March 05, 2015

安全は交通安全だけではない

自転車の事故が報道されています。


交通事故ではなく、製品としての自転車の欠陥によるものと思われる事故です。毎日新聞の記事から引用します。


自転車:走行中突然ボキッ 転倒し重傷 訴訟に

乗っていた自転車が突然壊れ、転倒する??。市民の足として親しまれている乗り物に、そんなリスクが潜んでいることが判明した。重傷を負った人がメーカーの責任を問い、訴訟に発展するケースもある。ここ10年で367件の事故が確認されているが、専門家は「氷山の一角に過ぎない」と指摘している。

◇堺の男性、歯8本折れ

堺市堺区の建築業の男性(27)は一昨年6月、走行中に自転車のフレームが突然折れて転び、重傷を負った。男性はメーカーに約1100万円の賠償を求める訴えを大阪地裁に起こし、係争中だ。

訴えによると、自転車は東大阪市のメーカー「ビーズ」が製造・販売し、「ドッペルギャンガー」のブランド名で展開する折り畳み式のマウンテンバイク。中国で製造された。

走行中突然破損男性は、事故の約7カ月前にインターネット通販で約2万2000円で購入。自宅近くを走っていたところ、前輪と後輪をつなぐアルミ合金製のフレームが突然折れて転んだ。顔を地面に強打し、8本の歯が折れたり、欠けたりした。

男性の相談を受けて調査した国民生活センターは製品の欠陥の可能性を指摘した。センターの報告書によると、フレームには製造時から亀裂が生じていた可能性があり、走行時の負荷で破損につながったと考えられるという。同型品の試験でも破損し、「製品共通の問題である可能性がある」と結論付けた。

ビーズは訴訟で製品に問題があったことを認める一方、治療費などの賠償額を争う姿勢を示している。ビーズによると、同型の自転車の販売は終了しているという。担当者は毎日新聞の取材に「製品の回収は考えていないが、事故がないか注視し、個別に対応したい」と話す。

男性は、事故の約3週間後には結婚式を控えていた。式当日は仮歯を入れ、顔の傷は化粧で隠したという。男性は「購入前から欠陥を見抜くことはできない。安全だと信用して購入している消費者を裏切らないでほしい」と話している。

自転車などの生活用品については、消費生活用製品安全法で、死者や重傷者が出る事故が起きた場合、それを知った日から10日以内に国に報告することがメーカー側に義務付けられている。一方、専門家は「自転車が壊れて事故が起こっても、軽いけがなら消費者が専門機関に相談しないケースが大半だろう。欠陥が原因の事故はもっと多いはずだ」と話している。(毎日新聞 2015年03月01日)


どんなタイミングで壊れるかによって、被害は大きく変わってくると思います。以前には下肢の麻痺という重篤な障害を負った例も報道されています。下り坂などでスピードが出ている時に、突然どこかの破壊が起きれば、被害は、より大きくなるでしょう。最悪死亡に至ることも十分考えられます。

もし自転車が壊れても、大きな被害がなければ報告をしない人は多いでしょうから、10年で367件というのが氷山の一角に過ぎないというのは、おそらくその通りでしょう。このような事例の報告が必ずしも多くないからと言って、死傷事故につながりかねないリスクがあることは見逃すべきではないと思います。

走行中突然破損走行中突然破損

ある程度、自転車の知識がある人なら、自転車の選択を間違えていると感じた人も多いかも知れません。普通、道路を走行するより大きな衝撃や負荷のかかるマウンテンバイクで、折りたたみは一般的ではありません。可動部の強度や重量などの面でも不利で、少なくとも有名メーカーで採用するところは少ないでしょう。

あることはあります。有名なのはアメリカのMONTAGUE社が開発した“Paratrooper”が、折りたたみのマウンテンバイクです。しかし、これは戦場、それもパラシュート部隊が敵地に降下して使うことを想定して作られた戦争用の自転車、つまり軍用品です。背負ってパラシュートで降下するための特殊なマウンテンバイクです。

これに似た自転車も見ますが、そんなタフに作られた自転車が2万2千円で買えるはずがないことは、自転車が趣味の人には常識です。その多くは見かけだけ似せた、いわゆるルック車と見て間違いないでしょう。どこかにシールが貼ってあり、悪路走行に使わないで下さいなどと書いてあるはずです。

走行中突然破損走行中突然破損

被害者がその辺の事情を知らなかったのか、悪路でなく市街地などで使う分には問題ないと考えたのかはわかりません。しかし、悪路でなく自宅周辺で壊れてしまったわけであり、このような粗悪な製品が売られているというのが問題だと思います。購入者の選択は責められないでしょう。

