January 27, 2014

道路に対する考え方を変える

2020年の東京五輪まで、あと6年半です。


東京でのオリンピック・パラリンピックに向けては、国立競技場をはじめとする競技施設や選手村の建設、東京の環状道路などの道路整備の前倒し、鉄道の新線の計画など、さまざまな大規模投資がおこなわれ、大きな経済波及効果が見込まれます。多くの観光客も訪れるでしょうし、景気浮揚効果にも期待が寄せられています。

この五輪開催は、東京の自転車事情の改善にも、絶好の機会だと思います。NPOの自転車活用推進研究会による、「新都知事とつくろう、TOKYO自転車シティ」の署名キャンペーンが行われていますが、新しい都知事には、ぜひ自転車インフラのことも考えてほしいものです。

Olympic Monument at the Office Building of the IOC in Lausanne, Switzerland. This image is in the public domain.日本では当たり前のように自転車が歩道を走行していますが、これは世界の人が見たら驚くような野蛮な習慣、非常識極まりない光景です。五輪で世界からお客様を迎えようとしているのに、歩道を歩くのも危険では、「おもてなし」どころではありません。先進国として非常に恥ずかしい姿をさらすことになります。

警察庁や国交省は、自転車の車道走行の原則の徹底へと舵を切りましたが、40年以上にわたって続けられてきた、自転車の歩道走行という間違った道路行政のせいで、なかなか歩道走行が改まらないのが現状です。長年、歩道走行させようとしてきた結果、車道走行がしにくい場所も少なくありません。

やはり、普通の人が安心・安全に自転車で車道走行できるような道路整備が必要でしょう。自転車レーン等を整備することは、自転車の走行空間を確保し、クルマとの事故を防ぐことになります。これは、歩行者にとって安心して歩道を歩けるようにすることでもあります。

ただ、そんな整備が6年半で出来るのかと考える人も多いかも知れません。でも、決して無理ではありません。署名キャンペーンのサイトにも書いてありますし、このブログでも再三取り上げてきましたが、かつて欧州最悪の自転車環境と言われたロンドンが、6年ほどで世界有数の自転車都市に変貌しています。

ロンドンだけではありません。ニューヨークも、この6年半ほどで大きく変わりました。マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長のイニシアチブで、プランNYCが立ち上がったのが2007年です。それから6年半で、ニューヨークの道路は大きく変わっています。どう変わったか、一目瞭然の動画があります。



自転車レーンが充実したことがよくわかります。もう一つ印象深いのは、タイムズスクェアなどに歩行者天国のような歩行者用の休憩スペースが設置されるなど、歩行者向けの整備にも力が入れられていることです。クルマの走行車線を削ることで、これらの整備を実現させています。

ニューヨークは道が広いから可能なのだと指摘する人もあるでしょう。動画に出てくるのは有名な通りなので、たしかに広いですが、もっと狭い通りもたくさんありますし、そうした通りにも自転車レーンが設置されているところは、多数あります。東京でも十分可能なはずです。

Photo by Terabass,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.もちろん、ニューヨークとは条件が違う部分もあります。しかし、動画にあるように、中央分離帯を改造したり、多少狭いですが、クルマ1車線分を両方向の自転車レーンで使うなど、工夫次第でしょう。東京にも広い道路は多いですし、いくらでも工夫の余地はあると思います。

今まで、歩道走行を前提にしてきたため、歩行者の通行量に比べて無駄に広い歩道もたくさんあります。場合によっては削れるはずです。電線の地中化によって、設置余地が増えるかも知れません。警察庁はパーキングメーターを減らしていくとしています。違法駐車車輌に占領されて、無駄になっているスペースもあるはずです。

東京の場合、通過車輌が多いので、五輪に向けて環状線の整備が進めば、都心部を迂回する車輌が増え、交通量的にも余裕が出てくるでしょう。公共の駐車場もあるのですから、都心の一等地を違法駐車車輌や平面のパーキングメーターに使うのはもったいない話です。

ニューヨークでは、自転車シェアリングも始まりました。これによって、ニューヨークへ自転車で行けない地域に住んでいる人でも、ニューヨークを訪れたときに自転車が利用できます。観光客がニューヨークを周遊するのにも便利で、人気を博しています。



最近、ようやく外国人観光客がGDPにも大きく貢献することが認識され始め、昨年は日本への渡航客が1千万人を超えたことが話題になりました。自転車シェアリングは、観光客の利便性を向上させ、周遊が容易になることで、東京観光の人気を高めるに違いありません。

ニューヨークでは、ブルームバーク市長の改革のおかげで、大きく観光客を増やしました。2013年にニューヨーク市を訪れた観光客は5千430万人、直接使ったお金は約4兆円、観光産業などへの経済波及効果は約6兆円となり、過去最高です。10年前の1.5倍以上と言います。

