April 18, 2018

市民にも行政にも役立つ目印

イギリスでも近年、自転車の活用が広がっています。


都市部での移動に自転車を使おうというのは、世界的な潮流です。環境負荷は小さく大気も汚染しませんし、車体価格や維持費も低くて経済的です。クルマの流入を制限するほどの渋滞に悩まされているロンドンのような都市では、クルマより速くて便利であり、運動不足解消により健康にも貢献します。

2005年にロンドンで地下鉄やバスが狙われた同時爆弾テロの影響で、人々が地下鉄やバスを敬遠したことも、自転車の活用が広がった一因と言われています。2012年のロンドン五輪では、市内の大渋滞や地下鉄などの大混雑を受けて、政府が市民に自転車を推奨したため、大きく利用が広がりました。

自転車好きとしても知られるボリス・ジョンソン氏がロンドン市長となり、自転車政策を強力に進めたことも拍車をかけたのは間違いないでしょう。通称ボリス・バイクと呼ばれるシェア自転車を導入し、市内の自転車インフラや郊外と結ぶサイクリングロードなどの整備を進めました。

自転車利用の拡大を受けてインフラ整備が進み、それによってまた自転車を活用する市民が増えるという形で、イギリスでも大きく自転車の活用が進みました。ただ、英国在住のサイクリストから見ると、まだまだインフラの整備は充分でないというのが実感のようです。

FlareFlare

イギリスのロンドンの真南の海岸沿いに、ブライトンという都市がありますが、その郊外に位置するサセックス大学の学生、Jake Thompson さんもその一人です。彼は、例えば自転車先進都市として知られるコペンハーゲンなどと比べると、インフラの質が劣っていると感じていました。

自国の都市において、もっとインフラを充実させたいと考えた時、とるべき方法はいろいろ考えられるでしょう。自治体の首長に請願したり、市民運動を展開したり、自転車政策に理解のある議員を応援して当選させる手も考えられます。自分が政治家なり、官僚を目指す方法もあるかも知れません。

しかし、プロダクトデザインを専攻する学生である、Jake Thompson さんは、そうした手法ではなく、自転車グッズによってインフラ整備を促進出来ないかと考えました。たどり着いた答えが、“Flare”です。基本的には、ハンドルにマウントするタイプの自転車用のライト、見た目はよくある前照灯です。

FlareFlare

しかし、ただのライトではありません。ボタンが4つ並んでおり、走行中に押して使います。1つ目はスイッチです。ライトのタイプの切り替えにも使います。2つ目は路面の状況が悪い場所、道路に穴が開いている場所などに気づいた場合、その場で押します。

3つ目は、走行中に危険だなと思った場所で押します。車道上でクルマとの距離が近かったり、何らかの危険を感じるような場所で押します。4つ目のボタンは、自転車インフラ的に不備がある、あるいは危ないと感じる交差点で押すようになっています。

“Flare”は、各ボタンが押されると、携行するスマホにブルートゥースで信号を送信します。そしてスマホの専用アプリから、ウェブにデータが送られる仕組みです。ウェブ上の地図に、それぞれの地点がプロットされます。必要であれば、スマホや家のパソコンからアクセスして、補足する写真やコメントを添えることも出来ます。

FlareFlare

つまり、この“Flare”はGPSと連動して、サイクリストが道路に印をつけるためのアイテムなのです。道路の、ちょうど自転車が通る場所に穴が開いていて、危ないなと思っても、家に帰ってからでは、そのこと自体思い出さないことが多いでしょう。“Flare”なら、その場でボタンを押すことで目印を付けられます。

これにより、危険なスポットをハイライトした地図が作成できるわけです。この“Flare”を多くのサイクリストに使ってもらうことで、広域に、かつサンプル数が多くて信頼度の高いデータベースが出来るわけです。出来上がった地図データベースは、いろいろな面で役に立ちます。

