June 22, 2017

日本のお宝を中国企業が狙う

いよいよ日本に上陸するようです。


中国の上海や北京などの大都市で、急速に自転車シェアリングサービスが広がっていることについては、これまでも取り上げてきました。続々と新興企業が参入し、各社各色のシェア自転車が街にあふれている状態です。そのうちの大手、摩拜単車、“Mobike”の日本進出が報じられています。


中国発シェア自転車が上陸 スマホで解錠・決済

30分100円以下で提供

中国の自転車のシェア(共有)サービス大手、摩拝単車(モバイク)が日本に進出する。7月中に一部地域でサービスを始め、年内にも主要10都市程度に広げる。スマートフォン(スマホ)で近くの自転車を探し、料金もスマホで決済する。同社は1年強で500万台を普及させたが、中国ではこうしたスマホを使うシェアサービスが続々と誕生。14億人の巨大市場で成功した中国勢が、この分野で出遅れた日本に「上陸」する例が増えそうだ。(2017/6/17 日本経済新聞)


果たして、このモバイクの日本上陸は、日本の自転車事情に影響を与えるのでしょうか。現在は日本法人を設立し、自治体と協議している段階です。まだ事業の詳細は発表されていない段階で、時期尚早ではありますが、今後の行方について考えてみたいと思います。

シェア自転車シェア自転車

都市部で自転車を共有するシステム、いわゆる自転車シェアリングは、ロンドンやパリ、ニューヨークをはじめとする世界中の都市で導入され、その数は増加の一途を辿っています。どんどん拡大しているため、正確な数は把握していませんが、いまや世界500以上の都市に広がっていると言われています。

日本でも取り入れようとする事例はありましたが、これまで結果として広くは定着しておらず、失敗に終わったところも少なくありません。もちろん継続しているところもありますが、利用者は伸びず、認知度も低いままです。総じて日本でのシェア自転車は成功とは言えません。

その理由は明らかです。世界で広がっている都市型自転車シェアは大規模です。都市部に何千ヶ所という貸し出しステーションを設け、少なくとも何万台という単位の自転車が用意されます。そして、その都市圏全域でサービスが提供されます。

街角ごとにステーションがあって、すぐ、どこでも借りられます。返す時も、目的地の最寄りのステーションに返せるので、乗り捨て感覚です。単なる貸し自転車ではなく、市民のアシ、都市交通として機能してこその自転車シェアリングサービスです。

一方、日本のそれは地域も限られ、例えば、東京の一つの区内でしか借りられず、返せません。自転車の台数も少なく、貸出ステーションもせいぜい10か所程度です。これでは、どこでも借りられて返せるとは言えません。最近でこそ、統合する動きもありますが、狭い地域しか移動できず、これでは不便です。

貸出ステーションが限られるため、ステーションからステーションへ移動できるだけです。都市全体、あるいは広域をカバーする規模がなくては、自転車シェアリングの機能を果たせません。日本の自転車シェアリングサービスは大失敗と言われる所以です。そのあたりを理解していると思えない運営主体も少なくありません。

一方、モバイクは、同社だけで中国全土で500万台を展開するなど、圧倒的な規模でサービスを提供しています。その利便性に市民が気づき、昨年本格的にサービスが始まったにもかかわらず、すでに全体では億単位の利用者が登録するなど爆発的に普及しました。

中国のシェア自転車は、貸出ステーションを必要としないのも、爆発的に広がった要因でしょう。スマホの位置情報で自転車ごとに管理し、利用者はアプリでロックを解除し、そのまま走り出せます。返却する時も、街角で降車してロックするだけで済みます。

欧米のサービスのような機械式駐輪機はありません。駐輪可能な場所にとめる必要はありますが、どこでも乗り捨てられます。通常は、ステーションの設置スペースの確保が難しいため、自治体と連携する必要があるわけですが、この仕組みなら必ずしも必要なく、企業としても最初の設備投資が小さくて済みます。

シェア自転車シェア自転車

安い利用料も特徴でしょう。参入が相次ぎ、ライバルが多いこともありますが、中国での利用料金は、30分で0・5元から1元程度、日本円で8円から16円です。この安さも爆発的に普及した要因だと思います。ただ、安いからと言って、使える自転車もお粗末かと言えば、そんなことはありません。

モバイクの自転車は、フルアルミのフレームに、タイヤはパンクレスタイヤ、ホイールもアルミです。シャフトドライブで変速機も備えています。加圧式のサドルやIoTスマートロックなども搭載し、30以上の技術特許を取得したというオリジナルの自転車です。4年間はメンテナンスフリーだと言います。

