February 15, 2019

走り易くするだけで走り出す

バーリはイタリアの南部に位置する都市です。


プーリア州の州都で、バーリ県の県都でもあります。アドリア海に面しており、地中海の国々との交易の中心として発展してきた港湾都市です。旧市街には多くの教会や宗教施設があり、サンタクロースのモデルと言われる、聖人ニコラオスゆかりの地として、巡礼地にもなっています。

温暖な気候で、海沿いなので地形も平坦で住みやすい街です。しかし、市内の中心部や海岸線沿いは慢性的な渋滞に悩まされており、移動や輸送の大きなネックとなっています。道路の整備も一部で進められていますが、なかなか改善せず、渋滞の解消は見込めない状況です。

BariBari

バーリ市の市長、Antonio Decaro さんは、この状況を打開するため、大胆な方針転換を打ち出しました。道路を狭くしてクルマでの移動を制限すると共に、公共交通機関の接続を改善、一方で、歩行者やサイクリストにフレンドリーな街を目指すことにしたのです。

計画のモデルはデンマークのコペンハーゲンです。コペンハーゲンは自転車先進都市として、このブログでも何度も取り上げていますが、この街から大きなインスピレーションを得たと言います。バーリもコペンハーゲンのような自転車都市を目指すべきだと考えたのです。

現状で、市内の交通はクルマに大きく依存しています。イタリアの多くの都市と同じように、古代から商業の中心だったため、古い街並が多く残る一方で、道路を大幅に拡幅しようにも難しい状況があります。クルマ移動に依存したままでは打開の目途が立ちません。

そこで、クルマでの移動を減らすため、市民の通勤などの移動に、自転車を積極的に使ってもらおうと考えたわけです。ただ、現状で市内の自転車インフラが充実しているとは言えず、整備は進んでいません。自転車を使う市民も少ないのが実情です。そんな中で、市民に自転車利用を促すのは、簡単なことではありません。

Photo by DanieleDF1995,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Bari

とった方法は直接的です。市民に自転車の活用、自転車通勤を促すため、自転車通勤する人にお金を払うことにしたのです。当面は4ヶ月間の試験ですが、このイニシアティブに登録した地域の住民には、毎日の通勤に際し、1kmあたり、0.2ユーロが支払われます。月額で最高25ユーロです。

通勤以外の自転車移動にも、1kmあたり、0.04ユーロ払われます。参加者の中で、一番多く自転車で移動した人、トップ10に入ると、追加ボーナスとして毎月50ユーロというインセンティブもあります。登録した住民には、GPSによる距離の測定器が支給されます。

さらに、現在クルマに大きく依存しているため、自転車を持っていないバーリ市民も多いわけですが、購入の補助も予算化しました。中古の自転車を買う場合には100ユーロ、新品なら150ユーロの補助があります。電動アシスト自転車を購入する人は250ユーロまで申し込めます。

親が子供のために自転車を買う場合にも補助を申請することが出来ます。これらの購入補助の予算には、イタリアの環境省からの助成金、54万5千ユーロが充てられています。デカロ市長は、このプロジェクトを進めることで、2019年内に、市内の自転車利用者の倍増を目指しています。

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デカロ市長は、先月このプログラムを発表しました。同じイタリアのボローニャで、2017年に自転車通勤者に対し、無料のビールやアイスクリーム、映画のチケットといったインセンティブを与えるプログラムを、半年間行ったことがありますが、現金を支給するのは、イタリア初です。

市内の自転車インフラは十分とは言えず、自転車専用道のネットワークがあるわけでもありません。むしろ、整備はこれからであり、コペンハーゲンとは比べるべくもありません。しかし、このイニシアティブを、バーリを自転車都市にする第一歩にしたいと市長は考えています。

なかなか意欲的な取り組みと言えるでしょう。市民にとっては金銭的なメリットだけでなく、自分の健康増進にもなります。イタリアは、スポーツとしての自転車の人気はありますが、デンマークのように自転車で通勤する人が多いとは言えません。市民の意識を変え、根付いていくかが注目されます。

ひるがえって日本を考えると、自治体の姿勢は違います。市民の自転車の利用に対し、報奨金を払うどころか、利用を抑制しようとする自治体も少なくありません。街の景観などを理由に迷惑駐輪を厳しく取締り、駐輪場は有料、放置自転車を撤去・移送して、その費用を請求します。

日本では、自転車に乗る人口という点では自転車大国ですが、駐輪マナーの悪さに手を焼き、本音では、市民に自転車をあまり使わせたくないと考える自治体も少なくないようです。もちろん、放置自転車がいいとは言いませんが、特に都市部では自転車に対してネガティブな傾向も見えます。

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渋滞する都市の中心部で、いくら道路を拡幅しても、またクルマの流入が増えるだけです。むしろ車道を狭くして、そのぶん自転車に乗りやすくしようという都市が、世界では増えています。渋滞するクルマより、自転車のほうが速くて、よっぽど便利と考える人も増えています。

都市中心部の移動には自転車を活用してもらい、クルマの利用を減らせば、メリットは渋滞だけではありません。交通死亡事故が減り、省エネが進み、温暖化ガスを削減し、公害や環境負荷を減らし、ヒートアイランド対策にもなります。その上、市民の健康増進になり、生活習慣病を減らし、医療費の削減にも貢献します。

日本でも現金を支給しろとは言いません。すでにバーリと違って、自転車に乗る人が多いのは間違いないわけで、クルマの流入を抑制し、自転車インフラを整備し、自転車で走りやすくするだけで、自転車の活用が進む状態にあります。現金支給から始めなくてすむのですから、その優位性を活かすべきではないでしょうか。




トランプ大統領、国家非常事態宣言を発令して国境の壁を建設するようです。そこまでしても作りたいんですね。

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