August 20, 2016

自転車通勤に理屈はいらない

自転車通勤をする人が増えています。


最寄駅まで自転車を使うのではなく、職場まで直接自転車で行く通勤です。もちろん、日本の場合は鉄道が発達していますから、全体から見れば、ごく一部です。しかし、少し前までは、わざわざ職場まで自転車で通う人なんて、よっぽどの自転車オタクか、真面目に仕事をする気がない人くらいに思われていました。

Photo by Christian Richardt,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.それが今では、いろいろなメディアでも取り上げられるようになり、一般的にもよく知られるようになって、必ずしも珍しいことではなくなってきました。都心で自転車を預かって、シャワーや着替えの場所を提供するような施設も作られるようになり、自転車通勤を好意的に見る企業も出てきました。

ママチャリで混雑する歩道を通ったりすると、時間がかかってしまうというのはありますが、少しスピードが出る自転車で、車道走行できるルートをとれば、かなりの距離まで自転車通勤は可能です。今まで考えたこともなかった人が、そのことに気づいて始めるケースもあります。

やってみると楽しいですし、意外に速いこともわかります。渋滞や満員電車でストレスをためることもありません。おまけに運動不足の解消になって、ジムなどに通わなくても痩せてスリムになったり、定期健診の結果がよくなって、健康になったと実感している人も多いはずです。

一方で、自転車通勤をネガティブに考えている人もいます。健康にいいと言うけど、国道などクルマの多い場所では排気ガスで空気が汚れているので、かえって身体に良くないのでは?、と言う人もいます。たしかに排気ガスを吸うことについての懸念はあるかも知れません。

Air pollution

自転車通勤が増えているのは、日本だけではありません。欧米などの都市では、自転車が見直され、自転車レーンなどのインフラ整備を進める都市が増えています。何度か取り上げていますが、ロンドンもその一つです。地下鉄とバスで起きた同時多発テロも、自転車通勤を増やす大きなきっかけとなりました。

ロンドン五輪の交通規制で、道路や地下鉄などの公共交通が大混雑したのを契機に自転車通勤に変えた人も多いようです。そんなロンドン市民の中にも、ロンドンの渋滞する道路の排気ガス臭い中を自転車で走るのは、健康に悪いのじゃないかと心配する人があるようです。

有名なイギリスのケンブリッジ大学は、そのことについて各国の機関と共同して研究を行いました。世界の都市の環境データなどを基に、その街でジョギングやサイクリングなどの運動をした場合のシミュレーションを行い、健康への影響を解析しました。

Air pollutionAir pollution

それによれば、空気が良くないことで知られるロンドンの都心部をジョギングしたり、自転車で走ることによる悪影響よりも、健康への良い影響がはるかに上回るということが明らかになりました。もちろん大気汚染は、人々の健康に対する主要な環境リスク要因の一つですが、それを補って余りあるという結果です。

データでは、ロンドンの10倍以上大気汚染のひどいインドのデリーでさえ、週に5時間以内であれば、サイクリングをするメリットが上回ると言います。外で運動しないほうがいいくらい大気汚染のひどい都市は、世界の1%に満たないという結果です。

日本に、それぼとの都市がないのは明らかです。もちろん、空気がいいに越したことはありません。しかし、排気ガスを心配して、自転車に乗るのを躊躇するようなレベルには全くないということです。少なくとも日本では、メリットとデメリットを比較するようなレベルでないのは明らかと言えるでしょう。



これとは別に、もう一つ興味深い研究結果があります。アメリカのクレムゾン大学は、いろいろな交通機関を使った時の利用者の気分の変化を調査しました。それによれば、自転車は、ほかのどんな交通機関より、乗っている人を最高の気分、幸せな気持ちにさせることがわかりました。

逆に一番ネガティブな気分にさせる乗り物は、電車やバスでした。これは、趣味のサイクリストや自転車通勤をしている人なら、実感として納得のいく結果かも知れません。考えてみれば、自転車に乗っていると純粋に楽しい、気分がいいということに思い当たる人は少なくないに違いありません。

自転車通勤のメリットはいろいろあります。運動不足の解消、健康増進、満員電車に乗らなくても済む、通勤費用が安く済むだけではありません。ストレスの解消効果や、朝、出社前に適度な運動をすることで、頭がハッキリし、仕事への意欲が向上する、能率が上がるなども、よく指摘されるところです。

How we feelこのあたりも、自転車に乗ると気持ちがいい、幸せな気分になるというのと関係するのかも知れません。自転車通勤も、天候や気温など、条件によっては嫌なこともあるはずです。しかし、それでも続ける人が多いという事実にも、関係していそうです。

自転車通勤をする理由は人それぞれ、いろいろあると思います。でも、一番は楽しいから、結局、自転車に乗るのが好きだからという人が多いようです。ふだん、特に意識していませんが、自転車はどの交通機関よりも乗っている人を最高の気分、幸せな気持ちにさせるという研究結果は、乗っている人にしてみれば自明のことかも知れません。

日本では、自転車を最寄り駅までくらいしか使わない人が多く、特にママチャリだと、自転車本来の楽しさをスポイルしてしまう面が多いので、実感としてわからない人も多いと思います。職場までの自転車通勤にしても、ピンと来ない人が多いに違いありません。

もちろん、すべての人に向くとは思いません。しかし、実際にやってみないと自転車通勤の良さや、始める人が増えている理由を実感できないということはあると思います。調査機関の研究結果も参考になりますが、自転車通勤は、やってみればわかる、そこに理屈も理由も必要ないといったところでしょうか。




リオデジャネイロ・オリンピックも終盤です。たくさん楽しませてもらいましたが、終わってしまうと寂しくなりますね。

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この記事へのコメント
自転車通勤するようになって「ああ、仕事のストレスだと思っていた物の少なからぬ割合は通勤のストレスだったのだな」と実感しております。そりゃ真夏の暑さ、真冬の寒さ、雨に風、パンクに劣悪な交通環境と、自転車通勤にだってストレス要素はありますが、なんだかそれらをもスポーツと捉えている自分がいます。そういうストレスは「立ち向かい克服すべき挑戦」として受け止められます。満員電車で毎朝「人間性の醜悪な部分を見せ付けられる」ストレスとは異質です。

「嫌だなあ…」でなく「おっ、ここの坂はケイデンスで稼いだ方がアベレージ上がるな!」で一日が始まるのって前向きな気持を呼び起こしてくれますよ。
Posted by Tom at September 17, 2016 00:44
Tomさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
最初から、自転車通勤なんてナンセンスと思っている人は多いですし、意外に遠い距離まで通勤が可能ということも知らない人は多いと思います。
頭で考えると、無理だし大変だとなりますが、やってみると目からウロコということもあります。
おっしゃる通り、別のストレスはありますが、一度やってみるという敷居を超えると、そのへんが実感され、続けようと考える人は少なくないような気がしますね。
Posted by cycleroad at September 18, 2016 23:30
 
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