March 28, 2014

津波対策で一番に必要なこと

政府が地震対策の推進を打ち出しています。


近い将来、首都直下地震や南海トラフを震源とする巨大地震の発生が懸念されますが、政府は中央防災会議を開き、その対策を全国で一体的に進めていくため「大規模地震防災・減災対策大綱」を定めました。広範囲にわたる自治体が、「防災対策推進地域」や「緊急対策区域」に指定されています。


地域指定地震対策、総動員で 南海トラフ・首都直下の対策地域指定

地震防災 国が地域指定…津波対策を強化

大規模地震:財政支援に差 対策地域指定に戸惑いも

南海トラフ、707市町村指定=被害軽減へ地震対策強化−首都直下は310市区町村



東日本大震災から3年が経ち、残念ながら今後、人々の災害に対する危機感が徐々に薄れていくのは避けられないでしょう。その意味でも、まだ記憶が新しいうちに災害対策を推進するのは重要なことであり、少しでも被害を軽減するために対策を進めておくことが求められます。

耐震、火災、津波など、防災・減災対策は多岐にわたります。その中でも東日本大震災の教訓として、特に見直されているのは津波対策でしょう。避難路や津波避難タワーの整備、学校や病院、福祉施設の高台移転など、国の補助事業が定められています。

こうしたハード面の対策は当然重要だと思いますが、そればかりでいいのかという疑問もあります。例えば、東日本大震災の被災地では、巨大な防潮堤の再建に対し、地元から疑問の声も上がっていると言います。果たして必要なのかという懐疑的な見方もあるようです。

大津波が巨大防潮堤を破壊したり、やすやすと超えてしまったのを見れば、その莫大な費用に見合うかどうかという疑問は当然生じるでしょう。津波の到達を遅らせたという見方もありますが、それは僅かな時間であり、むしろ大防潮堤があったことで油断してしまった人が多く、弊害が大きいという意見もあります。

あの大津波の破壊力を目の当たりにした後で、堤防で全て防ぎきれると考える人はいないでしょう。むしろ、一刻も早く高台へ逃げるのが有効なのは、誰もが認めるところだと思います。そう考えれば、避難計画の重要性は、いくら強調しても、しすぎることはありません。

言い伝えられる、「津波てんでんこ」は、津波が来たら、家族にも構わず、各自てんでんばらばらに一人で高台へと逃げろという意味です。家族がお互いに探していたら、逃げ遅れてしまうからです。これを守って助かった人がいた一方、津波の発生に思い至らなかったり、甘く考え逃げ遅れてしまった人もいました。

国が地域指定今回の大津波は、思いもよらない場所まで押し寄せました。ヒザや腰くらいまでの津波であっても驚くような威力があり、大人でも流されてしまうことがわかりました。貴重な教訓を忘れるべきではありません。例え空振りになってもいいから、まず高台に避難すべきです。

地震が発生したら、何よりも非難することが津波の被害を防ぐ一番の対策なのは間違いありません。でも、問題があります。皆いっせいにクルマで避難するため、道路が大渋滞に陥り、避難できなくなってしまうのです。さきの大津波では、これによって多くの人が命を落したとされています。

あまりにも多くの車輌が集中したため、グリッドロックと呼ばれる超渋滞現象も発生したと言われています。クルマが全く動けなくなってしまう状態です。残念ながら、こうして渋滞にはまったまま津波に襲われ、結果として避難できなかった方も少なくないとされています。

誰もが、津波避難にクルマは危ないことを思い知ったはずです。渋滞してしまえば、クルマは避難の役に立ちません。普通の渋滞と違って、そう簡単には解消せず、渋滞に巻き込まれたままなら、逃げ遅れて死に至る可能性があることは、誰もが容易に理解できるはずです。

ところが、2012年12月にマグニチュード7.4の地震が発生し、東北沿岸に、東日本大震災以来の津波警報が出された時のことです。結果として被害は出ませんでしたが、沿岸の道路が大渋滞したのです。津波からの避難にクルマは使わないという震災の教訓が全く生かされなかったことが明らかになりました。

避難生活の経験から、クルマがあれば暖がとれるなどの声も聞かれたといいます。生活再建のさなか、何百万もするクルマを水に浸からせたくないという気持ちもわからないではありません。しかし、もしこの時も大きな津波が来ていれば、また多くの犠牲者が出ていたのは間違いありません。

津波避難タワークルマを残したいのはわかりますが、死んだら元も子もありません。クルマで避難すべきでないのは明らかです。多くは震災を経験した人たちの行動だけに、関係者の間に大きな衝撃が走りました。大津波の記憶が覚めやらないにも関わらず、多くの人がクルマで避難したという事実は重いものがあります。

