February 03, 2019

自転車を教育や保健衛生にも

Kilis_city_centerキリスはトルコ南部の都市です。


Kilis,This image is in the public domain.キリス県の県都で、シリアとの国境に近い位置にあります。2010〜11年にチェニジアで起きたジャスミン革命は、アラブの春として周辺諸国に大きな影響を与え、隣国シリアではその歴史上未曾有の内戦をもたらしました。国連は21世紀最大の人道危機だとしています。

トランプ米大統領は過激派組織イスラム国(ISIS)を打倒したとして、米軍の撤収を表明しましたが、依然として数万人規模の戦闘員が潜伏しているとされ、断続的なテロ攻撃なども起きています。クルド人などを含む複雑な対立構造があり、和平プロセスも停滞していて予断を許さない状況にあります。

このシリアの内戦は多くの難民を生み、隣国のトルコにも350万人を超えるとも言われる難民が押し寄せました。トルコはシリア難民の最大の受入国となっています。キリスにも難民キャンプが置かれているほか、市内に住むシリア人も急増し、地元住民の人口よりもシリア人のほうが多い状況となっています。

ISISは、シリアからロケット攻撃を仕掛けたため、キリスでも死者が出るなど戦闘の直接的な被害が出ました。また、昨年には、トルコと対立するクルド人過激派グループからもロケット攻撃を受けるなど、キリスの治安に対する市民の不安に大きな影を投げかけています。

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とは言っても、トルコで内戦が起きているわけではありません。キリス市長の、Hasan Kara さんは、市の人口の半分以上をシリアからの流入者が占めるという難しい状況にあっても、トルコ人とシリア人が対立したりすることのないよう腐心し、市民が住みやすい街にするための政策を進めています。

さまざまなニーズがある中で、交通インフラの整備にも注力しているわけですが、キリスでは交通状況の改善のため、市内に自転車専用車線のネットワークを構築することを目指しています。すでに、市の中心部には、花を植えたプランターで物理的にセパレートされた自転車専用車線を設置しています。

難民の流入とその人道問題、テロやロケット弾など治安の不安もある中で、自転車の活用を通して交通状況を改善し、健康的で、違う民族が共存する街にしようと言うのですから、その先進的な発想に驚きます。市長は、オランダのように自転車の街にしたいと考えているのです。

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交通状況の改善だけでなく、自転車であればシリアからの流入者でも手に入れやすいでしょう。命からがら逃げてきたシリア人が、トルコの街で仕事を見つけ、生計を立てようとする上で、市内での移動は喫緊の課題となるはずです。現実的な交通手段としての自転車ということがあるのは明らかです。

しかし、現状では決して自転車にフレンドリーな街とは言えません。市民の間にも自転車を使おうという機運が高まっているとは言えません。でも、ここから変えていこうと言うのです。自転車専用車線の整備と同時に、市民に自転車に乗ってもらわなければなりません。

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それには、自転車の有用性、利便性を知ってもらう必要があります。そのため、まず子供たちに自転車を配ることを考えました。いきなり大人に配っても、乗ってもらわなければ意味がありません。しかし、子どもなら自転車に乗りたがります。子供が乗るようになれば、大人にも理解が広がるに違いありません。

しかし、ただ配るのではなく、工夫をしました。自転車が欲しい子どもは、3つの条件を満たす必要があります。一つ目は、少なくとも1日に1時間、自転車に乗ることです。これは、自転車に乗りたい子どもにとって、達成は易しいことでしょう。子どもに毎日乗らせることは、健康の増進、体力の向上にもつながります。

二つ目は、学校でいい成績を維持することです。これも、自転車欲しさに勉強を頑張ることになると思われます。親が言うのではなく、市が言うのがユニークですが、教育は国家を担う次世代の人材を育てるためであり、人材の育成こそ国家の要であることを思えば、理にかなっています。

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三つ目は、家族や親戚の中にいる喫煙者を説得し、タバコをやめさせるというものです。親や叔父叔母、祖父母など、子どもが頼めば、一念発起してやめる人もいるでしょう。自分では禁煙するつもりが無くても、子や孫のたっての頼みであれば、やめるきっかけとなることが期待できます。

日本も含め、世界的に禁煙が広がっています。WHO(世界保健機関)は、世界で毎年約300万人が喫煙を原因として死亡していると指摘しています。病気の原因のうち最も死亡者が多く、最重要課題であるとして、各国政府もタバコの害を広く国民に知らせ、禁煙を勧める政策を進めています。

公共の場所での受動喫煙の問題だけでなく、市民の健康を増進し、保健衛生部門の財政的にも喫煙者を減らすことには意義があります。喫煙者本人に働きかけるだけでなく、子どもに頼ませるというのは、なるほど上手いアイディアかも知れません。自転車で、一石何鳥も狙っているわけです。

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当面は1万5千台の自転車を配ることを目標としています。このプロジェクトの資金は、市だけでなくトルコの保健省からも出ています。さらに、市長はEUからの支援を求めています。このEUに支援を求めるという点も、なかなか賢いやり方と言えるでしょう。

イギリスのEU離脱、ドイツのメルケルの党首辞任、フランスのマクロンへの抗議デモ、そのほか各国でのポピュリズム政党の台頭など、EUの抱える多くの懸案の背景に移民の問題があります。移民流入の抑制の点で、シリア難民を受け入れ、事実上の障壁となってくれているトルコに対し、EU諸国は弱い立場にあります。

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もちろん、国家間の外交の問題ではありますが、市のレベルでもEUに援助を求める市長のやり方は、当を得ていると言えるかも知れません。しかも自転車の普及、そのインフラの整備ということであれば、環境にも優しいわけで、EUとしても無下にしづらいものがあるのではないでしょうか。

ひるがえって今の日本を考えた時、こうした方策がそのまま使えるとは言いません。移動に困る移民が市民の半分もいるわけでもありません。ただ、自転車政策を進めるにしても、各方面への相乗効果も含め、最大限の費用対効果を上げようとする考え方は、見習うべきところがありそうです。




アジア杯決勝、格下と慢心したわけではないでしょうがカタールに完敗、残念です。次に生かしてほしいですね。

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