November 30, 2015

自転車泥棒の好きにさせるな

相変わらず、自転車盗がなくなりません。


サイクリストは、常に盗難防止を念頭におくことを迫られています。実際に被害にあった方もあるでしょう。特にスポーツバイクは、被害にあった場合の金額も大きくなりますし、愛着のある自分の相棒が盗まれると精神的なショックも小さくありません。


高級車狙い?自宅にずらり73台…自転車盗逮捕

福岡県警早良署は12日、福岡市早良区、アルバイト(52)を窃盗容疑で逮捕したと発表した。

自転車盗逮捕
容疑者の自宅から押収された自転車(12日午後、福岡市の早良署で)

自宅からスポーツタイプを主とした自転車73台が押収されており、同署は高級自転車を狙って盗みを繰り返していた可能性があるとみて調べている。

発表によると、容疑者は8日から9日にかけ、同区の駐輪場で、会社員男性(27)の自転車1台(5万円相当)を盗んだ疑い。「間違いない」と容疑を認めているという。

押収された73台の大半はロードバイクなどのスポーツタイプで、うち19台は盗難届が出ていた。自宅内と玄関先に多くの自転車が置かれ、近所から不審に思う声が出ていたという。(2015年11月13日 読売新聞)


無施錠か、簡単に解錠できるママチャリなどを、勝手に拝借してアシとして使って乗り捨てるような、いわば行き当たりばったりの自転車盗だけではありません。最近は、金額の高い自転車を、最初から換金目的で盗む自転車盗の発生も増えているようです。

このような犯行は、高価なスポーツバイクばかりを盗むわけですから、狙い撃ちにされる確率が高まります。サイクリストにとっては厄介であり、憎むべき存在です。きちんと施錠していても、プロが使うような電動や油圧の工具などを使われれば、どんなロックでも簡単に破壊・切断されてしまうと言います。

Perfectoほとんどの場合、1分もかからずに破壊もしくは切断されるそうです。なるべく頑丈なロックで複数施錠するなど、相対的に盗むのに手間がかかるようにすれば、被害を免れる確率は上がるでしょうが絶対ではありません。自転車盗を確実に防ぐのは困難と言わざるを得ません。

中には警察が検挙するケースもありますが、多くは未解決です。いかんせん件数が多いため、個々の捜査に多くの人手をかけるのは難しいでしょう。自転車盗は、青少年の非行の入り口となることが多く、地域の治安悪化のきっかけにもなることから、防止のための啓発活動などにも力が入れられいます。

しかし、犯行を助長する、無施錠の自転車を減らすことは、将来の窃盗犯を減らすという意味では効果があるかも知れませんが、いわばプロの窃盗犯の犯行を防ぐには効果が薄いと思われます。たまに検挙されたことがニュースになるくらいでは、抑止効果もあまり期待できません。

考えてみれば、自転車というのは、窃盗犯の絶好の獲物かも知れません。街に出れば、盗んで下さいと言わんばかりに自転車が並んでいます。私有財産が、公共の場所に置かれているのは、他にクルマくらいでしょうか。でも、クルマに比べて圧倒的に盗みやすく、運びやすく、隠しやすいのは間違いありません。

Perfectoふつう金品を盗むためには、金融機関や商店、民家やコンビニなどに押し入る必要があります。留守宅を狙って空き巣に入るとしても、侵入することのハードルは高いですし、証拠が残ったり、検挙される確率が高まるであろうことは容易に想像がつきます。

自転車の場合は、道路脇や、商業施設、駅前の駐輪場など、物色し放題です。多少の知識があれば、どれが高く売れる自転車かもすぐわかります。分解してパーツとして売りさばくことも出来て換金しやすく、窃盗の対象になりやすいということなのでしょう。

確信犯にとって、昼間のひと気のない駐輪場から自転車を盗むくらい、赤子の手をひねるようなものに違いありません。監視の目が行き届かないような駐輪場はいくらでもあります。自分の自転車を出すフリをして、周囲の目がない隙を見計らって、ロックを破るくらい朝飯前なのでしょう。

固定物につなげてロックしてなければ、施錠されたまま持ち上げ、トラックなどに載せて、後でゆっくり解錠することも可能でしょう。放置自転車の撤去作業者か何かのフリをすれば、怪しまれることもありません。中には、個人宅などの軒先、玄関先から盗むような大胆な犯行もあると聞きます。