揺れが小さかったりすると、津波の規模も小さいと考え、クルマでも大丈夫と考える人もあるでしょう。しかし、発生が心配されているアウターライズ型の地震は、海溝の外側が震源なので、揺れは小さくても、津波は予想外に大きくなる可能性があると言われています。

津波対策として、素早い避難が一番効果的であり、一番重要なのにも関わらず、いざ避難となったら、多くの人がクルマで避難し、大渋滞が発生が必至と見られる状況は深刻です。再び大きな人的被害を出さないために、有効に機能する避難方法の徹底が喫緊の課題です。

私は防災対策の専門家でも何でもないので、単なる素人の意見ですが、クルマでの避難を法律で禁止するようなことは考えられないでしょうか。災害発生時の混乱の中、禁止を徹底するのは難しいかもしれませんが、クルマ禁止こそ、避難を可能にする唯一の方策なのではないでしょうか。

もちろん、海岸近くに高台がせまっているような場所なら徒歩でも避難できるでしょう。しかし、平地が広がり、近くに高台の無い場所もあります。安全な場所へ避難するには、徒歩だと時間がかかりすぎるという問題があります。そうした場所では自転車を活用してはどうでしょう。

なんでも自転車とこじつけるな、と言われそうですが、実は自転車こそ有効な移動手段ではないかと思います。クルマと比べ道路に対する占有面積が小さいため、クルマより圧倒的に渋滞は起きにくいはずです。仮にクルマが渋滞していても間をすり抜けることが出来ます。クルマでは入って行けないような細い道も利用できます。

場合によっては、階段をかついで上れますし、クルマの運転が出来ない人でも使えます。それでいて徒歩の数倍の速度が出せます。自転車は、とても合理的で現実的な避難手段と言えるでしょう。実際に、多くの自治体で、クルマでしか避難できない人を除き、徒歩や自転車での避難を呼びかけています。

クルマを禁止にして、自転車による避難にすることで、自力で避難出来ない人をクルマで避難させることが可能になります。自力避難が可能な人が自転車で逃げることで、自らも避難可能になる一方、クルマでしか避難出来ない多くの人命も救われるのではないでしょうか。

自転車に乗れない人は三輪の自転車などもありますし、高齢者など脚力に不安がある人は電動アシスト自転車という手もあります。カーゴバイクなどを使えば、自転車で人を運ぶことも考えられるでしょう。たまたまですが、次のようなニュースが報じられていました。


自転車、わずか3分で車いすに 西区の永山さん開発、実用化

Qjo(キュウジョ)普段乗っている自転車を災害時などに、救助用の車いすに転用するユニークなアイデアを、名古屋市西区新木町の重機運送会社代表、永山順二さん(56)が実用化した。組み立て直すと車いすに変身する救助用自転車「Qjo(キュウジョ)」。緊急時に自転車で駆け付け、けが人を運んだり、高齢者を避難させたりすることを想定している。

外見は一般的な二十七インチ自転車と変わらない。ちょっと違うのは、前輪の上にある小さな車輪と、ハンドルの下に折り畳まれた二枚の布。布の中には、スパナ一本と金網一枚が入っている。組み立て方法は、まずスパナを取り出し、ペダル二つを取り外す。次にサドル下のネジを緩め、前輪を後輪の横までスライドさせて、車いすの骨組みを作る。

Qjo(キュウジョ)続いて、サドルをはずして車いすの首の位置に、二枚の布をそれぞれ背と尻の位置に設置する。最後に金網を足を置く所に固定して完成。所要時間は三分ほどだ。「Qjo」開発のきっかけは、二〇一一年の東日本大震災。永山さんは発生直後にインターネットの動画サイトで、投稿者ががれきだらけの町を自転車から撮影した映像を見て、「こんなとき、もしけが人を見つけたらどうしたらいいのだろう」と考えた。

そこで思い付いたのが、移動と救助の機能を兼ね備える乗り物を作ることだった。がれきの中でも比較的進入しやすい自転車と、けがで動けない人を一人でも運べる車いすの利便性に目を付けた。もともと機械の修理が得意だった永山さん。自転車と車いすの製図を見ながら、自転車の分解と組み立てを繰り返した。知人の経営コンサルタント会社顧問、森弘さん(60)の助言を受けながら、二年半かけて完成させた。

Qjo(キュウジョ)東日本の被災地では、けがで避難が遅れて津波の犠牲になった人もいた。永山さんは、Qjoを使えば、女性や子どもの力でも人を助けることができるとみている。

