February 07, 2016

技術の進化が自転車を変える

近年の技術の進化には、めざましいものがあります。


自転車の世界においても、それは言えます。子供の頃以来、何十年ぶりに乗ったという人が時々いますが、数十年前とでは大きく進化していることに驚く人も少なくありません。全体として軽くなっていることや、部品加工の技術が進歩して、ディレーラーなどの精度が良くなっていることに驚いたりするようです。

パーツにしても、昔は豆電球と乾電池だったライトは、LEDと充電池などが使われ、明るく軽く小さくなっています。以前は電動アシスト自転車もなかったですし、サイクルコンピュータだけでなく、GPSやナビ、各種のセンサーなどIT技術の進化によって、大きく便利になっている部分もあります。

フレームの素材も、ハイテン鋼やクロモリを溶接したものばかりだった昔とは違い、カーボンやチタンなど最先端の素材も使われ、一体成型によって、フレームのデザインも進化しています。これによって軽くなったり、振動吸収性が向上し、疲れにくくなったりしています。

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これからも、各方面の技術はさらに進化していくでしょう。その技術が自転車にも使われ、より良く、より便利になっていくはずです。最近よく話題になる、IoTやAI、ロボットなどの技術も、それがどのように取り入れられるかはともかく、自転車の分野にも波及し、さらなる進化を促すことになっていくに違いありません。

素材についても、大きく進化していくでしょう。例えば、セルロースナノファイバーなどの次世代の素材によって、より強いのに軽くなっていくことも十分に考えられます。不法投棄されても土に還って環境への負荷が少ないなど、新しい機能を持った素材が出てくるかも知れません。

加工技術については、近年話題となる3Dプリンタも注目されます。3Dプリンタを使って、自分で自由にデザインした、世界で一台のオリジナルモデルを作ったり、細かい寸法までカスタマイズ出来たり、修理用や追加のパーツが自由に製作できたりするようになるかも知れません。

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カーボンなどの素材を使った一体成型も自由度は高いですが、3Dプリンタでしか実現できない形もあります。フレームが階層的に入れ子になったような構造とか、立体的に格子状になった構造など、これまでのように金属加工や金型による成型では、物理的に実現不可能な構造も製造可能になります。

3Dプリンタは樹脂などや、吹き付けて固めるような素材でなければいけないのかと思っていましたが、金属素材を3Dプリンタで製造する方法も開発されているようです。手法はいろいろあるようですが、溶接のような方法で金属素材を3Dプリントするものもあります。



これならば、金属のフレームなのに、写真のような中空でスケルトン状のものも可能になるわけです。単に中が透けて見えるだけでなく、金属を例えば海綿のような立体的な中空を持った構造に成型して、強さと軽さを両立するようなことも考えられるでしょう。

金属を自由に複雑な形に加工できるようになれば、強さや重さだけではなく、例えば空気抵抗を減らしたり、揚力を与えるようなことも可能になるかも知れません。これまでは無理だった金属でも、振動吸収性能を向上させるようなことも視野に入ってくるに違いありません。

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私のような凡人には、誰もが容易に想像できるようなことしか思いつきませんが、加工方法の抜本的な転換は、これまで考えられなかったような変化を生み出す可能性があります。従来の常識を覆すようなフレームや、それによる画期的な変化が起きても不思議ではありません。

ところで、話は変わりますが、先日、シクロクロス世界選手権での不正が報じられて話題になりました。


自転車レースで「隠しモーター」、史上初の技術不正が発覚

史上初の技術不正国際自転車競技連合(UCI)は31日、UCIシクロクロス世界選手権(UCI Cyclo Cross World Championships 2016)に出場したベルギー人女性選手の自転車から、隠しモーターが見つかったと発表した。UCIは、トップレベルの大会でのこのような事例は史上初だとしている。

UCIのブライアン・クックソン(Brian Cookson)会長はこの日、「技術的な不正があったことはまったくもって明らかだ。隠しモーターがあった。それについて隠すことは何もない」と語った。30日に行われたU-23女子の部に出場したフェムケ・ファン・デン・ドリエッシュ(Femke van den Driessche、ベルギー)の自転車は、同選手がレースをメカニカルな問題により途中棄権した後、押収された。

