December 13, 2017

大で小を兼ねないほうが良い

物流業は年末に向けて忙しくなります。


この時期、歳末セールやクリスマスセールなどで小売業は書き入れ時ですが、最近はネット通販の伸びが著しく、ブラックフライデーやサイバーマンデーなど、日本でも通販でモノが売れる時期となっています。お歳暮の配達もありますし、宅配事業者は忙しくなる一方でしょう。

海外でも、その傾向は変わりません。欧米は特にこの時期、一年のうちで一番買い物をする季節ですので、やはり通販の配送は大忙しです。年末に向けて、臨時雇用を大幅に増やすなどして物流量の増加に備えなければなりません。日本のように人手不足ではないにせよ、特定の時期だけ雇用を増やすのは簡単ではないでしょう。

Photo by Qualle,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.さて、欧米の宅配便などの流通業者は、近年いろいろな対策を迫られています。大手宅配業のトラックは、配達中の駐車によって渋滞を引き起こすとして白い目で見られます。排気ガスによる大気汚染の元凶とも見られますし、温暖化ガス排出の面でも矢面に立たされがちです。

日本では、あまり報じられませんが、ヨーロッパの都市では、大気汚染による健康被害が大きな問題となっています。排気ガス規制が厳しくはなっているものの、依然として都市部の大気汚染が酷い状態です。北京やムンバイなどの酷さは耳にしますが、ヨーロッパでも決して昔の話ではないのです。

ヨーロッパは、ディーゼル車の割合が高いことも要因でしょう。窒素酸化物や粒子状物質の排出により、スモッグが発生しています。例えばパリなどでは、大気汚染の原因となる粒子状物質、PM10の濃度が警戒レベルを上回ることがあるなど深刻な状態になっており、そのための交通規制なども行われています。

ディーゼル車はトラックだけではないのですが、トラックの排気ガスのクリーン化が相対的に遅れていることもあって、非難の目が向けられます。街でよく目にする宅配業者のトラックは、渋滞、大気汚染、温暖化ガス排出などさまざまな点で非難が集まりやすいようです。

UPSUPS

そこで、大手宅配業者のUPSは、電動アシスト自転車でけん引するトレイラーを宅配に導入しています。都市部での渋滞や大気汚染対策の一つです。これは、いわゆるサスティナブルな環境に貢献するための、企業努力をアピールする面もあるでしょう。しかし、それだけではありません。

トラックと比べたら、非力で重い荷物は運べず、あまり荷物の量も運べないだろう、そのぶん効率も悪くなりそうと考える人が多いと思います。でも、このトレイラーは、最大200キログラムの荷物を運ぶことが可能です。単なるアピールではなく、十分に現実的な宅配手段なのです。

電動アシストですし、坂道などでも特に困難なことはありません。トラックと比べればキャパシティーが小さいのは否めませんが、意外にこの大きさでも十分なケースは多いと言います。逆に言うと、トラックの大きさは必ずしも必要ではないということなのです。



地域や季節的要因などで、荷物の量や種類は変わってくるでしょうから、全くトラックの大きさが不要とは言いません。しかし、トラックの荷台のアルミの箱の中に、荷物が満載されているわけではないのです。むしろ、自転車のトレイラーで運べるくらいの量で間に合う場合も少なくないわけです。

一方で、自転車にしたことにより小回りがききます。トラックが進入禁止の場所も通れたりします。トラックのように駐車できる場所を探して時間をとられることもありません。トラックよりも配達先の近くまで行けることも多いはずです。このような点を考えると、自転車での配達は、かえって効率的な面も多いわけです。

混雑した都市部では、スピードもトラックと変わらず、渋滞でむしろ速かったりします。都市部では配達エリアも限られていますから、集配拠点からの距離も限られます。何回か戻ることになっても、自転車のほうが有利だったりします。普通の荷物なら、重さも200キロまで運べればカバー出来るでしょう。



宅配に自転車を使う試みは、ヨーロッパ各地に広がりつつあります。今までの大きなトラックでなくても済む部分を置き換える動きです。以前も取り上げたDHLはトレイラーではなく、カーゴバイクによる独自のシステムを一部で導入しはじめています。

大手宅配業者だけではありません。自社の商品をトラックでデリバリーするような業者も事情は同じです。例えばピザやランチボックスのようなフード類を中心に、デリバリーの需要は増えています。地元のスーパーがネット注文を受けて、配達するサービスなども広がっています。

