June 02, 2018

幸福感と自転車との相関関係

幸福はどこから来るのでしょうか。


哲学の話をしようというのではありません。人が幸福を感じる要因はいろいろあると思います。健康長寿、家庭円満、仕事や経済面、平和と安全、人間関係、未来への希望、緑あふれる環境、趣味への没頭、名誉や権力、快楽や欲望の充足、達成感、他人からの評価、人によって何に幸福を感じるかはそれぞれでしょう。

Yale University,This image is in the public domain.国連は毎年、世界幸福度報告を発表しています。いわゆる世界幸福度ランキングですが、最新のランクで日本は世界の54位です。G7の国の中では最下位、OECD加盟35カ国の中でも27位と下位にランクされています。日本国民は、あまり幸福を感じていないようです。

国内総生産 (GDP) ではなく国民総幸福量(GNH)という概念を掲げたのはブータン王国ですが、経済的な側面だけで幸福になるとは限りません。よく言われるように、みんなが貧しければ不幸ではない、貧しさが苦にならないという面もあるでしょう。人との比較、格差が影響しているのかも知れません。

周囲の環境や、政治などの要因もあります。世界幸福度ランキングでは、1人当たり実質国内総生産(GDP)や社会的支援の有無、健康寿命、人生選択の自由度、寛容さに加えて、汚職も6つの質問項目の一つになっています。政治や行政に対する不満も影響するでしょう。

調べ方の問題もあります。これは幸福を感じる度合いを10点満点で何点かを答えてもらう方式です。つまり、個人の主観の問題です。これには文化や宗教も影響します。生まれたからには幸せであるべきという価値観から満点と即答する人の多い国もあれば、不幸も前向きにとらえ、向上を目指すことに価値を置く国もあります。

一般的に楽天的と言われるラテン系の国の人は高い数値を答えるでしょう。日本人は、「禍福は糾える縄の如し」、良いことも悪いこともあるということで、中間の点数を答える人が多いようです。上位ランクの国の人が日本に来たら、もっと幸せに感じるかも知れませんし、他の国の生活を知らないという面もあるでしょう。

PLOSそもそも、幸福度を数値化するのは難しく、それぞれの境遇しか知らないので比較するのも困難です。文化や価値観の違う国の人を比べるのは難しいものがあります。ただ、何が幸福感に貢献するのかを調べるのは無意味ではありません。同じ国内であれば、比較も可能なはずです。

イェール大学はアメリカ・コネチカット州にある世界最高峰の一つとされる名門大学です。5人の大統領、49人以上のノーベル賞受賞者も出しています。そのイェール大学の研究者グループが、住む場所と幸福に関する研究結果を、“Public Library of Science”、PLOSで発表しています。

この研究は、“county(郡)”と呼ばれる行政区分を単位として、住む地域によって、幸福と感じる度合いにどのような違いがあるか調べました。幸福度を調べるのに、やはりアンケートによる主観で測るしかないわけですが、33万人以上が参加する大規模な調査をすることで信頼性を上げる工夫をしています。

参加した人の性格や、その時の気分なども影響するかも知れません。しかし、大規模なサンプルを収集し、統計学的に処理すれば、有意な結果が期待出来ます。これによって何が人々の幸福感に影響するかを調べました。違う地域を比較することで、幸福の要因をあぶり出そうというわけです。

一人ひとり、宗教や人種も違えば、文化や価値観、考え方も違うでしょう。ただ、同じアメリカ国内での比較です。一人ひとりの属性はバラバラでも、統計学的な処理に加え、モデル解析、さまざまな多元的な分析を行うことで、アメリカ人の平均的な傾向がわかります。なかなか興味深い研究だと思います。

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それによると、地域による114の差異のうち、12の要因で違いの91%を説明できることがわかったそうです。その中には、当然予想されたもの、例えば、所得や教育レベル、離婚率、犯罪の発生率、医療へのアクセスといったものもありました。

その詳細について興味のある方は、リンク先の論文をご覧いただくとして、個人的に興味深いと感じたのは、地域の交通環境による違いです。通勤の環境、すなわち自転車通勤や公共交通機関による通勤率が、居住者の幸福を左右する12の要因の中に含まれていたことです。

通勤は、一般的には毎日同じことの繰り返しであり、最初はともかく、特にそれが特段の感情的な要因になるようには思えません。なかには通勤の仕方に直接満足感を覚えている人もあると思いますが、それだけで幸福感が増すわけではないでしょう。

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しかし、例えば通勤の仕方が健康に与える影響も無視することは出来ません。本人がそれを認知して、直接幸福を感じているかどうかは別として、クルマで通勤している人と、公共交通機関や自転車で通勤している人の数の地域による違いが、結果として幸福の度合いと相関関係があったというわけです。

ある人が、自転車での交通環境の悪い場所から、安全で快適な自転車インフラの整った場所へ転居すれば、そのことに幸福感を感じることがあるかも知れません。しかし、そういうことを言っているのではありません。自転車での通勤率の高い地区の人が、結果として幸福度が高いというデータなのです。

当然ながら、自転車に乗っているため、生活習慣病や心血管系の疾患が少ないという結果につながっているといったこともあるでしょう。その因果関係まではわかりませんが、自転車通勤率と、その地区で幸福を感じる人の数との間に明らかな相関関係があることがわかったわけです。

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通勤に自転車が利用でき、安全で高規格の自転車レーンが利用できる環境というのが、結果的に幸福に寄与しているという事実は評価されるべきだと、研究は指摘しています。クルマによる通勤は幸福度に全く結びついていません。これは、自転車についての調査・研究ではないことにも留意すべきでしょう。

自転車インフラ、自転車に乗る環境だけではありませんが、行政は政策の選択によって、住民の幸福度をアップさせることが出来ると研究者グループは結論づけています。政治や行政が、容易に実施できるような地域の整備によって、住民の幸福度を改善出来るという事実に注目すべきです。

なかなか興味深い研究です。当然ながら、これはアメリカについての調査・研究であり、これがそのまま日本にも当てはまるという根拠はありません。しかし、自転車環境などという思いも寄らないこと、小さなことが、案外、人々の幸福につながっているのかも知れません。




中止通告が一転、米朝首脳会談は予定通り開催のようです。トランプ大統領が前のめりなのが気になりますが。

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