August 31, 2018

将来のスタイルは場所による

ウーバー・テクノロジーズという会社があります。


アメリカの会社で、“Uber”のブランドで配車アプリを世界的に展開しています。新聞やテレビのニュースにも最近は頻繁に登場しますから、ご存じの方は多いでしょう。モノやサービスなどを多くの人で共有する新しい経済の形、シェアリングエコノミーの代表的な会社として知られています。

同社のサービスは、ライドシェアです。スマホのアプリを通じて、自家用車の空いている座席をシェアしようというものです。一般の人が自家用車にお客を乗せることで、お客は安く移動でき、ドライバーはお小遣いを稼ぐことが出来る仕組みです。

これまではタクシーを使ってきたわけですが、世界的に見ると、タクシードライバーの質が必ずしも良いとは言えません。メーターを倒さずに法外な料金を請求したり、領収書も発行しないなど、いわゆる「ぼったくり」をするタクシードライバーが世界にはたくさんいます。

ウーバーアプリで、あらかじめ目的地と料金が明らかになり、アプリ上で決済すれば、ボッタクられなくて済みます。お互いを評価するシステムなため、ウーバーで稼ごうとする一般人のほうが、よほど親切でサービスがいいと評判な国も少なくありません。ライドシェア人気は世界に広がっています。

日本では白タクとなり、違法なので普及していませんが、世界では既に190ヶ国以上、3万4千以上の都市で利用出来ます。日本でも一部では、過疎地域でのバスなどの公共交通にかわる住民の移動手段としての利用が検討されており、実験が行われています。

このライドシェアが普及して、いつでもクルマが利用できるようになれば、必ずしも自家用車を所有する必要がなくなります。タクシー業界のみならず、クルマの売れ行きも左右し、産業的にも大きく変わる可能性が指摘されています。シェアリングエコノミーの進展に関心が高まっています。

最近のニュースでも、日本の大手メーカー・トヨタが、ウーバーに5億ドルを出資すると報じられています。これは、自動運転を見据えた投資のようですが、ライドシェア事業で提携し、同社の車両をリースする関係を強化するなど、すでにクルマが個人に所有されなくなる将来も視野に入れているようです。

ウーバーは世界最大のライドシェア企業の一つですが、競合する企業との競争も激しくなっています。タクシーの配車にも使われますが、一般人の車両が増えれば、タクシードライバーには死活問題となるため、デモが起きたり、当局が規制を強める動きも一部で出てきています。

最近は、技術の進歩で、空飛ぶクルマの構想も話題になっており、ウーバーも今後実証実験を行う方針を表明しています。過去には不祥事も起きるなど、ライドシェア大手のウーバーには何かと注目が集まっているわけですが、そのウーバーについて、個人的に気になるニュースが報じられています。


米ウーバー「自動車より自転車に注力へ」 CEO表明

ウーバー米配車サービス大手ウーバーのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は26日、利益減少の可能性があるとしても、自動車配車事業への注力を弱めて電動キックボードと自転車事業に重点を置く計画だと明かした。英経済紙フィナンシャル・タイムズのインタビューに答えた。

コスロシャヒCEOは、自転車やキックボードなど1人で移動できる乗り物の方が都市内の移動には適していると述べた。またコスロシャヒ氏は、利用者は将来的に、今までより短い距離の移動を今までよりを高い頻度でするようになるとも予測した。

「人1人を10ブロック運ぶのに1トンの巨大な金属の塊を使うのは、通勤時間帯には非常に非効率だ」と同氏はフィナンシャル・タイムズに語った。「短期的な財政面では、我々の利益にならないかもしれない。しかし長期の戦略的には、この方針転換こそが我々の進みたい方向だと考えている」

ウーバーは昨年、複数の自転車事業会社に出資している。同社の電動自転車「ジャンプ」は現在、ニューヨークやワシントンを含む米国8都市で利用可能になっており、ドイツのベルリンでも近くサービスを開始する。またウーバーは、電動キックボードのシェアリング事業を行う米ライムとも提携したほか、公共交通や貨物輸送といった他領域でも契約をまとめている。

ウーバー移動距離が同じ場合、自動車より自転車のほうがウーバーの売り上げは低くなると、コスロシャヒ氏は認めた。しかし、顧客が短距離移動でウーバーを今までより頻繁に使えば、穴埋めになるだろうとも述べた。

「我々は短期的な単位あたりの経済性を、長期的な利用頻度の向上によって、相殺しようとしている」と同氏はフィナンシャル・タイムズに語った。コスロシャヒ氏はさらに、この計画でウーバーの運転手が損をすることになる可能性を認めた。ただし、長期的にみれば、運転手は収益性の高い長距離移動で利益を得るだろうとも話した。

かかる圧力

昨年45億ドル(約5000億円)の損失を計上したウーバーは、予定される上場を前に、財政状況の改善圧力を受けている。タクシー事業の収益は拡大しているが、自転車シェアリングや食料品配達といった新分野への事業拡大にかかる費用で、損失も急増した。

規制圧力が成長の脅威となっている市場もある。ニューヨーク市は今月、混雑対策のため、配車サービス車両への新規許可証発行を一時的に制限する条例案を可決した。英ロンドン市長も同様の規制案を検討すると話している。(2018年08月27日 BBCニュース)


