October 15, 2018

初めて自転車に乗れた感動を

自転車が欲しくて仕方のない時期があります。


おそらく、多くの人は子供の頃、親に自転車を買ってくれと、ねだったことがあるのではないでしょうか。いかに欲しくて仕方なかったか、その当時の気持ちは忘れてしまっているかも知れませんが、念願の自転車を買ってもらって、大喜びしたことは覚えている人もあるでしょう。

イタリアに住む現在7歳のロレンツォ君も、自転車が欲しくて仕方がありませんでした。4歳の誕生日のプレゼントに自転車を頼んだ時から、ずっと欲しいと訴えてきました。しかし、彼の両親はその熱意を理解せず、自転車を買ってはくれませんでした。

両親が買わなかったのには理由があります。実はロレンツォ君には障害があり、自転車に乗れるとは思っていなかったからです。外は寒いからとか、また咳が出るからなどと言い聞かせ、まともに取り合いませんでした。両親にしてみれば、当然の対応だったのでしょう。

la bici di lorenzoしかし、ロレンツォ君があまりに根気強く頼むため、両親は彼が本当に乗りたがっていることを理解しました。そして、彼が乗れる自転車を探し始めました。ただ、なかなか条件を満たすようなものは見つからず、その間もロレンツォ君に頼まれ続ける日々が続いたのです。

ある時、候補が一つ見つかり、試してみましたが、断念せざるを得ませんでした。なぜなら、それは特注での生産となって、とても費用がかかることがわかったからです。そこで両親は、自転車メーカーや工房にあたるのではなく、彼についている理学療法士と相談し、“TOG”に話を持ち込むことにしました。

TOG”とは、TOGETHER GO TO 財団という2011年に設立され、障害者にさまざまな治療を提供する施設を運営する非営利の組織です。器具などを使う理学療法から、心理療法、音楽療法、各種のセラピーなど、さまざまなメニューを、主に神経系の障害を持つ小児に無料で提供しています。

神経疾患のある子どもと言っても、その原因は外傷性のものから遺伝的起源によるもの、妊娠中に発生した病気によるものなど、さまざまです。幼児脳性麻痺やダウン症など知られたものでも、その障害の程度や内容は一人ひとり違うため、さまざまな治療やリハビリテーションを提供しています。

その“TOG”では、イタリア・ミラノをベースに展開するラボ、“Opendot”などと協力してプロジェクトを進めています。その一つに“UNICO - The Other Design”というプロジェクトがあります。複雑な神経疾患に苦しむ子どものため、生活の質を向上させたり、自律性を高めることを目的としています。

この“UNICO”には、“Opendot”のデザイナー、“TOG”のセラピスト、障害のある子どもとその家族、製品メーカーなどが協力しています。一人ひとりの子供には、それぞれカスタマイズされた解決策を見つける必要がありますが、そのベースとなるような実用性のあるユニークな製品を生み出す、新しいプラットフォームです。

glifoglifo

glifoglifo

例えば、“glifo”という筆記用具があります。神経系の障害を持ち、そのままでは筆記具を持てない子供が、運動的な困難がありながらも文字や絵を描くための実用的グリップを持つ器具です。障害のある子どもに使ってもらいながら、3Dプリンターを使って開発されました。市販もしています。



ロレンツォ君の自転車の制作も、“la bici di lorenzo”として、このプロジェクトの一環として開発が進められました。神経系の障害のある6歳の子供のための、オーダーメイドの自転車です。よくある木製の幼児用の三輪車の遊具のように見えますが、中身は全く違います。

特殊なクランク、人間工学に基づいたシート(サドル)、調整可能なハンドル、姿勢を支える背もたれやサポートといった、各種の要素が標準コンポーネントに適合されるように出来ています。木材が使われているのは、カスタマイズするにも加工が容易なことが考慮されています。

la bici di lorenzola bici di lorenzo

la bici di lorenzola bici di lorenzo

これによって、ロレンツォ君は7歳の誕生日に念願の自転車を手に入れました。彼が大興奮だったのは言うまでもありません。友達の自転車とは少し違いますが、彼はその形を美しいと思っていますし、とても嬉しかった、幸せだったと語っています。

ロレンツォ君は毎日早起きして自転車に乗っています。誰の助けもなしに一人で乗れることに感激しています。昼ごはんを食べる時など、自転車から降りる時間がもったいないくらいです。いつも自転車に乗っています。近く、公園に行って、友達と競争する準備も出来ていると話しています。

la bici di lorenzola bici di lorenzo

la bici di lorenzola bici di lorenzo

この“la bici di lorenzo”(ロレンツォの自転車)は、16インチの前後タイヤやフリーホイール機構、その他の標準のコンポートで構成されていますが、乗る子供一人ひとりの障害やさまざまなニーズに合わせて、柔軟に適応できるように設計されています。

La bicicletta di ViolaLa bicicletta di Viola

La bicicletta di ViolaLa bicicletta di Viola

こちらは、そのコンポーネントを、ヴィオラちゃん用にカスタマイズした自転車です。7歳の彼女は、やはり自転車に乗れないどころか、歩いて移動するのも困難です。前方を見る姿勢を保つのも簡単ではない彼女のニーズにあわせて、さまざまにカスタマイズされ、調整されています。



こうした事例によって、“la bici di lorenzo”は、本人が大喜びし、自律的に移動が可能になるだけでなく、リハビリテーションとしても有効であることがわかってきています。自転車に乗り、それを制御することで、神経が刺激されたり、運動能力の向上にも貢献するようです。

念願の自転車に乗れて、障害の緩和にもなるのであれば、本人だけでなく家族にとっても喜びをもたらすでしょう。ロレンツォ君の両親のように、最初から諦めていたとしても責められませんが、こうした事例が広く知られることで、一人でも多くの子供に、初めて自転車に乗った時の感動を味わってほしいものです。




伊調馨選手が復活優勝です。さすがの強さ、レスリング協会は練習場所など万全のサポートを願いたいですね。

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