June 11, 2018

伝達手段が不足している場所

コミュニケーションの形が変わってきています。


言うまでもなく、その背景には技術の進歩があります。近年のSNSの普及が、コミュニケーションのスタイルを変化させています。若年層を中心に、対面でのコミュニケーションより、SNSを介した方法が好まれる傾向があると言います。電話も敬遠され、メールやSNSが主流になっています。

SNS(Social Network Service)は、コミュニケーションに加え、ソーシャルメディアとしての側面を持ちます。友人や仲間との連絡、会話だけでなく、不特定多数の人とつながることも可能です。さらに、個人が社会に向けて情報発信するようなことも可能にしました。

これまでは、主にマスメディアによる情報を個人が受け取る一方向でしたが、今では、個人による情報発信が、あっという間に世界に広がることもあります。事件の現場に居合わせた個人がスマホなどで撮影した映像が、テレビのニュースで流れることも珍しくなくなりました。

個人が発信したローカルでプライベートな情報が、SNSで話題となり、拡散し、それをマスメディアが伝えて、さらに広がるようなケースも増えてきました。イギリス中部に住む、Tom Jones さんのツイッターに投稿した動画が、世界中に知られたのもその一つです。

Rhoda Jones

Tom Jones さんが、ノーサンバーランドへのサイクリング旅行から帰宅し、自転車に取り付けたカメラが記録した彼の娘、Rhoda Jones ちゃんの動画をアップしたところ、それを見た彼のツイッターのフォロワーがリツイートするなどして拡散し、24時間後には50万回以上再生されました。

話題となった動画は、さらに拡散し、マスメディアの耳にも入りました。イギリスのBBCニュース、タイム誌、デイリーメールといった大手メディアがニュースとして配信し、世界にも広く伝わることになりました。その動画というのが、以下のものです。



彼女は走行中、大型トレーラーのドライバーが、親切にも大きく幅をとって追い越しをしてくれたことに気づき、ドライバーに“thumbs-up”、親指を挙げて感謝の気持ちを示したのです。Rhoda ちゃんも嬉しかったのでしょう。彼女は4歳です。このかわいらしいポーズが多くの人の、「いいね」を呼んだわけです。

わずか4歳の女の子の仕草に加え、追い越したドライバーに対しても称賛の声が上がっています。見ると片側一車線の、決して広くない道路です。もっとギリギリを追い越されるケースも多いはずです。Tom Jones さんも感謝しています。ドライバーの配慮した追越しも、見た人に好感されたようです。

Rhoda Jones

ちなみに、この4歳の Rhoda Jones ちゃん、動画で見るとわかりませんが、単独で車道を走行しているわけではありません。お父さんの、Tom さんの自転車に直結されたトレーラーで、タンデムのようになっています。お父さんは、その牽引部分にカメラを取り付け、彼女の表情を撮ろうとしたのでしょう。

トレーラーのエンジン音で気づいたのでしょうか。Rhoda ちゃんが、追い越される前に振り返り、親指を挙げたので、おそらくトレーラーのドライバーからも見えたに違いありません。動画では見えませんが、ドライバーの顔にも笑みが広がったのではないでしょうか。




Jones さん一家は、家族揃ってサイクリストです。よく一緒に自転車で出掛けたりしているようです。このドライバーに向かって“thumbs-up”するポーズ、Rhoda ちゃんは、お父さんが他のクルマのドライバーに、感謝の合図などをしているのを日頃見ていて覚えたのかも知れません。

たしかに、このトレーラーのドライバーの配慮は見ていて気持ちいいものがあります。ツイッター上でも、酷い運転をするドライバーの動画は多いですが、ナイスなドライバーの動画を投稿する人は少ないのではないでしょうか。Rhoda ちゃんもかわいいですが、その点も話題になった要素かも知れません。

Family ByCycleFamily ByCycle

このドライバーにとっては、ごく普通の運転だったのでしょう。幅に余裕がないまま無理やり追越して、もし万一接触でもしようものなら、Jones さん親子を死傷させる可能性があります。刑事罰や損害賠償に加えて、職だって失うリスクがあります。用心して追い越すのは当たり前です。

