March 01, 2014

省エネだけだと忘れがちな事

毎日、エネルギーという言葉を聞かない日はありません。


それは、いわゆる再生可能エネルギー、自然エネルギーについてであったり、化石燃料の輸入への依存を危惧するエネルギー安全保障についてであったり、経済産業省・資源エネルギー庁によるエネルギー基本計画についてかも知れません。原発への依存や原発再稼動についても盛んに報じられています。

いずれにせよ、エネルギーの問題は、国の重要な政策課題であることは論を待ちません。私たちの生活にも密接に関連しています。現代の生活や産業、経済活動全般にエネルギーは必要欠くべからざるものですが、福島第一原発の事故では、その供給が危ぶまれる事態も経験しました。

節電母さんエコ節電の教科書事故当初は首都圏などで計画停電が行われ、クールビズをスーパークールビズにしたり、冷房を控えて熱中症になる人が続出したりしました。省エネが叫ばれ、いかに節電するか知恵を絞り、国民をあげて電気の使用を減らすための工夫を重ねた経験は記憶に新しいところです。

元々、日本のエネルギー効率は、中国など新興国は元より、欧米諸国と比べても高いと言われています。オイルショック以降のさまざまな取り組みによって、エネルギー効率が改善されてきましたが、さらにその効率を高める必要に迫られました。

エネルギーの大部分を輸入に頼る以上、省エネには敏感にならざるを得ません。しかし、エネルギー効率が高いとは言っても、途上国と比べれば莫大なエネルギーを消費する、世界有数のエネルギー消費国であることも確かです。つい数十年前と比べても、生活は便利になり、エネルギーの消費量は大きく伸びています。

いつのまにか、エネルギーを潤沢に消費する生活が当たり前になっていますが、今さら冷房をやめたり、洗濯機や冷蔵庫、テレビを使わない生活には戻れません。ただ、知らぬ間に無駄になっているエネルギーは減らすべきですし、日本人の、工夫して節電しようという意識は一般的に高いと言えるでしょう。

しあわせ節電快適節電確かに、蒸し暑い日本で、夏でもネクタイをして上着を着て冷房を強めるのは、エネルギー的には無駄です。家族揃って食事をとり、一緒の部屋で過ごせば電気代も節約できます。使っていない部屋の照明や空調、電気製品のスイッチを切るのは、もはや常識のレベルです。

さらなるエネルギーの有効利用を目指す努力もあります。例えば、家庭の風呂やシャワーで温水を使いますが、お湯は、そのまま下水に流されます。お湯を沸かした熱エネルギーも、そのまま捨てられていることになります。下水道を流れる、この排水の廃熱を使って発電しようというシステムまで研究されています。

海外に目を向ければ、国によっては夏、寒いくらいに冷房するようなところもあります。日本の原発事故の時のような切羽詰った状況を経験したわけでもなく、必ずしも省エネ意識が高くない国もあります。しかし、環境への意識の高まりから、省エネを進めようとの機運は世界的にも広がりつつあります。

先進国では、スイッチをいれれば、当たり前のように電気が使えます。そんな生活に慣れてしまうと、何にどれくらいエネルギーを使っているか、ピンときません。必要性の低いことに過剰なエネルギーを使ってしまっていることに気づかないことが、省エネ推進の妨げになります。

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イギリスの公共放送BBCは、一般的な家庭生活の中で、何にどれくらいエネルギーを使っているか、目で見てわかるような実験を番組にしました。普通に生活する家庭の電力を、発電所からでなく、大勢の人を使って、ペダルをこいで発電して供給しようというものです。



ふだんの生活で、知らず知らずに電気を潤沢に使っても、それが目に見えるわけではありません。後々、電気料金が高めなのに気づくかも知れませんが、個々の行動が、どれだけ電気を使うのか意識していません。番組は、ちよっとした行動の違いが大きくエネルギー消費を変えることを目に見えるようにする意図で作られました。

冷暖房を使ったり、シャワーや調理の熱源を提供するなど、大きなエネルギーが必要になるものがある一方で、あまり大きな電力を必要としないものもあります。メーターで確認してもいいわけですが、自転車をこいで発電することで、よりビジュアルでわかりやすくなります。

演出的な意図もあるでしょうが、自転車をこいで発電することにより、どれほどのエネルギーを使っているのか、感覚的に訴える効果を狙ったわけです。実際に、自分の足でペダルをこいで発電し、その電力でライトを点灯したり、電気製品を動かしたりすれば、エネルギーの大きさを実感する体験にもなるでしょう。

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日本でもありますが、最近は、自転車をこいで発電する装置を使ったイベントは欧米でも増えているようです。家電を動かすのに、どのくらいのエネルギーが必要なのか、ペダルの重さ、汗のかき方、足の疲れ方などで、道路を走行するのと比較して実感することが出来ます。

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BBCの実験もそうですが、イギリスでこうしたイベントにペダル発電装置を提供したり、用途に合わせてプロデュースしたりしているNPO法人が“Electric Pedals”です。自転車をセットして発電するジェネレーターや、ペダル式の発電機などを使ったシステムの構築をサポートします。

