March 26, 2019

色を塗るだけでは意味がない

少しずつ自転車インフラに光が当たり始めました。


最近は、自転車によって地域振興を図ったり、自転車のまちを名乗ったりするのと同時に、自転車インフラの整備を推進していこうと考える地域も出てきました。このブログを始めた頃には、自転車レーンなんて話題にすらならなかったことを思えば、隔世の感があります。

この傾向は歓迎すべきことですが、実際にどのようなインフラ整備が進められているかが問題です。地域によって違いますが、道路の縁に申し訳程度に色を塗ったり、自転車のマークをつけただけの、お粗末きわまりない自転車レーンが設置されたところも多いのではないでしょうか。

推進する行政にしてみれば、限られた予算の中で、色を塗るか、自転車のマークをペイントするくらいしか出来ないと言うかも知れません。しかし、それがどのくらい役に立つかには疑問もあります。とりあえず、出来ることをやればいい、というものでもないでしょう。

物理的に道路にスペースがないのも理由かも知れません。たしかに、そういう道路もあるでしょう。しかし、実際にはクルマ用のレーン幅に余裕があったり、中央分離帯の周りに、さらにゼブラゾーンが設けられているなど、明らかにクルマの通行しやすさ優先で、自転車用は、お茶を濁しただけというところも多い気がします。

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最近、ようやく国土交通省や警察庁などにも、歩道でなく、本来の車道に自転車走行空間を充実させるべきだとの考えを示していますが、必ずしも実現していません。実際の道路整備は相変わらずクルマ優先という考え方で進められており、自転車用の部分はクルマの邪魔になるというスタンスです。

道路整備は、限られたスペースを最大限クルマが通りやすいようにする、効率を良くするという固定観念に囚われています。いまだに、高度経済成長期のモータリゼーションの時代の発想です。少しでも渋滞を緩和しなければならないという課題が先決で、他の発想の入り込む余地は小さいようです。

しかし、都市の中心部では、いくら道路を拡幅し、クルマの流れを良くしようとしてもキリがありません。何十年もかかって土地の収用が終わり、拡幅できたとしても、そのぶん交通量が増え、また別のところがボトルネックになって、渋滞する箇所が変わるだけというケースも少なくないでしょう。

クルマ向けに道路の改良を行っても、さらに都市部への流入を増やすだけです。渋滞して大気汚染をもたらし、温暖化ガスを排出し、ヒートアイランド現象なども含め、環境負荷を増やすことになります。しかも、多くは都心を通過するだけのクルマです。

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世界の都市では、道路の整備の考え方が変わってきています。通過車両の便宜をはかるより、都市部へのクルマの流入を抑制する方向になっています。これまでのクルマ優先の考え方を改め、歩行者や自転車、公共交通を優先し、都市の居住性や安全性、働きやすさ、魅力を高めようというのがトレンドです。

Janette Sadik-Khan さんは、2007年から2013年まで、アメリカ・ニューヨーク市の交通部門の最高責任者を勤めた人です。以前のニューヨークの自転車インフラはひどいものでした。そこで在任中に400マイル、およそ650キロに及ぶ自転車専用レーンを整備しました。

おかげで、ニューヨークで自転車を通勤に使う人が飛躍的に増えました。一方、自転車レーンの整備に伴い、既存のクルマ用のパーキングスペースが潰されました。クルマの利用者にとっては、面白くないでしょう。その地区にクルマを止めづらくなることで、地区の商業などへの影響を心配し、異議を唱える声も当然ありました。

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しかし、彼女は、保護された自転車専用レーンが、クルマの駐車スペースよりも、明らかに価値があると述べています。例えば9番街では、パーキングスペースを削って自転車レーンが設置されました。それも、単に線を描くだけの自転車レーンではなく、クルマと分離し、自転車利用者の安全性を高める構造にしました。

