵穴は必要ないのです。従来のような鍵か必要なくなるので、鍵を紛失して困ることもありません。当然ながら、信号は暗号化されているので、他の人には開けられません。

オンラインバンキングで使うような暗号技術が使われていて、信頼性は高いと言います。一方で、自分のスマホがバッテリー切れで使えないといった場合でも、友人のスマホを借りてアプリをダウンロードすれば、すぐに開錠することができます。

この機能は、友人と自転車を貸し借りして乗るような使い方も便利にします。デジタルキーを共有しておけば、直接会って鍵を渡す必要はありません。電話やメールで了解をとれば、所有者不在でも自転車が借りられます。この“BitLock”には、所在地をGPSを使って表示させる機能があるので、出先でもすぐ探せます。

BitLock, www.kickstarter.comBitLock, www.kickstarter.com

この“BitLock”を、簡単な自転車シェアリングシステムとして使うことも可能です。“BitLock”だけで、貸し出しステーションや専用の自転車は必要ありません。行動範囲が重なっている友達同士で自転車を共有するだけでも、いろいろ便利に使えそうです。

現在、事業化に向けた資金調達段階ですが、世界初の鍵穴のない自転車ロックだとしています。キーをデジタルにすることによって、盗まれにくくする以外にも、いろいろなメリットが生まれるわけで、まさにデジタル時代の新しい自転車ロックと言えるでしょう。


Bike+, www.wi-mm.comBike+, www.wi-mm.com

新しいデジタル技術を防犯に役立てようというアイディアは、ほかにもあります。こちらの“Bike+”、ふだんは高性能なサイクルコンピュータとして働きます。一般的なサイコンの機能に加え、高度計や加速度センサー、GPSにブルートゥースなどの機能により、いろいろなライディングのデータをとることが出来ます。

違うのは、モーションセンサーで、盗まれそうになった場合のアラームとして機能させることが出来るようになっています。3Gモジュールで、自分の携帯電話に通報させることも可能です。また、盗まれてしまった場合には、GPSでその所在地を突き止める機能も備えています。

もちろん、これ自体はロックではないので、他の従来型のロックとの併用が必要です。でもセンサーや無線通信、GPS機能などによって、盗難の抑止や早期の対応、盗まれた場合の追跡など機能満載です。どうせなら、盗難にも備えたサイコンにしようと考える人もあるに違いありません。

FlyKly Smart Wheel, www.flykly.comFlyKly Smart Wheel, www.flykly.com

FlyKly Smart Wheel, www.flykly.comFlyKly Smart Wheel, www.flykly.com

同じような考え方で、サイクルコンピュータではなく、ホイールにその機能を持たせようという製品もあります。タイヤを交換するだけで、普通の自転車を電動アシスト自転車に変えるという製品は、既にいくつもあります。この“FlyKly Smart Wheel”、さまざまなタイプの自転車に取り付け可能ですが、それだけではありません。

基本的に、ハブの部分にモーターや電池が搭載されており、タイヤを交換するだけで、電動アシスト機能が追加されます。さらにGPS機能が搭載され、万一盗まれた時に所在地を追跡することが出来ます。また、通信機能によって、盗難発生を知らせるメッセージが送られるようになっています。



日本では、一時的な足代わりとして盗む犯行が多いとされています。海外では、盗んだ自転車を自分で乗るのを除けば、その多くは、自転車本体やパーツに分解して転売し換金するのが動機と考えられています。ネットオークションなどの普及で、換金が容易になったことも背景にあるのでしょう。

わざわざリスクの高い住居侵入などをする必要がなく、獲物はいくらでも街角においてあります。発生件数があまりにも多く、警察も検挙に手が回りません。さらに換金が容易とくれば、自転車泥棒にとって、もってこいの環境でしょう。犯行がなくならないわけです。

もし、換金が困難になれば、自転車盗は少なくなるだろうと考えるのは自然です。この“The Bike Index”は、自転車に独自のシリアルナンバーをつけ、データベースとして管理することにより、盗難車の換金を防ぎ、自転車盗を減らそうという取り組みです。

The Bike Index, www.bikeindex.orgThe Bike Index, www.bikeindex.org

独自の番号をつけておけば、盗まれた時に発見される可能性が増えます。単に何々のメーカーの何々モデルというだけでは照合は困難ですが、番号があれば検索が可能です。盗難が報告された自転車かどうか確認することが出来ます。自転車ショップの店員が、怪しい自転車を発見して、照会してくれるかも知れません。

