July 07, 2017

街の未来を拓く自転車の効果

ベイルートは中東レバノンの首都です。


シリアやイスラエルと国境を接し、多くの戦争に巻き込まれてきた街でもあります。70年代には内戦が勃発し、シリア軍の進駐やイスラエル軍の侵攻も受けました。80年代にもイスラエルとレバノン戦争を戦い、90年代にはシリア軍の侵攻によって、その支配下におかれました。

現在もイスラム過激派民兵組織・ヒズボラが台頭し、それを支援するイラン革命防衛隊が駐留するなど、その軍事的影響が高まっており、国内は政治的にも分断された状況になっています。そして、いま隣国のシリア内戦によって国内の人口の1割に匹敵する100万人もの難民が押し寄せてきている状態です。

住民も宗教や人種、部族、言語などが複雑に絡みあっており、政治的にも親シリア、反シリア両派の対立に加え、周辺の国の影響を受けた多数の政治勢力、派閥が割拠している状態です。戦乱からの復興も進みつつありますが、いまだ廃墟となったビル群も残されたままです。

日本の岐阜県ほどの大きさの小国ですが、中東の戦略的な場所に位置するため、戦乱の歴史が続いてきました。今も宗教・宗派的なパワーバランスの中で、困難な、また予断を許さない状況にある国と言えるでしょう。しかし、当然ながら、その中でも市民は逞しく生活しています。

The Chain EffectThe Chain Effect

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The Chain Effect”は、3人のレバノン人住民によって、2014年の11月に設立されたグループです。ベイルートでの移動手段に、自転車を使うことを呼びかけ、その促進を図ろうとしています。北欧の国ならわかりますが、レバノンのベイルートでそのような活動をするサイクリストたちなのです。

復興しつつあるとは言え、戦乱の傷跡も残るベイルートで、当然ながら、自転車は移動や輸送の手段とは見なされていません。当たり前ですが、自転車にやさしい都市とは到底言えません。日本を含む先進国の人から見ると厳しい環境ですが、その中で自転車の活用を広げようとしているのです。

戦乱が繰り返され、交通インフラが貧弱なベイルートでは、激しい渋滞が常態化しています。もともと十分な経済力がないところへ、100万人の難民が押し寄せているわけですから、お金をかけるのも困難です。しかし、渋滞は国内の経済、社会、そして環境にも多大なコストを強いる大きなネックとなっています。

国家財政が困難な中でも、いや、だからこそ、多くの人が代替手段として自転車を使えば、渋滞を緩和することができ、国内経済に対する渋滞の悪影響も改善するはずだと考えているのです。自転車をスポーツやレジャーとしてしか知らない人が多い中で、大きな潜在能力を秘めていることを知らせたいというのです。

The Chain Effect

むしろ、ベイルートのような環境の中でこそ、自転車は革命的な恩恵をもたらすと考えています。日常生活や移動・輸送の手段として取り入れることで、都市の景観から社会的枠組みまでを変える力があると主張しています。そして、自転車は社会における、自由、平等、そしてサステナビリティの象徴だと考えているのです。

この“The Chain Effect”は、自転車を便利なだけでなく、サスティナブルな都市の移動手段として、その活用を促進し、ベイルートに広げるのを目標としています。まず人々に知らせ、気づき、理解してもらうため、ストリートアートや公共活動、コミュニティプロジェクトなどを展開しています。

The Chain EffectThe Chain Effect

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特に渋滞の激しいストリートなどに、自転車の絵やスローガンなどを描いています。これは、老若男女の一般市民に描いてもらう、ストリートアートとしての活動でもあります。渋滞や酷い駐車場事情の中で、自転車という存在に気づいてもらう啓発を兼ねています。

一般のベイルート市民は、自転車を通勤手段とは考えていません。そこで“Bike to Work day”などのイベントも開催しています。ベイルートでも、非常に小規模ではあるものの、自転車通勤者のコミュニティが少しずつ増えつつあり、かつ多様化してきているとの手ごたえを感じているそうです。

The Chain EffectThe Chain Effect

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社会的な活動として地域社会とも連携し、若者や高齢者をアートセッションに招待したり、建物の所有者に自転車の絵を描かせてもらったりもします。これらは戦禍の残る街並のコンクリートむき出しの壁面に色どりを与え、街を明るくする効果もあります。

ゆくゆくは、ベイルートでも自転車シェアリングを導入することで、多くの人が自転車を使えるようにしたいと考えています。しかしながら、欧米などの安定した社会と違って、ベイルートの将来は、まだまだ楽観することは出来ない状態にあります。

