November 11, 2018

デザインで緩和できる可能性

あおり運転をする人が後を絶ちません。


ご存知のように、2017年の6月に発生した東名高速道路での夫婦死亡事件で大きくクローズアップされましたが、その後もあおり運転をするドライバーは少なくないようです。動画サイトなどを見ると、あおり運転をするクルマの動画が多数掲載されており、決して珍しいことではないのがわかります。

Photo by W-nexco,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.わざと車間距離を詰めたり、前方のクルマに対してハイビームやクラクションを鳴らす、前に回り込んで急ブレーキをかける、幅寄せする、罵声を浴びせたり威嚇をする、執拗に追い回すなど、目に余る行為が繰り広げられます。一歩間違えれは事故になりかねない危険な行為で、実際にその後も死亡事故が起きています。

東名の事件の犯人は確信犯で、煽る相手を探して、あおり運転を繰り返していたと言います。もちろん、あおり運転と言っても、そのような病的な偏執狂は限られるでしょう。しかし、何かのきっかけで怒りを沸騰させて、危険な行為に及ぶ事例は少なからず起きているようです。

あおり運転自体は昨日今日始まった話ではなく、昔から存在していました。クルマの台数や渋滞が増加するなど、運転環境の悪化がこうした行為を助長し、件数を増やしたり、より過激にしている可能性はありますが、原因はもっと根源的なところにあると思われます。

一般的に言われているのは、クルマを運転することによる、人間の心理の変化です。人はクルマを運転すると、気が大きくなると言われています。クルマは鉄の塊で、自分を守っている鎧のようなものです。そのため、歩いている時と比べて強くなった気になり、攻撃的になるとされています。

Photo by 松岡明芳,under the GNU Free License.研究によれば、より大きいクルマ、目線の高いクルマ、高級車とされるクルマに乗るドライバーほど、自分が強くなった、偉くなったと勘違いする傾向があると言います。そして、自分の思い通りにならないこと、不愉快なこと、気に障ったことがあると、怒りの感情が噴き出すことになります。

もちろん、クルマを運転中という要因もあります。徒歩の時と違い、クルマだと他の人の運転によって死傷したり、大きな損害を負いかねません。故意でなかったとしても、人間が持つ防衛本能、野生的な闘争本能を呼び起こす面があることも指摘されます。

クルマの中にいることで顔が見えにくく、匿名性が高くなることも助長すると言われています。こうした要因によって、クルマの中だと攻撃的になる人が少なくないのです。よく、ハンドルを握ると人格が変わると言われる人がいますが、まさにこのことを表しているのでしょう。

割り込みをされたり、クラクションを鳴らされたり、理由不明のブレーキを踏まれたり、ノロノロ運転で追い越せなかったりといった理由で、怒りを爆発させます。追い越し車線で低速走行するなど、ルール無視や未熟な運転、自車より小さなクルマに抜かれること、煽られることに腹を立てる人もいます。

これは海外でも同じです。ロードレージとして昔から言われており、やはり人間の根源的な部分に根差していることを示唆しています。もちろん個人差があって、誰もがあおり運転をするわけではありませんが、多かれ少なかれ、腹を立てる人がいるののは間違いないでしょう。

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ドライバーの怒りは、自転車に対しても向けられます。日本では、未だに自転車は歩道走行だと思っている人も多いと言われていますが、知っていたとしても邪魔に感じるのでしょう。なかなか追い抜けなかったり、神経を使わされたり、抜いてもすぐ信号で追いつかれたりなど、イライラするわけです。

こうしたことで怒りを膨らませ、必要以上にクラクションを鳴らしたり、幅寄せなどの嫌がらせや進行の妨害など、危険な行為に及ぶわけです。元々、自転車に対する反感、敵意を持っていて、執拗に嫌がらせをする人もいますし、面白半分でわざとやる人も含め、露骨に危険な行為に及ぶ人がいるのは間違いありません。

もちろん、逆走や信号無視、一時不停止などの法規の無視、安全を確認せずに急に方向を変えるなど、自転車利用者が責められるケースもあるでしょう。しかし、そのようなことはなく、特に責められる理由がないのに嫌がらせを受けたことがあるというサイクリストも少なくないはずです。

クルマ同士のトラブルだけでなく、クルマと自転車の間でのトラブル、あるいは危険な状況が増えているのも日本だけではありません。健康志向や環境負荷の低減など、世界的に自転車の活用が広がっている中で、世界中で道路上の「怒り」は増えているようです。