ライドシェアの会社のCEOが、クルマではなく自転車に注力するというのですから驚きます。ライドシェア事業は拡大しているものの、まだこれからの面もあって、投資もかさみ赤字です。普通だったら、本業のクルマのライドシェア事業に全力を傾けると表明する場面でしょう。

自転車シェアリングは、中国企業を中心に世界各地に展開され、急拡大しています。しかし、中国本土など、すでに過当競争になっているところもあって、採算が合わずに撤退する企業、初期投資が回収できずに倒産する会社も出てきています。競争は激しくなっています。

ウーバーもともと採算性のいい事業ではなく、人々の移動のデータを収集し、そのビッグデータを元にマーケティングなどに活かす構想が有望視されています。ただ、競争も激しい上に、各地で路上にシェア自転車があふれる事態となって、市民や自治体などの反発や規制の動きも広がっており、事業環境も先行き不透明です。

たしかに最近は、シェア自転車だけでなく、電動キックボードのシェアリングが急速に広がっています。場合によっては、クルマのライドシェアとの相乗効果が見込めるかも知れません。それらの企業との提携や買収はわかるとしても、クルマから自転車やキックボードにシフトしていくという表明なのです。

しかしながら、ウーバーのCEOの言っていることは、正鵠を得ていると思います。今は都市部でもライドシェアが使われていたとしても、いずれ利用者は、自転車やキックボードのほうが便利だと気づき、そちらへお客はシフトすると考えているのでしょう。

もちろん、クルマのほうがラクでいいという人もいるはずです。少しの距離でもクルマを選ぶ人もいるに違いありません。しかし、それが出来る場所ならいいですが、都市部で渋滞が慢性化している場所では、自転車などのほうが速くてよっぽど便利です。

ウーバー比較的、電車網が発達している日本と違い、アメリカなどでは、都市に向かう道路での通勤時の渋滞は酷い状況です。一人しか乗っていないクルマが渋滞で大量に並んでいる光景は、非効率きわまりなく、時間の無駄です。乗り合いを進め、そんな状況を緩和する点で、ライドシェアは歓迎されました。

しかし、都市部では自家用車だけでなく、タクシーやバス、物流車両なども合わせて中心部への交通が集中します。ライドシェアが進んで、多少乗車人数が増えたとしても、渋滞の解消は見込めません。1トンの巨大な金属の塊を使っている限り無理でしょう。

すでに、利用者は気づいています。都市部での移動にシェア自転車やキックボードが使われるのは、速くて便利だし、クリーンだし、リーズナブルだからです。都市部まで、クルマのライドシェアを普及させようという考えに無理があります。自転車のほうが便利な場所は自転車でというのは自然な流れでしょう。

このことは、クルマが自動運転になったとしても同じだと思います。AIがルートを選んでも、交通が集中すれば渋滞します。クルマの利用が非効率なのは変わりません。例え、クルマが空を飛ぶようになっても、交通が集中すれば、いずれ空も渋滞してしまうに違いありません。

空飛ぶクルマ世界で都市化が進むようになった産業革命以後、都市へ人が集まり続けてきました。今も都市の人口は増えています。今後も都市への人口の集中は進みます。都市部の道路の拡張に限界があり、そのキャパシティが限られる以上、将来的にも都市部が渋滞するであろうことは明らかです。

そもそも、都市化が進み、人口が集中する中で、都市部でクルマを使うことを前提とした道路整備をしてきたことが間違いだと思います。結果として案の定、渋滞で非効率な状態となっています。ようやく、それに気づいた都市は、中心部へのクルマの流入制限し、自転車を活用しようとしています。

つまり、ライドシェア云々の前から、人や交通が集中してしまう都市部で、自家用のクルマを使わせることに無理があるわけです。必要な物流車両やバス、タクシーなどを除いて自家用車は制限し、もっと自転車、キックボードを活用していくのが効率的だと思います。

都市部でのライドシェアが渋滞で非効率、現実的でないのであれば、最初からそれを目指さないほうが、いいに決まっています。ウーバーのCEOの言うことは理にかなっているわけです。誰が運転するか、所有するかシェアするかに関わらず、場所によって乗り物を使い分けるようなスタイルが必要でしょう。

「ウーバー」規制例えば、家電メーカーは、どんな用途でも家電を使わせようと考えます。人々が、わざわざ家電は必要ないだろうと考えるような用途にも新しい家電を開発します。結果、売れずに消えていくものもありますが、家電メーカーに家電を作るなというのは無理があります。

クルマメーカーが、クルマを使わせようとするのも当然です。しかし、ウーバーはクルマメーカーではありません。都市部でライドシェアが現実的でないのであれば、より現実的でリーズナブルな、自転車やキックボードのシェアに重心を移すのは、むしろ当然の判断と言えるでしょう。

自動運転やシェアリングエコノミーで、将来のクルマの形や利用のスタイルは変わっていくでしょう。競争も激しくなっています。しかし、自動運転だろうがシェアだろうが、そもそも都市部で、「1トンの巨大な金属の塊」を使う形に無理がないか、将来があるのか、を考えるべきではないでしょうか。




今年は猛暑だけでなく台風も多いですね。来週接近する台風21号は今年最強で風速80メートルとか。心配です。

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