February 10, 2017

見逃されてきた街中のバリア

近年、LRTが注目されています。


LRT、ライトレールと呼ばれる都市交通システムで、次世代型路面電車と呼ばれることもあります。細かい定義はいろいろとあるようですが、LRTとして有名なのは、富山市内に導入された例でしょうか。次世代型かどうかはともかく、路面電車は日本各地で走っています。

札幌や広島、熊本、鹿児島といった街では市民の足としてお馴染みですし、東京の東急世田谷線や都電の荒川線、神奈川の江ノ島電鉄などもLRTに含まれるようです。宇都宮や金沢など、新しい公共交通のネットワークとして導入を計画している都市もあります。

つい先日は、東京の新小岩と金町の間の新金線という貨物線に、LRTを走らせようという構想が持ち上がっていることが報じられていました。今は定期的な旅客電車が走っていない路線ですので、新金線なんて、マニア以外知らない名前ですが、東京にも新しい路線が誕生する可能性があるわけです。

日本では、モータリゼーションによってクルマが増え、それに伴って道路渋滞が激しくなったため、昔はたくさんあった路面電車が次々と廃止され、地下鉄やバスなどに置き換えられてきた歴史があります。姿を消す方向だったわけですが、近年は改めて注目され、新設されるケースまで出てきています。

札幌 This image is in the public domain. 富山 Photo by GAMEGAWA,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

この背景にあるのは、高齢化社会の進行に伴って、コンパクトシティが指向されていることがあるようです。次世代型の路面電車が、コンパクトシティに適した都市交通として注目されているわけです。実際に、富山市などの例では、高齢者をはじめ多くの市民に支持されていると言います。

最近は、高齢ドライバーの交通事故のニュースが増えていますし、運転をやめると買い物難民になってしまう問題なども取り沙汰されます。一方、少子高齢化で人口が減る中、現在の規模の市街地をそのままにすると、インフラの維持だけで不相応な予算が必要となってしまう自治体が少なくありません。

そこで都市の居住区域をコンパクト化し、インフラを縮小して維持費を節約する方向の中で、都市交通、市民の足はLRTに、ということになるのでしょう。今後は、敷設が比較的容易で輸送能力の大きいLRTが、街の中をクルマなどと混在して走る風景が増えていくのかも知れません。

メルボルン Photo by Liamdavies,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.ユタ Photo by Garrett,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

最近開発される車両は、乗り降りがラクな低床式だったり、静粛性が高かったり、快適度がアップしたものなど進化しているようです。しかし、そんな中でも変わらないのが線路、レールです。路面電車も電車である以上、レールの上を走るのは変わりません。

専用の線路ではなく、道路を通る路面電車の場合、これが厄介なこともあります。そう、自転車で走る場合です。自転車のタイヤが、うっかりレールに沿った溝にハマってしまうと、転倒したりする危険があります。交差しているならともかく、平行している場合は厄介です。

SafeRailsSafeRails

例えば障害物を避けて、急に進路をずらす時など、気を付けていても、うっかりハマってしまうことがあります。挟まって急にブレーキがかかったようになるケースもあり、後続のドライバーにとって予期せぬ動きとなって、事故を誘発する危険性も否定できません。

実際、ヨーロッパなどに多い路面電車のある都市では、サイクリストにとっての障害物の一つと認識されています。とは言っても、昔からあるわけですし、気を付けて走るしかありません。側溝やマンホールの蓋などと同じように、ある意味、仕方のない路上の障害物と言えるでしょう。

SafeRailsSafeRails

ところが、この常識は変わるかも知れません。オランダの技術系の学生、Ward Kuiters さんと Roderick Buijs さんの2人が、今までにないアイディア“SafeRails”を発表しました。“The Hague Innovator Contest”というコンテストでファイナリストになるなど、高く評価されています。

路面電車のレールに沿った溝を、ふさぐための仕組みです。画像のような形をしており、溝にはめ込むような形で設置されます。これによって、溝は道路面と同じ高さに保たれます。自転車のタイヤが載っても、その重さくらいではへこみません。

SafeRails

一方、路面電車の車輪が通ると、その重さに応じてへこむようになっており、路面電車の走行を妨げることはありません。言われてみれば簡単なことで、誰でも考えつきそうなものですが、レールと溝に対する固定観念が邪魔をして、これまで誰も思いつかなかったのでしょう。

現在のところ、まだコンセプトモデル段階ですが、構造がシンプルで電源も不要、製造も簡単で単価も安く、設置も容易なものになると思われます。これはサイクリストに優しいアイディアで、さすが自転車先進国、オランダの学生ならではの発想と言えそうです。

SafeRails



これは、日本でも導入を検討していいのではないでしょうか。私は、あまり路面電車と並走する場所を走らないので実感がありませんが、路面電車のある街のサイクリストには、うれしい配慮ということになるでしょう。さらに、これはサイクリストのためだけにとどまりません。

車椅子を使う人にとっても、大きなバリアフリー化になるでしょう。平行して通行するケースは少ないかも知れませんが、道路を横断する際、大きな車輪はともかく、小さいほうの車輪が、横を向いてしまい、レールに沿った溝にはまってしまう可能性があります。抜け出すのが困難な場合もあって危険です。

