October 25, 2016

欧米にあって日本にないもの

日本では、あまり見られないものがあります。


海外では見るのに日本では見ないもの、たくさんあると思いますが、“pool noodle”などもその一つかも知れません。どういうものかと言うと、下の写真のような棒状、あるいは筒状のものです。発泡ポリエチレンなどの素材で出来ており、軽くて浮力があり、主にプールなどで使われるものです。

日本で似た用途のものとしては、ビート板やスイミングボードと呼ばれるものがあります。水泳の練習で使った覚えがあるかも知れません。ただ、ビート板よりも柔らかく、ゆるやかに曲がります。泳ぎの練習の補助具というより、浮き輪の代わりに脇にはさんで、ぷかぷか浮いたままでいるのに向いています。

私も海外では何度か手にしたことがあります。海外のリゾートホテルのプールサイドには、たくさん立てかけてあったりしますが、日本では、あまり見たことがない気がします。日本語で何と言うのかも知りません。あまり普及していないから日本名がないのでしょう。

Pool noodles,Photo by ashleigh290,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

さて、その“pool noodle”をユニークな用途に使っている人がいます。カナダ・トロントに住む、Warren Huskaさんです。トロントのあるオンタリオ州では、クルマのドライバーが、道路で自転車を追い越す場合、側方に少なくとも1メーターの間隔を空けることを義務付けています。

しかし、毎日20マイルの自転車通勤をしている、Huskaさんは、多くのドライバーがこれを遵守していないこと、無頓着なのを感じていました。ある日、一台のピックアップトラックに幅寄せされ、何度目かの危険な目に遭わされたことで、彼は我慢の限界に達するとともに、自分自身で身の安全を図る必要を感じました。

目にとまったのが、娘の使っていた“pool noodle”です。これを使って、法律で認められた、サイクリストの路上での権利を主張することにしたのです。ある程度、後方からも確認しやすい太さがありますし、素材として軽く、また柔らかいので、万が一クルマに当たっても傷をつけることはありません。

pool noodle pool noodle

使い始めると、突然、横を通り過ぎるクルマの挙動が変わったと言います。ほとんど全てのクルマが、これまでよりも間隔を空けるようになったのです。もちろん、物理的に幅が広がったわけですから、例え“pool noodle”であっても、ぶつからないようにするための、当然の変化と言えるかも知れません。

法律で側方間隔の最低の幅まで決まっている国、州ですから、多くのドライバーは、その必要性を理解しており、順守する意図もあるのでしょう。ただ、ドライバーの中には、その条文を忘れていたり、そんなに近づきすぎていることに気づかなかったりする人も多いのだろうと、彼は話しています。

もしかしたら、車内で邪魔だと悪態をついているドライバーがいるかも知れません。しかし、日本とは違って、『自転車が車道を通るのは当然』という、世界の常識を当たり前に共有している国です。車道を走る自転車を見て、邪魔だから歩道を走れなどと考える発想はありません。

pool noodle pool noodle

実際、ドライバーからの反応の多くは、好意的なものでした。彼の“pool noodle”を見て、ほとんどのドライバーは、その意図を即座に理解します。わざわざ助手席の窓を開けて、『いいアイディアだね。』などと言った人も多かったと言います。その意図を見て取った警察官が、笑顔でハイタッチを求めてきこともあるそうです。

Huskaさん、今ではこの“pool noodle”を、権利を主張するものと言うより、小さな公的な教育のようなものだと考えています。それによって、ドライバーに順守すべき法律を思い出させる啓発広告のようなものと言ってもいいかも知れません。ドライバーたちと敵対しているとは思っていません。

もちろん、中には悪質なドライバーもいます。もし、接触したり転倒させ、サイクリストを死傷させた時どうなるか思いが及ばない人、刑事責任や賠償責任、社会的な責任まで負う必要があることを理解していない人、若くて無謀な人、分別のない愚かなドライバーもいるでしょう。

