February 08, 2018

修理とアートとコミュニティ

アリゾナにツーソンという街があります。


アメリカ西部、カリフォルニア州の隣にアリゾナ州はありますが、その南東部にあって、メキシコ国境にも近い人口50万人ほどの街です。地形は平たんですが、山岳地帯に囲まれて近いので、自転車で走っても楽しいところです。“El Tour de Tuccson”という本格的なロードレースも毎年開催されています。

BICASBICAS

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さて、そのツーソンのダウンタウンの中心に“BICAS”という自転車ショップがあります。でも、普通の自転車店ではありません。自転車が壊れた場合に、ここへ持ち込むことが出来ますが、修理はしてくれません。その代わり、ここでは自転車の修理の仕方を教えてくれます。

自転車を持ち込んで修理をするスペースがあって、必要な工具などを借りることが出来ます。無料ではありませんが、1ドルからと格安で、自分で修理やメンテナンスが出来るようになっています。そして、やり方のわからない人には、スタッフが教えてくれます。

BICASBICAS

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自分で修理するのが基本ですが、どうしても手に負えない修理の場合は、地元のプロショップなどを斡旋してくれます。また、別に修理やメンテナンスを教えてくれる教室も開かれています。基本的なメンテナンスや、子供向けの講座、本格的に自転車を組むようなコースもあります。

ここは、言わば自転車のメンテナンス技術の学校であり、地域の自転車コミュニティーセンターにもなっています。ワークショップは割安になっていますが、青少年向けには奨学金も用意しています。自転車のメンテナンス技術を学びたくても、金銭的な余裕のない青少年に対する支援も行っています。

BICASBICAS

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この“BICAS”は、非営利団体によって運営されています。アメリカ・内国歳入法で規定される、501(c)団体です。非営利で課税を免除されており、個人や企業、組合などから無制限に寄付を受けることが出来る組織です。格安の利用料、レンタル料、受講料など以外は、寄付などを元に運営されています。

不要になった自転車の寄付も受けています。それをメンテナンスしたり、組みなおしてリサイクルの自転車として販売もしています。ただし、ツーソンの全ての人がアクセスできる移動手段を手頃な価格で提供するのを使命とする非営利団体として、格安の値段です。中古のパーツや新品の部品も販売しています。

BICASBICAS

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この“BICAS”、元は“Bootstraps to Share”という組織としてスタートしました。失業者やホームレス、地域に多いメキシコや中南米からの貧しい移民を支援する組織でした。避難所として、あるいは食べ物や交通費などを支援し、自立を手助けする組織でした。

それが地域のニーズなどに合わせて変化し、“Bicycle Inter-Community Art and Salvage”となりました。頭文字をとって“BICAS”です。単に中古自転車や修理教室を提供するだけでなく、地域の青少年の自立支援の方法として、自転車の修理やメンテナンス技術を活かそうと考えています。



貧しい移民にとって、働き口もそうですが、勤務先への移動手段が必要です。中古の格安の自転車を提供することは、大いに意味があります。そして、その中古自転車を組む過程では、技術を身につけることにもなります。この団体自体、十数人の雇用をつくっているという側面があります。

ここでの経験によって、機械に興味を持った子供が、自転車に限らず、技術者や職人として自立するきっかけになるかも知れません。もちろん、環境負荷が低く、経済的で、健康増進にも資する移動手段として、自転車の活用を進めることは社会的なメリットでもあります。

BICASBICAS

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貧困に苦しむ移民に限らず、他の勉強に興味を持てない子供、学校や友達の間に居場所がない子供も含めたコミュニティーとなっています。大人も含めて、地域のサイクリスト、自転車好きが集まるコミュニティーです。元々は自転車に限らなったのですが、いまは自転車に特化した場所となっています。

もちろん、技術者になりたいという子供ばかりではないでしょう。でも、この“BICAS”で自転車をいじって半日過ごした子供は、身近なモノに対する見方が変わることが多いと言います。仕組みに興味を持ったり、自転車を大切にするようになったり、機械や道具に感謝するようになったり、いろいろな気づきがあるようです。

BICASBICAS

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使えなくなった自転車のパーツなどを使って、アート作品や実用品を作る活動もしています。それらをオークションで販売して、また活動資金に充てるわけです。ギャラリーやアートイベント、ライドイベントを開催するなど、地元の人々との交流も図っています。

アメリカでは、軽度の刑事罰として社会奉仕活動が課せられることがあります。この“BICAS”は、青少年が裁判所の命令で、地域社会での社会奉仕活動をする際、その時間としてカウントされる数少ない場所の一つでもあります。店内の掃除やパーツのクリーニング、その他スタッフの監督を受けた作業をします。

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そのほか、ツーソン警察や地元の学校、役所などとも協力して、地域の芸術文化からコミュニティーに貢献するためのさまざまな活動を行っています。国内外の自転車コミュニティー組織とも交流し、そのリーダーとしても認知されている団体なのです。

なかなか興味深い組織です。単なる地域の自転車による移動に対してだけでなく、公益や地域コミュニティーにも広く貢献している点で、高く評価できるでしょう。メンテナンスを教えられる人や、ボランティアの協力者などを広く募集し、地域に開かれているのもポイントです。



日本とは、いろいろな面の環境が違うため、そのまま真似をするのは難しい面もあるでしょう。ただ、単に移動とか観光振興の面だけでなく、コミュニティーの交流の場を提供し、修理やアートを教育や青少年の育成に活かすなど、見習える部分もあるかも知れません。自転車は移動以外にも、いろいろな活用の仕方がありそうです。




もう、平昌オリンピックが目前に迫っています。選手たちの4年間の努力が報われることを祈りたいと思います。

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