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映画の上映会、コンサート、ワークショップ、演劇、ステージショー、アートイベントなど、さまざまな企画が自家発電によってプロデュースされます。参加者にペダルをこいでもらうことで、エネルギーの消費を実感してもらいます。省エネ啓発の教育や、途上国支援などにも取り組んでいます。

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ところで、このペダルによる発電、省エネのシンボルにはなっても、実用性はないと思われがちです。ペダルをこいで発電するなんて、原始的で非力で、とても実用的とは思えない人も多いはずです。しかし、ペダル発電のエネルギー効率は、他の一般的な発電方法と比べて必ずしも低くないのです。

例えば、石炭火力発電は4割程度の発電効率です。天然ガスのコンバインドサイクル発電でも5〜6割程度と言われています。原子力発電に至っては3割ちょっとしか使えていないのです。多くは熱として失われます。原子力も、燃やした熱でお湯を沸かし、その蒸気でタービンを回しているだけであり、原理は原始的なのです。

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これに比べてペダルによる発電は、幅がありますが2割から6割5分とされています。タイヤやリムに密着させるものはロスが大きいものも多く、必ずしも高くありませんが、ハブダイナモなど高効率なものもあります。直接ジェネレーターを回転させるものであれば、9割を超す高効率とされています。

もちろん、出力は大きく違います。人間の力では小さな電力しか起こせません。実際にはBBCの番組のように、人間を発電に使うわけにもいきません。そのため発電所で大規模に発電した電力を、消費地に送電して使っているわけですが、産業用はともかく、家庭で個々に使う電力は、大きいものばかりではありません。

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家庭において、人力発電でも十分動かせる家電はたくさんあります。人力の発電効率は高く、汚染や公害もありません。送電線で送られる際に失われるエネルギーのロスを考えれば、消費する場所で発電するメリットもあります。エクササイズなどで消費するエネルギー、お腹の脂肪燃焼を使えるなら、実は合理的でもあるわけです。

現代において、必要なエネルギーを作り出すためには、化石燃料などによる大規模な発電所で発電し、送電網で供給するのが当たり前になっています。しかし、電力を使う個々の場では、ペダルの力でも十分に足りる場合も少なくありません。“Electric Pedals”は、そのことも気づかせてくれます。

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人力発電でなくても、分散して家庭ごとに発電するという考え方は有効でしょう。長距離を送電するロスもありません。そして、分散した個々の場では必ずしも大きな発電量は必要ないわけで、家庭用のヒートポンプや燃料電池、太陽光、太陽熱などを含めた自然由来の発電もいろいろ考えられるはずです。

実際には、分散型電源は送電ロスが少なく、廃熱が利用出来たり災害に強いなどさまざまな利点がある一方、従前のシステムとの混在や制御が複雑など、デメリットもあります。もちろん、エクササイズ代わりにペダルをこぎながら、何か家電を使うくらいであれば、システムに組み込む必要はなく、手軽に使えます。

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大規模な発電所が不要とは言いませんが、原子力でお湯を沸かし、タービンを回すという効率の低さに加え、福島の事故で明らかになった危険性や放射性廃棄物など、デメリットがたくさんあります。化石燃料にしても熱のロスが大きいですし、燃やし続けて環境に優しいわけがありません。

分散して、使う分だけを使う場所で発電するという考え方は、もっとあってもいいと思います。省エネの推進、エネルギーを使う場面での節約の工夫も重要ですが、エネルギーをつくる場面についての工夫、あるいは電力供給のシステムについて考えてみることも必要なのではないでしょうか。





明日はまた雪の恐れですか。今年は雪が多いですね。

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この記事へのコメント
サイクルトレーナーで発電できたらと思う。
最新のサイクルトレーナー Elite Turbo www.youtube.com/watch?v=82JxuivJESg
www.youtube.com/watch?v=DrbbtuDWOZM
Posted by SHARETHEROAD at March 03, 2014 10:31
sharetheroadさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
トレーナーやローラー台などを使っている人は限られると思いますが、発電できるとなれば、いろいろ使えそうですし、災害時の備えにもなるので、使う人が増えるかも知れませんね。

Posted by cycleroad at March 03, 2014 23:42
発電効率の考え方に意義あり。自転車発電が効率9割という文章からなんとなく自転車発電の分母の考え方が違うように思う。

発電所の場合
 化石燃料、ウラン→水を運動させる→発電機を回す
 効率の計算式は 発電量÷化石燃料の持つエネルギー
自転車発電の場合
 食べ物(燃料)→体内で運動エネルギーに変換→発電機を回す
 効率の計算式は 発電量÷人体、筋肉で消費したエネルギー 
と思われているように読み取れます。