ただ、なかには短慮な人がいるのも確かです。この動画が世界に拡散して、多くの人が目にしたと思います。自分の日頃の運転を、ちょっと反省した人もいたのではないでしょうか。個人のプライベートな動画が広く拡散することの影響は小さくないのかも知れません。

Rhoda JonesRhoda Jones

最近、日本では「あおり運転」が話題になります。発端となった東名高速で夫婦が命を落とした事件から1年が経ちました。今月1〜7日の全国の警察による一斉取り締まりの期間には、たった7日間で昨年1年間の摘発件数の2割近い、1088件のあおり運転が摘発されたそうです。

摘発されるほどの、あおり運転をする人が少なくないことに驚きます。東名の事件の犯人のような異常な人は別として、ごく普通の人の中にもいるということなのでしょう。ふだんは温和な人なのに、ハンドルを握ると性格が変わるといった話を聞くことがあります。突然キレて、危険な運転をするような人もいるのでしょう。

心理学的にみて、人間はクルマに乗って周囲を鉄のボディに囲まれると、何か強くなった気がして、攻撃的になってしまう性質があるという話を何かで読んだ記憶があります。おそらく、あおり運転が少なくないことの背景には、そのような要因もあるのでしょう。

Rhoda JonesRhoda Jones

個人的には、コミュニケーションの問題も要因ではないかと思います。つまり、クルマの運転中は他の交通と直接コミュニケーションする手段が限られてしまいます。せいぜい、クラクション、パッシング、ハザード、窓ごしの動作くらいです。そのことも関係するような気がします。

なぜなら、同じ人でも、道路を歩いている時には、それほどキレないでしょう。歩いていて、相手の進路を妨害したり、邪魔になったりしたと思えば、すぐ謝ります。そのことに気づかずに、相手に文句を言われれば、すぐに謝ることが可能です。文句を言ったほうも、普通はそれ以上、怒ることもないと思います。

つまり、クルマに乗っていると他の交通とのコミュニケーション不足のため、相手の意図がわからず、あるいは悪気のない行動を誤解したり、頭に来てしまうことがあるような気がします。後続車の憤慨に気づいて、ハザードランプを点灯させるなどすれば、相手の怒りも収まることがあるのは、それを示唆しています。



もしかしたら、このドライバーも、なかなか追い越せずに少しイライラしていたかも知れません。でも、女の子のサムズアップを見て、そんなイライラも吹っ飛んだでしょう。そう考えると、もっとコミュニケーションがあれば、お互い安全に、気持ちよく通行できるケースは多いのではないでしょうか。

私も自転車で走行中、クルマのドライバーに道を譲ってもらったり、待ってもらったりなど、好意を受けた時には手を上げたり、会釈をするなど、お礼の動作をします。相手の気持ちをありがたいと思いますし、合図を返せば、相手も悪い気はしないと思います。

Family ByCycleただ、必ずしも合図で、謝意や謝罪の意を示せるとは限りません。Rhoda ちゃんのケースだって、あらかじめ、気がついて振り返ったから合図が出来たわけです。追い越された後に合図をしても、おそらくドライバーは気がつかないでしょう。

追い越されてから気がついた場合でも、後から“Thank you!”と合図が送れたら素敵だと思います。ドライバーも気持ちがいいでしょう。クルマ同士でも、“Thank you!”、“Sorry!”や、相手の行為に抗議するといったコミュニケーションがとれれば、あおり運転や、結果としての事故やトラブルも減らせる気がします。

技術の進歩、SNSなどの普及で、コミュニケーションの手段が広がりました。不特定多数の人ともつながれたり、個人の情報発信が、世界的にも大きな反響を呼んだりするようになりました。しかし、道路上でのコミュニケーションは、まだまだ不足しています。そこを円滑にする、何かいい方法が出来てほしいものです。




毎年書いていますが、6月は祝日がありません。山の日、海の日に続いて、6月に、川の日を作ったらどうでしょう。川は、私たちに飲料水や農・工業用水などを供給してくれる大切な存在です。賛同される方は、ぜひ拡散を。

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