April 26, 2017

さらに乗る人の不満を減らす

オランダは自転車王国です。


オランダ語では国名をネーデルラントといいますが、これは低地の国という意味です。国土はライン川下流の低湿地帯に広がっており、国土の4分の1は海抜ゼロメートル以下にあります。低地というだけあって、本土の最高峰でも、わずか322メートルしかありません。東京タワーより低い山しかないわけです。

海沿いに堤防をつくり、低地にたまった水をくみ上げ、干拓によって国土の造成を進めてきた歴史があります。今でも排水を続ける必要のある土地も多く、そのために使われてきたのが、オランダ名物として有名な風車です。オランダは国土の標高差が少なく平坦なため、自転車に乗るのには適しているわけです。

もちろん、自転車だけというわけではありません。オランダはヨーロッパの交通の要衝でもあるので、海運や空運に加え、高規格の欧州自動車道で結ばれ、各国を結ぶ陸上輸送ルートにもなっています。また、鉄道網も広がっており、都市間の鉄道網はヨーロッパ随一の利便性を誇っています。さまざまな交通網が発達した国です。

Photo by Markus Bernet,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by Springlab

牧歌的な風景が広がるイメージがありますが、むしろ、早くからモータリゼーションが進んだため、1970年代には街にクルマがあふれ、深刻な渋滞や公害に悩まされました。そこで、さまざまな議論を経て、オランダは国をあげて自転車の活用を進めるという決断を下したのです。

都市内の移動だけでなく、ほぼ全ての幹線道路にも自転車専用レーンが設置されています。自転車の活用が進み、国民の生活に密着した移動手段となっています。人口より自転車の所有台数が多いくらいに普及しており、自転車保有率は世界一を誇ります。

政府が先頭にたって、市民に自転車の活用を促してきた国であるため、高水準の自転車インフラの整備が進められてきています。自転車レーン以外にも、サイクリストに対して数々の配慮、振興策が採られてきたことについては、過去にもいろいろと取り上げてきました。

FloFlo

そのオランダで、また新たな試みがスタートしています。オランダ第4の都市、ユトレヒトに“Flo”と呼ばれるシステムが新しく導入されました。これは“Springlab”と“Hartog Elektrotechniek”という会社、そしてユトレヒト市が共同て開発したものです。

簡単に言うと、サイクリストが市内の自転車レーンを走行するとき、なるべく赤信号にひっかからずに済むようにするシステムです。交差点で信号待ちをしなければならない状況を極力回避できるようにして、自転車利用者の流れを、なるべくスムースにするものです。

FloFlo

信号の手前で、通過する自転車の速度を感知します。そして、信号の切り替わるタイミングと到着予想時間から計算して、最適な速度を表示で教えてくれるようになっています。その表示に従って、スピードを調整すれば、なるべく止まらずに走行できる仕組みです。

表示はマークで出ます。「ウサギ」のマークが出た時は、スピードを上げたほうがいいというサインです。「カメ」ならば、もっとスピードをダウンしないと、信号で止まってしまうことを知らせます。そのままの速度でいい場合は親指のマーク、いわゆる「サムズアップ」が表示されます。「いいね」のマークと同じです。

FloFlo

これは、なかなか便利そうです。自転車に乗っている時、誰でも多かれ少なかれ、なるべく止まりたくないという心理が働くでしょう。せっかくペダルをこいで出たスピード、運動エネルギーをブレーキでそいでしまうのは避けたいのが正直なところでしょう。

この表示を参考にスピードを調整することで、停止しなくて済むのであれば、快適に走行できそうです。まさに、自転車乗りの気持ちを汲んだ配慮であり、痒い所に手が届くサービスと言えるのではないでしょうか。ちなみに、どうあっても、信号で止まらざるを得ないタイミングでは「ウシ」のマークが出ます。



ウサギとカメの話は、イソップ童話に出てきます。これなら、多くの国の人が一目でわかるでしょう。オランダ語表示するより親切です。ウサギとカメに対し、親指のサムズアップというのは、統一感がありませんが、こちらも、SNSなどで有名なマークになっています。外国人も含めたわかりやすさを優先したようです。

それでは、ウシはなぜでしょう。システムの設計に関わった人によれば、国際的にふさわしいマークが思い浮かばなかったので、ウシにしたのだそうです。オランダ人にとっては、比較的イメージがわきやすく、意味が想像しやすいだろうということでウシになったと言います。

FloFlo

ヨーロッパの北部に位置するオランダに住む人たちは、バカンスの時には、当然のように太陽のふり注ぐ南を目指します。目的地の多くは人気のある南フランスということになるでしょう。そして、南仏でのバカンスの最中、出会うことがあるのがウシです。

つまり、道路をのんびりウシの群れが横断している場面に出くわし、仕方なく待たされることがよくあるからなのだそうです。あきらめて、のんびり待つしかないよ、ということでしょう。そう聞くと、上手いマークが見つからなかったからとは言え、ウシのマークも悪くない気がしてきます。

FloFlo

このシステム、地元のサイクリストへのアンケートから生まれました。サイクリストの感じている不満の一番は信号だったのです。あまりにも信号が多く、たびたび止まらされる、ストップアンドゴーが多いというのが市内を走行するサイクリストの不満だったのです。

この“Flo”のシステムは、約120メートル手前で検出した速度を、約100メートル手前で表示します。信号機のシステムとも連動し、交通量などにも反応するそうで、かなりの確率で止まらずに走行出来るようになると言います。これにより、信号手前に多くの自転車利用者が滞留するのも防げます。

これは、おそらく世界初のシステムでしょう。今後、オランダの他の都市、アイントホーフェンやアントワープでも、この“Flo”の試験が始まる予定です。その有効性が確認されれば、他の都市へも広く提案されていく計画になっています。オランダ以外の国、都市へも売り込む計画があります。

他の国で導入されるかどうかは、そこの自治体の意向もあるでしょう。交通環境や信号の間隔など条件の違いもあると思います。ただ、少なくとも現在のところ、ユトレヒトの自転車乗りからは好評を得ており、ヨーロッパの他の自転車先進都市にも広がっていく可能性はありそうです。



自転車インフラの整備が進んでいない日本から見ると、レベルの違う話と言わざるを得ません。都市の道路に、自転車専用道どころか自転車レーンもない日本の都市では、このようなシステムが導入される余地も見込みもないでしょう。まったくもって羨ましい限りです。

扱う統計によって多少違いますが、自転車の保有比率で言えば、日本も低くはありません。ダントツのオランダには及ばないとしても、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなどに次いで、世界でも6位くらいに入る保有比率と言われています。

モータリゼーションの進展や、70年代の公害、交通戦争、オイルショックといった環境、時代背景もオランダとそう変わりません。日本は低地の国ではありませんが、都市は平野にあります。当然ながら、オランダも最初から自転車王国だったわけではありません。

しかし、今では、自転車に乗る環境において、大きく差が開いたと言わざるを得ません。何が、この差をもたらしたのでしょうか。一言で決めつけられるものではないと思いますが、やはりオランダ政府の交通行政における長期的な視野と、逃げずに決断したことだったような気がします。




復興大臣の失言は酷いですね。雲隠れの経済産業政務官も含め、ずさんな人選と言われても仕方ないでしょう。

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