自治体は、道路の修復や自転車インフラの改良を行うべき場所を、労せずして知ることが出来ます。これを業者に依頼して調査をするとなると、莫大なコストがかかります。行政コストの大幅な節約になるでしょう。まず市民が切実に感じている場所、多くの人が問題だと感じている場所から優先して修復することが出来ます。

FlareFlare

このようなマップがあって、市民が不満に感じている箇所が多くポイントされていれば、自治体の担当者に対する圧力になるかも知れません。いつまでも放置しておけば、市民の不満が高まる恐れがあります。担当者に、早急に対策しなければと感じさせる、プレッシャーとして作用することが期待されます。

もちろん、サイクリストたちにとっては、危険個所のデータベースとして参考になるでしょう。走行する時に注意してアクシデントを回避したり、走行プランを考える時、あまりにも不満が多いポイントは迂回したルートを選ぶなど、安全な走行に役立つに違いありません。

必ずしもライトである必要はありません。ただ、ライトは誰もが使いますし、携行が義務付けられている必需品です。ハンドルに取り付けるタイプなので手元に近く、ボタンを押すのに向いています。さらに、バッテリーが搭載されているので、電源が確保出来ます。ライトに機能を搭載するのが最適というわけです。

FlareFlare

なかなか優れたアイディアです。技術的には、それほど高度ではありません。“Flare”自体は単にブルートゥース経由でスマホに信号を送るだけです。スマホの専用アプリは、スマホに搭載されているGPS機能を利用して位置を特定し、ウェブサーバーにデータをアップロードするだけです。

でも、多くの人が使い、データベースとして上手く機能するならば、社会的にも大きな役割を果たす可能性があります。もちろん、インフラの改善につなげるためには、自治体の対応が必要ですが、今どきはSNSなどもありますし、自治体も市民の声を無視しづらい状況があります。

市民の道路インフラへの要望を集約する起点としての役割が期待出来るかも知れません。当然ながら、インフラの改修は大きな予算が必要な場合もあり、必ずしも簡単ではないでしょう。しかし、道路の補修などは、いずれにせよ必要なわけで、早急に補修すべき場所のデータがタダで手に入るのは自治体にもメリットでしょう。

FlareFlare

昨今は、イギリスでも自転車インフラの整備に意欲的な自治体は少なくありません。今どきの若者のクルマ離れで、クルマで郊外から通うより、自転車で通いやすい環境の都市が好まれる傾向があると言われています。通勤時間帯の渋滞を考えてもリーズナブルです。

クルマより、パソコンやモバイル機器、ネットやSNSに興味のある若い世代は、IT技術者を必要とする企業にとっては欲しい人材です。今どきはIT企業でなくても、ITに強い人材は欲しいでしょう。必然的に、そうした若者が集まる街、好む街に拠点を設ける傾向があります。

企業が進出すれば、雇用が増え、人口が増えます。税収増も期待できるわけで、企業を誘致したい自治体としては、その面からも自転車インフラに力を入れるわけです。もちろん市民サービスの向上にもなります。自転車インフラ整備の効果や重要性が意識され、自治体が力を入れる傾向があるのです。



そのような背景を考えれば、“Flare”のような機器によって生成される地図データベースはインフラ整備に取り組む自治体に貴重な情報となる可能性があります。どこをどう変えればいいか目に見えるようになり、具体的な自転車インフラの充実を促すことも十分に考えられます。

この“Flare”、Jake Thompson さんによってまだ開発中です。現在、アプリやウェブの運用などをテストしている段階ですが、完成させて、市場に出したいと考えています。願わくば、イギリスに限らず、日本でも是非普及して効果を発揮してほしいアイテムです。

サイクリストにとって行政は、これまでインフラの不備の不満の矛先でした。しかし、このようなツールを使ってデータを蓄積すれば、むしろ利害が一致する関係になる可能性があります。従来のように改善を請願したり、デモをするより、よっぽどスマートな解決方法が手に入ることになるかも知れません。




松山刑務所から受刑者が逃走して10日も経ちます。こういう時こそ警察犬が活躍しそうですがどうなのでしょう。

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