September 07, 2016

人目をひくだけでは足りない

交通事故を防ぐ方策はいろいろあります。


交通違反が事故の原因となるケースの多いことを考えれば、警察の交通違反の取締りの効果は大きいでしょう。違反者を摘発して、刑事罰や行政処分などの罰則を課すことは、再び悪質な違反をすることへの抑止効果があります。違反する人を減らすことで、交通事故を未然に防ぐ効果があるのは間違いありません。

ただ、必ずしも摘発が容易ではない違反もあります。例えば、最近増加が指摘されている、スマホを使いながらの運転もその一つでしょう。外から見たのではわかりにくいですし、停止させれば、やめてしまうでしょうから、警察官が現行犯で検挙するのは、難しいものがあります。

しかし、試しに走行中のクルマのドライバーの手元が見やすいところ、例えば歩道橋の上などから見ていると、ドライバーが、手にスマホなどを持って操作している様子を数多く見ることが出来るでしょう。場所やタイミングにもよるでしょうが、結構な割合に上るはずです。

もちろん、その危険性を認識していると言う人は多いと思います。でも、つい着信に反応してしまったり、運転に支障はない程度だと勝手に考えて、操作している人は多いはずです。実際、自転車に乗っていて、すれ違うクルマを注意して見ていると、ドライバーの視線が下に行っているのを見ることもあります。

おそらく、その何%かは、事故の原因や背景となっているであろうことは、想像に難くありません。事故の報道では、その原因まで詳しく報じられないことも多いですが、脇見をしていたり、スマホに気を取られたために起こされた事故が、相当数含まれているのは間違いないでしょう。

スマホを使いながらの運転が危険なのは、論をまたないと思います。実際にしている人が多いのに、警察による取締りが難しいとするならば、何か別の方法で対応するしかありません。考えられるのは、啓発活動です。警察や関係団体などが、さまざまな啓発活動を行っています。

前回は、自転車関連の広告について取り上げました。広告の中には、啓発広告というのも存在します。実際問題として、他に特別有効な手段は見あたりません。啓発広告は、運転しながらのスマホの操作をさせない方法として、大きな役割を担っていると言えるのではないでしょうか。

地道に一人ひとり、チラシなどを渡す啓発活動もありますが、多くの人の目に入る広告は、啓発活動の中でも有力な手段でしょう。今回は、そんな運転しながらのスマホ等の操作を戒める啓発広告を、世界の広告の中から見てみたいと思います。

Letters

Letters

クルマメーカーも、その啓発の必要性は自覚しており、さまざまな広告によって、ドライバーへの啓発が行なわれています。こちらは、メルセデスベンツによる啓発ポスターで、中米のニカラグアで展開されたものです。Kは人の足、Dは自転車のタイヤ、Qはスケボーを表しています。

Letters

“You never know what it may cross in your way.Don’t text and drive.”というキャッチコピーが書かれています。「いつ何が道路を横切るかわかりません。運転しながら文字を打つのはやめましょう。」という警告です。文字の後ろにそれぞれの一部が隠れているのが象徴しています。

Don't text and drive

Don't text and drive

こちらは、クライスラー社のJEEPです。たくさんの文字と共に、木と自転車とおばあさんが描かれています。コピーは“The next letter could be the last one.Don’t text and drive.”、「次の一文字が最後になるかも知れません。運転しながら文字を打つのはやめましょう。」というものです。

Don't text and drive

前のと似ていますが、こちらは、たくさんの文字を打つ中で、もしかしたら、次の一文字は、文字ではなく、木や自転車やおばあさんを打ってしまうかも知れないと暗示する図柄というわけです。だいたい、英語圏では、ながらスマホなどとは言わず、“text and drive”というフレーズが使われることが多いようです。

SMS

SMS

フォード社がブラジルで展開した啓発広告です。こちらも、文字と絵の組み合わせです。出てくるのは、杖をついた人、子供、そして自転車です。メルセデス、クライスラー、フォードとも、気を付ける対象の中に、自転車が入っていることになります。

