March 19, 2018

次世代のタイヤが減らすもの

タイヤにパンクはつきものです。


適切に空気圧を管理していれば、そうそう起こることではないにせよ、チューブに空気を注入するタイヤは、その構造からパンクする可能性があります。自転車でも、パンクして修理やチューブの交換などを余儀なくされたり、それに備えて道具や補修部品を携行せざるを得なかったりします。

エアフリーコンセプトそんな、タイヤにつきもののパンクから逃れられるかもしれないというニュースについては、1年ほど前に記事にしました。ブリヂストンとブリヂストンサイクルが、空気を入れる必要がなく、パンクの心配がない次世代の自転車用タイヤを開発したという発表です。

特殊形状スポークで荷重を支えることで、タイヤへの空気充填が不要になる技術「エアフリーコンセプト」を採用したタイヤです。クルマの前に、まず自転車用として製品化し、2019年の実用化を目指すとアナウンスされていました。空気を入れないタイヤという、これまでの常識を覆すものです。

機能や耐久性といった性能面でなく、タイヤの構造からの変革です。当然のことながら、他のメーカーも研究しているのだろうと思っていましたが、日本のブリヂストン、フランスのミシュランと並ぶ世界の3大タイヤメーカーの一つ、アメリカのグッドイヤーから新しいタイヤが発表されました。

OxygeneOxygene

その名も“Oxygene”、まだコンセプトタイヤの段階ですが、その発想は斬新、空気を浄化させるというものです。今月のスイス・ジュネーブ国際モーターショーにおいて発表されました。これはまた、これまでの常識を打ち破るような革新的なタイヤと言えるでしょう。

従来のように空気で膨らませたものではなく、リサイクルしたタイヤのゴムをパウダー状にして、3Dプリンターで形成します。このため、非常に軽量で、パンクする心配もありません。ゴムはゴムですが、新しい製造方法で成型することで、空気圧を使わずにクッション性を実現するわけです。

Oxygene

でも、それだけではありません。このタイヤの革新性は、タイヤのサイドウォール内に、苔を生息させるというところです。タイヤの構造とトレッドデザインによって、路面から水滴や水分を吸収し、苔を維持します。そして、その苔が光合成を行って、二酸化炭素を吸収し、酸素を排出するというのです。

温暖化ガスの排出を減らすため、各方面で技術革新が行われていますが、このタイヤはリサイクル素材の利用で排出量を減らすだけでなく、積極的に空気中の温暖化ガスを吸収し、文字通り減らしていこうというものです。このタイヤが普及すれば普及するほど、温暖化ガスが本当の意味で減っていくことになります。

OxygeneOxygene

例えば、250万台程度のクルマが保有されているフランスのパリと同程度の規模の都市であれば、年間4千トン以上の二酸化炭素を吸収し、3千トン程度の酸素を生成することなる計算です。苔も光合成をする植物ですし、新しい形の都市の緑化とも言えるでしょう。

さらに、光合成で発生するエネルギーを取り込み、タイヤに組み込まれたセンサーやAIによる処理装置、タイヤのサイドウォールに取り付けられたストリップライトなどの電子部品に電力を供給すると言います。もちろん大きな電力ではないでしょうが、こうした半導体部品を稼働させるには十分のようです。

OxygeneOxygene

苔が発電装置にもなるわけですが、さらに有線や電波でなく、可視光による通信システム(LiFi)を使って、光速で大容量のモバイル接続を実現します。つまり、タイヤそのものをインターネットに接続するIoTです。車両とインフラの間でのデータ交換などの通信が可能になります。

タイヤの側面のストリップライトをカーブや車線変更時などに自動的に光らせることも出来ます。これによって、周囲の交通や歩行者などに注意喚起することが可能になります。これまでのタイヤのイメージとはかけ離れた未来のハイテクタイヤと言えるでしょう。

君が代ではないですが、苔が生えるのには相当の時間がかかるという先入観で、普通は利用しようとは考えないと思いますが、苔をタイヤに生やすという発想は斬新です。もし、このような技術が確立され、コスト的にも運用可能になれば、いろいろなものに応用することも考えられるのではないでしょうか。



クルマだけでなく、自転車やオートバイから新交通システムまで、タイヤを使うさまざまな乗り物にも使えるでしょう。自転車のタイヤは、クルマと比べて幅は狭いですが、直径は必ずしも小さくありません。もし自転車用のサイズでも製造可能ならば、苔の面積的には遜色ないかも知れません。

軽量でパンクしないというだけでも、大いにメリットがあります。特に欧米では、環境負荷に対する意識の高い人ほど自転車を使う傾向があるので、温暖化ガスの文字通りの削減に貢献するというのであれば、使いたいというサイクリストは多いに違いありません。

タイヤだけに留まらないかも知れません。例えば建物の壁材とか屋根材に出来れば、取り付ける場所は広がります。今でも、建物の側面にヘチマやゴーヤのような植物で覆って緑化することがありますが、手間もかかります。苔が入って軽量な外装材なら、都市の緑化が進む可能性もあるでしょう。

OxygeneOxygene

都市のヒートアイランド現象の緩和にも貢献するに違いありません。暑い夏の日でも、苔むした古寺などに行ったような涼しさが感じられるようになるとしたら嬉しい効果でしょう。しかも材料の中にセンサーやAI、ライトなどが組み込まれるならば、維持の手間も少なく、他の用途にも使えそうです。

まだコンセプト段階であり、どう実現して、どの程度応用され、普及するかはわかりません。あまり妄想を広げてぬか喜びするわけにはいきません(笑)。でも、もし実現したら社会的にもインパクトがあります。未来のタイヤは、パンクして乗り手を凹ませるどころか、人類の希望を膨らませるものになるかも知れません。




安倍内閣の支持率急落、イベントに出てニコニコしている昭恵夫人のノー天気さも大いに貢献ている気がします。

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