March 22, 2018

事前に考えておくべきリスク

人生にはいろいろなリスクがあります。


死亡するリスクということで言えば、例えば病気があります。病気になるリスクを減らすために定期的に健康診断を受けたり、予防のために運動をしたりするでしょう。交通事故で死亡する可能性もあります。なるべく安全を確保しようと、いろいろ気をつけているかも知れません。

死因はいろいろあるわけですが、交通事故死より何倍も数が多い死因が自殺です。ここのところ減少傾向にあるものの、2015年には2万4千人以上の人が自殺で亡くなっています。同じ年の交通事故死者数は4千1百人あまりですから、6倍以上ということになります。

にもかかわらず、病気や交通事故の心配はしても、自分が自殺するリスクについて考える人は少ないでしょう。自分は自殺などしないから、関係ないと思っている人は多いはずです。しかし、本当に関係ない、自分は大丈夫だと言い切れるでしょうか。

CYCLE AGAINST SUICIDECYCLE AGAINST SUICIDE

最近は、過労死なども取り沙汰されます。でも、それは他人事と思っている人も多いと思います。残業が急増し、過酷な勤務を強いられる可能性はあるとしても、本当に耐えられないとなれば、勤め先を辞めるなり、いろいろ方法があると考えるでしょう。

自殺するくらいなら、そんな会社なんて辞めればいいだけ、と考える人は多いはずです。しかし、なかなかそれが出来ないこともあるのだそうです。つまり、冷静に、客観的な判断が出来なくなってしまうのです。とにかくラクになりたいと自殺しか考えられなくなり、周りが見えなくなってしまうと言います。

私はそのような状況に陥ったことがないのでわかりません。しかし、これだけ多くの人が自殺で亡くなっているのは紛れもない事実です。もし、そのような状況になった時、冷静に判断が出来ると言い切れるでしょうか。そう思っている人でも出来ない状況になってしまい、自殺してしまうのではないでしょうか。

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過労以外でも、うつ病の状態となり、冷静に判断できなくなる可能性は十分にあるでしょう。うつ病になったことがないので確かなことは言えませんが、いま自殺なんて考えたことも無いと言う人でも、いや、考えたことも無い人だからこそ、そのような状況に追い込まれた時、危険があるのかも知れません。

2万4千人と書きましたが、これは正しい数ではないと指摘する人もいます。遺書がないと自殺とされず、統計上は変死として処理されるからです。突然死にたくなる人、発作的に実行する人もあるでしょうから、実はこの何十倍も多いのではないかと言う人もいます。日本が有数の自殺率の高い国であるのは間違いありません。

自殺対策は喫緊の課題であり、海外でも自殺者を減らそうと活動する組織があります。アイルランドには、自殺する人を減らすために、自転車で活動をする人たちがいます。“Cycle Against Suicide”という慈善団体です。自殺を防ぐために、メンタル面を重視し、そのサポートや治療の意識を高めるために全国規模で活動しています。

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元になる原因はいろいろあるでしょう。しかし、その悩みによって絶望してしまい、周囲が見えなくなってしまうのを防ぎたいと考えています。悩んでいる人に、「もうダメだと思ったとしても、本当は全然大丈夫なんだよ。」 ということを訴えています。

そして、「そういう時には誰かに助けを求めてもいいんだよ。絶対に助けを求めるべきなんだ。」 と呼びかけています。自分だけで思い詰めている人は多いはずですから、このような呼びかけで気づけたり、気がラクになる人がいれば、それは自殺の防止につながるに違いありません。

実際には、家族ですら防げないケースも多いわけですから、簡単なことではないでしょう。ですから、周囲の人にも、もっと自殺予防について知ってもらおう、考えてもらおうと言うわけです。まだ自殺したいと考えたことのない人に呼びかけることにも意味があるでしょう。

CYCLE AGAINST SUICIDE

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アイルランド全土の学校や企業、地域社会など、あらゆる組織にも考えてもらうきっかけにしようとしています。この活動に、2013年から、のべ1万5千人以上の人が参加しています。みんなで自転車に乗って全国を巡り、イベントなどを通してアピールしています。

