May 04, 2016

自転車ヒーロープロジェクト

どこの国にもスーパー・ヒーローがいます。


アメリカにもスーパー・ヒーローとして有名なキャラクターがたくさんいますが、メジャーなところでは、やはりスーパーマンとかバットマンでしょうか。少し前、有名な、The Guardian 紙に、“Bike Batman”という見出しが目立つ記事が載っていました。

この“Bike Batman”は、自転車を盗まれてしまった人に、なんと愛車を取り返してくれる正義の味方だと記事に書かれています。サイクリストにとっては、まさに夢のようなスーパーヒーローです。コミックの中のストーリーではありません。実生活の中の、実在する人物による実際の話です。

“Bike Batman”は、アメリカ・シアトルで、ボランティアとして行なわれている、いわば自警団的な活動です。活動内容はシンプル、盗まれてしまった自転車を持ち主の元へ返すというものです。盗まれた自転車が戻ってくる可能性が低いのはアメリカも同じであり、まさに正義の味方を地で行く活動です。

Bike Batman

一人でこの活動をしている人物は匿名ですが、シアトル在住のエンジニア、30代の既婚のアメリカ人男性です。オンライン上のサイトから、盗まれた自転車を発見し、その自転車の奪回を試み、成功した場合は本来の持ち主へ返却します。この謎のバイクバットマンに、The Guardian 紙がインタビューを行ないました。

自転車乗りにとっての正義の味方がパトロールするのは、ネット上、盗んだ自転車が換金する目的で掲載されていそうな、オークションサイトや、アメリカによくある地域ごとのローカルサイトの売ります買います欄、中古品を売買するフリーマーケットサイトなどです。

これまでに22台の盗難自転車を発見、取り戻すことに成功しています。警察と連携し、その捜査に協力することもあります。これまで半数以上の犯人は逮捕に至っています。中には単なる自転車盗ではなく、空き巣の被害の一部であることが判明し、より広範な被害の回復に貢献した事例もあります。

バイクバットマンの活動をするようになったきっかけは、彼がネット上で中古の自転車を購入しようと、いろいろ見ていた時に起こりました。ある自転車に見覚えがあったのです。それは、“Bike Index”というサイトに掲載されていた自転車だったのです。

“Bike Index”は、盗難に遭った人が被害に遭った愛車を登録しておき、もし見かけた人がいたら連絡をくれるよう、呼びかけるサイトです。つまり、偶然盗難された自転車を発見してしまったわけです。自分も自転車を買おうとしていたため、何か印象に残る特徴か何かがあったのでしょう。

彼はこの盗難車を取り返してやろうと決意、購入するふりをして犯人と連絡をとりました。そして、受け渡し場所に現れた犯人に対し、こう言いました。『君には二つの選択肢がある。ここで警察の到着を待つか、おとなしく自転車を置いて立ち去るかだ。』

バットマンバットマン

初めて窃盗犯と対決したバイクバットマンは、平静を装っていたものの、実は心臓バクバクだったと言います。自分でも、なんでこんなことをしたのか、全くわからなかったそうです。しかし、奪還に成功した時、とても気持ちが良かったと、インタビューに対して語っています。

自身もサイクリストですから、持ち主にとって、自転車が単なる金属の塊ではないことを知っています。窃盗犯にとっては、換金目的のモノでしかありませんが、持ち主にとっては、愛着のある愛車です。金銭以上の価値があります。落胆していた持ち主が、思わぬ幸運に恵まれた驚きと喜びは想像に難くありません。

最初に救った持ち主の10人のほとんどは、シアトル市以外の人だったそうです。みな一様に、シアトルを悪く言い、呪い、恨んでいました。犯人が具体的にわかりませんから、シアトルという街に八つ当たりしていたわけです。気持ちはわからないではありません。

バイクバットマンは、持ち主に愛車を返却した時、この街は、そんなに悪くないよと言えたことも気持ちが良かったと言います。愛着のある自分の住む街に対する嫌悪感を少しでも回復するとともに、街の評判を守ることになる点も気に入っています。

実際に、バイクバットマンに助けられた、シアトル在住の、Douglas Brick さん65歳は、連絡をもらった時、心臓が高鳴ったと話します。そんな人がいるとは思いもよらず、見つかるとも思っていませんでした。とても嬉しかったのは言うまでもありません。感謝すると共に、『この人は本物だよ。』そう話しています。

