March 19, 2014

自転車乗りに呼びかける方法

ユトレヒトは、オランダ第4の都市です。


アムステルダムの南30キロほどに位置し、ユトレヒト州の州都でもあります。オランダの都市の例に漏れず、市民の多くが自転車を活用しています。少し前、そのユトレヒトの中心街の交差点に、ちょっと変わったものがあることに多くの人が気づき、話題となりました。

自転車用信号の上に、なんとバービー人形が取り付けられていたのです。バービーは欧米で愛されている着せ替え人形で、ちょうど日本のリカちゃん人形のような人気キャラクターです。そのバービー人形と一緒に「どちらの方向へ行くの?」「後ろの人のことも考えて。」といったメッセージが書かれています。

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バービー人形は、どちらかの腕を差し出したような格好をしています。サイクリストならピンと来ると思いますが、これはハンドサイン、手信号を出すように促しているわけです。街角で突然、バービー人形のこんなメッセージを見かければ、誰もが思わず口元をほころばせるのではないでしょうか。

わかりやすくするなら、「手信号を出せ」とか、「方向の合図を忘れるな」といった標識になるでしょう。でも、それだと命令のようで、反感をかう可能性があります。バービーが問いかけるようなセリフにすることで、柔らかい表現、「婉曲なお願い」にしています。

バービー人形をアイ・キャッチにすると共に、その人形のポーズで手信号を表現しているところもユニークです。下手をすると、ふざけていると見られかねませんが、サイクリストへの啓発として有効になっているのは、これを見た後、実際に手信号を出すサイクリストが観察されることでも伺い知れます。

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全部で10体の人形が、ユトレヒトの中でも特に交通量の多い交差点の自転車用信号機の上に飾られていました。さっそくSNSなどでも話題となり、誰がやったのか憶測が飛び交いました。ユトレヒトのサイクリスト連合などの団体も、広く情報を求める発信を行いました。

数日後、Marije de Wit さんという25歳のゲームデザイナーでアーティストの女性の作品だと判明しました。彼女自身もサイクリストで、中心街の交差点を行き交う自転車が混沌としており、多くの人が手信号を忘れ、しばしば交錯やトラブルの元になっていることを懸念しての行動でした。

オランダでは誰でも小学校でハンドサインを習いますが、歳を重ねるごとにずさんになり、面倒になって、やらなくなってしまう人が多くなります。そのことを指摘し、手信号を思い出してもらうため、出来れば親しみやすく楽しい方法で、その手伝いがしたかったのだと言います。



ユトレヒトの朝の自転車のラッシュアワーを収めた動画があります。たしかに、このような状態だと、突然曲がられたり、進路変更されれば、自転車同士の事故やトラブルになりかねません。手信号をしている人も結構いますが、一部だというのもわかります。

なぜバービーを使ったかと言えば、これが体型の誇張された、動物などのキャラクターだと、ハンドサインを出すために腕を伸ばしているように見えない可能性があります。手信号とわかりにくいからです。バービーは、その点で向いています。子どもの頃、または昔を思い出させる効果も見込んだようです。

地元の地方紙は、大きく一面に写真とインタビューを掲載しました。この意表を突いた、個人によるサイクリスト啓発行為は、総じて好意的に取り上げられています。街の人々の大きな話題になったこと、そして一定の効果が見られたことが報告されています。

Barbies met een BoodschapBICYCLE DUTCH, bicycledutch.wordpress.com

Marije さんも、人々の反感を買うことなく、むしろ道行く人達に微笑みをもたらしたことに満足しています。人形一体につき2ユーロ、自腹を切って設置したのですが、意外にも長期間、そのままの状態に保たれていたことにも驚いています。

壊されたものは、自ら取り外しました。何体かは、すぐ頭部を失ってしまいましたが、そのほかは、誰にもいたずらされることなく、そのままだったと言います。新聞やメディアも市民の好意的な反応を報じています。多くの人の共感を呼ぶものだったのは間違いないようです。

ご存知のように、このハンドサイン、手信号は、周囲のクルマや他の自転車、歩行者などに向けて、右左折や減速、停止などの合図を手で送るものです。日本でも、道路交通法や同施行令などに定められており、実は法律で手信号による合図が義務付けられています。


