November 06, 2015

自転車が強みになるビジネス

ロンドンでは自転車の活用が進んでいます。


これまで何度も取り上げたように、ロンドンオリンピックを契機に、名物市長ボリスジョンソン氏が行なった画期的な「自転車革命」のおかげで、ロンドンの自転車インフラ、自転車事情は大きく変わりました。多くの人が自転車に乗るようになり、人々の自転車に対する意識も変わりました。

自転車シェアリングが広く利用されるようになったり、自転車通勤・通学をする人が増えただけではありません。ビジネスシーンでも自転車が意識される事例が見られるようになって来ました。自転車通勤に手厚いオフィスや賃貸住宅も出てきています。

これまでにも、ロンドンで自転車を使った移動カフェを開業したり、観光客向けのサービスを展開するなど、商売に自転車を使おうという人を取り上げてきました。商売に自転車を使うこと自体は珍しくありませんが、自転車を使って新しいビジネスを立ち上げようとする人も出てきています。

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Nancy Gibson さんは、今のところロンドンでただ一人の「サイクリング・ヘアドレッサー」です。自転車に乗って顧客の元へ出向いてヘアーカットをする、サイクリング・ヘアーカットという業態を思いつきました。ヘアーカットの出前をするヘアースタイリストなのです。

有名なヴィダル・サスーンの元で、10年間ヘアーカットやカラーリングの修行をした経験もあり、腕は確かです。原則として月曜日と火曜日は市内のサロンで働いていますが、その他の日には予約を募って、ヘアーカットの出張サービスをしています。自転車で出かけるのもウリです。

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髪を切るためには、ヘアーサロンに行くのが当たり前です。しかし、いろいろな事情があって、自分からは出かけられない人もいるはずです。忙しくて、往復する時間がもったいない人、呼べるなら来てもらいたい人もいるかも知れません。今までにない形態をとることで、新しいニーズが掘り起こせる可能性があります。

出向く手段は自転車です。以前から慢性的な渋滞に悩まされてきたロンドンでは、自転車のほうが速いということもあります。自転車なら住宅地の狭い路地でも入っていけます。クルマだと、出向いた先に来客用の駐車場がないと困りますが、自転車ならば問題ありません。どこへでも行けます。

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今ある自分の自転車を使うということもありますが、基本的にクルマと違ってイニシャルコストは格安です。燃料費もかからなければ、保険や税金、駐車場代やメンテナンス費用などもかかりません。ランニングコストもクルマとは比べものにならないわけで、このあたりも自転車のメリットです。

Nancy さん自身、自転車好きなのもあります。家と勤め先の往復だけでなく、どこへでも自転車で出かけていきます。自転車でヘアーカットに出向くのは、彼女にとってむしろ自然なのです。そして、サロンに行かなければヘアーカット出来ないという、これまでの制約、固定観念、習慣を解き放ちたいと考えているのです。

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Florence Kennedy さんは、ロンドンで唯一の、“Bouquets by bicycle”「自転車による花束サービス」を展開する花屋を始めました。ネットで受け付けて、素敵なブーケ、花束を指定先に届けるサービスです。そして、その配達に自転車を使っているのがポイントです。

イギリス人は花好きとして知られています。イングリッシュガーデンは有名ですし、イギリスへ行くと、街のあちこちに花があふれていると感じる人は多いのではないでしょうか。世界でも有数の花好きな国民と言っても過言ではないかも知れません。

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そんなイギリスの花好きの人たちの間では、特に記念日などでなくても花を贈りあいます。家でもオフィスでも、花があるだけで場が潤いますし、華やぎます。ふと癒されたり、気持ちが和らいだりします。一種の精神安定剤でもあります。いつも花に囲まれていたい、花がないのは寂しいと感じる人も少なくないのです。

そんな花好きの人は、自然を愛する人でもあります。自転車は化石燃料を使わず、温暖化ガスや窒素酸化物、PM2.5など、自然を汚す排気ガスを出さないという、いいイメージがあります。花を届けるのにも環境に負荷をかけるクルマより、自転車によるほうを好むのは間違いありません。

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他のヨーロッパ諸国と同じように環境に負荷をかけたくないという意識の高まりも背景にありますが、わざわざ、“Bouquets by bicycle”とうたっているのは、そのことをアピールし、ほかと差別化するためでもあるわけです。ロンドンの指定区域内であれば、正午までの申し込みで、即日配達されます。

ブーケは2種類、使われるのは、その時の旬の花で、週替わりのお任せになります。ブーケを2種類に絞り、構成する花を指定できない代わりに、料金は安く抑えられています。自転車を使うことで、配達のための車両コスト、燃料代などのコストを抑えているのも安くできる理由です。

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さらに、料金のうちの1ポンドは、“Bee Collective”というNPOに寄付されることになっています。このNPOは、ロンドン地区で、養蜂業をサポートする団体です。最近、世界的にミツバチの減少が危惧されていますが、花好きの人にとって、この取り組みも好感度が上がる要因でしょう。

ちなみに、夫の、James さんは“Kennedy City Bicycles”というブランドを展開する自転車ビルダーです。都市で使う自転車に特化した高品質で信頼のおける自転車をつくっています。Florence さんが、このブランドの自転車を使っているのは言うまでもありません。

Kennedy City BicyclesKennedy City Bicycles

二人の女性を取り上げましたが、どちらも気取らず、自然に自転車を使うというスタイルを選択しています。それでいて、自転車がビジネスの特徴にもなっています。元々の自転車好きですが、昨今のロンドンの自転車事情が追い風になっているのも確かでしょう。

ロンドンも、以前はオランダやデンマークのような自転車先進国、先進都市とは言えませんでした。市民も以前は、自転車に対して必ずしもいいイメージを抱いていませんでした。最近のロンドンでの自転車の地位向上が、ビジネスに好影響を与えているのは間違いないでしょう。

渋滞回避やコスト面、イメージなど、自転車を使うメリットはたくさんあります。それだけでなく、自転車を選ぶこと、自転車と組み合わせることが新たな価値を生み、他と差別化し、ビジネスの強みになります。そんな例は、これからも増えていきそうです。




2020年の東京パラリンピックの期間中に小中学校を休日にするという案、多少夏休みを伸ばすだけなので可能かと思いますが、宿題をこなすのに使われるだけのような気もしますね(笑)。

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Posted by 管理人 at November 09, 2015 16:52
せっかくのお申し出ですが、基本的に相互リンクは遠慮させていただいております。
リンクしていただくのは構いませんが、あしからずご容赦ください。
Posted by cycleroad at November 10, 2015 23:29
 
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