October 27, 2018

捨ててきたゴミのツケが回る

プラスチックのゴミが問題となっています。


海洋のプラスチック汚染の問題です。海岸に漂着するゴミを見てもわかるように、大量のプラスチックゴミが含まれています。世界の海に漂流しているプラスチックゴミやその破片を誤って飲み込むため、魚や海洋生物が死に追いやられ、海の生態系の深刻な脅威となっています。

ゴミが絡まったり、誤飲して喉を詰まらせたり、消化されずに胃などに蓄積するだけではありません。最近指摘されているのは、マイクロプラスチックの問題です。プラスチックゴミが、紫外線や波の作用で細かい粒子状となり、それが魚や海洋生物の体内の蓄積していることも、生態系への脅威となっています。

以前から指摘されていたところですが、それは生態系の頂点に立つ人間にも影響を及ぼしていることが明らかになってきました。先日のニュースによれば、人体からマイクロプラスチックが検出されたそうです。日本を含む8カ国の人の便に含まれているのが確認されました。

人の体内に微小プラ粒子人の体内に微小プラ粒子

ウィーン医科大などのチームの調査で、1人当たり最大で9種類のプラスチックが見つかったと言います。まだサンプルの少ない予備的調査ですが、対象者全員から検出されたことが関係者に衝撃を与えています。動物実験によれば、血管やリンパ管にまで入り込む可能性があるそうです。

マイクロプラスチックは、有害物質を吸着して濃縮することもわかってきました。蓄積だけでなく、人体への直接の健康被害も懸念されています。こうした事実を受けて、世界各国で、プラスチックのストローを廃止したり、分解する素材、自然由来の素材に置き換えようという動きも広がっています。

しかし、ストローを変えたくらいでは追いつきません。現代の人類の生活には、大量のプラスチック製品が使われており、それがゴミとなっています。正しく捨てられて焼却されたり、埋められたり、リサイクルされるとは限りません。身近な生活ゴミが川に落ちれば、やがて海にまで届くでしょう。

海洋プラスチック廃棄物プラスチックごみ問題

川にポイ捨てしなかったとしても、豪雨や強風などで川に流れ出ることもあります。もちろん途上国や新興国では、事実上、川や海へ直接投棄するような形になっている地域も少なくありません。はっきりと把握できているわけではありませんが、全世界では膨大な量が海に流出しているのは間違いありません。

ちなみに、米ジョージア大学の調査によれば、2010年の時点で、廃プラスチックの半分はアジアの5カ国(中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、スリランカ)で発生していると言います。全世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいるという研究もあります。

ドイツの研究ですが、中国の長江、黄河、海河、珠江の4河川、中国とロシアとの国境付近を流れるアムール川、東南アジアを縦断するメコン川、インドのインダス川とガンジス川、アフリカ大陸東北部から地中海へと流れるナイル川、西アフリカのニジェール川です。いずれも人口の多い地域です。

プラスチックごみ問題プラスチックごみ問題

しかし、途上国や新興国に責任を押し付けても問題は解決しません。海はつながっており、先進国の人の人体にも入り込んでいます。また、プラスチックの廃棄物を、先進国が中国や東南アジアの国に輸出しているのも事実です。先進国の大量のプラスチックゴミを、新興国に押し付けてきた形です。

中国はこれまで、大量のプラスチックゴミを資源ゴミとして輸入し、リサイクルして使っていましたが、昨年突然輸入を禁止しました。日本を含む先進国では、大量のプラスチック廃棄物の行き場がなくなり、中間処理業者に滞留するゴミが急増していると言われています。

世界のプラスチックゴミの45%を受け入れてきた中国だけでなく、ゴミ輸入を歓迎していたベトナムも今年輸入を停止しました。さらに、マレーシアやタイなどの国も受け入れを停止したり、禁止する方針を打ち出しており、先進国のプラスチックゴミの行き場がなくなりつつあります。



1950年代に大規模な生産が始まったプラスチックは、すでに83億トンも生産され、そのうちおよそ76%にあたる63億トンがすでに廃棄物になっています。そのうち、リサイクルされたのはわずか9%、焼却処分されたのは12%しかありません。

残りの約8割は埋められるか、そのままゴミ置き場などに積み上げられています。プラスチックの多くは、容易に分解しないため、埋めても残り続けます。手をこまねいていては、ゴミは増える一方です。自然分解する代替素材の開発や、ゴミの減量、リサイクルや処分方法など、多くの対策が急務です。