もちろん、自転車レーンやシェアサイクルの効果だけではありませんが、自転車で周遊の利便性を高めたり、歩行者向けの休憩広場の整備も貢献しているのは間違いありません。東京も、近県からの通過車輌のことを優先するより、歩行者や自転車のことを、もっと考えるべきではないでしょうか。



それでも、インフラ整備工事には費用がかかるし、時間もかかると考える人は多いに違いありません。しかし、考え方を変えれば可能だと話すのが、上の動画に出てくる、Janette Sadik-Khanさんです。2007年から2013年まで、ニューヨーク市の交通局長をつとめた女性です。

彼女は、少しだけ違った角度から見ればいいと言います。6年半で都市の道路を変えるのは十分可能な理由がわかる、とても興味深い動画があります。ご存知の方も多いと思いますが、TED Conference という講演会があります。そこで非常に示唆に富んだ講演をしています。これは聞く価値があります。



都市の道路は素早く、安価に刷新できると話しています。そして、すぐ利益が発生し、人気スポットにもなると言います。都市の人々に楽しんでもらうために、自転車や歩行者、バスのような公共交通に、より多くの空間を提供すべきだと主張しています。

今までの道路は、クルマがいかに速く、効率的に移動できるかという視点しかありませんでした。ニューヨークの試みは、都市の重要な資産である道路に対する考え方を、これまでのようにクルマ優先、移動効率重視から大きく転換するものと言えるでしょう。

The New York City Department of Transportation道路をクルマ通行止めにして歩行者用の広場をつくることで、人々を引き寄せ、都市の賑わいを生み出し、楽しんでもらい、周辺の商業施設へも大きな経済波及効果を生みます。しかも、これは簡単に実験出来るのです。ダメなら元に戻せます。この考え方が突破口を開きました。

タイムズスクエアの改造では、さらに多くの人が集まるようになっただけではありません。歩行者の事故が35%減少、移動所要時間は17%短縮、大手ショップの旗艦店が5つもオープンし、店舗家賃は倍増するなど、大きな経済効果も生みました。この手法は他の都市へも広がっています。

事前の長い期間をかけた調査やコンピュータによるシミュレーションは不要、ペンキや仮設のベンチなどを使って、わずか週末の2日もあれば可能です。これまで東京で、下手をすると実現に何十年もかかっていたような整備が、発想を変えれば、あっという間に出来るのです。

従来の方法と比べて、非常に早くて簡単、費用も大幅に少なく出来ます。このような即効性のある手法を自転車レーンにも応用したわけです。6年で、自転車はニューヨークにおいて、一部の愛好者だけでなく、一般の人が利用する日常の移動手段の一つになったと強調しています。

ニューヨークも以前は、自転車に乗るのが恐ろしいところだったのに、アメリカでも有数の自転車都市に変貌したというのは誰もが認めるところでしょう。(私は以前でも恐ろしいとは思いませんでしたが..。)しかも、周辺商業施設の売り上げを5割も伸ばし、空き店舗を減少させるなど、経済効果が認められています。

別の調査では、自転車レーンが整備され、多くの人が自転車を利用するようになったことで、クルマの渋滞が減ったことが明らかになっています。クルマのレーンが減少した場所もあるのに、クルマの平均速度は速くなったことが報告されているのです。

The New York City Department of Transportation自転車レーンによって自転車や歩行者の負傷率も大幅に減少しました。自転車の利用者数は大幅に増えたにもかかわらず、負傷する率が減ったために負傷者数は増えず、ほとんど横ばいに推移しているのは、自転車レーンの安全性、有効性を示しています。

自転車は、老若男女を問わず、多くの人が利用するようになりました。自転車シェアリングシステムも好評で、利用者が大きく伸びています。そのほか、バスの専用レーンも同様のペンキを塗る手法で設置し、スムースな運行を実現しています。

Janette Sadik-Khanさんが強調するのは、道路を即座に改造することは可能であること、安い費用で、即効的な利益があること、人気スポットにもなりうることです。道路を見直すだけで、都市の資産として大きく活用できる可能性があります。これまで、クルマ優先の固定観念にとらわれていたことに気づけば、大きく変わります。

日本でも国土交通省が、歩道空間などを活用したビジネスチャンスを広げるため、一般道路の歩道の利用制限を緩和する方針を2010年に打ち出しています。オープンカフェなどを想定していると思いますが、もっと踏み込んで、歩道ではなく車道も、場所によっては広場などに使うことを考えるべきではないでしょうか。

渋谷や六本木、秋葉原や浅草など、外国人観光客に人気の場所はたくさんあります。それらの場所に、歩行者が休める広場があったら、観光スポットとして、もっと魅力的になるのは容易に想像できます。滞留する人が増え、消費支出も増えることが期待されます。