車いす電動カート

同じことは、高齢者の使う杖や、歩行用のカート、ショッピングカート、乗用電動カートなどにも言えるでしょう。若い歩行者には何でもない溝でも、高齢者にとっては大きな障害物となる場合があります。そして、下手をすると致命的なものになる危険性も否定できません。

実際に、事故が起きています。路面電車ではありませんが、電車の踏切で、車椅子や高齢者のショッピングカート、杖、靴のかかとなどが溝にはまってしまい、転倒したり、抜け出そうとしているうちに、列車に轢かれて亡くなってしまったという事例はいくつも報じられています。

歩行車サニーウォーカー

電車の通行に必要な溝ですから、これまで、ふさぐことなど考えもしなかったと思いますが、踏切などでは、今すぐ対策してもいいくらいではないでしょうか。路面電車が道路で混在する場所にも、予期せぬ事故を防ぐために、ぜひ設置してほしいアイテムです。

街ではバリアフリーということが意識され、まだまだ途上ですが、段差をなくしたり、溝をふさいだりされています。路面電車や踏切のレールに沿った溝は、いわば盲点となっていた部分でしょう。鉄道関係者の方は、ぜひこのアイディアを活かすことを考えてもらいたいものです。




今日この話題を選んだのは偶然ですが、昨日も東京豊島区の踏切で、手押し車の車輪が線路の溝に挟まってしまった78歳の方が亡くなっています。とりあえず踏切だけでも、溝をふさげないものでしょうか。

このエントリーをはてなブックマークに追加




Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。

にほんブログ村自転車ブログへ
 自転車・サイクリングの人気ブログが見られます。













この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/cycleroad/52095563
この記事へのコメント
cycleroad さん こんにちは。

レールの溝、私もしばし直面するのが、踏切のレールです。
進行方向直角ならばまだしも、斜めに横切っている踏切だと厄介ですね。
対向車両、追走車両を気にしながら、できるだけ直角に渡るように気をつけています。
この様な所に、オランダでの発明品を施工してもらいたいもの。

溝。 多くの人が気にしているグレーチング。
道路を直角に横断しているググレーチングでも、グレーチング同士で隙間が有ったり、
グレーチングの開口部分の巾が自転車のタイヤの巾に近かったりすると、非常に厄介ですね。
個人的には、レールよりもグレーチングの問題を解決して欲しいと願っています。
Posted by Fischer at February 16, 2017 12:00
グレーチングも危険ですが
橋の上にある
「くしの歯を組み合わせたような隙間」が恐ろしいです。

ロードバイクのタイヤがはまり込んで
2度ほどパンクしました。

路面を横切っているため避けようがありません

自転車などタイヤが細い車両が通る
両端だけでも硬質ウレタンなど埋めて欲しいです。
Posted by ロードバイク初心者 at February 17, 2017 22:55
ロードバイク初心者さん、橋のジョイント部分ですね。同感です。
***ジョイントとか、フィンガージョイントとかいう名称で、
色々な形が有るようです。

道路の前後方向というのでしょうか、地震等の対策で、
伸縮させるための機能だというのは分かるのですが、
自転車にとっては非常に危険ですよねー。
何とかしてもらえないものでしょうか。

私もいつも嫌だなーと思いながら、嵌らないように注意しています。
Posted by Fischer at February 18, 2017 10:07
Fischerさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
踏切によっては、斜めで凸凹があったり、レール部分で滑ったりすることもあるので、注意が必要ですよね。
グレーチングの隙間の問題もあります。側溝のフタとして道路の縁にある場合は、避けて通れるとしても、おっしゃるように道路を横断している場合は厄介です。
あまり溝を細くすると、枯れ葉やゴミが詰まって、グレーチングの意味をなさなくなるのでしょうし、今の仕様で十分と思っているのでしょう。
本当は道路の左端の部分だけでも、自転車で通過しやすいような仕様にしてほしいものです。
おそらく、土木関係のグレーチングの規格や仕様を決めるような部署には、自転車乗りはいないのでしょう。
もっと車道走行するサイクリストが増えて問題が広く共有され、社会的にも注目が高まるようになれば、自転車乗りの声も届くようになるのかもしれませんけど。
Posted by cycleroad at February 18, 2017 10:41
ロードバイク初心者さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
橋のジョイント部分、たしかに危険な場所がありますね。Fischerさんが言うように、振動や、気温差で伸び縮みしたりするため、緩衝機能として、仕方のない仕様なのでしょうけれど、これもクルマのことしか頭になく、自転車乗りのことを考えていない仕様としか言いようがありません。
隙間が必要なのは仕方がないとしても、対策は可能なはずです。
例えば、電車の車両と車両の連結の部分には、上に鉄板が重ねて敷かれ、動くようになっていますが、あのような感じにすれば、通りやすくなると思います。
道路の左端の部分だけでも、そのような仕様にするような規格にしてほしいものです。
自転車レーンが橋にも設けられるようになれば、そのあたりの欠陥にも注目が集まるようになるかも知れませんね。
Posted by cycleroad at February 18, 2017 10:47
 
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)