この9番街のレーンの整備によって、ケガを伴う事故は48%減りました。一方、心配された経済的な影響を調べると、地区の小売売上高が、なんと49%も増えたのです。事前にデンマークなどの事例を調べて自信を持っていた、Janette Sadik-Khan さんですが、さらに確信を深める結果となりました。

これによって、ニューヨークの、クルマと分離され保護された自転車レーンの総延長は急上昇することになりました。2018年には、市内に1200マイルもの自転車専用のレーンが出来ています。彼女は、クルマ向けの整備ではなく、歩いたり、自転車に乗ったり、公共交通を使いやすくする整備を進めました。

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これは都市の将来の成功のためのレシピであると断言しています。安全で保護された自転車レーンは、都市への投資であり、都市の成長をもたらすことを指摘しています。単に色を塗っただけのレーンではなく、自転車で移動するのに、安全面のストレスの少ない自転車専用レーンのネットワークであることが重要だと言います。

予算が無いなんて理由は論外、保護された自転車専用レーンのネットワーク以上の都市の道路への投資は無いと確信しています。より良い都市にしたいなら、自転車レーンの建設を始めるべきだと述べています。ニューヨーク市の交通部門の最高責任者の言葉ですから、重みがあります。下の動画で見ることが出来ます。

もちろん、全てのパーキングスペースを潰す必要はありません。駐車車両で、うまくクルマと自転車を分離している場所もあります。でも、幅に余裕のない道路では、自転車用のレーンを設置するために、クルマ用の車線を1つ減らすことも厭わないという考え方です。





日本でも最近、青く塗られた自転車レーンの上に、平気で駐車している車両を見ることが増えました。これでは、その駐車車両を迂回しなくてはならず、かえって自転車利用者を危険にさらします。自転車レーンを設置する意味がなくなってしまいます。

一番左側の車線に一台、クルマが路上駐車しているだけで、他のクルマは隣の車線に合流する羽目になっている状況を見るのも日常茶飯事です。それならば、最初から一番左は自転車レーンにしてしまい、クルマの車線を減らしたほうが、むしろ車線変更で渋滞を招くこともないでしょう。

都市の貴重な道路空間を、一人の都合で路駐させるスペースにするほうが、もったいない話です。一番左に自転車レーンを設置し、物理的にクルマが入ってこれないようにした場合、片側一車線なら、駐車車両はなくなるでしょう。クルマの車線をふさいで通れないようにしてまで駐車する人は稀です。

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パーキングメーターがないのに、一番左側の車線が、駐車専用のようになっている道というのも、ありふれた光景です。しかし、路駐によって都市の貴重な公共空間が占有されることで、大きな経済損失となっています。駐車されないようにして、周辺の有料駐車場の利用を促したほうが経済的にも意味があるでしょう。

沿道の店舗の納品に困るという人がいるかも知れません。しかし、荷下ろしでも駐車違反です。都市部での納品は、裏通りなどに設置された荷捌きスペースか、最寄り駐車場から台車で運ぶべきでしょう。実際にそのようにしている場所もあります。店舗の前だからと言って、その店舗のための駐車場ではありません。

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都市の中心部では、片側2車線を1車線にしてでも、自転車専用レーンを設置すべきと聞くと、ずいぶん大胆に聞こえます。しかし、クルマの通行の便宜にすらならず、違法駐車する人だけを利するならば2車線の意味はありません。自転車でストレスなく移動させたほうが、経済的にも都市の発展に貢献するとの主張なのです。

日本で見られる、申し訳程度に路肩を青く塗っただけの自転車レーンでは、都市への投資になりません。むしろ、違法駐車を増やしかねません。こんな無駄なことをするのではなく、ニューヨークの事例を見習って、保護された自転車専用レーンのネットワークの構築を考えるべきではないでしょうか。




今週末は見頃になりそうですが、気温が低いようです。花見時の週末は決まって花冷えになるような気がします。

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