April 16, 2015

自転車の安全を確保する視点

交通安全は、みんなの願いです。


その実現のための方策はいろいろあります。まず法令の順守や安全確認の励行が基本となります。ヘルメットの着用、視認性の向上などもあるでしょう。余裕と思いやりをもった走行、危険を予測し回避可能なスピード、周囲の交通との意思疎通や譲り合いなど、安全性を向上させる方法は多方面にわたります。

どれも大切で有効な考え方ですが、イギリスの、Crispin Sinclair さんは、さらに自転車そのものので、乗り手を守れないものかと考えました。“Babel Bike”と名づけた自転車を設計し、クラウドファンディングサイトで資金調達を行なっています。

Babel BikeBabel Bike

サドルではなく、背もたれのついたシートのような座席がついています。リカンベントに近い姿勢で乗るシティサイクルです。特徴的なのは、そのシートに枠のようなものがついていて、サイクリストの身体を外からの衝撃から守る役割を担っています。

ちょうど、クルマでいうロールバーのような役割が想定されます。ロールバーとは、屋根のないオープンカーなどに見られる、乗員を守るフレームです。F−1などのレーシングカーにもついています。衝突から保護したり、万一ひっくり返っても、このロールバーで乗員が生存するための空間を確保しようというものです。

Babel BikeBabel Bike

さらに、座席にはクルマのようなシートベルトが備えられています。これによって衝撃が加わったとき投げ出されず、シートの周りの枠が守ってくれるというわけです。確かに、投げ出されてしまったら、枠のような構造の意味がありません。両方セットで乗り手を守るという考え方なのでしょう。

そのほかに、足の部分を守るプロテクターもついています。チェーンやギヤなどはフレームの中に収めるような構造となっており、ライトやウィンカー、バックミラーやブレーキランプまでついています。安全性を高めるための工夫が他にも盛り込まれているわけです。

Babel BikeBabel Bike

結果として重量がかなり重くなってしまっており、そのため電動アシスト機構が採用されています。このような設計により、今までにない、世界で最も安全な自転車になっていると主張しています。たしかに、自転車のフレームで乗り手を保護するとは、これまでなかった安全に対する考え方と言えるでしょう。

この方、Sir Clive Sinclair さんの息子です。 Clive さんは、シンクレアZX80などのコンピュータや、折りたたみ自転車の“A-Bike”など、数々の製品を発明した人として知られています。イギリスでは有名な発明家の息子なのです。このブログでも、超小型の折りたたみ小径車“A-Bike”は、過去に取り上げたことがあります。

Babel Bike

イギリスでは近年、大型車の死角による左折巻き込み事故が問題となっています。このことも過去に取り上げましたが、この“Babel Bike”、主として、その左折巻き込み事故の被害を軽減すべく設計されました。大型車に巻き込まれても乗り手の身体を守ろうという発想なのです。

発明家のサラブレッドだけあって、ユニークな発想です。ロールバーのようなガードといい、シートベルトといい、クルマで実績のある安全思想、構造を自転車に取り入れようという考え方なのでしょう。巻き込まれないに越したことはありませんが、もし巻き込まれた場合、自転車そのものが身を守ってくれます。



ただ、個人的にはシートベルトに違和感を感じます。シートベルトがないと枠の意味がないのは理解できますが、自転車に縛りつけられるというのは、どうなのでしょう。大型車に巻き込まれそうになった場合、シートベルトがなければ、あるいは逃げられる可能性があります。

しかし、シートベルトをしていたら、はさまれた自転車と運命を共にするしかありません。もちろん、実際に乗ってみたわけではないので、想像に過ぎません。でも、シートベルトが必ずしも身を守るとは限らず、逆に仇となるケースも考えられるのではないでしょうか。

ダミー人形による実験で、左折巻き込み事故に対する有効性が認められたとしていますので、確かに機能する場合もあるでしょう。でも、イザという時に、自転車に縛り付けられていることに対して、直感的な違和感を感じるサイクリストも多いのではないでしょうか。

Babel Bike

シートに取り付けられた枠の強度が、どんな大型のトレーラーに踏まれても壊れないというなら違うかも知れません。しかし、ある程度、巻き込みに対するプロテクトにはなっても、そこまでの強度があるとは思えません。それだけの強度を確保しようと思ったら、桁違いに重くなるはずです。

