February 26, 2018

自分の愛する人を入れてみろ

私たちの生活は誰かの仕事で成り立っています。


石器時代ならいざ知らず、高度に分業化した現代では当たり前です。私たちが生活の中で消費したり、必要とするもの全てを自給自足することは出来ません。お互いに、その生産者や提供する人から購入したり、サービスを受けたりしています。

もし、その製品やサービスが対価に値しないと思えば、誰も購入しません。そのため、供給する側は、購入してもらえるものを提供しようとします。需給バランスが大きく崩れて、不本意ながら購入せざるを得ないような場合もありますが、基本的には、それが自由経済の原則です。

中には、製品やサービスの価値を見誤らせたり、騙そうとする輩もいます。食品偽装やリコール隠し、製品の検査データの改ざんといった不祥事も後を絶ちません。ただ、もしバレたら信用は失墜し、刑罰を受けるなど存続が困難になるため、真っ当な商売をしようという動機が働くはずです。

ただ、そうした自由経済の原則が働きにくい分野もあります。行政や公共サービスの分野です。住民の不満や抗議の声が広がれば、政治や司法などを通して是正されることもありますが、大きな手間や時間がかかり、なかなか是正されず、住民が不利益を被るような場合もままあります。

行政サービスの場合、他の選択肢が無いケースが少なくありません。行政に対して是正を求めようにも、少数の意見では聞き入れさせることが困難だったりします。不満や抗議の声が上がりにくいケースもありますし、多くの人の賛同を得るのはたいへんです。かと言って、税金を払わないわけにもいきません。

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さて、イギリスの非営利団体、“Cycling Embassy of Great Britain”は、サイクリング組織や自転車関連団体などとも連携し、誰もが自転車で安全・快適に移動できるよう、そして自転車の活用が進むよう、インフラなどの自転車環境の改善を目指しています。

この団体が始めたキャンペーンが、“Insert Loved One Here”です。身近な自転車インフラ、道路の構造などを写真に撮って、多く人と共有することで、広くその不備を訴えようとするものです。写真の中のポイントとなる箇所を、[ ] で囲むことで強調しているのが特徴です。

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問題のある場所は、[ ] で、いいと思う場所は、ハートマークで囲みます。専用のアプリを提供していて、これを使うと簡単に強調した写真が出来ます。画像を作成したら、ハッシュタグ、“#ILOH”を使ってSNSで共有したり、同団体のサイトのギャラリーに投稿することが出来ます。

この[ ] の意味こそ、キャンペーンの“Insert Loved One Here”です。すなわち、「愛する人をここに差し込んでみて。」というわけです。もし、この場所に自分の愛する人がいるところを想像したら、どう思う?と疑問を投げかけているわけです。

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自分の身近で問題だと思う場所を写真に撮ったり、自分の手元にある写真を加工し投稿して、広く世間一般にアピールすることを呼びかけています。問題と思う場所、危ない状況だけでなく、自転車インフラとして、ここはいいなと思う場所はハートマークです。

位置情報と共にキャンペーンのサイトに投稿すれば、地図上にもプロットされます。現在のところ、イギリス国内と北米、オーストラリアとニュージーランドの英語圏以外では、ヨーロッパのパリなどの何ヶ所かに限られていますが、日本からも2件投稿されています。

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例えば、形ばかりの狭すぎる自転車レーンに対して、そこに自分の愛する人や家族が通っているところを想像してみて、と問いかけます。いかにもお役所仕事で、そんものは危険で役に立たないだろうと、暗に批判し、自分の家族を走らせたくないようなレーンを作るなと言いたいわけです。

酷い場所をクローズアップしてアピールしているわけですが、直接酷いとは言わず、「愛する人をここに差し込んでみて」と言うフレーズ、スローガンにしているところが優れています。人々の共感を呼んだり、このようなインフラを提供している行政や政治家の中で、心ある人には響くかも知れません。

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なかなかスマートなスタイルです。問題だと思う場所や、違法駐車などの行為を写真を投稿することでアピールしようというサイト、キャンペーンは他にも存在しますが、“Insert Loved One Here”として考えさせるのがポイントでしょう。同時に評価する投稿が出来るのも公平と言えます。

この、「自分の愛する人だったら?」という考え方は、インフラ整備に限らないでしょう。自分がクルマのドライバーだった場合に、サイクリストや歩行者など交通弱者に対して、もしそれが自分の愛する人だったら?と思えば、配慮することが出来るはずです。

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それが事故を防ぐことになり、自分が加害者になる事態を回避することにもなります。交通上の配慮に限らず、自分の家族や友人、顔見知りの人に対しては優しく出来るのに、見知らぬ人、自分と関係のない人に対して出来ないことは、往々にしてあるのではないでしょうか。

汝の隣人を愛せ、ではありませんが、誰に対しても配慮をしたり、相手のためを考えること、相手にとって喜ばれる仕事をすることは、自分も気持ちいいことです。「情けは人の為ならず」と言われるように、結局は良い報いとなって自分に戻ってくることだってあるでしょう。

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博愛とか奉仕とか、理想論を言うつもりはありません。しかし、誰もが知っているはずなのに、相手の立場になって考える、人に親切にする、自分がしてほしいことをするといった簡単なことを、ついつい忘れがちです。仕事をする上でも、この“Insert Loved One Here”を思い出したいものです。




マススタートとカーリングも良かったですね。平昌はメダルが長野五輪を超えて史上最多とマスコミは報じてます。ただ、それを言うなら、競技数が大きく増加している為、むしろ割合としては減っている事実も指摘すべきでは?

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