May 01, 2015

市民の力で違法駐車をなくす

路上には自転車にとっての危険がたくさんあります。


いろいろあると思いますが、確実にその中の一つに入るのが、違法駐車車輌でしょう。駐車禁止の場所に迷惑駐車しているクルマやトラックなどです。その車輌を回避するためには、道路の中央方向へ出ざるを得ませんし、車輌が障害物となって、その先の横断者などが死角になったりします。

日本では、まだ整備されているところは少ないですが、自転車レーンをふさいで駐車している車輌もあります。せっかくの自転車の安全のためのレーンなのに、そこへ無神経にも違法駐車するドライバーに腹立たしい思いをしたことのあるサイクリストは多いでしょう。

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駐停車禁止の場所ならば、停車も違反です。駐車禁止の場所に、人の乗り降りや5分以内の荷物の積み下ろし以外で連続して停車しているのも違法です。運転席に座ったまま、いつでも発車できる状態なら、客待ちや荷待ち、あるいは休憩していても駐車違反ではないと思っている人もいますが、これも駐車違反です。

違法駐車は、サイクリストの通行の安全を脅かすだけでなく、渋滞を呼び、事故を誘発しかねません。道路という公共性の高い場所を個人の勝手で占有する極めて迷惑な行為です。その一台のために、1車線が機能しなくなることもありますし、渋滞を通じて多くの人の時間を奪って、社会的に莫大な損害を与えています。

TowIt

まことに迷惑な駐車違反ですが、それは日本だけの話ではありません。カナダのトロントでも違法駐車車輌に悩むサイクリストがいました。Michael McArthur さんです。彼は、ビジネスパートナーである、Gregory Meloche さんと、一つのアプリを開発しました。

その名も“Towit”、日本でよく使われる言葉で言えば、「レッカー移動しろ」ということになるでしょうか。サイクリストや歩行者は、スマホで違法駐車や自転車レーンをふさいで迷惑駐車している車輌の写真をとり、そのまま、この“Towit”のサイトへアップロードします。

TowIt

迷惑駐車している車輌のナンバープレートや、出来れば標識や、自転車レーンの表示などが写真に収まるようにします。同時にGPSで写真を撮った場所の位置情報が送られるので、自動的に地図上の該当する場所に写真がプロットされるという仕組みです。

このサイトはクラウドソーシングされており、世界のどの都市からでもアップロードできます。その写真は、ネット上でいつでも誰でも見ることが出来ます。まだ立ち上がって日が浅いので、McArthur さんの住むトロントがほとんどですが、徐々に世界中に広がりつつあります。

TowIt今までも、サイクリストが個人的に違法駐車の車輌を写真で撮り、ネット上にアップして批判する人はいました。しかし、個人のサイトでは、見る人が少なく、あまり影響力がありません。この“Towit”のようなサイトが広く知れ渡るようになれば、世論に直接訴えることも期待できます。

実際にカナダのメディアなどにも取り上げられて話題になりつつあり、市の関係者にも働きかけを始めています。市民の声に押されて、警察や委託された駐車取り締まり業者が、サイトをモニターするようになれば、彼らは、リアルタイムのアップロード、すなわち通報を受けて即座に取り締まりに出動できることになります。

TowItこれは、警察や取り締まり当局の労力を減らす働きもするに違いありません。しかも、彼らは特に新たなコストを払う必要はありません。さらに、市民にとっても、税金を余計に使うことにならないわけで、その点でもメリットがあるはずです。

さらに、データが蓄積していけば、違法駐車されやすい場所がわかったり、それと事故の相関関係が判明するなど、交通政策に活かすことが出来るかも知れません。もちろん、市民の通報がベースになるわけですが、市民としても、自分たちの手で、間接的に街をよくしたり、安全にしていくことが出来るわけです。

McArthur さんに言わせれば、市当局にとっても、こんな得なことはないわけで、これを活用しない理由が見つからないと話しています。一方、通報の標的となる可能性の高いトラックなどを擁する物流業者にとっては、脅威となる可能性があります。

業者側にも言い分はあるでしょう。都市によって事情は違いますが、駐車条例が複雑すぎるとか、そのことを市民が理解していないとか、物流が滞れば市民にとっても不利益が及ぶ、といった、およそ想像のつく反論も、一部では聞かれるようです。

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確かに、市民が物流による恩恵に浴しているのは事実でしょう。しかし、だからと言って、物流業者だけは法令に違反してもいいことにはなりません。荷物を運んでいるのだから仕方がないだろうという態度は間違っているわけで、法令に従ってデリバリーすることが求められるのは当然の話です。

もちろん、物流の会社も、そのあたりは当然心得ているはずです。ただでさえ、今どきは、企業の反社会的な行為がネット上の投稿によって明らかになったりすると、大きな反響を呼ぶことがあります。結果的に大きなダメージを受けることになるので、多くの企業は注意を払わざるを得ません。

TowIt逆に言うと、自社の看板を背負った車輌が多数投稿され、世論の反発を買ったり、それに対する対応を誤ったりすれば、業績の悪化に直結することも考えられます。実際に、商品の偽装や衛生管理、労使関係などをきっかけに、社会から大きなダメだしを食らった企業はこれまでにも多数あります。

その意味でも、こうしたサイトが認知され、社会的な正義を実現する手段として評価されるようになれば、企業への違法行為容認の抑止力として、大きな力を持つことになるかも知れません。今のところ、単に写真を撮ってアップロードするだけですが、大きな可能性を秘めていると言えるのではないでしょうか。