SMS

キャッチコピーも似ていて、“You can hit more than a key when you text and drive.”、「運転しながら文字を打つと、キー以上のものを打ってしまうかも知れない。」というものです。キーボードの、それぞれ、障害のある人(disabled)のD、子供(kid)のK、自転車(bike)のBの場所に絵が描かれています。



こちらの広告は、少しひねりが効いています。大きな、“Text and drive”という看板です。“Don’t〜”ではありません。ここでの“Text”は動詞です。つまり、「運転しながら文字を打とう。」という呼びかけているのです。この看板の広告主は、と言えば、wathan funeral社という葬儀社です。

運転しながら文字を打つ人が増えれば、葬儀社が儲かるという皮肉です。もちろん、この葬儀社は架空の会社ですが、本当にウェブサイトが用意されており、検索すると出てきます。そこには、"Text and Drive" という看板を見て来た人に対し、ネタばらしと共に、啓発する内容が書かれています。

Hunted

こちらは、スマホ操作とは直接関係ありませんが、ドライバーに対し、事故を起こせばサイクリストを死なせてしまう可能性があることを啓発している広告です。ブラジルのものですが、近年、ブラジルでもクルマと自転車との事故が増えているという背景があります。

Hunted

よく、映画などに出てくる豪邸に、立派なツノを持った鹿の、頭部のはく製を壁に飾った部屋が出てきます。ハンティングで自分で仕留めた獲物を飾っているわけです。こちらの広告は、それをモチーフにしており、鹿ではなく、自転車のハンドル部分になっています。

Hunted

つまり、鹿ではなく、サイクリストを狩ってしまったということを表しているのです。それぞれに、夜に狩られたとか、交差点・公園・道路など狩られた場所が書かれています。『ブラジルでは毎日、多くのサイクリストが殺されています。サイクリストをもっとリスペクトして、狩るのをやめましょう。』と書かれています。

Hunted

ここまで挙げたポスターは、どれも工夫されていて、広告としてはユニーク、ポスターとしては面白いデザインになっていると言えるでしょう。しかし、インパクトに欠けるのは否めません。果たして、これがどれくらい訴求効果があり、ドライバーの意識を変え、実際の行動を変えるかと言われれば、首をかしげざるを得ません。



こちらは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の保険公社が制作した、“Cell Phone Distraction”という交通安全の啓発広告です。大工、医者、消防士が仕事中にスマホをいじっているなんて、およそあり得ないジョークですが、クルマの運転も同じはずだと訴えています。



こちらは、日本のクルマメーカー・ホンダが海外で展開する啓発広告です。テキストメッセージアプリの画面上で、メッセージのやり取りが展開していくだけのシンプルな作りですが、そのことが事故を招くことを端的に表しています。



こちらは、フォルクスワーゲンによる啓発広告です。映画館の中で細工をして、観客のスマホが鳴るようにしています。電話やメッセージが着信すると、誰もが思わず反応してしまうこと、そしてそれがどんな結果を招くか、効果的な映像で見せています。なかなか面白い設定です。

動画ということになると、ポスター広告などと比べて訴求力が高いのは確かでしょう。それぞれ、考えさせる作りになっており、これを見て、運転中にスマホを使うことの危険さに、あらためて思い当たるかも知れません。しかし、それが実際の行動につながるかは定かではありません。



やはり、これくらいのインパクトがあってもいい気がします。日本で、このくらいインパクトのある公共広告をテレビで流すわけにはいかないのでしょうか。ああ、面白いなで終わって、次の瞬間には何も残っていないような広告では、交通事故対策の啓発としての効果は疑問だと言わざるを得ません。

取締りが難しく、呼びかけても、なかなか減らず、ほかに有効な手段が見当たらない中で、なんとか効果を上げる必要があります。心に響かなければ意味がありません。そして、それは本人のためです。スマホを使いながらの運転を減らし、確実に事故を減らすために、個人的には、このくらいのCMを流してもいいと思います。




矢継ぎ早に台風が来ています。やはり、これまで大丈夫だったからという固定観念は捨てるべきなのでしょうね。

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