Photo by click-see,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.そして、自転車レーンの整備も簡単であり、観光客向けにも有効だということを認識すべきでしょう。現状でも道路の端を青色にペイントしたりしていますが、以前、国土交通省の調査でも、大きな改造をせず、すぐにでも自転車レーンの設置できる余地のある道路は相当な割合に上るという結果が出ています。

たかが自転車走行空間の整備と侮るなかれ、大きな経済効果を生み、都市の発展にもつながる可能性があることをニューヨークの事例は教えてくれています。6年もあれば、自転車走行空間を整備が十分可能であることは、彼女の実績を背景にした解説で、誰もが納得するのではないでしょうか。

これまでのクルマの通行を優先にする考え方が、果たして都市のためだったのか、人々のためだったのか考えてみる必要があるでしょう。経済効果についてすら、クルマ優先による効率重視が正しかったのか疑問になってきます。そして、今後もクルマ優先でいいのか、考え直す時なのではないでしょうか。

ロンドンやニューヨークに出来て、東京に出来ないはずがありません。トップの考え方次第です。そしてトップの意識を変えるためには、有権者の意識が変わる必要があります。40年以上歩道走行だったのが、6年くらいで変えられる訳がないと考えているとしたら、まずその認識こそ改めるべきではないでしょうか。





「シャケ弁当」が、「ニジマス弁当」や「サーモントラウト弁当」ですか(笑)。でも、そうすべきでしょう。元々違うのに使っていたのですから、「聞き慣れた名前使いたい」というのは筋違いです。わがままを認めるべきではないと思いますね。

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この記事へのコメント
ニューヨーク市民は偉い!
cycleroadさんが最後の方に書かれていることこそ大事なことですね。
・トップの考え方
・有権者の意識
・変えようと言う強い意識

トップダウンが一番早く、トップの人がそう考えてくれることが望ましいのですが、なかなかそういう人は少ない。
ならばまずわれわれがそう考えて、それに賛同する人をトップにする。
みんながそう思えば、流れは必ず変えられます。
cycleroadさんと同じように、僕も声を出していきすよ。
   ★\(^ω^)/☆
Posted by トンサン at January 28, 2014 10:11
「NYC Streets Metamorphosis」、これは良い記録映像ですね。ニューヨークの道路がこんなに短期間で生まれ変わったものだったとは知りませんでした。日本ではよく「アメリカでは……」などと海外事例を引きますが、一度この映像を見てしまうと、「2008年のNYでは」とか「2013年のSFでは」のように正確に言わないといけなくなってしまいますね(笑)
Posted by さむがり at January 28, 2014 21:25
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
望んでないわけではないでしょうが、今の状態を考えると、自転車の走行空間の整備なんて、とても無理、何十年かかるかわからない、歩道走行をなくせるわけがない、などと悲観的な人は少なくないと思います。
40年来、歩道走行できてしまったので、そう考えるのも仕方がない面がありますが、出来ると思わなければ、出来るものでも出来なくなってしまうということはあると思います。
私が楽観的過ぎるのかも知れませんが、あんなに頑なだった警察庁や国土交通省が180度方向を転換し、車道走行を打ち出しています。
これ自体、画期的なことであり、大きく変わっていくことを期待させる大転換だと思います。言ってみれば、一番難しい部分が実現しているわけです。普通に考えれば、変わっていってもおかしくありません。
それなのに、市民が出来ないと思い込んでいると、出来るものも出来なくなってしまうと思うんですよね。
Posted by cycleroad at January 29, 2014 23:22
さむがりさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、自転車の走行空間を整備するといっても、道路にペイントするだけなら、すぐにでも出来るわけで、考え方次第ということがわかりますね。
短期間でも変われるということがよくわかる、ビジュアル的で、説得力のある映像だと思います。

Posted by cycleroad at January 29, 2014 23:29
素晴らしい考えだと思います!
日本の道路事情は悪すぎる 路肩は凸凹で走りにくく自動車には煽られ 逆走してくるママチャリまでいます。 ぜひ改善されることを願います!
Posted by TREKkid at January 30, 2014 23:56
日本ではごね得がまかり通っています。

道路を作るために土地を買収しようとも、土地の測量すら拒んで、何十年もほったかしの所がいくらでも有ります。
Posted by なななな at January 31, 2014 21:46
TREKkidさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
日本でも、ニューヨーク市交通局長の言うような考え方が理解され、支持されるようになっていくといいですね。多くの人のコンセンサスが得られるようになれば、日本でも決してできないことではないと思います。
Posted by cycleroad at February 01, 2014 23:22
ななななさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、道路の計画から開通まで何十年というのはザラにあります。その点、ペイントだけなら、すぐにでも取り掛かることが出来るのが大きな利点だと思います。
Posted by cycleroad at February 01, 2014 23:26
 
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