広く参加を呼びかけ、趣旨を広めることで、アイルランドの自殺のサイクルを壊したいと考えています。悩んだ経験がある人、さまざまな経歴や過去を持っている人、人々に訴えるための何かの能力を持っている人にも参加を呼びかけ、今まさに悩んでいる人には、具体的な相談の窓口となる各種団体も紹介しています。

特に学生や若い世代に考えてもらう意義は大きいと思います。今は自殺なんて考えたことがなくても、将来、何かのきっかけで深く悩む可能性はあります。その時に、「もうダメだと思ったとしても、全然大丈夫なんだよ。」 ということを思い出してもらえれば違ってくるかも知れません。

CYCLE AGAINST SUICIDECYCLE AGAINST SUICIDE

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各地でイベントを行い、学生などを集めてイベントをします。趣旨に賛同して参加する人、楽しそうだと参加する人もあるでしょう。なかには友だちに誘われて参加した人で、悩んでいる人もあるかも知れません。自殺の問題を真剣に考えるようになって、クラスでのいじめがなくなるかも知れません。

「あなたが何をすべきか、あなた自身で処理しようとしないことが重要です。家族や友人は手を差し伸べてください。どこで助けやサポートが提供されているか覚えておいてください。あなたは一人ではありません。助けを求めていいのです。助けは絶対に求めるべきなのです。」 ということを多くの人に知ってもらいたいのです。



とても意義のある活動です。自転車に乗って、さまざまな活動をする組織は世界中に数多くありますが、自殺に特化した組織、活動というのは少ないと思います。自殺による不幸は、死者の数だけでなく、その家族や友人などその何倍にも及ぶことを考えても、決して他人事と考えるべきではないでしょう。

自殺は本人の選択、勝手と考える人もあるでしょうが、その影響は小さくありません。残された人の心に傷を残すだけでなく、社会にとっても人的損失、経済的にも大きな損失です。例えば日本の場合、OECDは、うつ病関連の自殺により25億ドル以上の経済的損失を招いていると推定しています。



ところで、ここからは私の個人的な見解ですが、実は、自転車そのものも自殺のリスク軽減に貢献しているのではないかと思います。単にママチャリを近所への足として乗っているだけの人には、なかなか理解してもらえませんが、自転車に乗るのが純粋に楽しいということは、趣味のサイクリストにはわかってもらえると思います。

イヤなことがあっても、自転車に乗っている間は忘れていたことに後から気づいた経験はないでしょうか。モヤモヤしていても、自転車で走ったら気分転換になって、サッパリしたことはありませんか。自転車に乗っている間は、無心になっていたりしないでしょうか。

自転車に乗るのが純粋に楽しいということについては、あの第35代アメリカ合衆国大統領、ジョン.F.ケネディも感じていたようです。彼は、“Nothing compares to the simple pleasure of a bike ride.”「自転車に乗る純粋な喜びに匹敵するようなものはない。」という言葉を残しています。

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シャーロックホームズ・シリーズの作者として有名な、イギリスの作家、医師でもあるアーサー・コナン・ドイルは、「気分が落ち込んでいるとき、暗く感じる日、仕事が単調に感じるとき、希望が持てないとき、ほかの事は何も考えずに自転車で出かけなさい。」と勧めています。

原文は、“When the spirits are low, when the day appears dark, when work becomes monotonous, when hope hardly seems worth having, just mount a bicycle and go out for a spin down the road, without thought on anything but the ride you are taking.” です。

アメリカの作家で、法医学者でもある、ジェームス.E.スターズは、“Melancholy is incompatible with bicycling.”と言っています。「憂鬱とサイクリングは相いれない。」というのです。憂鬱なまま自転車には乗れない、乗れば憂鬱も晴れてしまうということでしょう。

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もちろん、自転車に乗れば全て解決する、自殺率が減るなんてことを言うつもりはありません。ただ、自転車に乗ることは、身体の健康だけでなく、精神衛生的にも貢献しているような気がします。この意見に賛同してくださるサイクリストの方もあるのではないでしょうか。

