December 27, 2015

ペダルのパワーが世界を救う

自転車は効率のいい乗り物です。


純粋なエネルギー効率ということで言えば、クルマや飛行機よりも優れています。ハイブリッドカーやEV、電気自動車のほうが、よっぽどハイテクで優れているように感じますが、物理的な移動のためのエネルギー効率は、全ての乗り物の中で、自転車が断トツに優れています。

自転車が、人類のつくった最高の乗り物と言われる所以です。エネルギー効率ではジェット機やF-1マシンも自転車にかないません。馬に乗るよりも優れています。このことは、以前にも取り上げましたし、ご存知の方もあると思います。ちなみに、あのスティーブ・ジョブズも、そのことに言及しています。



あまり知られていませんが、スティーブ・ジョブズは、自転車で旅行に出かけるほどの自転車好きでしたので、そのエネルギー効率の高さについても知っていました。ジョブズは、コンピュータのことを、「知の自転車(Intellectual Bicycle)」と表現しています。

まだアップルの創業間もない時期に、インタビュアーにパーソナルコンピュータとは何かと問われて答えたものですが、自転車に乗った人間のエネルギー効率の高さを引き合いに出して説明しています。自転車もコンピュータも、元々人類が持つ能力を飛躍的に向上させる道具というわけです。

私の下手な翻訳ですが、下に載せておきます。


私たちと他の霊長類とを真に区別するのは、私達がツールビルダー(道具を作る生き物)であるということだと思います。私は、この惑星に生息する様々な生物種の移動の効率について測定した研究を読んだことがあります。1キロメートル移動するのに、一番少ないエネルギーしか使わなかったのはコンドルでした。

人類は下から3分の1くらいのところにいて、あまりパッとしないものでした。万物の長たるにふさわしいものではなく、あまりいい成績ではありませんでした。しかし、サイエンティフィック・アメリカンという雑誌の誰かが、自転車に乗った人間の移動効率を調べるということを思いつきました。

すると、自転車に乗った人、自転車に乗った人間は、コンドルをも寄せつけないほど、チャートのダントツのトップとなったのです。つまり、それが私にとってのコンピュータです。私にとってのコンピュータは、我々人類が手にした中で一番注目すべき道具であり、いわば人類の知性にとっての自転車のようなものです。


エネルギー源の違いを超えて、同じ重量を同じ距離動かすのに必要なエネルギー量を比較した場合、自転車のエネルギー効率は他のいかなる乗り物より優れています。ただ、パワーや持久力には限界があるので、このエネルギー効率の高さを活かすには、直接移動に使うのが一番です。

もう一つ、効率ということで言えば、人間の力を最大限に引き出すことを考えた場合、自転車型にしてペダルを使うのが一番です。一番大きくて力の強い足の筋肉を使うのが合理的ですし、腕よりも持久力に優れています。もちろん内燃機関や電力と比べてパワーは限られますが、人力を最大限に活かせる形なのです。

人力で、ペダルをこいで発電するのは、一旦電力に置き換えるため、移動に使うのと比べてエネルギー効率は落ちます。送電ロスはありませんが、発電効率もいいとは言えません。しかし、この方法には大きな長所があります。それは電力や燃料などが供給されないような場所でもエネルギーを生み出せるという点です。

Free ElectricFree Electric

私たちは、日常生活でエネルギーとしての電気をふんだんに使って生活をしていますが、世界の人口の半分は、いまだに電気を使うことが出来ません。電気による照明もテレビも洗濯機もコンピュータもない生活です。携帯電話の充電も出来ません。世界で、いまだに電気が通っていない村に住む人は数十億人に上ります。

最近、経済発展の著しいインドもそうです。発電や送電のインフラがまだ貧弱で、都市部でも電力不足に悩まされていますが、地方には、まだ電気の通っていない村がたくさんあります。当然ながら、そうした村の人々は貧しく、電気が使えないことは、貧富の格差をさらに拡大させることになります。

しかし、発電所をつくり、送電網を整備するには莫大な費用がかかります。仮に、そのようなインフラが整備されたとしても、貧しい人々は電気代を払うことが出来ません。貧困から脱し、格差を減らすためにエネルギーは重要な役割を果たすと言われていますが、そのエネルギーが使えないジレンマに陥っているのです。

