January 04, 2019

人類の課題に挑戦する人たち

エネルギーの使い方は人類の課題です。


私たちの普段の生活、あるいは現代文明において、熱や電気などのエネルギーの利用は欠かせません。しかし、そのエネルギーの多くは化石燃料の燃焼によって得られています。特に20世紀後半からは、その消費量が飛躍的に増大していることが問題となっています。

エネルギーの利用は世界経済を大きく発展させてきた一方で、森林伐採などの環境破壊や大気汚染などによる健康被害などをもたらし、近年は気候変動が問題となっています。化石燃料の燃焼によって二酸化炭素の排出が増大し、地球が温暖化することによって、異常気象などを引き起こすとされています。

化石燃料を大量消費する経済は、環境や気候に大きな負荷を与え、その影響が見過ごせないことが明らかになってきました。以前ほど枯渇ということは言われなくなりましたが、理論的にその採掘可能な資源量は限られるわけですし、大量に燃やして消費するのは持続可能なスタイルとは言えないでしょう。

ただ、一度便利になった生活を逆行させるのは困難です。いきなりエネルギーを使わない生活というわけにもいきません。そこで、いかにエネルギーを上手く使っていくかが焦点となります。これからも世界の人口は増え、途上国のエネルギー消費量の急拡大が見込まれることもあり、化石燃料消費の削減は急務です。

燃料の効率改善、すなわち省エネは有力な手段です。化石燃料を燃焼させずに得られる、いわゆる再生可能エネルギーへの転換も必要でしょう。今まで未利用のクリーンなエネルギーを活用したり、ライフスタイルを考え直すことも課題解決に貢献することになります。

Clean Energy ChallengeClean Energy Challenge

ポイントは都市です。面積では都市の割合は小さいですが、全世界のエネルギーの3分の2以上を消費するのは都市です。都市のエネルギー消費の改善は大きな課題です。その都市で、化石燃料を大量消費するクルマに目が行くのは当然でしょう。燃費のいいクルマ、化石燃料によらないクルマが求められるのは必然です。

ただ、クルマが化石燃料を使わないEV、電気自動車になっても、発電には石油や石炭、天然ガスなどが多く使われています。その場で燃焼しなくても、化石燃料を消費することには変わりありません。燃料電池車も、結局のところ化石燃料から水素を取り出すのが一番安上がりで現実的です。

Clean Energy ChallengeClean Energy Challenge

ヨーロッパなどでは、太陽光発電や風力発電も増えていますが、送電によるエネルギーのロスも馬鹿になりません。そもそも、都市部でクルマを使うこと自体がエネルギーの無駄という部分もあります。都市部での移動であれば自転車で十分と気づき、多くの都市でその活用がはかられるようになるのは当然と言えるでしょう。

自転車ならば、渋滞で時間を無駄にすることもなく、満員電車の苦痛もなく、バス停での待ち時間もありません。もちろん化石燃料は使わないので、クリーンで経済的です。化石燃料の代わりに、余っているお腹の脂肪からエネルギーを取り出せは、ある意味エネルギーの有効利用であり、健康増進やダイエットにもなります。

Clean Energy ChallengeClean Energy Challenge

日本では、自転車というとママチャリをイメージする人が圧倒的多数です。格安なママチャリが市場を席捲していますが、日本の歩道走行向けの重くて遅いママチャリでは、自転車本来のポテンシャルが実感できません。そのため、自転車が都市での有効な交通手段ということが、今一つピンと来ていない人も多いようです。

日本での自転車は最寄り駅までのアシであり、職場まで直接自転車通勤するような人は、ごく僅かです。最近でこそ話題に上りますが、ほとんどの人にとって現実的てはないでしょう。しかし、欧米では、日本で電車やバスで移動するような距離を、自転車でドアツードアで移動するのは、ごく自然なことです。

クルマを使わず、自転車にすることが都市部でのエネルギーの効率利用に大きく貢献することになります。そのため、自転車レーンなどの整備が推進され、シェア自転車の利用なども拡大しています。自転車の活用は、都市におけるエネルギー問題への取り組みでもあるわけです。

S-PARKS-PARK

さて、ヨーロッパの中でも、自転車先進国オランダは、さらに先へ行っています。最近提案された“S-PARK”は、自転車を使って省エネにするだけではありません。自転車を使って発電しようという構想です。例えば首都アムステルダムでは、市民の合計の走行量は、毎日200万キロにもなります。