オリジナルの自転車を大量生産することで、コストを抑える意図もあるのでしょう。さらに細かいパーツまで、オリジナル、すなわち汎用品と互換性のないものを使っています。こうすることで、パーツを盗んでも使えなくしているわけです。

一時期と比べ減ったとは言え、中国でも自分の自転車で移動する人はいます。でもその場合、すぐに盗まれてしまうため、何と言っても盗難が悩みの種でした。しかしシェアサイクルなら、盗難を心配する必要はありません。この点でも市民の悩みを解消し、爆発的な普及につながったのでしょう。

当然ながら、問題もあります。機械式のステーションがないため、駅の近くなどを中心に、街中がシェア自転車でいっぱいになってしまいました。また、郊外に乗り捨てられる場合も多く、どうしても自転車が偏在する形になってしまいます。適正配置が追いつかないという状況があるようです。

邪魔になったシェア自転車が街角に積み上げられるような状況に至って、中国の地方政府も対策に乗り出しています。機械式のステーションはありませんが、決められた白線内に駐輪させるようにしています。そして、運営側は、利用者に実名登録を義務付け、個人信用スコアを取り入れています。

きちんと指定の場所に返却しないと減点され、初期に与えられるポイントがなくなると使えなくなる仕組みです。決済に電話番号とひもづけられたアカウントが必要で、実名登録です。中国ではスマホ決済が普及し、他のサービスもいろいろ使っている人がほとんどなので、電話番号を取り直すのは現実的ではありません。

一つの場所に返却が集中してしまうと、白線内に置けないような状況も起きるとは思いますが、基本的に、この個人信用スコアで、ルールを守った利用を促しているわけです。また、GPSなどによってバーチャルな駐輪エリアを設定し、その中でしか返却出来ない電子柵などの技術導入も検討されています。

そのほかにも、乱暴に扱われたり、投棄されるなど、他の問題もあるようです。まだ事業として立ち上がったばかりであり、手探りや試行錯誤をしている部分もあります。しかし、全体として見れば爆発的に使われているわけで、十分に機能しているのは間違いないでしょう。

シェア自転車シェア自転車

日本人から見ると破格の料金で、はたして事業として採算が合うのかという疑問もわきます。実際に、黒字にするのは至難だと指摘する声もあります。しかし、他の事業者もそうですが、今は採算よりも、シェアをとり、都市の移動インフラとして認知され、事実上の標準となることを目指して競争している状態のようです。

シェア自転車事業を展開する企業は、どれも新興企業です。モバイクのCEOのインタビューを見ると、「確立した収益モデルはまだなく、どうすれば稼げるのかはまだ分かっていない」と発言しています。まだ本格的に始動して日も浅いですし、走りながら考えるということのようです。

ただ、IoTやAIの技術を使い、コスト削減に取り組んでいます。例えば、どのような輸送経路で回収し、再配置するのが効率的かAIが考えることで、効果を上げているといいます。もちろん、車両に広告を入れるなどの方策も考えられます。広告を獲得するためにも、まずはシェアということなのでしょう。

シェア獲得のためには、大量の車両を投入し、機会損失を防がなければなりません。その点については、多額の投資資金が各社に投じられており、当面は問題にならないようです。それだけ豊富な投資資金が獲得できる背景が、今の中国にはあります。

中国では、都市部の不動産価格が高騰しており、株式市場やビットコインなども含め、バブルを警戒する政府当局が、規制を厳しくしています。資本の海外流出圧力も高く、為替が過度に変動しかねないため、当局は海外への資金移動も厳しく制限しています。行き場を失った投資資金が国内ベンチャーに向かう面もあるのでしょう。

ウーバーやエアビーなど、世界ではシェアリングエコノミーの進展に注目が集まっています。中国では、シェア自転車も、有望なシェアリングエコノミーと目されており、莫大な投資資金が運営企業に流れ込んでいるのです。車両の調達など、全く問題にならないでしょう。

「どうすれば稼げるのかはまだ分かっていない」と言う半分は本音かも知れませんが、半分は勝算があるのだろうと思います。今は採算を考えるより、とにかくシェアを高め、ライバルとの競争に勝つことが至上命題ですが、多くの市民が使うインフラとなれば、儲け方はいろいろ考えられます。

