June 21, 2015

新たな技術が不要となる整備

サイクリストにとって重要な面があります。


それは路面です。ロードバイクなら、道路と接するのは、わずか切手2枚ほどの路面ということになりますが、とても大きな影響を受けます。路面の舗装状態は乗り心地も左右しますし、路面の抵抗、平滑状態によっては走りやすさやスピードも変わってくるでしょう。

残念ながら、実際には舗装が古くなって劣化していたり、工事などの影響で平らでない道路も少なくありません。不規則な場所に排水溝があったり、マンホールがあったり、非常に滑りやすい鉄板などが敷かれていることもあります。何より、路面に思わぬ穴が開いていたりすると、その穴に車輪をとられて落車する危険があります。

路面そのもの以外に、何かの落下物やゴミなどが落ちている場合もあります。そうした路面の凸凹や舗装状態、構造物、落下物などの影響で、パンクなどのトラブルが誘発されることもあります。どうしても、路面の状態に気を使いながら走らなければなりません。

クルマなら、タイヤも太いですし、4輪ですから影響も小さく、よほどの悪路でもない限り、路面にそれほど気を使う必要はないでしょう。しかし、自転車の場合は、周囲の交通状況に加えて、路面にも注意を払いながら走行せざるを得ないぶん、余計な労力を要することになります。

Byxee

そんなサイクリストの労力を減らし、安全な走行のためのアシストをする装置が開発されました。クラウドファンディングサイト、“Indiegogo”で資金調達を試みている、“Byxee”です。前方の路面をスキャンして、その危険性を察知し、乗り手に教えてくれる装置です。

最近は、クルマの世界でも、センサーによって障害物や歩行者・自転車などを認識してドライバーに注意をうながしたり、センターラインなどを認識して、脇見や居眠りを警告するような装置など、いろいろ出て来ています。前方の障害物との距離を測って、自動的にブレーキをかける装置なども珍しくなくなりました。


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センサーや画像認識など、先進の技術が安価に、またコンパクトになってきたことで、クルマへの搭載も進んできています。同じような技術や半導体などを、自転車にも応用しようというわけです。せっかく進歩してきた技術や部品があるなら、自転車にも広げようというのは、自然な発想ですし、当然の流れなのでしょう。

これまでにも、自転車の後方から接近するクルマを検知し、乗り手の注意をうながしたり、後方へのランプなどで視認性を高めようとする装置などはありました。でも、路面の状況をスキャンして教えてくれるという発想は新しいのではないでしょうか。


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15メートルないし25メートル先の路面がスキャンできます。地面の凸凹や、排水溝やマンホールなどの段差だけでなく、落下物や、急に飛び出してきた歩行者、動物なども検出すると言います。スキャンした前方の路面情報を、瞬時に画像解析してアラームを鳴らす仕組みです。

装置自体は、よくあるライトくらいの大きさです。重さも70グラム程度、バッテリーによって30時間程度は駆動します。価格も早期に申し込めば、139ドルからとなっています。まだ資金調達にチャレンジ中ですが、なかなか興味深い機器ではないでしょうか。


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もちろん、使ってみないことには、どれほど役に立つのかはわかりません。スキャンできる距離は限られているため、時速16キロで約5秒、時速32キロでは約3秒、時速48キロなら約2秒しか、アラームが鳴ってからの時間的余裕がありません。アラームの原因を、とっさに発見して反応できるのかも未知の部分です。

どれほどの精度を発揮するかもわかりませんし、あまりに敏感すぎると使いづらいかも知れません。通るであろう路面の周辺、あまり広い範囲の段差や障害を拾うようでは、無意味な警告が増えることになりかねません。ハンドルが左右に振れたら、さらに広い範囲をスキャンしてしまうかも知れません。

特に日本で使う場合は、車道に自転車走行空間が考慮されていない場合も多く、走行環境が劣悪な場所も少なくありません。車道外側線の外の側溝のフタの上を通行せざるを得ないようなケースもあります。車道の端は舗装の不備や排水溝、その他の段差や障害物も多く、鳴りっぱなしのような気がしないでもありません。


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そのあたりは調整出来るようになっていますが、どの程度、実用性があって、使い勝手がいいか、上手く回避できるかなどについては、実際に使ってみないことには何とも言えません。ただ、サイクリストの注意力の一部を代替することで、安全性の向上に資するというコンセプトは評価できそうです。

本来、自転車というアナログでシンプルな道具が、電子化し、高度化し、いろいろな機能・機材が搭載・装備されるようになることには、疑問や嫌悪感を感じるサイクリストもあるでしょう。もちろん、この“Byxee”、すべての自転車に標準で装備されていくような機材ではないと思います。