記事によれば、国民生活センターが製品の欠陥の可能性を指摘しています。フレームには製造時から亀裂が生じていた可能性があり、走行時の負荷が加わって破損につながったと考えられるとなっています。同型品の試験でも破損し、「製品共通の問題である可能性がある」と結論付けています。

これは製造メーカーの責任が問われるべきでしょう。製造メーカーであるビーズ社も製品に問題があったことを認めています。ただ、それにもかかわらず、製品の回収は考えていないというのは無責任ではないでしょうか。これが家電などであれば、CMを打つなどして回収に力を尽くすケースではないかと思います。


(今回の事故とは関係ありません。)

一義的には、このような製品を販売したメーカーの責任であり、問題を認めつつも製品を回収しないようなメーカーの製品は、今後、消費者としては買うべきでないということでしょう。ただ問題は、このメーカーの製品以外にも、同様の問題のある製品が他にも多数流通している可能性が高いということです。

私も自転車の製造に詳しいわけではありませんが、やはり、そんな安い値段で、安全性に充分な余裕のある自転車が作れるとは思えません。格安の粗悪な自転車、見た目だけのルック車などがあふれていること、専門店でない量販店やディスカウントストアで、安さが売りになっている状況が問題だと思います。

自転車にも安全性を認定する制度がいくつかあります。まず、JIS、日本工業規格です。しかし、日本の自転車の9割は輸入であり、準拠していない製品も多いと思われます。日本車両検査協会・VIAというところが認証を行なっているようですが、自転車にJISマークを意識していない人も多いと思います。

SGマークSGマークというのもあります。ヘルメットなどの用品だけかと思えば、本体についての基準も設けています。自転車のSG基準を定めた文書を読んでみると、それが十分なのかは、素人にはよくわかりませんが、細かく基準が決められています。ただ、これも輸入車には貼られていない場合が多いと思います。

BAA(安全基準適合車)マーク 、SBAA(スポーツ用自転車安全基準適合車)マークという制度もあります。ただし、これは日本の業界の自主基準であり、当然ながら海外から輸入される自転車の多くには適用されず、マークも貼られていないと思います。

BAAマークそのほか、PL法、製造物責任法も適用されます。自転車の場合、部品ごとに全く別の直接関係ないメーカーのものが使われており、その組み合わせによって複雑になるかも知れませんが、輸入元にも責任が問われます。ただ残念ながら、この制度もまた、必ずしも粗悪な自転車の流通の抑止にはつながっていないようです。

もしこれが食品の安全に関わることであったら、これまでの例と同じように、もっと関心を集めたのかも知れません。家電やストーブ、エレベーターなど身近な製品に問題があり、出火したり、事故が起きて死傷者が出たりすると大きな騒ぎになります。自転車の欠陥製品も、もっと問題視すべきです。

身近な自転車が突然破損して、大怪我や重篤な障害につながるような事故が起きる可能性があるというのは、怖い話です。以前報道された事故は、イタリアの有名ブランド・ビアンキの自転車でした。格安自転車ばかりとは限らず、趣味のサイクリストにとっても他人事ではありません。

SBAAマーク自転車も、人が命を預ける製品、人の命に関わる製品です。もし、そこに自社の経済的利益を優先して、安全性をないがしろにするような悪質なメーカーや流通業者がのさばっているとするならば、これは看過できない問題です。社会としても是正していく必要があると思います。

欧米などと比べ、日本では格安な自転車が市場に溢れており、その平均単価が著しく安いのは、よく指摘されるところです。量販店などに行けば、1万円もしないママチャリが売られていたりします。少なくとも格安の自転車の中には、すぐ部品が壊れたりするような粗悪な自転車が含まれているのは間違いないでしょう。

自転車の安全利用格安なことで、自転車を使い捨てにするような人を増やし、放置自転車という社会問題を増幅させている面も否めません。粗悪な自転車は、悪貨が良貨を駆逐する形となり、日本人の自転車に対するイメージを悪化させ、それが自転車政策やインフラの整備の推進を妨げている面も、私はあると思います。

格安で粗悪な自転車が流通していること自体、製品の安全性を担保する制度が、結果として機能していないことを表わしています。何でも規制を強化するのがいいとは言いませんが、ことは国民の安全や生命に関わります。自由な市場と消費者の選択に任せていては解決できないのも明らかです。

安い製品が流通していれば、やはり買ってしまう消費者は多いでしょう。売らんがために、安全面を疎かにするような価格競争も起こるはずです。どのような方法がいいかは議論のあるところだと思いますが、少なくとも粗悪品を駆逐し、自転車の安全性を高めるため、制度を見直す必要性が問われているのではないでしょうか。