強度を高めれば高めるほど重くなります。そうなると、運動性能的に問題となります。電動アシストでは足りなくなり、エンジンが必要となるかも知れません。そうなると、自転車ではなくオートバイや、小型のクルマに近づいていきます。自転車では保護しきれないということになりかねません。

つまり、枠のようなフレームとシートベルトというのは、クルマの安全の設計思想であり、自転車にそぐわないのではないかという疑問がわきます。自転車に、中途半場にクルマのような構造を取り入れることが、果たして正しい方向なのかと思わざるを得ません。

左折巻き込み事故の被害を軽減しようという思いを否定するわけではありません。しかし、自転車に、左折巻き込みからの自衛まで担わせるのは酷という気がします。自転車に乗員の保護機能まで持たせようというのは、少し無理があると思います。

Babel BikeBabel Bike

これは個人的な意見ですが、同じように感じる人も多いのではないでしょうか。考え方としては、わからないでもないですが、少なくともシートベルトで固定するのは、功罪相半ばするような気がします。実験で機能したとは言っても、実際の事故は多様でしょうし、必ずしも有効とは限らない可能性があるでしょう。

自転車そのものに乗員の保護機能をもたせるという考え方は、確かにユニークです。数ある安全のための議論において、これまであまりなかった視点だと思います。その意味で、新しい自転車の安全の議論に、一石を投じるものとなるかも知れません。

これが資金調達に成功するか、売リ出されて人気となるか、実際に事故の軽減効果を発揮するかはわかりません。今後の推移を見守りたいと思います。ただ、どちらかと言えば、こうした製品で防ぐのではなく、左折巻き込み自体が起きないよう、道路インフラの整備が進むことを期待したいものです。




広島空港は私も何度か使ったことがありますが、怖いですね。しかし大惨事にならなかったのが幸いです。

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この記事へのコメント
cycleroadさんこんばんは。

自転車の安全性が向上したとしても、心無い自動車の運転手が、
殺人まがいの行為をしたとすれば、何の意味も無くなってしまいますね。

先日、取手方面から、常総市の一言主神社に向かっていた時の事ですが、
JRのコンテナを2個積んでいる日通のトラックに、殺されかけました。
故意であることは間違いありません。

私が自転車で25〜30km/hで走っていると、大型トラックは容易には追い越せないのが、
トラックのエンジンの音から判断できますが、
譲ってあげようにも、自転車にも逃げ場が有りません。

見通しの良いところでトラックが抜いて行きましたが、
後輪が過ぎるころから、私の体に触れるところまで幅寄せしてきたのです。
スピードを上げて抜き去ってしまう事ができるのに。
何故なら、私が遅いせいで私の前には自動車は居ないのですから。

トラックの運転手はトラックの長さ、幅を自分の体のように体得しています。
私もトレーラーに乗っていたことが有るので分ります。
追いついてトラックの運転手を引きずり降ろせればよかったのかもしれませんが、
叶いませんでした。

トラックに限らず乗用車の運転手でも、
交通弱者を守らなければならないということ、そして
幅寄せするという行為が、殺人未遂、殺人という犯罪になる事を
理解できていない人が多いように思います。

法令順守というより、道徳心の問題、どうにかならないものでしょうか。

長文失礼しました。
Posted by Fischer at April 17, 2015 21:49
Fischerさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
危ないめに遭いましたね。私も似た経験をしたことが何度かありますので、お気持ちはよくわかります。
おっしゃるように、わざと幅寄せして事故になり、人を死傷させるようなことになったらと考えないのだろうかと思いますが、そのような短慮なドライバーが一定の割合で存在するのは確かなようです。
わざと追い抜けないようにしているわけではないのは明らかでも、怒りを感じる人がいるのでしょう。
私は、すいている片側2車線の道路で、道をふさいだわけでもないのに幅寄せされたこともあります。
自転車のくせに車道を走りやがって、とでも思ったのでしょうか。常々自転車を邪魔に思っていて、その憤懣をぶつけたのかも知れません。

日通とわかっているなら、会社に抗議する手はあるかも知れません。事故になったわけでなく、その事実を証明できるわけでもないので、あまり意味はないかも知れませんが..。
でも最近は、ネットなどで企業の悪い評判がたち、それが広がったりすると、その企業の業績に大きく影響するケースがあります。
企業も社会的な評判やイメージを気にすることが多くなっていますから、何らかの対応をする可能性もあるでしょう。