Urban ArrowUrban Arrow

そのようなデリバリーにも、トラックではなく自転車、カーゴバイクを使う業者が増えつつあります。そうしたニーズに対応するため、Urban Arrow というカーゴバイクメーカーは、これまでの個人向けに加えて、デリバリー用のカーゴバイクを開発しました。

やはり電動アシストシステムが採用されており、基本仕様では、貨物容量が1500リットル、最大で350キログラムの荷物が積載できます。小回りがきいて、渋滞に巻き込まれたり、駐車場所を探して時間をロスしたりしないのは、先ほどのトレイラーと同じです。



トラックと比べたら、車両代も大幅に安いですし、駐車場代や燃料費ほかランニングコストも断然安くなるのは間違いありません。排気ガスも出さず、企業イメージも良くなります。いろいろな面で、トラックではなく、カーゴバイクにしない手はないと考える会社や商店が増えています。

ユニークなトレイラーも開発されています。“BicyLift”と名付けられた、自転車でけん引するトレイラーです。この“BicyLift”の特徴は、荷物をパレットごと運ぶことができる点です。汎用なので、もちろんカーゴバイクで牽引することも出来ます。

BicyLiftBicyLift

パレットというのは、「すのこ」のような木で出来た台のことです。この上に荷物や製品を積みます。パレットのすきまに、フォークリフトの爪が入るようになっているので、パレットごとフォークリフトで運べるのです。トラックからの積み下ろしも、パレットごと出来るので時間の短縮、省力化出来ます。

トラックの荷台から荷台への積み替えもラクですし、パレットに積んだまま倉庫に保管するのも一般的です。荷物や製品を降ろしたら、パレットは回収されて、発送先などに戻ります。パレットは繰り返し使われるので、いろいろな業者の間を流通することになります。

BicyLiftBicyLift

このパレットに積んだ荷物を、人の力で動かすのは通常無理です。でも、この“BicyLift”があれば、人力でも、てこの原理を使ってパレットを持ち上げ、自転車につないで牽引できます。フォークリフトやトラックを使わずに、パレットに載った荷物が運べるというトレイラーなのです。

これを使えば、パレットに載った荷物のデリバリーも自転車で出来ます。普通はトラックでまとめて運ぶことが多いと思いますが、パレット1台分の配達というニーズもあるはずです。都市部でも、企業や商店などに消耗品や資材などをパレットに乗せて納品している事業者もあるでしょう。



この“BicyLift”は180キロの荷物を運べます。パレットではなく、コンテナボックスの仕様もあります。宅配の荷物も、例えば集配拠点で、あらかじめ地区ごとにコンテナに詰めておけば、パレットの荷物と同じように、積み替える必要がありません。

実際に、このようなシステムを使って宅配を行う業者も出てきています。自転車でも、意外に多くて重い荷物を運べますし、メリットも多いことに気づく業者が増えているのでしょう。トラックが全て不要ということにはなりませんが、少なくとも物流の選択肢と一つとして、世界的に見直されつつあります。

BicyLiftBicyLift

日本の場合、物流業界では、人手不足が大きな問題となっています。トラックのドライバーが不足しているのです。この点についても、自転車は解決の助けになる可能性があります。自転車であれば、運転免許がない、あってもトラックの運転は出来ない主婦でも宅配が可能になります。

最近は若者の間で免許を取らない人が増えていますが、そうした若者や、運転出来ない年齢の学生アルバイトも戦力にすることが出来ます。電動アシストであれば、運転免許を返上したり、やはりトラックの運転は難しい高齢者も、配達業務が出来るかも知れません。

BicyLiftBicyLift

日本でも一部の宅配便で自転車が使われ始めているようですが、まだカーゴバイクやトレイラーを積極的に導入する段階には至っていません。渋滞の元凶や大気汚染の原因として、世間からのプレッシャーも大きくないという背景の違いもあるのかも知れません。

自転車は、どうしても非力で少量しか運べないイメージも強いのでしょう。特にカーゴバイクやトレイラーは、まだまだ日本では馴染みの薄い存在です。しかし、人手不足の解消につながる可能性も含め、もっと自転車を活用するという選択肢は、日本の物流にもあるような気がします。




囲碁で2度7冠の井山裕太棋聖もですが、将棋で永世7冠の羽生善治竜王の偉業は国民栄誉賞文句なしですね。

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