GPSで車両の位置を把握するのは、お客がすぐ探せるためだけではないでしょう。どのような経路を通ったか、どこへ行ったか、滞在時間はどのくらいか、などさまざまなデータが収集できます。このデータの中に、大きな宝物が埋まっていると考えているに違いありません。

借りる際にはスマホを使います。お昼時に利用を終了し、駐輪したお客のスマホに、最寄りの飲食店の広告と、割引クーポンを送るくらい、わけないはずです。さまざまな移動や消費性向を分析し、一人ひとりにあわせた広告を配信するならば、出稿企業には困らないはずです。

シェア自転車シェア自転車

移動する市民のビッグデータが、そのほかにも大きな価値を持つことは疑いようがありません。そもそも、1元程度の利用料で稼ごうとは思っていないに違いありません。その辺は素人でも想像できるわけですが、その実現のためには、例え成算がなくても、まず日本に進出するのが先という戦略でしょう。

中国では一昨年に試験を始め、実質的には昨年からサービスが始まりました。わずか1年あまりで、この規模を展開し、さらに日本だけでなく、既に海外にも進出しています。この大規模な投下資金とスピード感、残念ながら、日本の自転車シェア事業者にはマネの出来ないところでしょう。

こんな企業、こんなシェア自転車が日本に上陸するのです。まだ、具体的な事業計画は明らかになっていませんが、日本の自転車環境に大きな影響を与える可能性があることは否定できません。進出する都市の自治体との協議にもよりますが、かなりのインパクトを与えても不思議ではありません。

さすがに、中国の都市の一部で見られるように、街に放置されたシェア自転車があふれるようになっては問題ですが、公共の場所だけでなく、スーパーやコンビニの駐輪スペースなど、提携先も考えているようです。日本でも大規模なシェアサイクルが展開される可能性はあると思います。

もし、中国の都市で展開されているような、圧倒的な規模で開始されたら、日本の他のシェアサイクルが太刀打ちできるとは思えません。そして、本当の意味での都市型自転車シェアリングがとういうものか、どう便利なのか、多くの市民が実感として理解することになると思います。

料金も、これまでの経緯を考えれば、破格の安さになるでしょう。スマホ決済の普及などの問題もありますが、自分の自転車を使わない人も増えるでしょう。盗難を心配する必要もなく、何と言ってもメンテナンスをする必要がありません。個人の放置自転車は減り、シェア自転車が街にあふれることになるかも知れません。

日本人が日常で、どんな言葉を検索しているのか、どんなサイトを見ているのか、膨大なデータは、アメリカ企業グーグルに握られています。同じように、日本人がどこへ行くのか、どのくらい滞在するのか、移動のデータは中国企業に握られることになるのかも知れません。

進出先の自治体が、どういう姿勢をとるかがポイントになりそうです。日本ならではの規制の多さで、モバイクの思い通りの展開が出来ない可能性もあります。世界中で広がるウーバーも、日本では、ごく限られたサービスに限られており、認知度も上がっていません。

果たして、モバイクがウーバーのようになるのか、あるいはグーグルのようになって、日本の自転車環境を変えることになるのか、現時点ではわかりません。冒頭の日経新聞の記事の続きを見ても、そのあたりは書いてありません。どうなるのか、今後の動向を注視していきたいと思います。




とうとう藤井聡太四段が歴代1位タイの28連勝、すごい14歳がいたものです。どこまで伸ばすか楽しみですね。

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この記事へのコメント
まさか中国のシェアサイクルサービスが日本に飛び込んでくるとは思いもよりませんでした。
ですが、私達の好きな自転車の利用が、更に街中で活性化するとあれば、歓迎していきたいですね。
また、すでに多く流通している従来の自転車には流用できない規格のオリジナル自転車を大量生産することでコスト節約と盗難防止を両立するパワフルなやり方は、本当にうらやましく思います。
日本企業でここまで思い切ったことを強力にやってくれるところを、私は知りませんから。良く言えば堅実とも言えますが、今のビジネスではスピードが命なので、従来のやり方では日本企業は苦しい戦いを強いられるでしょう。
私は、自転車の活用を活性化してくれるならば、どこの国のサービスでも積極的に応援したいと考えています。もちろん、日本企業がそれをやってくれるならば無上の喜びではありますが。