PlasticRoadPlasticRoad

さて、こうした問題が少しずつ認識されるようになり、世界でさまざまな取り組みが始まっています。そのうちの一つに、オランダの再生プラスチック製の舗装資材があります。プラスチック廃棄物を再生した素材をパネル状にして、道路に敷設しようというのです。

通常使われる、アスファルトに替えて、再生プラスチックで道路を舗装しようというアイディアです。その第一号、世界初のプラスチック道路は、オランダらしく自転車道です。オランダ東部、Overijssel 州の、Zwolle という町でこの9月に開通しました。

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これは、単にプラスチック廃棄物を舗装に利用しようというだけではありません。道路建設の面でもメリットがあります。道路の舗装工事に必要な期間が70%短縮されると言います。これまで何か月か、かかっていたのが、何日間かで済むようになります。

さらに、舗装資材としての寿命は、これまでの舗装と比べて3倍程度になります。アスファルト舗装と比べて、4分の1の軽さというのも特徴です。100%リサイクルされたプラスチックであるため、従来舗装と比べ、温暖化ガスの排出、いわゆるカーボンフットプリントも大幅に小さくなります。

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この“PlasticRoad”のパネルは、中空になっていて、その部分に雨水を溜めることも可能です。極端な降水時に道路の冠水を防ぐ機能となります。また、この中空部分にケーブルやパイプなどの配管を通すこともできるため、さまざまな利用法が考えられます。

工場で生産されたモジュールを、プレハブ工法で現場で組み立てる形になります。そのため、普通の舗装と違って、ユニットにセンサーを組み込むなど、ハイテクな道路にすることも出来ます。センサーで路面温度などの道路の状態をモニターしたり、交通量をカウントしたりすることも可能になります。

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完成した自転車道は、まだわずか30メートルで、“PlasticRoad”のいわばパイロット版ですが、今年11月には、Overijssel 州の、Giethoorn という町にも第二弾が完成する予定です。この二か所での実証実験により、さらなる開発が進められる予定になっています。

ちなみに、30メートルで、21万8千個以上のプラスチック製のカップ、または50万個のプラスチック製のボトルのキャップに相当する再生プラスチックが使われています。最初は自転車道ですが、もちろんクルマ用の車道も視野に入っています。そのほか、駐車場や歩道、電車のプラットフォームなども構想されています。

PlasticRoadPlasticRoad

これは、自転車道としても興味深い取り組みと言えるでしょう。短期間で舗装できるだけでなく、道路が破損しても、交換するだけなので素早く低コストで修繕出来るでしょう。仮に、地下の工事が必要になった場合、一旦外して、また並べれば、従来舗装と比べて資材が無駄になりません。

道路工事による渋滞も大幅に減る計算になります。アスファルト舗装だと、何かの理由で掘り返した部分をまた舗装するため、継ぎはぎになって段差が出来たりしますが、パネルを開けて工事をして、また置く形ならば、舗装が凸凹で自転車で走りにくい道路というのはなくなるかも知れません。



工場生産ですから、一つひとつのモジュールの形状を工夫すれば、物理的にセパレートされた自転車レーンなども容易に設置出来そうです。色を変えたり、あらかじめ表面に標識を描くなども考えられます。センサーなどを埋め込んでおけば、ビッグデータの収集も出来るに違いありません。

並べるだけなら、途上国でも道路が容易に舗装できるようになるかも知れません。電柱の地中化などにも使える可能性がありそうです。車道の一部のパネルを入れ替えて、あっという間に自転車レーンが誕生するようになったとしても不思議ではありません。これを利用したアイデアは広く募集されています。

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もちろん、この“PlasticRoad”だけで、プラスチック廃棄物の問題が解決できるわけではありません。しかし、仮に将来、世界中の舗装でプラスチックが当たり前になるならば、相当な量のプラスチックの再利用になるでしょう。行政は道路の革新と同時に、廃プラスチック問題の対策としても大きな可能性を見いだしています。

プラスチック代替素材の普及には時間がかかります。自然分解せず、たまり続ける今の廃プラスチックの処分のためにも、リサイクルは重要です。この“PlasticRoad”のように、今まで想定していなかった分野にも、廃プラスチックで置き換えられるものは、まだまだありそうです。




北日本を除けば、好天になっている地域が多いようです。自転車で出かけるには絶好の日和かも知れませんね。

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