May 24, 2018

自転車の常識を変える製造法

自転車が変わるかも知れません。


近年は、GPSなどを含めたIT技術や、LED、充電池などによって、パーツやアクセサリーも進化していますが、自転車のフレーム形状や流通の方法を変える可能性のある技術は、3Dプリンターです。アメリカ企業が、世界初の3Dプリンター製の自転車を開発したとニュースになっています。


CIAのVCが支援:世界初の3Dプリンタ製自転車、米企業が開発

米中央情報局(CIA)のベンチャーキャピタル部門が支援する米ベンチャー企業アレボが、3Dプリンターを使ったカーボンファイバー製フレームの自転車を製造している。同社によると、こうした自転車は世界初で、この技術を応用して航空機や宇宙船の部品作りにも乗り出したい考えだ。

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アレボは17日、旭硝子<5201.T>や住友商事<8053.T>の米州法人から合計1250万ドルを調達。以前にもCIAを後ろ盾とするベンチャーキャピタル、イン─Q─テルなどから資金を調達している。

カーボンファイバーは強度と軽さが魅力だが、部品製造に多くの人手を要し、コストが掛かり過ぎるとして設計者から敬遠されてきた。アレボの技術はほとんど人手を使わず、コストの高いシリコンバレーでさえ300ドルでカーボンファイバー製の自転車フレームを製造することができる。

アレボを率いるジム・ミラー氏は、コストがアジア並みに抑えられているため、生産拠点を海外から米国内に戻せると説明。「航空機の機体から翼まで、望みに応じていくらでも大きな物をプリントできる」と述べた。ミラー氏はグーグルでデータセンターの増築に携わったり、アマゾン・ドット・コムで梱包の迅速化に貢献した経歴を持つ。[17日 ロイター]


3Dプリンターの技術自体は、1980年代に開発され実用化されました。当時は高価であり、クルマメーカーの試作など、一部の特殊な用途に使われていました。それが一躍脚光を浴びたのが数年前、主要な技術の特許が切れたことで、コストが安くなったためでした。

家庭用の3Dプリンターまで登場して話題になりました。ただ、家庭用のものはオモチャに近く、本格的な普及には至りませんでした。大きな期待が寄せられたものの、まだ製造に時間がかかること、精度の高いものは、価格も高いこともあり、ブームは沈静化しだ感がありました。

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しかし、最近は技術開発が進み、製造に必要な時間やコスト面でも大幅に改善されているようです。3Dプリンターで使う素材も特殊なものではなく、金属粉末を使った射出成型に使われる一般的な材料でも製作が可能となるなど、より現実的な製品づくりが視野に入ってきているようです。

このニュースにある、アメリカのベンチャー企業、アレボ社が製作した世界初の3Dプリンター製自転車、画像で見る限り、完成度は高く見えます。すぐに普及するわけではないでしょうが、3Dプリンターが広く使われるようになれば、自転車の買い方や、自転車そのものも大きく変わる可能性がありそうです。

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今回の自転車は、いわゆるダイヤモンドフレームではありません。フレーム製作の自由度が大きくなるのは間違いないでしょう。これまでも、カーボンファイバー製など、一体成型で作られたフレームの場合、既に非ダイヤモンドフレームのものもありました。

ただ、記事にあるように、コストが高いため、一部の上級モデルに使われるのが一般的だったと言えるでしょう。3Dプリンターによってコストが下がれば、もっと非ダイヤモンドフレームが一般的になる可能性があります。さらに、単にフレーム製作の自由度が増すだけではありません。

フレームビルダーが手作りするような、一部のものを除き、自転車も工業製品ですから大量生産されます。どうしてもモデル数は限られます。すなわち、少品種大量生産にならざるを得ません。それが、3Dプリンターになれば、1台1台オーダーで全く違うものを製造販売することだって可能です。

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設計図を書いて、自分の好きな形の自転車を注文することだって出来るでしょう。今は、製造上の制約から、どうしてもオーソドックスなフレームにならざるを得ませんが、自転車のスタイルも大きく変わる可能性があります。既にダイヤモンドフレームにこだわる必要はありませんが、さらに大胆な形状が登場するかも知れません。