それとあわせて日本でも道路整理のほうもしっかりやっていきたいところです。
ニューヨークも従来の自転車レーン型自転車インフラ整備に限界を感じ、ついにもっとも自転車政策が成功している(=交通における自転車分担率が高い)オランダのような車道や歩道とは完全に分離した自転車道の整備に切り替えているようですから、日本もその方向でしっかりやっていきたいところです。
Posted by GreenTopTube at June 24, 2017 00:49
ドコモ、ソフトバンク、セブンイレブン、ローソンなどが自転車シェアリング事業を進めて下さっている実情には、まさに感謝の念の送りたい思いがあります。
そして『ももちゃり』など自治体が運営する自転車シェアリングも利用が増えているようなので、要注目ですね。

そして、今、日本においても、地方、郊外から、都市部への移住が進んでおり、都市部では渋滞抑制と公害抑制、事故減の為にも自動車を減らす施策が求められています。
そして、各国の特に都市部は、合理的な交通政策として、自動車への規制や課税を強化して自動車の乱用を減らし、自転車インフラ整備や電動アシスト自転車購入者に助成金を交付するなどして自転車利用を増やす政策を進めています。
ノルウェーの首都オスロは徹底しており、自家用自動車=マイカーの禁止、違法化を決断し、自転車を優遇するビジョンを持っているようです。本来は、これが渋滞と公害と事故と不健康を減らすためには理想的ですね。
各国の統計的に見ても、自動車の乱用が増えるたびに渋滞と公害は深刻化し、車内外の事故死者は増え続けたのですから。
自動車は重量約1000圓發△覿Т錣任△蝓▲魯鵐疋訌犧遒筌撻瀬訌犧遒魎岼磴┐譴舒貊屬靴10人以上もの死傷者を出す銃や爆弾と同等の凶器である事実は、これまでの自動車突入の惨事を映すニュースからも痛感する通りです。自動車は、積極的に減らすべき危険物であり、そして今、各国は自動車を減らして自転車を増やす政策を進めている。事故を減らすために、渋滞と公害、不健康(これにまつわる医療費負担)を減らすために。

Posted by GreenTopTube at June 24, 2017 01:07

日本も、いつまでも自動車原理主義の自動車脳のままでは、各国が目指すようなより良い交通の実現は無理なわけですから、積極的に自動車(特に自家用自動車=マイカー)を抑制し、街を自転車と歩行者の手に取り戻す交通施策で公益を高めてほしいと強く願うものです。
この辺りは『ジェフ・スペック』の交通政策論にまつわるスピーチ(日本語訳有り)でも説明がありますので、興味がある方はぜひご覧くださればと思います。
子供らの為にも、自動車をもっと減らし、自転車への乗り換えを積極的に進めたいものです。
自動車の車内でさえ年間約1300人が死亡(自動車を減らせばこの数字も激減できる)しており、交通刑務所懲役囚人のほぼ全員は自動車運転手な現実からしても、それは急務です。

ちなみにスコットランド・グラスゴー大学(University of Glasgow)の研究チームの最近の発表によると、自転車通勤者は、徒歩、電車、自動車通勤者いずれよりも健康寿命が長く、長寿の傾向にあるそうですね。通勤距離が長ければ長いほどリスクも減るのだとか。
長く健康で居たい、長寿でありたいならば、自転車を選ぶというのは善い選択であるようです。
何にせよ、自家用自動車=マイカー通勤は積極的に減らすべき害悪であり、自転車や電車等の移動手段は積極的に活用を進めていくべきものである事実は確かにあります。自転車シェアリングは自転車のスマートな使用面積を、更にスマートにして、その面積効率はバスや電車と肩を並べるものでしょう。自家用自動車=マイカーは5人乗り車両に平均約1.3人しか乗っておらず(国土交通省調査)、ほとんど空気を運んで貴重な都市面積を無駄に占有し渋滞を深刻にしている。それと比べればいかに自転車は面積効率が優秀であるか、各国の特に都市部がなぜ自動車を減らし自転車を増やす政策を進めるのか、それががよくわかると言えます。
Posted by GreenTopTube at June 24, 2017 01:33
GreenTopTubeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
おっしゃるように歓迎すべき面がある一方で、危惧される面もあります。
自転車環境の面以外に、本文で書いたように、日本人の自転車での移動データが独占され、いわゆるプラットフォーム企業として日本の移動広告を牛耳られることの、日本の企業への影響も気になります。
日本の企業が制する機会が十分にあった点を考えると残念な面もあります。
いずれにせよ、果たして日本で展開するサービスがどのようになるのか、気になります。
Posted by cycleroad at June 24, 2017 22:33
 
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