優勝候補だった19歳のファン・デン・ドリエッシュは、隠しモーターのついた自転車を故意に使用したことを否定。自分の自転車に似ているが、友人のものであり、レース前に誤ってチームのスタッフが用意したと語った。

ファン・デン・ドリエッシュはベルギーのテレビ局に対し、「私の自転車ではありません。友達のもので、似ているんです。友人は土曜日(30日)にコースを回って、トラックに自転車を置いたんです。メカニックはそれが私のものだと思って、きれいにして、私のレースのために準備したんです」と明かした。

「ひどい気分です。大きな問題なのは分かっています。調査に対する怖さはありません。私は何も間違ったことはしていません」不正が認められれば、選手には失格や6か月の出場停止処分、そして最高20万スイスフラン(約2400万円)の罰金が科されることになる。

史上初の技術不正クックソン会長は、「これについての可能性という話はこれまでも耳にしていた。われわれは不正の可能性に敏感であり、数か月にわたって何台もの自転車やいくつもの大会で調査を行ってきていた」と付け加えた。

「私にもUCIにも、どんな形の不正もしない選手たちを守る責任がある。正しい選手がレースで勝てるように全力を傾けている」「このようなテクノロジーに対しては、さまざまなテスト方法を調査してきており、昨日も数台検査したところであの一台が見つかった。今大会、そして今後の大会でも検査を実施していく」(2月1日 AFP)


友達の自転車とは見苦しい言い訳です。万一故意でなかったとしても、使ったのは事実なのですから、許されることにはならないでしょう。実際に、このような製品が市販されているそうです。この製品が使われたのかはわかりませんが、仕組みは似たようなものと考えられます。



以前から可能性は指摘されていましたが、実際に手を染める人が出てしまいました。レースの前提を根底から覆す不正であり、この選手は罰金や出場停止ではなく、永久失格処分にしてもいいくらいではないでしょうか。このような不正が繰り返されないような体制が必要となりそうです。

ただ、技術が進歩すれば、それを悪用しようという不届者が出てくるのは、何も自転車競技の世界に限ったことではありません。もちろん不正行為は問題ですが、だからと言って技術の進歩が問題ということにはならないでしょう。技術を不正に使う人が問題であり、技術が悪いわけではありません。

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モーターが巧妙に隠されていたということで、「メカニカル・ドーピング」だと話題になっているわけですが、遺伝子レベルにまで及んでいる、薬物ドーピングと比べれば、発見は比べものにならないくらい簡単でしょう。 目に見えないわけではなく、多少の知識があれば発見できるはずです。

今後レース前の検査など、運営上の問題が出てくるのは避けられないかも知れません。あるいは使えなくするため、レギュレーションの変更などが必要になるのかも知れません。このメッシュ状のフレームを見て思ったのは。これならばモーターやバッテリーを隠せないフレームも作れそうだということです(笑)。

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もちろん、レースの不正防止のために、フレームをみんなメッシュにするよう強制されるようなことにはならないと思います。他にいくらでも防ぐ方法はあるでしょう。ただ、不正を含めて、技術の進歩は思いもよらない変化をもたらし、またそれが進化を生むということも言えるのだろうと思います。

数十年ぶりに乗った今の自転車と、子供の頃に乗った自転車との違いに驚く人がいます。数十年で、それだけ進化しているわけです。でも、その違いよりも、今から数十年後の自転車に乗った人たちが、今の自転車と比べた時の驚きのほうが、もっと大きくなるような気がします。




台湾の地震による倒壊ビル、手抜き工事が強く疑われていますが、他人事とは思えないのが怖いところです。

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この記事へのコメント
こんにちは。
技術の進歩ってすごいですよね。
僕も趣味で釣りをしていますが、タックルの進化はすごいです。
頑丈な素材で、しかも軽量で、感度がいいなど、数年前とはまるっきり変わってきました。
技術の分野では、値段相応の商品がたくさんありますよね。
また訪問させていただきます!
Posted by yoshihiko at February 09, 2016 14:41
yoshihikoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
あまり詳しくないのですが、釣りの分野でも技術の進歩が感じられますか。
趣味も含めた生活の中で、いろいろな形で恩恵を受けていますね。

Posted by cycleroad at February 10, 2016 23:14
 
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