風の抵抗や重量、コストなどを度外視すれば、リーズナブルな形である必要はなくなります。ユニークさ、かわいさ、面白さなど、新しい発想でデザインすることも出来るようになるでしょう。1台1台製造するわけですから、文字通り、自分だけの1台を製作することも可能です。

例えば、ユニークで2つとないフレームにするならば、盗難されにくくなるかも知れません。走っていたらすぐ見つけられたり、ネットで転売しようにもバレる可能性が高まります。もちろん、依然として従来型の自転車は残るでしょうが、バラエティーに富んだ自転車が街を走り回るようになるかも知れません。

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当然ながら、フレームサイズを自分の身体にぴったりフィットさせることが可能になります。これまでのように決まった数通りのサイズから選ぶ必要はありません。それどころか、サイズはフィットさせた上で、背の高い自転車とか、低い自転車、極端に大きい自転車など、自由自在になるでしょう。

自分の商売に合ったカーゴバイクなども製造が容易になります。アイディア次第で、例えば、前後で連結できる自転車とか、2台別々の自転車が並列に合体して4輪になるとか、2階建ての自転車とか、今までになかった自転車、ナンセンスな自転車だって製造できることになります。

3D Printed Airless Bicycle Tire

この会社とは別ですが、世界初の3Dプリンター製のエアレス自転車タイヤも開発されています。チューブが不要で、パンクの心配がなくなるのが大きなメリットです。これが普及するのかはわかりませんが、タイヤも自由に製造できるということになれば、さらに自由度は上がるでしょう。

基本的に自転車を工場で作る必要はなくなります。さすがに家庭にまでは普及しないとしても、販売店に3Dプリンターが配置されるようになる可能性もあります。店頭で注文し、出来上がるまで待つ販売スタイルになるかも知れません。人件費の安い国で製造して、輸入する必要はなくなるわけです。



製造方法の制約がなくなったことで、どこかでブレークスルーが起き、今までとは違った形の自転車が主流となる可能性だってあるでしょう。今までリーズナブルだと考えられてきた、いわば自転車の常識が大きく変わっても不思議ではありません。

自転車の種類はいろいろありますが、基本的なスタイルは長らく変わっていません。成熟した商品であり、細かいデザインは別として、ある意味行きついた感があったと言っても過言ではないでしょう。それが大きく動き出す可能性が出て来たわけです。自転車にどんな変化を及ぼすのか楽しみです。




トランプ大統領は偉大な実績を残したいと功名を焦るあまり、金正恩委員長に足元を見られているような気も....。

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この記事へのコメント
普及を阻害するのはUCIでしょうね
ロードバイクのいわゆる高級品はUCIルールに則ったものになりますから
ダイヤモンド型フレームしかルールで許されてないですからね
高級品はUCIのルールに沿ったもの普及品は中国製の安いもの
この2種類以外はほとんど売れない状況だと思います
Posted by あるふぁ at May 25, 2018 13:46
あるふぁさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
それは当然あるでしょうね。しかし、UCIがフレームを規定する理由は、特殊なフレームを認めてしまうと、開発競争が過熱し、小さな工房が大手メーカーに太刀打ちできなくなって、つぶれてしまうことを挙げています。
結果として大手メーカーの寡占化が進み、市場の健全な発展を阻害し、ユーザーにも不利益になるということでしょう。
でも、3Dプリンターがあれば、小さな工房でも自在に特殊なフレームが作れるようになります。UCIが言う前提が崩れる可能性があるわけです。
それに、競技用以外の趣味のバイクで画期的な進化があって、UCIも無視できなくなること、ダイヤモンドフレームにこだわることが、かえってリーズナブルでなくなる状況も充分考えられます。
その意味でも、3Dプリンターは、自転車の形や市場を変えていく可能性があると思います。
Posted by cycleroad at May 26, 2018 22:22
 
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