December 11, 2018

自転車に乗る時に考えること

自転車に乗って出かけるのは気分転換にもなります。


シャーロック・ホームズシリーズの著者として有名なアーサー・コナン・ドイルは、『気分が落ち込んでいるとき、暗く感じる日、仕事が単調に感じるとき、希望が持てないとき、ほかの事は何も考えずに自転車で出かけなさい。』という言葉を残しています。

たしかに、自転車に乗っているとイヤなことを忘れ、一回りして帰ってくる頃には、サッパリ気分転換になっていたりします。自転車に乗ってペダルをこいでいると、自然と無心になっていて、気がつくと頭の中がスッキリしているということもあるのではないでしょうか。

一度、自転車に乗れるようになってしまえば、身体が自然とバランスをとるので、いちいち考えなくても乗ることが出来ます。何も考えていない、脳を使っていないので頭が休まり、結果としてリフレッシュすることが出来るということなのでしょうか。

ところで、自転車に乗れるというのは、どういうことなのでしょう。自転車と言ってもいろいろな種類があり、乗ったことのない車種に乗る時などは、多少神経を使うかも知れません。しかし、それでもすぐに乗れるようになると思います。それは、どんな自転車も、基本的なことは共通しているからです。

では、その基本的な約束事が満たされていなかったら、どうなるでしょう。普通は、その基本的な約束事自体、あまり意識していません。でも、素朴な疑問やアイディアが浮かんだり、あるいは思いつきで、その基本を外したらどうなるか試してみた人たちがいます。

フレームは素材がなんであれ、形が決まっているのが当たり前です。そのフレームをバネにしたらどうなるだろうと考えた人がいます。イギリスのスタントマンで、ユーチューバーとしても知られる、Colin Furze さんです。元々、奇想天外なものを自作して自分で乗る人で、その発想の破天荒さで有名な人です。



もともとスタントマンなので、なんなく乗りこなしていますが、かなり違和感がありそうです。フレームがクネクネとねじれますし、着地のショックや振動が拡大したり、ペダルの力やブレーキがフレームに吸収されてしまったりしています。慣れれば乗れそうですが、相当に感覚は違いそうです。

以前も取り上げましたが、前輪だけでなく、後輪も曲がるようにした自転車もあります。チェーンは無く、ペダルは後輪に直についています。見た目的には、それほど違和感を感じませんが、これも通常の自転車とは相当に違う動き方をし、乗った感覚も違うと思われます。下はチェーンはありますが基本的に同じ考え方です。





普通の自転車がスキーだとしたら、スノーボードのように横向きに乗る自転車を自作して乗ってみた人もいます。左右でなく、前後方向にバランスをとりながら、横方向に走るわけですから、これも相当に違和感があるでしょう。おそらく、普通の人は乗れないと思います。



自転車でカーブする時には、身体を傾けて曲がります。しかし、その身体や車体を傾ける効果が効かない自転車を、コーネル大学の研究チームが作っています。車体を傾けても、その方向に曲がらない自転車です。普通に走ったのでは曲がれません。これは通常の動作による反応と違うため、相当に頭が混乱するに違いありません。



一番、違和感を感じるのは、これでしょう。ハンドルを切ると、逆の方向にハンドルが切れる自転車です。ギヤを使って、機械的に反対方向へ転換しています。つまり、通常と逆方向にハンドルを切ればいいことになります。そのように説明され、頭でわかっていても出来ません。乗れないのです。



誰が試しても乗れません。そこで、この作者、Destin Sandlin さんは毎日5分ずつ、練習し続けました。そして8か月後、突然乗れるようになったと言います。脳の中の神経回路が突然つながったような感じがしたそうです。8か月もかかって、ようやく脳に新しい自転車の乗り方の経路が出来たのでしょう。

しかし、何かのきっかけ、例えばポケットの中のケータイが鳴っただけで、元の回路に戻ってしまい、とたんに乗れなくなって倒れてしまうそうです。ちなみに、彼の息子も普通の自転車に乗れるので、最初この自転車には乗れませんでしたが、2週間で乗れたと言います。大人と違って、子供の脳が柔軟なことがわかります。

“The Backwards Brain Bicycle”と名付けられたこの自転車に、やっと乗れるようになった、Sandlin さん、今度は普通の自転車に乗ろうとしました。すると、全く乗れなかったのです。人生で、一番イライラした経験だったと言います。新しく出来た逆ハンドルの回路を解消すればいいとわかっていたのに、出来なかったのです。

しかし、20分後、また突然乗れるようになったそうです。事実上、自転車に乗れるようになったのを、意識的に忘れた世界で唯一の人間でしょう。自転車に乗れるようになったのに、それを忘れるのは、たいへんに難しいことがわかったと語っています。

Sandlin さんは、自転車に乗るのは、とても複雑な行為だとわかったと言います。左右のバランスを微妙にとりながら、ペダルをこぎ、体重を移動させ、車輪のジャイロ効果を感じとりながら、ハンドルを細かく切って進みます。そして路面状況から周囲の人や信号、標識、刻々と変わる状況に対応しなければなりません。

その複雑な処理を脳が学習し、安定的にこなす神経回路が作られるわけです。いったん回路が出来ると、容易に処理できるようになりますが、一方で、一度出来てしまった回路を変えるのは容易でないこともわかります。基本的な約束事が、少し違うだけで全く乗れない事実がそれを示唆しています。

出来上がった脳の神経回路は太くなるのでしょうが、依然として脳は複雑な処理をしています。小脳や三半規管、大脳の一時運動野、運動連合野、前頭眼野、眼窩前頭皮質、一次体性感覚野、頭頂連合野、聴覚野、側頭連合野、島皮質、視覚野、視覚連合野などが関わっていることがわかっています。

つまり、意識をしていないだけで、自転車に乗るのに脳を使っていないわけではないのです。ただ、悩んだり、考えたりする脳の場所とは違います。自転車に乗ると、いつもと違う脳の場所が回転し始めるため、悩んだり考えたりする部分が休みになって、リフレッシュにつながるのかも知れません。

一般的な自転車とは、基本的な約束事が違う自転車に乗ろうとすると、相当に混乱し、頭が疲れるようです。自転車に乗るのに、脳をフルに使っていることがわかります。ただ、乗れるようになると、それを意識せずにすみ、感覚的には、何も考えずに乗っていられるわけで、その仕組みに感謝すべきなのかも知れません。




新語流行語で『ボーっと生きてんじゃねーよ!』がありましたが、自転車も、あまりボーっと乗ると危険です(笑)。

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