Free ElectricFree Electric

この解決のために、自転車型の発電機を使おうという動きがあります。これなら発電所や送電線網がなくても電気が使えます。自分たちの足でペダルをこげば、電気代を払うことも、発電機を動かす燃料を買う必要もありません。天候にも左右されず、貧しい村でも電気が使えます。

リカンベントスタイルでペダルをこげるようになっています。同じペダルをこぐにも、この姿勢が一番力が入り、効率が良くペダリングできます。さらに、はずみ車を使うことで、大きな力で発電機を回せるようになっています。これで発電した電力を蓄電池に貯めて使います。

Free ElectricFree Electric

この「自転車ジェネレーター」を1時間こぐだけで、彼らの村の一軒の家で使う24時間分の電気を生み出すことが出来るといいます。もちろん、まだ電化が進んでいないため、想定される使用電力量が小さいのでしょうが、思ったより実用的です。

ペダルをこぐのはタダですが、この発電機を手に入れなくては始まりません。じつは、この「バイシクル発電機」を、インドで来年から無料で配布しようという動きがあります。当初インド各地に1万台を配布し、貧困からの脱却をサポートするプロジェクトとしてスタートすることになっています。



この取り組み、“Billions in Change”という団体のイニシアチブによる、“Free Electric”というプロジェクトです。著名なインド人実業家で億万長者の、Manoj Bhargava 氏が創始者です。世界をよりよい場所にするためのムーブメントをリードしようと設立された組織です。

慈善活動ですが、組織としてはLLCの形態をとっています。Bhargava さんは、この慈善活動や研究のために、私財の9割を拠出しました。“5-hour Energy”というエナジードリンクの会社で巨富を得ましたが、その財産を贅沢な生活のために使うより、世界を良くするために使いたいと考えているのです。



“Billions in Change”では、エネルギーと医療と水に焦点を当てています。どれも貧困からの脱却に重要な役割を果たすものです。浄水装置や健康・医療支援と並んで、エネルギーの自給のための支援プロジェクトが、この無料の電力、ハイブリッドバイクによるペダル発電なのです。

電力インフラが整っておらず、あっても電気代を払えず、普通の発電機の燃料費も払えない人たちにとって、自分たちの足こそ、有効なエネルギー源であり、自分たちの村にもある資源です。1時間こげば24時間使える、実用的なエネルギー供給装置というわけです。

Free ElectricFree Electric

貧困や格差は、途上国の若者をテロに走らせています。失業率が高く、他に生計を得る手段がないので、仕方なくテロ組織に加わる人もいます。一方では内戦が大量の難民を生んでいます。この“Free Electric”のようなプロジェクトは、貧困を減らすことで、世界を確実に、よりよい場所へ導こうというムーブメントなのです。

ペダルパワーを自転車で移動に使えば、エネルギー効率も高く、クルマ等による移動や運搬の用途を補完する、エコでクリーンな乗り物として環境負荷の軽減や省エネに貢献します。一方、エネルギーを作るために使えば、貧困に苦しむ人々を助け、自立を促し、世界の平和に貢献する可能性も秘めているのです。




現役最後の試合で決勝点、さすが、「レジェンド」です。澤穂希選手にはお疲れ様、そしてありがとうですね。

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この記事へのコメント
ペダルパワー・・・いいですね、この取り組みは。
貧しくても、お金が無くても、動くことでエネルギーが作れる。
まさにペダルパワーですね。
こういうプロジェクトが広がって、貧困が無くなり、テロ組織が無くなることを望みます。

スティーブ・ジョブズの意見の翻訳、ありがとうございました。

今年も楽しく拝見させてもらいました。
来年もよろしくお願いいたします。
良いお年をお迎えください。
Posted by トンサン at December 28, 2015 17:30
トンサン、こんにちは。コメントありがとうございます。
テロの撲滅に直接関係ないようでいて、貧困状態を改善することは、その根本原因を解決することであり、迂遠なようでも近道かも知れません。
今年もごらんいただき、ありがとうございました。よいお年を。
Posted by cycleroad at December 29, 2015 23:01
 
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