堂々と比較するなら 発電量÷食べ物が持つエネルギーだと思う。変換噛ますので最終的な効率は同等か悪くなります。
食べ物の輸送コストとかも考慮することになるかも
Posted by や at March 20, 2014 01:02
やさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
人体を、食べ物を燃料としてエネルギーに変換するシステムとみなし、食べ物と燃料を比較すべきということでしょうか。
おっしゃりたいことはわかりますが、ここでは、そんな比較をしたいわけではありません。ここでは、そこを問題にしているのではありません。
発電効率が9割というのは、発電機を直接回した場合の、発電機自体の発電効率です。発電機を回すエネルギーに対し、発電するエネルギーの効率です。人体の効率は全く関係ありません。発電所の発電機も足で回す発電機も、出力は大きく違いますが、同じ原理です。
燃料を使って水を蒸気にしてタービンを回し、送電して使う場合、いろいろなロスがありますが、その場で直接回せばロスが少ないと言っているわけです。
自転車発電の出力は小さいですが、その場で発電するぶん、ロスが小さく、減耗する無駄なエネルギーも少なくできることの意味を指摘しているだけです。人体の効率は関係ありません。
発電所のシステムと人体を比べることへの、科学的な興味はわかりますが、それを比べたいわけではありません。ここでは全く関係なく、主旨を外れています。
Posted by cycleroad at March 21, 2014 23:16
コメント有難うございます。誤解していた所、失礼いたしました。

以下私の意見です。おそらく議論が平行線のまま収束しなさそうなので、面倒でしたら削除してください。

仝平に比較、評価するなら、火力、原子力で使用している発電機単体の効率(発電量÷タービンで発生した運動エネルギー)も併せて書いた方が良いのではないでしょうか。

∈は意図がわかりましたが、「その場で直接回せばロスが少ないと言っているわけです。」
とまでは初見では読み取れませんでした。

「自転車発電の出力は小さいですが、その場で発電するぶん、ロスが小さく、減耗する無駄なエネルギーも少なくできることの意味を指摘しているだけです。人体の効率は関係ありません。」
送電による無駄が無い事については同意です。
しかし、,汎韻呼睛討砲呂覆蠅泙垢、cycleroadさんの推し進めたいものは前段階を無視したロス無しの有利なデータを出し、比較対象のものは前段階を計算に入れたロスだらけの不利なデータしか出さないのは偏向報道と同じように思います。数値を出すならエネルギー変換のスタート地点とゴール地点は極力合わせるべきです。
(補足:wikiでは人間の骨格筋の効率は20〜30%と記載)

い匹Δ任發いい海箸任垢、自転車乗り始めると、ご飯の量が増えませんか?私はかなり増えました。
Posted by や at March 23, 2014 23:23
やさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
1番の意図はわかりますが、このブログは科学雑誌でもなければ、発電機マニアのサイトでもありません。私は専門家でもないですし、その部分に興味はありません。一般人が議論する部分でもないでしょう。
2番については、自明のことだと思ったので、そのことを特に強調していません。そう指摘されれば、確かにそうだということもあるでしょう。
3番について、データの比較として不公平なように感じるのはわかります。しかし、普通の文献などでも、そのように比較されている場合が多いようです。
なぜなら、人体のエネルギー効率と比べたいわけではないからです。ジェネレーターを直接回した効率と比べているのですから、それ以上のことは必要ない部分です。
その部分を考慮すると複雑になりますし、主旨からも意味がありません。その部分にこだわるのは意味がないということだと思います。
ペダルをこげば疲れますし、出力は小さく、持久力にも劣ります。人件費の問題もあります。そのあたりは自明であり、電力と人力を直接比べることに、ここでは意味がなく、議論するような問題でもありません。
たしかに科学的に厳密に言えば不公平な比較かも知れません。しかし、物理学的、生物学的な検証をしているわけではありません。ジェネレーターを直接回せば効率がいいというだけです。
人力に有利なデータを出して、人力が優れていると言いたいわけではありません。人力が優れているからと、電力を全て人力で置き換えろなんて議論ではありませんし、誰もそんなことは思わないでしょう。
(続く)
Posted by cycleroad at March 24, 2014 23:44
(続き)
別に私は何かを推し進めたいわけではありません。このブログは報道ではないですし、もともと私の個人的な意見を述べているだけです。
客観的な事実だと普通に思う人も多いと思いますが、偏向していると言われれば、そうかも知れません。私の個人的意見ですから当然といえば当然です。
データの比較が科学的に見ておかしいと言えば、そうかも知れません。しかし、そのような比較をしているのは私だけでなく、便宜的に普通に見られる話です。発電機を直接回した場合を想定しているだけで、科学的に人力の優位を証明しようという話ではありません。むしろ関係ない部分で、あえて言うならば、どうでもいい部分です。
やさんがどう読もうと勝手ですが、客観的にみるならば、論旨から外れた部分を追及し、個人の意見を偏向していると言う、言葉は悪いですが、難癖をつけているのと同じではないでしょうか。
ちなみに、自転車に乗った人間の移動エネルギーの効率が高いことは広く知られています。
自らの質量を移動させるのに要するエネルギーを科学的に比較すると、自転車が最もエネルギー効率が高くなるとされています。
http://blog.cycleroad.com/archives/50150883.html

Posted by cycleroad at March 24, 2014 23:45
 
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