最近は、自転車にもドライブレコーダーを載せて録画する人があるようですが、そのような非道徳的な行為が動画投稿サイトなどで広がって批難され、その企業の評判が失墜するようなことがあれば、少しは変わるのかも知れません。
全ての悪質ドライバーというわけにはいきませんが、いわゆる看板を背負って走っている車輌を持つ会社は、ドライバーへの監督を徹底するようになるでしょう。
悪質なドライバーの場合、その個人の道徳心に訴えて変わるとは思えません。でも、悪質な職業ドライバーに世間の批難が集まるような機会があって、会社の監督が強まれば、少しは改善するかも知れませんね。

Posted by cycleroad at April 19, 2015 23:28
Cycleroadさん、いつもニュースをありがとうございます。
今回の記事は特に興味を引きました。というのは私自身がリカンベントに乗っており、突然自動車に右側から当たられるという事故の経験があるからです。
幸い、ハイレーサというタイプのリカンベントであったことから直接体が自動車に触れることはなく右足を怪我することなく済みました。その代わりに自転車はフロントフォークが根本で折れ、着地の衝撃でギヤは歪んでしまい廃車になってしまいました。
この時に改めてリカンベントの利点を感じました。思っていた以上に人車一体なんだということ。アップライトなら頭から投げ出されていたことでしょう。また車のボンネット上を滑っている時もリカンベントのシートに守られてかすり傷一つ負っていません。乗車姿勢のまま地面に投げ出されました。正に自転車に守られたとさえ感じています。
 さすがに着地した時には頭を地面にぶつけています。ヘルメットのお陰で軽い打撲で済みました。
 ですのでベースがリカンベント型だというのにはとても納得できます。巻き込み事故を想定すればこの記事位の装備が必要かも知れませんが、重くなっ利過ぎては利便性が大きく損なわれると思いますね。

 面白い話ですが、暫くリカンベントに乗れなかっ後、久しぶりに乗ろうとした際に無意識に車と同様にシートベルトを探そうとしたことが有るのですよね。自分でも苦笑いしましたが。でも実際のところシートに固定されると都合の悪い場面があるのは事実です。いつも背もたれに持たれてばかりではないのです。具体的にはバックミラーだけでなく直接後方確認する場合とか、止まっている時、などです。

 車体もある程度は考慮が必要かも知れないけれど、道路インフラの整備の方がより大切だと私も思います。
Posted by こうが at April 20, 2015 22:40
幅寄せ怖いですね。
私は大型車に限らず、狭い道路なら極力止まってやり過ごすようにしています。
商業車のドライバーさんは運転が上手な分、中には平気で危ないことをしてくる人もいます。ただ、接触しなくても幅寄せしてひっくり返れば、民法上の不法行為あるいは故意であれば傷害罪が成立する場合があります。私はクルマを運転しているときに前方のクルマが幅寄せしてお年寄りが乗る自転車が転倒したのを見て通報したこともあります。被害者だけでなく、周りの意識も必要なのだろうと思います。
Posted by ママチャリスト at April 21, 2015 08:39
こうがさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
リカンベントで事故とは、まさに今回の記事のテーマそのものの経験をされたのですか。事故の程度が軽かったようでよかったですね。
なるほど、事故時にリカンベントならではの利点があるわけですか。それは経験者でなければ、なかなかわからないことですね。
リカンベントの場合、この記事の“Babel Bike”のような発想になるのも理にかなっている部分があるということになるでしょうか。
もちろん、重さが増えるのは大きなデメリットで、安全性と相反する点で、難しい面はありそうです。
シートベルトについても、実際に乗られている人でないと、わからない部分がありますね。私は、事故時に逃げられないのがどうなのだろうと考えましたが、ふだんでも不都合があるとまでは気がつきませんでした。
実際にリカンベントに乗っていて、しかも事故の経験者という立場からの貴重なご意見をありがとうございます。
Posted by cycleroad at April 21, 2015 23:39
ママチャリストさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
結局、損害を被るのは自転車のほうですし、加害者が必ず捕まるという保証もないわけですから、自衛ということが大切なのは、そのとおりだと思います。
人間と大型車なら、接触しても痕跡が残らないこともあるでしょうし、おっしゃるように、接触しなかったから罪はないということにはならないでしょう。
周囲の目が、事故を起こしかねない乱暴運転の抑止になるのも確かだと思います。ただ、それでもお構いなしの、短慮で、後先を考えないような人がいるのも、残念ながら事実でしょうね。
Posted by cycleroad at April 21, 2015 23:48
 
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