組み立てにスパナ以外の工具は不要。ネジは手回しできるようにするなど、誰でも簡単に組み立てられるようにした。自転車のハンドルが車いすを押す部分になる。自転車のブレーキは車いすにしたときもそのまま使え、安全面でも工夫を凝らした。現在、世界知的所有権機関(WIPO)に国際特許を出願中。特許取得後、メーカーに売り込むつもりだ。

永山さんは「もっと軽量化したり、工具を使わずに組み立てたりと、改良の余地はまだある。早く製品として世に出し、人命救助に役立てたい」と話している。問い合わせは、森さんのメールアドレス=mori@aacl.gr.jp=へ。(2014年3月26日 中日新聞)


ただでさえ渋滞している沿岸部へ、家族などを助けようと、クルマで駆けつける人が出ます。その気持ちは責められませんが、余計に渋滞に拍車をかけることになります。この自転車なら、場合によっては救助に駆けつけることも可能でしょう。車椅子が使えれば、避難させることが可能になる人もあるはずです。

その後の避難を考えればカーゴバイクのほうが優れていますが、この自転車は、ふだん普通の自転車として使え、イザというときに車椅子になるという点が優れています。避難後にも活躍するでしょうから、避難所に配備しておくことも考えられます。直接は無関係ですが、次のようなニュースも報じられていました。


こがなくても自走「自転車」 都が表示改善要求

ペダルをこがなくてもモーターで自走し続ける電動アシスト自転車=写真、東京都提供=が出回り、東京都はこうした商品が道路交通法上のミニバイクに該当するとして、国内の販売業者に「自転車」とする商品表示を改善するよう求めた。「運転免許を持たず、ナンバープレートを付けずに公道で運転すれば道交法違反になる」と警告している。

こがなくても自走電動アシスト自転車はモーターでこぐ力を補助する仕組み。都によると、時速に応じてモーターが補助できる力が法律で定められ、時速二十四キロを超えるとモーターが止まり、自走しない設計としなければならない。

都は、昨年十一月〜今年二月、三万〜六万四千円と比較的安くインターネットで販売される折り畳み型の五機種を調査したが、四機種は、時速二十四キロを超えてもモーターが作動。このうち一機種は、ペダルを止めれば進行が止まったが、ほかの三機種はこがなくても自走し続けた。三機種はいずれも中国製で、ハンドルを回すだけでモーターのスイッチが入り続けるものもあった。

都内の消費相談窓口には近年、「急発進や急停止を繰り返す」など、電動アシスト自転車に関する苦情が年間六十〜七十件寄せられているという。都の担当者は「安価な商品の中には危険なものもある。認定・認証マークの有無などを参考に選んでほしい」と話している。(2014年3月27日 東京新聞) 


忘れた頃になると、繰り返し報じられている話題ですが、電動アシスト自転車ではなく、電動だけで走行できる自転車です。これは現行の法律で、原動機付自転車に分類されるべきものです。当然ながら、記事にあるように自転車の一種として販売されるのは問題です。

中国の都市などへ行くと、こうした電動自転車は普通に走っています。それがそのまま日本に入ってきているのでしょう。たしかに、エンジンではないとは言え、原付バイクですから、自転車として扱うのは問題です。とくに歩道を走行されたら危険です。

ただ、中国などでは、普通の自転車と混在して何事も無く走っています。日本人の感覚だと違和感がありますが、考えようによっては、ペダルを回しているか、いないかの違いだけです。車道を走行している限り、自転車と混在していても、とくに危険なことはありません。

あまり出力が高いと問題でしょうが、自転車と同じくらいの速度で走行するものであれば自転車との混在も可能でしょう。何らかの制限の元に解禁することも考えられるのではないでしょうか。高齢者など、脚力に不安がある人が避難に使うのに有効な手段となる可能性があります。

首都直下は310市区町村ちなみに、阪神淡路大震災の時、被災後の瓦礫で寸断された道路での移動に、自転車が有益な移動手段として活躍しました。東日本大震災では、燃料が不足し、医薬品などの輸送に役立ったという話も聞きます。ノーパンクタイヤもありますし、避難した後の避難生活においても、自転車があれば重宝するのは間違いありません。

自転車は、人間の力を効率的に使う装置でもあります。発電機と直結させて、人力発電に使うという手もあります。避難生活ではトイレの問題が深刻と言います。中にはポンプが動かせればトイレが使えた事例もあったそうです。人力発電でポンプが動かせれば、トイレが使え、衛生面でも貢献するかも知れません。