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ただ、GPSやナビなどもそうですが、場合によっては確かに便利というものもあります。時代が進むに連れて、技術や機械も進化するわけで、これまで出来なかったことが実現することも増えていくに違いありません。普及するかどうかは別として、少なくとも、こうした挑戦には価値があります。

このようなチャレンジや試行錯誤があってこそ、不便や不満が解消されたり、自転車の安全性が高まったり、自転車生活が豊かになったりします。より多くの場面で使えるようになったり、自転車の可能性を広げていくことにもなるのだろうと思います。



このような装置が普及するかはわかりません。ただ、個人的な願望を言うなら、こうした装置は、自治体の担当や道路管理者が使って、自転車の走行空間のメンテナンスに役立ててほしいところです。段差や穴などを発見次第、埋めたり、ならしたり、整備をするのに使ってもらいたいものです。

自転車先進都市と呼ばれるような場所では、自治体が自転車の走行空間の環境の向上に注力しているところもあります。それも、自転車利用者の立場になって、細かいところまで気を使っています。日本の役所と違って、担当者も自転車を愛用しているのでしょう。

このような装置によって、自転車の安全性が向上するならば、有意義なことだと思います。しかし、このような装置が必要ということは、不幸な状態と言うことも出来ます。日本では、まだまだ遠い理想ですが、出来れば、このような装置がいらなくなるような路面が整備されることを期待したいものです。




トヨタの社長、「法を犯す意図はなかったと信じる。」と言っています。単なるミステイクと言わんばかりですが、法を犯す意図がなかったとしても、違法なものは違法なのでは?

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この記事へのコメント
 確かに面白い装置ですが、むしろ後ろ向きに装着して車両等の接近を知らせた方が実用的かも。最近のむやみに静かな車は音では気づきにくく、バックミラーを付けていても、常に後ろを気にしていられるわけではないので。

 路上の穴などの障害は、走行速度により気を付けるべき距離が変わりますし、突然開く車のドアや犬の伸縮リード(細くてまず見えない)の有無などは、注意深い観察によってのみ回避可能なので、下手に機械に頼る癖がつくと危険なような気がします。
Posted by ひでさん at June 22, 2015 12:36
ひでさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
以前取り上げましたが、後方のクルマの接近を関知し、知らせてくれると同時に後方への注意喚起を促す装置は、他のメーカーから、すでに販売されています。
機械に頼っていいものなののか、果たして実用的なのか、という疑問は私も感じます。結果的にとても実用的だったという可能性もあるわけですが、新しい装置の場合は、当然感じる疑問でしょうね。
Posted by cycleroad at June 23, 2015 23:36
>ただ、個人的な願望を言うなら、こうした装置は、自治体の担当や道路管理者が使って、自転車の走行空間のメンテナンスに役立ててほしいところです。段差や穴などを発見次第、埋めたり、ならしたり、整備をするのに使ってもらいたいものです。

私もこの辺り強く同意いたします。
危険な側溝などもまだまだ多いのが現状でしょうし
装置でのチェックと目視でのチェックを徹底してもらいたいと思いますし
道路管理者というものは、歩行者自転車もふくめたすべて道路利用者にとって安全な道路環境を責任をもって整備維持することが課されているわけですから、
自転車利用者が道路の安全不備によって取り返しのつかない怪我等を負うまえに、
道路の安全チェックと修繕を一刻も早くしてほしいと望むところです。
地域の人々も「あ、ここ危ないな!」と思ったら、積極的に道路管理者たる国や県、市町村に改善を要請してよいのですし、それによって地域の安全は確実に向上するのですから、遠慮は要らないのです。どんどん改善要請を出していきましょう。役所の総合受付に、どの道のあの箇所が危ないということと、改善してほしいという旨を伝えればOKです。

また、自動車の速度超過暴走が極めて深刻な問題ですし、自動車に制限速度を超えたら、けたたましく鳴る警告装置を搭載義務化するか、
覆面パトカーや移動式オービスで徹底取り締まりしてほしいですよね。
Posted by GreenTopTube at June 24, 2015 04:53
GreenTopTubeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
整備もさることながら、まずその前に、自転車が側溝の上を走行せざるを得ない状況を改善してほしい場所も多いと思います。
クルマ優先の意識が強いため、道路の幅に余裕が乏しい場合には、自転車の通行に対する配慮が皆無と言ってもいいような場所も少なくありません。
自転車を歩道走行させてきてしまった結果、歩行者が少ないのに無駄に広い歩道整備なども行なわれてきたわけで、そのへんの是正も必要だと思います。
道路の構造に関連する法令などもあるのはわかりますが、まず根本的に、道路のシェアということを考え直す必要がある気がします。
Posted by cycleroad at June 24, 2015 23:26
 
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