発見の可能性だけでなく、ネットオークションなどで中古の自転車を購入しようという人が、取引の際、このインデックスを確認するようになれば、盗難届けが出ているものかどうか判別でき、犯人の検挙や換金の抑止につながるはずです。サイクリストや関係者が社会的に連携して自転車盗と戦おうという試みなのです。

クルマの製造番号のような統一のインデックスがあればいいのですが、自転車にはそのような制度がありません。あっても、ローカルなものに限られ、全ての人が登録するわけではありません。このことが、自転車を盗んで換金しやすくしているのは間違いないでしょう。



誰もが統一のインデックスに登録するようになって、ネットオークションなどで出品する際、そのインデックスを明示しなければ取引できないようになれば、換金は難しくなると考えられます。こうした仕組みが上手く機能するようになれば、盗難抑止に大きく貢献するでしょう。

日本にも防犯登録というシステムがあります。これによって盗難自転車が持ち主の元へ戻ることもあります。しかし、都道府県ごとの縦割りになっており、県境を越えれば確認できません。もちろん登録していなかったり、登録証が剥がされてしまっていれば、確認する手立てはありません。

警察官が職務質問して照会することはあっても、ネットオークションなどの売買の場で防犯登録を使い、正しい所有者かどうか確認されるわけではありません。誰もが簡単にデータベースにアクセスできるわけでもないですし、有効に機能しているとは言えません。

こうしたアイディアは新しいものではなく、このブログでも海外での取り組みを、過去にいくつか取り上げたことがあります。その理念は高く評価できると思いますが、このスタイルの難しいところは、広く普及し、システムとして機能するようにならなければ、抑止効果が発揮されないところでしょう。

Bike+, www.wi-mm.comこの“The Bike Index”でなくいもいいですが、自転車の登録システムが標準化し、普及することが期待されます。ネットを使えば世界中で共有することも不可能ではありません。非接触のICタグなど、新しい技術を使うことも考えられるでしょう。これまで実現していないからと言って、今後も実現不可能とは限りません。

◇ ◇ ◇

自転車の盗難防止の工夫にも、インターネットやデジタル技術を使った、新しいものが目立ってきています。当然ながら、どの方法も、それで確実に盗難が防げるというものではありませんが、盗みにくくする、時間や手間をかけさせる、盗むのを諦めさせる、発見するなど、一定の効果は期待できます。

それらを上手に組み合わせることで、窃盗犯に犯行を敬遠させることが出来れば、高い確率で盗難を防止できるようになるでしょう。換金させにくくするなども含め、自転車盗をさせない社会を目指せば、自転車盗の発生件数は、もっと減らせるに違いありません。

ネットやデジタルの技術によって、近年大幅にコストが下がったものは、世の中にたくさんあります。自転車盗の防止も、こうした技術を上手く利用することで、今までになかった対策が広がっていく可能性があります。自転車泥棒にとって、自転車盗を割に合わないものにしていきたいものです。





つい、この間まで季節はずれの夏日とか言ってた気がしますが、今日も冷たい雨、気温が下がってきましたね。

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この記事へのコメント
こんにちは。いつも興味深い記事をありがとうございます。
防犯登録に関してなのですが、確か県をまたいでも所有者の確認はできたかと思います。ただ照会に余計に時間が掛かるだけだったかと。そして、登録する際に車台番号と持ち主の情報を結びつけているので、シールを剥がされてしまっていても持ち主の特定はできたかと思います。一度確認いただけたらと思います。
Posted by てん at October 21, 2013 02:56
てんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
もちろん県をまたいでも照会は出来るでしょうが、よほどのことがないと、他県の警察に照会しないという話を聞きます。
一般的にも、他県の警察に遠慮しあい、管轄を超えて連携しないことは、多くの点で指摘されており、密接に連絡しあうという話はあまり聞きません。実際問題として、広域には機能していないのが実態ではないでしょうか。
車台番号は、メーカーが独自につけるもので、重複したり、そもそも番号がない場合もあります。番号をつける義務はなく、重複をさけたり、改変されないような仕様にするといった、統一された規定も全くありません。
また、防犯登録の情報は短くて5年で抹消され、規定は県によってバラバラです。
車台番号がない自転車でも売買に制限はありません。削り取られたり、再塗装などされれば、特定は困難です。
実際に盗難を防ぐには穴だらけの制度になっています。ほかにも登録料の使途が不明など、いろいろと問題な制度なのは間違いないでしょう。
Posted by cycleroad at October 21, 2013 23:22
 
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