道路交通法(昭和三十五年六月二十五日法律第百五号) 「第五十三条第一項」

(合図)
14031909第五十三条  車両(自転車以外の軽車両を除く。第三項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。
2  前項の合図を行なう時期及び合図の方法について必要な事項は、政令で定める。
3  車両の運転者は、第一項に規定する行為を終わつたときは、当該合図をやめなければならないものとし、また、同項に規定する合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない。
   (罰則 第一項及び第三項については第百二十条第一項第八号、同条第二項)



道路交通法施行令

(合図の時期及び方法)
第二十一条  法第五十三条第一項 に規定する合図を行なう時期及び合図の方法は、次の表に掲げるとおりとする。




場所によって、特にスポーツバイクに乗る人などの中には合図をする人も見ますが、日本では大多数の人がしていないのが実情でしょう。手信号を怠ったとして検挙されたという事例も聞きません。むしろ、小学校などでは、ハンドルから手を離すと危ないから、手信号はするなと教えるという話も聞きます。

法令では曲がり終えるまでと定めており、どちらかの手を離したまま曲がることになります。交差点だと、急にブレーキをかける場合も出てくるでしょうし、安定せず危険という考え方は一理あります。都道府県によっては、条例で自転車の片手運転に5万円以下の罰金などと定めているところもあります。

もちろん、ケータイやスマホの利用などを想定したものでしょうが、傘をさしての片手走行も違反としているのは、ハンドルから手を離すのは危険という考え方があります。手信号を出すな、ハンドルを握れと教えるのも同じ理由であり、昭和35年に定められた法律は、事実上形骸化しています。

自転車先進国オランダで手信号をする人が減っているわけだし、法律も形骸化しているし、日本で手信号をする人がいなくても仕方がないかと言えば、必ずしもそうではありません。日本では、自転車が歩道走行をするため、手信号の必要になる場面が、より少ないという事情があります。

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クルマやオートバイを運転する人は、当然のようにウィンカーを使います。ルールですし、ウィンカーを出さずに曲がったり、進路変更したら追突されかねないのもわかっています。自分の前方の車輌がウィンカーを出さずに進路変更したら事故になりかねないというのも実感としてわかります。

よく言われることですが、自転車も車輌です。自転車で車道走行し、特に進路変更の際など、後方のクルマやオートバイ、もしくは自転車に対し、合図をしないと危険な場合があります。実際、車道走行している人は、安全のため、必要に応じて合図をすることもあると思います。

今後、自転車で車道走行していくにあたっては、自転車も車輌であること、安全のために周囲の交通との意思疎通が必須であるとの認識が当然必要になります。今のように、合図をせずに進路変更をすれば事故になるケースも増えるでしょう。むしろ手信号の重要性は高まる可能性があります。

常に合図をしろと言うつもりはありませんが、安全のため、必要に応じて他の交通への合図が必要になるのは当然のことです。自分が事故に遭わないためでもあります。自転車先進国オランダとは事情が違いますが、日本でも合図の重要性を見直す必要が出てくるかも知れません。

BICYCLE DUTCH, bicycledutch.wordpress.comさすがオランダだと思うのは、サイクリストみずから啓発をしている点です。しかも多くの人の共感を得たという事実です。範囲は限定されており、どれだけ持続するかわかりませんが、一定の効果があったという点は、オランダの自転車利用者のモラルの高さを感じさせます。

日本で同じようなことをしたら、公共の構造物に勝手なことをするなという反感を買う可能性もありそうです。でも、個人的に作られたもので、例えば「ここにゴミを捨てるな」とか、「子どもの飛び出しに注意」、「迷惑駐車お断り」といった手製看板が掲げられているのを見ることがあります。

場所や方法にもよりますが、個人が啓発している例がないわけではありません。内容的にも、ハンドサインをするようにという主張だと、ピンと来ない人が多いと思いますが、ほかのことについてであれば、支持される、共感される主張があるかも知れません。

リカちゃん人形を使うかどうかは別として、例えば、「この方向は逆走ですよ」とか、「車道の左側を通ろうよ」などと書いてあったらどうでしょうか。まだまだ日本では、自転車利用者間でも共感は得られず、そのモラルは期待できないかも知れませんが、サイクリスト自ら呼びかける、啓発するという姿勢は見習いたいものです。





一気に編入までいきました。新しい冷戦と言っても、依然とは経済的な関係が全く違ってますし、どうなっていくのでしょうか。

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