自転車発電が使えれば、携帯やスマホの充電も出来ます。テレビなどで情報をとることも出来ます。災害発生時には、情報の途絶が問題になります。自転車をこぐ力で水を浄化するシステムを動かし、飲料水を確保するシステムも開発されています。災害時に、なにかと役立つのは間違いありません。

避難後にも重宝する自転車ですが、まずは避難です。津波が発生した際、避難が必要になる地域では、一人ひとりが避難のための自転車を確保しておき、それで逃げるべきではないでしょうか。自宅や職場などに備えたり、クルマのトランクに折りたたみ自転車を載せておくことも考えられます。

もちろん、ふだんから自転車を使っていれば、イザという時、そのまま避難に使えます。通常の移動はクルマが中心という地域は多いと思います。仕事や生活に、クルマがなくてはならない場合も多いでしょう。そうした人も、避難の手段は別途、自転車を使うようにすべきではないでしょうか。

津波対策に自転車なんてと言うと、何か間が抜けて、危機感のないノー天気な戯言と感じる人があるかもしれません。しかし、渋滞で身動きがとれなくなることが明らかなクルマは使えないとするなら、クルマに代わる手段として、現実的で一番有効な手段は自転車だと思います。

果たしてクルマ避難を禁止できるのかはわかりません。しかし、禁止しなければ、多くの人がクルマで避難しようとし、結果的に多くの人命が救えなくなるのは明らかです。さまざまな災害対策も重要だと思いますが、まず避難をどうするのか、考えるべきではないでしょうか。





48年間の死刑囚生活、想像を絶するものがあります。証拠が捏造だったのかも、追求すべきでしょう。

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この記事へのコメント
こんにちは

私も東日本大震災の当日は自転車で何とか帰宅できた一人ですが、
道中、車線幅が車一台分ちょうどしか無い道路が何箇所か有って、
すり抜けもできず車の渋滞に見事に嵌まってしまいました。
(多車線道路でもそういう所が有りました。)

cycleroad さんは震災当時、そういう困った経験は有りましたか?

---

車での避難については、ご存知かもしれませんが、
例えば都条例が禁止しています。(東京都震災対策条例 51条)
ただ、この条例の禁止対象は道交法で言う「車両」なので、
自転車も含まれてしまうんですよね。
Posted by さむがり at March 30, 2014 06:34
浜松市西区のように、津波が来たら、海と浜名湖に挟まれて逃げ場無し!!といった所では、避難用自転車をかき集める必要が有るかも。
Posted by なななな at March 30, 2014 17:46
さむがりさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
クルマは相当程度渋滞すると思いますが、大都市圏以外で、自転車ですり抜けられないような状況が起きる場所、可能性というのは低いのではないでしょうか。
大都市圏だと、そういうこともあるでしょうが、その場合は徒歩で避難せざるを得ないでしょう。しかし、都市圏の場合、そのような過密な場所は、ビルなどの高い場所へ逃げられるのではないでしょうか。
私は震災当時、即座に連絡した結果、幸いにも家族と全て連絡がついたので、一切移動するのはやめました。
法令で定めても、どれだけ実効性が持たせられるかということが大切なのでしょうね。
クルマでの避難は危険と理解し、納得し、実際に違う方法で避難するように人々の意識を変革しないといけないのでしょう。
Posted by cycleroad at March 31, 2014 23:08
ななななさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
場所によっては、津波避難タワーのような構造物を設置するといった選択肢をとらざるを得ない地区もあるでしょうね。
Posted by cycleroad at March 31, 2014 23:38
自転車乗りは法律を盾に堂々と車道を走れるのだと考えています。

災害時は条例無視して自転車で走っても良い と読み取れるような事は書くべきではないと思います。(少なくとも私はそう読み取りました。)

このようなことを書いてしまうと、「自転車乗りは都合のいいときだけ法律を盾にし、都合が悪くなると常識で行動する人種や」と思われてしまうと思います。
Posted by ヤ at April 04, 2014 00:39
ヤさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
何か、全くの勘違いをされているようですが、津波からの避難にクルマを使うと渋滞して避難出来ず危険なので、自転車を活用したらどうかと言っているだけです。
そのために法律でクルマ利用を禁止するなど、何らかの手立てをとるべきではないかと述べているわけです。
むしろ、法令で定めたからと言って実効性が保てるかという問題はありますが、条例を無視しろなんて一言も書いていません。
特に変わったことを主張しているわけではなく、避難が出来ないことを心配しているだけです。
曲解どころか、全く書いてもいないことを読み取ったとして言いがかり、ケチをつけているとしか思えません。
Posted by cycleroad at April 04, 2014 23:11
 
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