これは、およそ2万キロW時というエネルギーです。もちろん、移動に使われるわけですが、そこでは無駄になっている部分もあります。例えば、減速するのにブレーキをかければ、ペダリングで得られた運動エネルギーの多くは熱として失われることになります。

S-PARKS-PARK

こうしたエネルギーを有効活用できないかと考えたのが、Guillaume Roukhomovsky さんです。自転車の前輪のハブに、専用の発電機とバッテリーを搭載します。走行時やブレーキングの際に発生するエネルギーをここに蓄え、専用のバイクラックに駐輪した時、そのエネルギーが回収される仕組みです。

これを配電網を通して、近隣の街灯や通常利用の電力として使おうという構想です。一人ひとりの走行の発電量は大きくなくても、使われるシェア自転車全体となれば、決して小さくありません。自転車の利用でエネルギー消費を減らすだけでなく、さらに発電までさせようという発想に驚きます。

S-PARKS-PARK

これまでにも取り上げてきましたが、オランダは新しい取り組みに積極的な国です。あまり知られていませんが、科学技術やイノベーションを起こす環境整備にも、国家として力を入れています。そんな先進的、時代を先取りしようと考えるオランダ人ならではの発想と言えるかも知れません。

サイクリングロードの舗装に再生資材を使ったり、太陽光発電パネルを組み込むなどのプロジェクトも進めています。一つひとつは大きい量でなくても、それらが積み重なれば違ってくるはずです。すでに省エネや自転車の活用が進んでいる先進国では、こうした小さな改善の積み重ねが必要なのも確かでしょう。



この“S-PARK”という構想は、“What Design Can Do”というデザインと創造性を使って社会の問題解決を目指す団体による、“Clean Energy Challenge”というプロジェクトに応募されたアイディアです。エネルギーをクリーンなものへ、そしてより賢く、より効率的に使い、無駄を減らそうという挑戦です。

このプロジェクトで特徴的なのは、5つの都市に焦点を当てていることです。その都市とは、メキシコシティ、サンパウロ、ナイロビ、デリー、アムステルダムです。先進国や新興国、途上国というだけでなく、都市の成り立ちや都市のエネルギー効率も大きく違っています。

S-PARKClean Energy Challenge

世界中の都市は、それぞれ取り組むべき課題や解決すべき状況が違います。先進国のアムステルダムでのエネルギー効率改善の取り組みは、デリーのそれとは自ずと違ってくるはずです。さまざまな条件、状況が違う中で、一律に考えるのはナンセンスということもあるでしょう。

途上国や新興国では、インフラの整備やゴミの減量化、物流の改革や社会的な障壁の除去など、やるべきことは多々あるはずです。例えば、ゴミを減らすだけでも、無駄に使われていたエネルギーを大幅に削減できたりするに違いありません。自転車による発電を考えるより、よっぽど効果も大きいはずです。

Clean Energy ChallengeS-PARK

そう考えると、都市によって課題も解決策も、優先順位も違ってくるのは自明です。そこで、この5つの都市をモデルに、分けて考えているわけです。なるほど、このようなアプローチは合理的です。当然といえば当然ですが、より実効性が高く、意義があり、市民に共感されるものとなるに違いありません。

さらに、単なるアイディア募集にとどまらず、応募された提案から、都市ごとの選考委員会がいくつか候補チームを選び、推薦リストを作ります。指定されたチームは、指摘をフィードバックして改善し、洗練させる機会を得ます。その中から、最終的に今年3月には受賞チームが決まる予定です。



受賞したチームは、そのプロトタイプを開発するためのサポートなどを受け、実現に向け、市場に投入される機会が与えられます。つまり、単なるアイディアコンテストにとどまらず、実際に実現に向けてプロジェクトが進められていくスタイルなのです。

この“S-PARK”は、たくさんの応募アイディアの中の一つであり、採用されるかどうかはわかりません。しかし、世界でこうした取り組みが増えています。人類としての課題に挑戦するのは、政府や関係機関、企業だけではありません。民間レベル、市民レベルでも関与していこうという機運が盛り上がっているのです。




新年早々、原宿で無差別殺人があったり熊本で地震が起きたり株価が急落したり、今年もいろいろありそうです。

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