バヒド・ハリルホジッチ氏に決まったようですね。この方の実力はともかく、こんな、取っ替え引っ替えのやり方でいいのでしょうか。

このエントリーをはてなブックマークに追加




Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。

にほんブログ村自転車ブログへ
 自転車・サイクリングの人気ブログが見られます。













この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/cycleroad/52025080
この記事へのコメント
私が子供のころ、昭和40年代前半の話ですが、自転車のフレームが割れた(溶接部分に二番が出た(数ミリ離れたところが熱で劣化して割れた))例を、いくつか見た事が有ります。
当時は国産自転車のピーク、輸出も最盛期だったはずですが、それでも破損は起こりました。信頼できる製品を購入したとしても、器材の点検はかならず行わなければならないと思います。
ただ、その頃は、ほとんどが鉄のダイヤモンドフレームだったので、いきなり分断はしなかった(片方にヒビが入った段階でわかった)ようですが、現在のアルミ一本フレームだと、予兆なしに折れてしまったかも知れませんね。
メーカー(と言っても輸入代行屋レベル?)の対応は問題ですが、価格を考えると、仕方がないのかも。
Posted by ひでさん at March 07, 2015 14:22
ひでさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
その頃と今では、素材技術も加工技術も飛躍的に進んでいますから、安全上重要な部分の強度の確保は十分可能になっていると思いますが、もちろん点検やメンテナンスは重要ですね。
トップチューブとダウンチューブがなく、1本だと突然の破断が怖いですが、その点を考えた設計や強度が必要でしょう。
確かに、この金額では、というのはありますが、メーカーは売らんがために安かろう悪かろうという商品は作るべきではないでしょう。
そのような心配の無い日用品ならともかく、容易に命の危険に陥る可能性のある製品ですから、そのような製品について、粗悪品を製造するのは企業の社会的責任から言っても、非常に問題だと思います。
そのような信頼できないブランドは、売られている価格帯を見れば明らかなわけで、消費者は買わないようにして、粗悪品製造メーカーは淘汰されるようにしなければならないでしょう。
その意味で、消費者の製品知識の向上が大切ということも言えそうですね。
Posted by cycleroad at March 08, 2015 23:12
cycleroadさん,こんばんは.暫くです.

この記事で貴兄が取り上げた2件のフレーム破断の問題につきましては,当方もYahoo!ブログにて「これ程バカな事があるものか」と題して2回取り上げたことがあります.

ただ,全体もしくは一部にカーボンを使用したフレームは,建物の角へぶつけただけで使用不能となる事もありますから,特にラフな扱いをされがちな通学用には不向きとも言えましょう.
Posted by マイロネフ at March 15, 2015 19:38
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
カーボンのフレームを通学に使う生徒がどれほどいるかはともかく、カーボンに乗るような人なら、その特性は理解していると思います。
一方で、そのようなことを全く理解していない人が買うような自転車が、普通の金属フレームにもかかわらず、突然破断するのは問題でしょうね。

Posted by cycleroad at March 16, 2015 23:37
健康のため通勤で隣町駅まで片道7kmを自転車で走っています。モバイルポタリングをやろうと、折りたたみの(軽くて)性能いいのがないか雑誌を何冊か買って調べると16万円もするような外国製のものばかりが取り上げられています。 Amazonなどで見ると「ドッペルギャンガー」みたいなのばかりです。(あやうく買いかけましたが、、)
長年ブリジストンのトランジェットミニを愛用していて、その発展型(10kg以下)がないか調べてももう作ってないみたいです。DAHONの20インチを入手してハンドル回りを取り替え改造してこれも愛用してますが、ハンドモバイルにはもう一息。
ブリジストンやPanasonicが10kg切る16-18インチの折畳みコンパクトを7〜8万円で出してくれたら即買うのですが、、、そういう「文化」は少数派のようです。
Posted by PCマネジン at March 17, 2015 05:57
PCマネジンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、市場では安いフォールディングバイクが氾濫しているのが実情でしょうね。価格競争のようになってしまっているため、コストダウンが危険を増大させています。
記事にあるような粗悪で危険な商品を販売するのは問題ですが、消費者のほうも、安い商品を選ぶと安全にかかわる、それこそ重篤なケガを負いこねないことに、もっと注意すべきでしょう。
特にフォールディングの場合、トップチューブとダウンチューブに分かれたダイヤモンドフレームとは限らず、その場合、破断が即深刻な事故につながりかねないことも、意識すべきでしょう。
文化や好みの問題というより、こういう危険な商品に関しては、消費者問題として対応すべきだと思います。

Posted by cycleroad at March 18, 2015 23:17
 
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)