最近では、いろいろとノウハウも蓄積しています。売りに出されている自転車には、犯罪の臭いがする場合があると言います。例えば売主が、よく自転車のことを知らなかったり、写真の撮り方が変だったり、撮っている場所が辺鄙で怪しかったりするといった、胡散臭さを感じることがあるそうです。

BATMANBATMAN

“Bike Index”の共同創始者、Bryan Hance 氏もコメントを寄せています。『彼は驚くべき成果を上げました。同時に、私たちが主張している、自転車を取り戻すことが出来るのは警察ではなく、コミュニティだということも証明してくれました。』と話します。

シアトル警察の、Patrick Michaud 刑事は取材に対し、直接バイクバットマンについてコメントは出来ないとしつつ、もしネット上で盗難車を発見した時、普通の人は危険を冒して犯人と対峙するのではなく、警察に通報してほしいと述べています。もしくは、受け渡しに警察が同行することも可能だとアナウンスしています。

最初にバイクバットマンを取材した、地元のシアトルタイムズでは、「自転車取り戻し人」と表現されました。当初は、ロビンフッドとも呼ばれました。ただ、悪代官を懲らしめたり、大金持ちの財産を奪って貧しい人々を助ける義賊というのとも違うので、シアトルの人はバイクバットマンと呼ぶようになったそうです。

しかし本人は、決してヒーローと呼ばれて浮かれているわけではありません。危険な状況に陥る可能性もあるわけですが、安全を第一に考え、決して犯人を捕まえようなどとは考えません。身長193センチと体格には恵まれていますが、決して手を出したりはしません。

自分は正義の味方だと、誇大な妄想に陥ったりすることもありません。そもそも、本業であるエンジニアの仕事の合間にやる活動です。The Guardian 紙のインタビューにも名前を明かさず、写真もサングラスをかけた一枚だけにしています。これも安全に配慮し、これからも活動が出来るようにするためです。

バイクバットマンは、ある種の楽しみだと語っていますが、誰でも出来ることではありません。ただ、この活動は示唆に富んでいます。自転車盗は、そのほとんどが換金目的と思われます。中には自分で乗る犯人もいるかも知れませんが、発見されるリスクが高くなるので少ないでしょう。

バットマンバットマン

一部には、自転車を買い取るリサイクルショップ等で換金される例もあるでしょうが、売却時に足がつきやすいこともあって、多くはネットで売りさばかれると思われます。つまり、ネット上を監視すれば、盗品を取り戻したり、犯人を検挙したり出来る可能性があるわけです。

もちろん、発見は簡単ではないでしょう。しかし、最近は画像解析などの技術も飛躍的に進歩しています。AIを使う手法も出てきています。そうした技術を使えば、盗難車と売りに出されてる自転車との細かい特徴を比べるなどして、マッチングすることも出来るに違いありません。

“Bike Index”のようなサイトもいいですが、誰もが知っているわけではありません。やはり警察が一番盗難車の情報を持っているはずです。それらと、ネット上の情報のマッチングを進め、犯罪者の摘発や盗品を取り戻すようなことも、今後は可能になっていくのではないでしょうか。

IT技術を使えば人手もかかりませんし、費用対効果も高いはずです。重大犯罪ではありませんが、自転車盗は敷居が低く、青少年の非行の入り口になっています。自転車盗が増えることで街の治安が悪化したり、非行少年や犯罪者を増やし、それがより凶悪な犯罪にもつながると言われています。

その意味でも、最新技術を使って自転車盗の検挙や防止に努力することは、大きな意義があると思われます。コンピュータでマッチングさえ出来れば、後は警察官が取引を装って検挙に向かうだけです。技術さえ確立出来れば、それほど難しい話ではないでしょう。

日本でも自転車盗の検挙、防止は大きな意味を持つはずです。シアトルのような、サイクリストにとってのスーパー・ヒーローの出現は期待出来ませんが、換金手段を封じ、自転車を盗む意味をなくす意義は小さくありません。ぜひ日本でも、警察は『バイク・バットマン・プロジェクト』を進めるべきではないでしょうか。




クルーズ氏が撤退し、ドナルド・トランプ氏が共和党候補に確実、本当に大統領ということになるのでしょうか。

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