左に表示されない場合のリンク



彼は、そうした悪質なドライバーへの備えとして、以前からヘルメットにバックミラーを取り付け、動画撮影用カメラも装備して、ドライブレコーダーのように使っています。しかし、“pool noodle”を取り付けてから、安全性が増し、ストレスが減ったと感じています。この行動に共感して同じことを始めた友人もいます。

先端にはリフレクター効果のある、反射テープを巻いています。夜、遅くなった時のためです。毎日通勤で、この“pool noodle”を伸縮コードで荷台に固定して使っているため、劣化消耗して、3度ほど新しくしましたが、それでも安全のためには安い出費です。

中には、同じサイクリストでも、みっともないなどと思う人もいるでしょう。彼にしたって邪魔ですし、空気抵抗も増えます。出来ることなら装着したくありません。しかし、それでも彼は、見た目より安全を選びます。そして、道路を安全な場所にすることに、小さな貢献をしていると感じ、満足しているそうです。

(ちなみに、似たようなことを考える人は、他にもいる。)


日本にないものと言えば、自転車を追い抜く際に空けるべき側方間隔を具体的に決めた法律もありません。欧米でも、ない国はありますが、具体的に決められている国や州は少なくありません。少なくとも、自転車と車道を共有するのは当然のことであり、自転車の安全を尊重する意識がベースにあります。

日本では、そのような法律がないばかりか、自転車は歩道を通るものと思っているドライバーが、まだまだ少なくありません。40年以上にわたって、自転車に歩道を通らせるという誤った交通行政を続けてきてしまったという、世界的に見ても例のない悪政の「ツケ」です。

最近、愛媛県でこの側方間隔をとってもらおうという試みが始まっています。しまなみ海道によるサイクリング人気を観光資源として、さらに育てようとする取組みの一環です。クルマのドライバーに自転車との間隔を1.5メートル以上確保するよう呼びかける「思いやり1.5m運動」です。ポスターなどで啓発しています。

愛媛県愛媛県

同県によれば、自転車との間隔を示して安全を訴える試みは全国初です。ただ、これにしてもドライバーの『思いやり』を期待するものであり、安全の為の当然の義務という意識は希薄です。善意ですから、間隔を空けようと思わないドライバーも多いに違いありません。

日本の法律では、具体的な距離は決められていませんが、安全に通行する義務があります。弱者優先の原則もありますから、法の趣旨からすれば、側方間隔を空けるのは当然の責務です。実際に、事故になったら、クルマ側が100パーセントか、それに近い割合で過失責任を問われます。

当然ながら、刑事責任も賠償責任も課せられ、行政罰もつきます。ドライバーにとって、側方間隔を空けて通るのは、自分のためでもあるのです。そのことを意識していない人、自転車との側方間隔が近すぎていることに気づいていない人は多いに違いありません。

自転車に乗っていて、横をギリギリで通過されるのが、どれほど肝を冷やすか、風で煽られたりして危険か、わかっていない人も多いでしょう。クルマのドライバーで、かつ自転車にも乗る人はいると思いますが、歩道走行している人がまだまだ多く、実感できない人も多いはずです。

pool noodle pool noodle

日本では、道路はクルマ優先という意識が多くの人にあります。歩行者や自転車に対して、平気でクラクションを鳴らすような人も少なくありません。トラックやタクシーなどプロのドライバーでも、わざと幅寄せしたり、至近距離を高速で通過するような、危険な行為を平気でするような悪質なドライバーもいます。

日本でも“pool noodle”を荷台に載せるのは、一定の効果があると思います。愛媛県のように、ポスターで啓発する手もありますが、その場限りで、なかなか覚えているものではありません。しかし、これなら実地で啓発され、気づかされることになります。

ただ一方で、日本では、ドライバーの好意的反応どころか、窓を開けて怒鳴られるのがオチという気もします。まず、自転車の車道走行の原則や弱者保護といった基本的な部分から、もっと徹底する必要がありそうです。日本で、あまり普及していないのは、“pool noodle”ばかりではなさそうです。




フィリピンのドゥテルテ大統領、暴言が注目されますが、中国の援助や禁輸解除を引き出す等、したたかですね。

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