Perfectoこのような自転車盗を防ぐため、防犯グッズなどもいろいろ工夫されているわけですが、完全に盗難を防げないのが実際のところでしょう。盗難防止だけのために、特殊な自転車に買い換えるのも難しいですし、手間のかかる防止法を、常にとれるとも限りません。

以前から書いていますが、自転車盗を減らすのに効果的なのは、出口、すなわち換金するのを困難にしていくしかないと思います。自分が乗るために盗むのを除いて、換金が出来なければ、盗む理由がなくなります。盗んでも飾っておくしかないなら、被害は激減するに違いありません。

最近は、街のリサイクルショップだけではなく、ネットオークションや個人で売買できるようなサイトがたくさんあります。対面で売却しなくても、ネットで簡単に売ることが出来るわけです。アシも付きにくく、換金に手間がかからないのですから、犯人にとっては笑いがとまらないでしょう。

もちろん、中古の車体やパーツを手に入れたいサイクリストも多いわけですから、その利便性をそぐわけにはいきません。でも、盗難品は出品出来ないようにするなど、換金手段とならないようにするべきではないでしょうか。残念ながら、今はそのような対策はとられていません。

Perfectoサイトとしては、売買を規制する形になるわけで、売上げを減らす方向に作用します。盗品を排除するような仕組みを整えることは余計なコストにもなります。もちろん盗品と判明すれば対応はするでしょうが、積極的に盗品売買を排除しようとしているとは言えない状態です。簡単ではないのも確かでしょう。

ところが、最近新しくスタートした自転車専用の売買サイト、“Perfecto”は違います。盗品の売買を排除することを明確にうたっています。盗品売買について一切許容しない姿勢です。他のサイトと違って、自転車泥棒を許さないことを明確なコンセプトとして掲げているのです。

アメリカだけでも年間150万台以上の自転車が盗まれています。金額にして3億5千万ドル以上という膨大な被害額です。確かに、アメリカを旅すると、日本人の感覚だと、大げさすぎと思えるような太い鎖を使って施錠するなど、盗難被害に苦慮している様子が見受けられます。それにしても、すごい台数です。

その相当の割合がネットで売買され、換金されているのは間違いないでしょう。“Perfecto”は、これを根絶したいと考えています。わざわざ、他の自転車が売買出来る有名なサイト、“ebay”や、“craigslist ”などとは違うと実名を挙げて宣言しています。

Perfecto

そのために、いろいろな方法が導入されています。まず、自転車やパーツを売買しようとするサイクリストに対し、“Strava”のアカウントを公開するよう提案しています。これは、前回取り上げた、サイクリストの走行履歴を記録し、トレーニングや健康管理などに利用できるサイトです。

ここで、個々の履歴をチェックすれば、本当にサイクリストかどうか一目瞭然です。前回は取り上げませんでしたが、この“Strava”では愛車の履歴も管理できるようになっています。このデータを参照すれば、売りに出されている自転車が、実際に売り手が乗っていたものだと確認できるわけです。

買ったばかりの自転車を手放すケースも皆無ではないと思いますが、稀でしょう。“Strava”の履歴を見れば、突然手に入れて、売りに出されたような不審な品物の売買を回避できるはずです。一方で、どのくらいの累積距離を走った自転車なのかもわかるので、買い手としては妥当な金額かどうかの判断にも使えます。

PerfectoPerfecto

“Strava”を使っていない人には、“Facebook”などのSNSのアカウントを明らかにすることを提案します。つまり、ネット上であっても、売り手や買い手が特定できるような関係、信用のおける形で取引が出来るようにすることで、盗品の換金を排除しようとしているのです。

もちろん、売買の際には、自転車の車体番号などを登録させます。この番号を盗品の被害届などのデータと照合します。盗まれた自転車の番号全てがデータベース化されているわけではないと思いますが、一定程度排除されると共に、抑止効果も期待できます。

オークションや個人売買サイトにあるような、売り手と買い手が双方を評価する仕組みもあります。この評価が低いと警戒されることになります。例えば、車体番号が削られているなど、怪しい部分があれば、当然評価は低くなるわけで、常習的に換金することは困難になるはずです。