日本は先進国でも最悪、世界有数の自殺率の高い国と言われています。冒頭で述べたように、統計の取り方の問題で、本当はもっと多いかもしれません。そして、日本だけの傾向ではありませんが、若い世代のほうが相対的に自殺率が高くなっています。また、全体が減っている一方で、若年層の自殺率は上がっています。

いろいろ理由はあると思いますが、人生経験が少ないぶん、自分を客観的に見られなかったり、判断力を失ってしまうことも多いのでしょう。もうダメだと思ってしまっても、実は全然大丈夫なんだということに気づかない、気づけないことが多いのかも知れません。だとすれば、防げる可能性もあるはずです。

ふだん、身体の健康は気にしても、メンタル面が悪化する可能性について考えていない人は多いと思います。うつ病になったり、精神状態の悪化によって、本当は死ぬ必要がないのに、死ぬしかないと思ってしまう可能性は誰にでもあるのではないでしょうか。少なくとも、そうしたリスクについて考えておくべきだと思います。




大坂なおみ選手の快進撃が続いています。自ら史上最悪とした優勝スピーチでも愛すべき性格がわかりますね。

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この記事へのコメント
たしか英国グラスゴー大学の大規模医学研究調査により、あらゆる移動手段のなかで、自転車利用者がもっとも長生きであるという事実が明らかになった、という記事を見た記憶があります。
非アクティブ=運動にならない通勤手段(自動車、バス、鉄道)より長生きなのはもちろん、徒歩の者よりも自転車通勤者ならびによく自転車を利用する層は長生きなのだ、ということ。
また、自転車は鬱の症状を緩和させるという記事も「自転車 鬱 効果」で検索すると山ほど出てきます。
また、自転車はジョギング、マラソンよりもヒザにやさしく、ヒザは消耗品といわれているなか、個人的に自転車は現代人にもっとも適した健康増進ツールであると思います。

また
健康のためには「自転車」というこれだけの理由
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20171205-00078904/
の記事にもあるように、股間への影響も最近の研究では否定されており、自転車は驚異的な幾多の健康増進効果があるという事実はフランスやオランダの研究でも示されているほどでもあります。
Posted by 佐藤 at March 23, 2018 05:59
自転車はツールドフランス等のトッププロから一般自転車利用者にまで良い影響
http://longride.info/general/2694/

>”仏パリ心臓血管研究所(Paris Cardiovascular Centre)のエロワ・マリヨン(Eloi Marijon)氏率いる研究チームが、
>自転車ロードレースの最高峰ツール・ド・フランス(Tour de France)のフランス人参加選手を対象に行った調査によると、
>男性のプロ自転車競技選手は、同世代の一般人と比較して、平均で何と6.3年も長生きする可能性が高いという。

自転車で寿命が延びる――オランダ・ユトレヒト大学で研究 - BBCニュース
http://www.bbc.com/japanese/video-34524760

また、これは安全靴メーカー公式サイトの記載によりますが、駅や歩道など自宅以外での転倒・転落事故が増えており、厚生労働省の統計によると、同一平面上での転倒による死亡者数は5,301人(平成25年度)だそうです。
http://www.nisshinrubber.co.jp/hyperV/
わたしの記憶が確かならば、2017年度の交通統計に記されていいた数字としては、自動車運転手及び同乗者の年間死者数は約1300人で、歩行者もほぼ同数、そして自転車乗車中は約500人といったところだったように思います。そう考えると歩行者単独事故死の多さに驚かされます。
どんな移動手段の時も安全第一を心掛けたいものです。
Posted by 佐藤 at March 23, 2018 06:04
佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いろいろ参考記事を紹介していただきましたが、自転車がメンタル面も含めて身体にいいことは、私もその通りだと思います。
さらに、その自転車を使って、他者のメンタル面の健康、すなわち自殺予防に取り組む人たちも素晴らしいと思います。
Posted by cycleroad at March 24, 2018 22:30
 
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