LoffiLoffi

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そのことを憂慮し、少しでも緩和する方法はないのかと考えた人がいます。アーキテクトの、Jack Hudspith さんと、デザイナーの、Ben Pawle さんです。彼らは、サイクリング用のグローブ、手袋のデザインによって、路上での「怒り」を和らげることを思いつきました。

自転車用のグローブの裏と表の両面に、スマイリーフェイスを描いたのです。日本では、スマイルマークとか、ニコちゃんマーク、ニコニコマークなどと呼ばれていますが、世界的にニッコリ笑顔として通じる図柄です。コンピュータやスマホ、SNSなどでも似たような記号や絵文字が使われています。

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このサイクルグローブを両手にはめておくと、進路変更や、感謝、謝罪の合図などで手を上げた時、このスマイルマークがドライバーに向けられることになります。合図だけでも、無用な感情的摩擦を減らす効果が見込めますが、このマークが書いてあれば、さらに感情をほぐす効果が期待できるでしょう。

進路変更や進行の邪魔になった時などで、ドライバーがムッとした場合でも、スマイルマークが目に入れば、フッと怒りが鎮まる可能性があります。ちょっとした会釈の代わりに手を上げた時でも、マークが目に入れば、思わず笑みがこぼれたりするのではないでしょうか。

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単に記号をグローブに縫い付けたに過ぎませんが、このような形で使われた場合、意思疎通を助ける効果が期待できます。小さなことと言われれば、その通りですが、その小さなことが感情のクッション、潤滑油のような役割を果たす可能性があるでしょう。

サイクリストとドライバー、直接声が届かない状況で、マークによるコミュニケーションには意味があります。数値では表せませんが、多かれ少なかれ感情の衝突を和らげることが出来、結果としてトラブルを防ぐ効果は充分に期待出来ると思います。

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サイクルグローブとしての機能も備えています。防水性、防風性に優れ、通気性もあります。手の平側のスマイルマークは、ハンドルを握る手への衝撃や振動を和らげるクッションにもなっています。また反射素材になっているので、夜間でもマークが目立ちます。

手触りの良いスエード素材で出来ていますが、部分的には、走行中に汗を拭いたり、鼻水をぬぐったり出来るようフリース素材が使われています。今どきの事情を考慮し、指先の部分には、いわゆるタッチスクリーンファブリックが使われているので、手袋をはめたままでもスマホが操作出来ます。

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2人は、2年前からこのグローブの開発を開始しました。そして1年間は試作品を提供し、使用試験とスマイル効果を試してもらいました。すると、圧倒的にポジティブな反応が得られたと言います。“Loffi”というブランドで製品を製造・供給するため、現在はクラウドファンディングサイトで資金調達を目指しています。

そのクラウドファンディングは、すでに目標金額の3倍を超えて達成しており、金額はまだ増え続けています。多くの人の共感と、支持を得たことがわかります。これは素晴らしいアイディアです。違った意味で、サイクリストの安全を守る製品となるに違いありません。

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開発した、Jack さんと、Ben さんも、毎日自転車を使っているサイクリストです。路上に「怒り」や「敵意」が増えている昨今の状況を憂慮していたと言います。ちよっとした工夫ですが、これがロードカルチャーにプラスの影響を与えると信じています。これは、なかなか素敵な製品だと思います。

日本では、あおり運転がクローズアップされて以降、ドライブレコーダーが急激に売り上げを伸ばしていると言います。専門家も、ドライブレコーダーは、イザという時の証拠になることや、その装着を明示しておけば、抑止につながる可能性があることを指摘しています。



言わば、監視して記録しているぞと警告することで、危険な行為を防ごうというわけです。たしかに有効な方法でしょう。最近は、自転車にもドライブレコーダーの搭載を考える人もいます。ただ、自転車の場合、警告メッセージの表示は困難ですし、抑止効果までは期待薄です。

この“Loffi”のグローブは、相手に警告して抑止するのではなく、路上でのコミュニケーションを促し、思わず笑顔になるような意匠によって、怒りや敵意を和らげる方向からトラブルを防ごうとしています。相手にもよるでしょうが、意外に効果的なアプローチかも知れません。

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ドライブレコーダーは有効だと思いますが、怒りモードに入ると抑えられなくなる人もいます。怒りを爆発させる前に、それを和らげられる可能性がある点で、このグローブのような対策は注目されます。クルマ同士のトラブル防止にも、デザインによって怒りを緩和する方法を模索する手はあると思います。




紀平梨花選手がシニアデビュー戦で優勝、新ルールでザギトワに次ぐ世界2位の高得点、今後が楽しみですね。

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