Perfecto

売り手と買い手がチャットでやり取りすることも出来ます。品物に不審な点があれば、質問することが出来ます。買い手としても盗品を買ってしまって、あとで没収されて損をするような事態は避けたいわけで、納得して上で買うことが可能になります。

これは単に取引高が増えればいいという商業サイトとは一線を画し、サイクリストの立場にたった自転車専用の取引サイトと言えるでしょう。売買を通してサイクリスト同士をつなぐ、ある種のSNSでもあり、同時に自転車盗撲滅という、サイクリストの願いを実現しようというサイトなのです。

Perfectoこれは素晴らしいコンセプトのサイトが出来たものです。企業の社会的責任を果たそうという点でも高く評価できます。この“Perfecto”が自転車売買市場で高いシェアを獲得し、事実上、他のサイトでの売買が困難になるならば、自転車盗の換金が相当難しくなるに違いありません。

それが無理でも、このサイトが台頭していくならば、他の大手の売買サイトも同様の方策を取り入れざるを得なくなることが期待できます。サイクリストとしては、愛車が盗まれる可能性が減り、安心して乗れる社会の実現が期待できることになります。

そのために、サイクリストとしては、“Perfecto”のような理念を持ったサイトを支持し、売買の際にはなるべく利用するようにしていく必要があるでしょう。今後、“Perfecto”が日本や世界で、どのくらい広がっていくかはわかりません。でも、是非、自転車売買のデファクトスタンダードになってほしいものです。




新型ノロウィルスに大流行の恐れがあり、予防ワクチンや有効な治療薬はないそうです。手洗いなんでしょうね。

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この記事へのコメント
cycleroadさん こんばんは。

世の中では「トレーサビリティ」という言葉が広まって随分と時間が経っています。
この言葉の意味をかいつまんで言えば、「追跡可能であること」でしょうか。

問題が発生した場合、その原因が直ぐに解明できるように、
追跡可能にしようというもののはずです。

消費者に商品が届いた後、古物商などに売却される際にも「トレーサビリティ」が
確立されていれば、ここに書かれているように「窃盗」−>「売却」が
抑制されるようになるかもしれませんね。
100%とは言えませんが。

他人の物を盗む、このことは人類の歴史とほぼ同じ事なのかもしれません。
簡単に解決されるとは思えませんが、どうか無くなって欲しいものです。

余談ですが...
私もママチャリを盗まれたことが有ります。
公的駐車場に駐輪していたのに...
ま、これは乗り捨てられたタイプの窃盗かと思われますが、
悔しい事に変わりは有りません。
Posted by Fischer at December 01, 2015 23:35
日本の駐輪場って、公共の場でも置き場所が用意してあるだけで括り付ける所がないとこが多いんだよね。
それでもって盗難の責任は負いませんとしているから何ともはやです。
Posted by 乗り物大好き at December 02, 2015 19:13
Fischerさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
トレーサビリティについては普通、生産から消費者に渡るまでの流通経路、もしくは廃棄についてを対象として議論され、盗難にあった場合の追跡可能性については考えられていないのが現実ですね。
GPSなどを使うことも考えられますが、コストや別の問題があります。
唯一現実的なのは、中古品の流通に乗ったときに発見することであり、車体番号などを厳密に登録しなければ売却ではないようにすれば、換金目的の売却が抑止できる可能性があります。
ただ、そのシステムが確立されておらず、番号なども統一された規格はなく、またフレームだけで、パーツに分けられると確認できません。
そのような中で、“Perfecto”のような取り組みは現実的であり、評価できるものだと思います。
これが標準となることを期待したいものです。
Posted by cycleroad at December 02, 2015 23:30
乗り物大好きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
最近は駐輪スタンドなども増えてきていますが、日本では、スタンドで自立できて、馬蹄錠で施錠するママチャリが圧倒的多数であり、それしか想定されていないのは確かですね。
Posted by cycleroad at December 02, 2015 23:37
こんにちわ。

 このような試みが成功し、広まってゆくとよいですね。

 シティーサイクルとちがい、工具無しで大まかに分解でき、ポケットに入る工具でほぼパーツ単位に分解できるスポーツサイクルは、パーツ単位での違法売買にも規制を掛けなくてはなりまえんが、大変有効な方法であると思います。