個人が、自分のサイトや、Twitter、Instagram、Facebook などの個人のアカウントに違法駐車車輌をアップロードしても、なかなかそれが大きな反響を呼ぶのは難しい面があります。企業側も、無数にある個人のアカウントまで捕捉しきれないので、自粛効果も期待薄です。でも個人の力が集まれば、大きな力を持つかも知れません。

たかが駐車違反と思うドライバーもいるでしょう。しかし、違法駐車が元で交通事故が起きて、命を落とす人だっているわけで、決して軽視されるべきことではないはずです。McArthur さんも、毎日、都市の数万人規模の人々に大きく影響する問題を解決しようとしていると考えています。





駐車違反のキップを切られて、いまいましい思いすることになるドライバーだって、違法駐車をなくそうという、この取り組みの正当性に反論は出来ないはずです。むしろ、リアルタイムに通報されて、いつ検挙されるかわからないとすれば、迷惑駐車という行動を改めるざるを得ないでしょう。

もちろん、実際に写真を撮ろうとした時、ドライバーとトラブルになる可能性はあります。駐車違反という「犯罪」を犯している犯人が逆ギレするケースは十分に考えられます。しかし、基本的には違法行為を通報し、事故や渋滞を防ごうとするのは、市民としての正当な行動でしょう。

TowItそれは、市民の権利であり、ある意味、市民としての義務かも知れません。もともと、後ろめたいわけですし、こうした取り組みが広く認知されるようになれば、市民が写真を撮って通報するという行動に、正面から文句をつける人もいなくなるのではないでしょうか。

もし、このような方法で、違法駐車が排除できるようになるならば、自転車レーンを高規格化したり、物理的に駐車できなくする費用は大幅に節約できることになります。自転車インフラの整備に、はずみがつくかも知れません。そして、自転車レーンが安全に寄与する実効性も向上するでしょう。

いろいろな意味で、興味深い取り組みだと思います。願わくば一時的な注目ではなく、こうしたサイトの定着を期待したいところです。それは、市民が自らの交通安全や、渋滞による社会的損失、大気汚染などの害から身を守る方法を獲得することになります。今後の動向に注目したいと思います。




大型連休中は、どこへ行っても混んでいそうですが、逆に都心はクルマが少なく走りやすいかも知れませんね。

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この記事へのコメント
違法駐車を含めた路上駐停車が無ければ、環境にやさしく健康増進効果の高い自転車のポテンシャルを大きく引き出すことができるということは、明らかですしね。
路上駐停車したければ、弱者の聖域である歩道や自転車レーンではなく、歩行者や自転車の通行を妨げない場所になさい!と自動車運転手らには強く重ねて言いたいところですね。
交通の鉄則は弱者保護弱者優先なのですが、法律を厳守すべき業務ドライバーが制限速度すら守らず、安全車間距離すら守れず、路上駐停車問題においてもこのような惨状であることは、即刻正していくことが必要であるし、子供を乗せた自転車でも安全安心に通れる本来の自転車通行環境実現のためには、事故を誘発する路上駐停車自動車一掃は大前提なのですから。

事故を誘発した違法駐車運転に6千万円の賠償命令 消防車や救急車の行く手を阻む違法駐車 緊急事態現場への到着、未だ遠く
http://www.city.minokamo.gifu.jp/home/kouhou/IHAN/1.html
路上駐車の運転手が女児死亡事故を誘発したとして車庫法違反で約3400万円
http://www.47news.jp/CN/200408/CN2004080601003709.html
Posted by GreenTopTube at May 07, 2015 12:08
この通り、路上に自動車を駐める行為は極めて重大な人的被害や責任を生じさせるほどの反社会的行為であるということを周知するため、自動車運転手らに徹底啓発と取り締まりで当たることが道交法における交通弱者保護優先の意識を映した行政の姿と言えるでしょう。
その上で、適切な荷捌き所を整備することも併行してあたればよいのです。
優先順位として、弱者の保護優先は何よりも優先されて当然であり、それを率先しないことは個人でも、企業でも、行政としても、恥ずべき行為と言えます。
制限速度以下で安全運転し、自転車に対して安全車間距離を厳守し、路上駐停車は事故を誘発するので避ける。
この当然のことすらできない環境なのなら、そもそも自動車の運転や使用などやめることです。
Posted by GreenTopTube at May 07, 2015 12:09
GreenTopTubeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
たとえ車道の幅が広い道路であっても、ドライバーは同じクルマに対しては気を使い、邪魔にならないようにとめる一方、自転車や歩行者に対しては全く無頓着という傾向があると思います。
なかには歩道に乗り上げたり、歩行者まで迂回せざるを得ない駐車をする傾向があると思います。
歩道や自転車レーンを物理的に駐車できないようにしたのと同じように、迷惑駐車をするなら車道の範囲内でするようになれば、渋滞はともかく、歩行者や自転車を危険に晒す度合いは軽減出来ると思います。
そのあたりも踏まえた上で、改革が必要でしょうね。
もちろん、消防車や救急車の通行を妨げる駐車は論外です。迷惑駐輪がはみ出ていたくらいなら、どけることも出来るでしょうが、クルマはそうもいかないですし。
多くの場合、近くに民間の駐車場などがあるわけですから、駐車料金を払わないで済ませようとする駐車違反については、排除を徹底してもいいと思います。
Posted by cycleroad at May 08, 2015 23:33
 
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