The Chain EffectThe Chain Effect

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政治的、軍事的にも不安定な状態にある上に、シリアからの大量の難民が市民生活を圧迫しています。安定的な平和を実現し、人々が安心して生活出来るようになるのが先決です。その上で自転車を活用する文化を築き上げるのは長い道のりになると考えています。

でも、ベイルートの街を自転車とアートで、もっと美しい街にしたいという希望があります。すべての世代の人をサイクリスト、アーティストにしたいと望んでいます。この“The Chain Effect”は、Zeina Hawa さんが友人の、Naoum さんと Nadida さんと3人で始めた、その小さな第一歩なのです。

The Chain EffectThe Chain Effect

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The Chain Effect

決して恵まれた環境にあるとは言えません。いつまた戦乱に巻き込まれてもおかしくないことは、中東情勢を考えても明らかです。パレスチナ問題をはじめ、イスラム教のスンニ派とシーア派の対立、シリア紛争とISISなどテロ組織の台頭も含め、争いの火種には事欠きません。

それでも人々に自転車に乗ろうと呼びかけ、身近なところから始め、街の未来を変えていこうとしている、その姿勢、逞しさに驚きます。同時に、同じサイクリストとして共感する部分もあります。ぜひベイルートの街に笑顔のサイクリストがあふれ、そしてレバノン、中東に平和が訪れることを祈りたいものです。




九州で大変な豪雨災害になっています。線状降水帯がいつどこで発生するか、決して他人事ではありませんね。

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この記事へのコメント
基本的に自動車の乱用を減らして自転車の活用を増やすほど渋滞も公害も事故も不健康も減りますからね。
だからこそノルウェーもオランダもデンマークもイギリスもアメリカの首都ニューヨークも自動車通行規制強化や自動車課税強化で自動車乱用を減らして自転車専用道ネットワーク整備やサイクリスト優遇政策で自転車への乗り換えを政策で進めているほどですから。
ノルウェーの首都オスロは自家用自動車=マイカーの禁止を決定し、自転車インフラ整備は大幅に進めるようですし、そういった動きは積極機に日本も見習っていきたいですね。
ちなみに最近の発表で、ベトナムの首都では大気汚染等公害の元凶となっているオートバイの乗り入れ禁止を進める案の推進が決定したそうです。
ただしオートバイより占有面積の大きな自動車への転換がされてしまうと更に渋滞も公害も事故等も蔓延、深刻化してしまうでしょうから、各国の都市部がやっているように自動車への通行規制及び課税強化も進めて、自転車の活用を進める政策も段階的に推進されるのではないか、と私は見ています。

Posted by GreenTopTube at July 08, 2017 04:49
また、イギリスのグラスゴー大学の研究調査によると自転車の活用はその人の健康寿命と寿命を大幅に伸ばすそうですし、年間医療費が40兆円を超える日本特に早急に自転車の活用を本来、もっと積極的に進めるべしでもあるのが実情と言えるのですよね。
徒歩通勤、自転車通勤、電車通勤、自動車通勤等すべての移動手段において、もっとも健康寿命が短く、長期間の苦痛と多額の医療費が伴う癌や合併症に罹患する率が最も高く実際に短命なのは自動車通勤の自動車依存者だそうです。それだけ、運動不足は有害で高リスクだということなのでしょう。
いっぽう自転車はというと、歩行者よりも健康寿命が長く、実際に長寿なのだそうです。癌や合併症のリスクももっとも低い。
自転車は健康に良い、と昔から世界中で叫ばれ続けてきており、オランダやフランス等における研究でもそれが今まで裏付けられてきましたが、イギリスのグラスゴー大学のこの度の研究報告は更にそれを補強する形になりました。自転車の活用を積極的に私達は進めたいですね。その為の自転車インフラ整備推進も。
世界でもっとも自転車の交通分担率が高い=自転車政策が成功しているオランダからは特に積極的に学んでいきたいものです。
Posted by GreenTopTube at July 08, 2017 04:50
GreenTopTubeさん、こんにちは。
おっしゃる通りだと思いますし、イギリスのグラスゴー大学の研究なども別のエントリーで取り上げています。
先進国や新興国での取り組みも注目していますが、今回は混迷する中東情勢の中でのレバノンの市民の姿勢に注目しました。
Posted by cycleroad at July 08, 2017 23:39
 
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