 私は、何回か、合法的な破錠・解錠(家族が鍵を紛失など)したことがありますが、100均のナンバー式チェーンロックや、学習机の鍵程度だと、あまりにもあっさり開いてしまってびっくりしました(どちらも初めての錠でしたが1分かからずに開錠)。 シティーサイクルに付属の錠なら、工具無しに曲げてしまえますし、ジャンバーやコートに隠せるくらいの手動+油圧の工具を使えば、持ち運び可能な程度のワイヤー類は切られてしまいます。

 スポーツ車の場合は、常に目が届くところに置いておく、あるいは、屋内など、簡単には侵入できないところへ置く以外、安全ではないような気がします。

 
Posted by ひでさん at December 04, 2015 09:53
ひでさんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
簡単に換金できることで、犯罪が容易に実行可能な状態にあるという事実は、青少年の非行や治安の悪化だけでなく、いろいろな形で社会的なコストを増大させます。
“Perfecto”のようなサービスは、CSR、企業の社会的責任を果たす意味でも重要なことだと思います。
他の企業にも、ネット上であっても流通インフラという社会基盤の一旦を担う企業としての自覚を持つよう促したいところです。
これ自体は民間企業の取り組みですが、社会としても、このような仕組みを取り入れるよう、行政も要請していくべきではないかと思います。
Posted by cycleroad at December 05, 2015 23:22
自転車関連窃盗はひどいものですよね。なぜクリーンでエコロジーな乗り物を活用する良心的な人々にツラい気持ちをさせるような蛮行に及ぶのか。
被害に遭った人の痛切な気持ちを一瞬でも、わずかでも考えれば、踏みとどまることができたでしょうに。

実は、私も盗まれたことがあるのです。
気の緩みから、ライトをしまわずにスーパーの駐輪場に駐輪して、買い物を済ませて店の外に出て自分の自転車を見たら、ライトが無いんですよ。
ライトを取り付けず外出することはまず無いですから、そこで気付きました。ああ、やられたんだな、と。
もう10年ほどライト取り付けっぱなしで駐輪しても被害がなかったので完全に油断していたところを盗られた格好です。

工具なしでは外せないような固定方式にして魔が差して持っていくタイプの泥棒だけをガードするか、根本防御ともなる自転車から離れるたびにライトを律儀にしまうやり方でいくか、で悩んでいますが、
今のところはモノグサなもので、普段は盗まれても痛くないような金額のライトを取り付けて、駐輪しても外さないやり方で運用しています。
前回盗まれたのは6000円ほどするライトだったもので。
今度、今取り付けている安いライトが盗まれたら、自転車から離れるたびにライトを外すことをきっと心がけると思います。
普段は安いライトですが、本格的に街灯のないコースを走る予定がわずかでもある場合は、買い直した6000〜7000円ほどするライトを取り付けて走ります。
また、ライトに故障はつきものですから、もうひとつのライトを用意して備えています。
パンク修理のときにも便利な、登山用のヘッドライトです。消防隊や救急隊等が装備している、頭に巻きつけるあのタイプですね。
あれは、夜、街灯がないところでパンク修理する場合にも重宝するので、良いものですよ。顔を向けた先が照らされるのは、とても安心で便利なものです。
Posted by GreenTopTube at December 06, 2015 19:48
乗り物大好きさんにおっしゃる通り、私も、自転車を括りつけられるような配慮のある駐輪場を今後どんどん増やしてほしいと思います。
スポーツ自転車の販売台数が増えてきているという話もありますし、日本国内の自転車インフラも、国外の自転車政策先進国のインフラをお手本にして、駐輪場整備形態についても同様にしていただきたいと存ずるところです。

“Perfecto”についても興味深く読ませてもらいました。
良心的で誠実なサイトが立ち上げられるというのは、まさに文明の光ですし、我々も応援していきたいものですね。
Posted by GreenTopTube at December 06, 2015 19:54
GreenTopTubeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
固定物にロックできるような駐輪場の整備は求められますが、パーツの盗難も含めた、盗んで自分のものにしようとする自転車盗は、件数も多く、いちいち捜査するのも困難で、なかなか無くならないのかも知れません。
ただ、換金目的で計算して盗むような窃盗犯に対しては、換金手段の穴をふさぐことで、抑止効果が高められるような気がしますね。
Posted by cycleroad at December 08, 2015 22:33
 
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